もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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本編とは全く関係のない、随分前に考えた思い付き(その2)です。
所々に小ネタがちらほらあるくらいで、適当に書いた節がややあります。故にキャラ崩壊があるかも?
あまり考えず、気楽に読んで下さると嬉しいです。




EX3. ネギ太郎

 

 

 

 むか~しむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。

 

「何で俺がお爺さん役で、千鶴姉ちゃんがお婆さん役なんやねん」

「ふふふ、小太郎君は、お婆さんの役は私よりも夏美ちゃんの方が良かったのかしら?」

「別にそういうわけちゃうわ!」

「うーん、そうねぇ、やっぱりお婆さんは夏美ちゃんにやってもらいましょ。夏美ちゃん、ナレーションは私がやるからこっちに来て――」

 

 わーーわーー、ちづ姉、ナレーションと会話しちゃダメ!!

 え、えぇー、そ、そんなある日のこと。

 小太郎お爺さんは山に柴刈りに、千鶴お婆さんは川へ洗濯に出かけました。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 木々の生い茂る山の中。 

 

「はぁ……何でわざわざ斧振り回して、切り倒さなあかんねん」

 

 斧を一生懸命振りかぶりながら、お爺さんは木を切り倒し、薪を集めます。

 

「あかん、こんなん埒が明かんわ……ん?」

 

 木の幹を少しずつ削っていると、お爺さんはあるものを見つけました。

 それは一点が光り輝く一本の竹でした。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 辺りに、ドルドルドルと鈍いエンジン音が響き渡る。その音を発している赤いフォルムの機械の先には、鋭く尖った無数の刃が並び、老人が紐を引っ張ると目にも止まらぬ速さで回りだした。

 老人はその機械を轟々と唸らせる。マスクのせいでその心中を察することはできないが、傷つき、擦れ、劣化したそのマスクが老人の恐ろしさを物語っていた。

 老人は標的に向かって走り出す。

 ものものしい黒いオーラを纏いながら、老人は一気に間合いを詰め、腕を振りかぶった。

 回転する刃が銀色の閃光を発する。

 二つに斬れた標的は、上部が重力に従い、地へと落ちる。そして、辺りにはドサリと重々しい音が響いた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「……ふぅー」

 

 マスクを取って、お爺さんは深く息をつきました。

 

「おぉ、やっぱり伐採はチェーンソーに限るなー」

 

 竹を斬ったお爺さんは、その竹の中を覗きました。

 

「こ、怖えぇーー!!」

 

 すると中には、玉のような可愛らしい女の子が一人。

 

「死ぬかと思ったよ!!」

「あぁ、すまんすまん、まさか中に人がおるなんて思いもせんかったからなぁ」

「気を付けてよね!」

「ほんま悪かった。それで、お前、誰なんや?」

「あぁ、そっか……えぇーと……こんにちわ。私の名前はみそら姫。生まれたときから名前のある便利な女の子」

「……は?」

 

 お爺さんはショートカットのみそら姫の言葉に思わず目を丸くしました。

 

「貴方が私を見つけたお爺さんですね?」

「いや、確かに俺はお爺さん役しとるけどなぁ……多分俺はアンタが思っとるお爺さんと(ちゃ)うで」

「えっ、どういうこと?」

「………」

「ん、なんや?」

 

 お爺さんは突然何者かからクイクイと袖を引っ張られました。目を向けると、そこには一人の小さなお爺さんがいました。

 

「その子はこっちの娘……私が預かる……」

「あ、あぁ、そうなんか?」

「あ、ココネ」

 

 そう言うと、みそら姫は小さなココネお爺さんに連れていかれました。

 小太郎お爺さんは一人立ち尽くして、手を繋がれ去っていくかぐや姫を見送りました。

 

「……なんやったんや、今の?」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 所変わって、川ではお婆さんが洗濯をしていました。

 

「……はぁ、わざわざ川まで来て、洗濯するなんて不便ねぇ」

 

 川の岸辺で、お婆さんは不思議そうな表情をして、洗濯機を回しています。

 

「ドラム式にでも買い換えようかしら……あら?」

 

 ふとお婆さんが川に目をやると、川の上流からどんぶらこどんぶらこと、大きな“葱”が流れてきました。

 

「まぁ、大きな葱! 早速持って帰って、今晩のおかずにしましょう」

 

 お婆さんは川からその葱を掬い上げるとお家へ持って帰りました。

 

 葱を持ってかえったお婆さんは、その葱をお爺さんに見せました。

 すると、お爺さんはその葱のあまりの大きさに、とても吃驚しました。

 

「おぉ、めっちゃ――不自然なほどに――大きい葱やなぁ。人ひとり、中に入りそうなほど大きいでぇ。誰か入っとるんとちゃうか?」

「ふふふ、お爺さんたら。葱の中に人がいるわけないじゃないですかぁ」

「はは、そらそうやな。じゃあ、これじゃあ大きすぎるし、俺がいっちょスパーンと切っちゃるわ」

「えぇ、お願いします」

 

 ギュイーーンというエンジン音が家の中に響き渡り、鋭く尖った刃が目にも止まらぬ速さで回転します。

 

「そんじゃあ、いくでぇ」

 

 そういって、お爺さんはチェーンソーをしっかりと持ち、構えました。

 

『ちちちちょちょちょ、ちょっと待って下さい!!』

「あん!?」

 

 すると、いきなり葱の中から男の子の声が聴こえてきました。その声にお爺さんは思わずびっくりして、チェーンソーのエンジンを止めました。

 

『そんな物を使って切ったら僕の体も一緒に斬れちゃいますよ!!』

「なんや葱の中から声がしよるで!?」

 

 中から聴こえた声に疑問を持ったお爺さんたちは獣の皮を剥ぎ取るように包丁で葱を切っていきました。

 すると、なんとびっくり、中からメガネをかけた赤毛の男の子が出てきました。

 

「まぁ、葱の中から男の子がでてきたわ」

 

 葱から生まれたその男の子は、“ネギ太郎”と名付けられ、お爺さんとお婆さんから大切に育てられました。

 

「えっ! 僕が斬られそうになったのはスルーですか!?」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 やがて、ネギ太郎はすくすく成長し、立派な少年に育ちました。

 そして、ある日、村が鬼に襲われたということを聞き、ネギ太郎はある決心をします。

 

「お爺さん、お婆さん、僕が鬼を退治してくるよ」

「おぉ! 流石はネギや! よっしゃ、分かったでぇ! ほな、お前にはこの杖をやるわ」

「それ、僕の杖……じゃなくて、ありがとう、お爺さん」

「じゃあ、私からはこのきびだんごをあげるわね。“丹精込めて”作ったわ」

「う、うん、ありがとう、お婆さん」

 

 お爺さんのくれた杖とお婆さんの意味深な言葉に、少し疑問を覚えつつもネギ太郎は鬼退治に向かいました。

 

「じゃあ、お爺さんお婆さん、行ってくるね。絶対に鬼を退治してみせるから」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「あぁ! ネギ先s………ゴホンっ、ネギ太郎さん♪」

「あ、委員長さん!」

「いえ、私は通りすがりの“イヌさん”ですわ」

 

 ネギ太郎が鬼退治に向かう道中、ネギ太郎は金髪のイヌに出会いました。

 

「ネギ太郎さん、よろしければ此方(こちら)のお茶屋でご一緒にお茶でもいかがですか?」

「い、いえ、僕はこれから鬼退治に向かわないといけませんので……」

「まぁ、それはとても大変なことですわ。では、私も是非ご一緒いたします」

 

 ネギ太郎は、犬耳のカチューシャをつけた委員長、もといイヌを仲間に加えました。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「う、うぅぅぅ、な、なんで私がこんな格好を……」

「おや、そこにいらっしゃるのは“おさるさん”ではございませんか」

「だ、誰がおさるよ!!」

「あらあら、その格好、どう見ても“おさるさん”ではありませんこと?」

「うぅっ……うるさい!!」

 

 しばらくすると、ネギ太郎達はツインテールのサルと出会いました。

 

「おさるさん、良かったら僕と一緒に鬼退治に行ってくれませんか」

「うるさいわね、誰がおさるよ! ちょっとこの配役考えたヤツ出てきなさい!」

「キィキィうるさいですわね。ネギ太郎さん、こんなおさるを連れて行く必要ありませんわ。それよりも彼方(あちら)にある飯屋でお食事でも――」

「アンタはアンタでなにしてんのよ! このショタコン!」

「なんですか? 邪魔しないで頂けますこと!」

「まぁまぁ、イヌさん、落ち着いて。アスナさっ――じゃなくて、サルさんも」

「……ネギ太郎さんがそう仰るのなら」

「……ふんっ」

 

 ネギ太郎はイヌとサルのケンカの仲裁をして、サルさんにもういちど一緒に鬼退治に行くことをお願いします。

 

「サルさん、一緒に鬼退治に行ってくれませんか?」

「……分かったわよ」

 

 こうして、ネギ太郎は、おさるの着ぐるみを来たアスナ、もといサルを仲間に加えました。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「キージー、キージー」

 

「「「そんな風に鳴くキジなんていない(わよ)と思います(わ)!」」」

 

 またしばらく進むと、一行は白い羽をもったキジに出会いました。

 

「おや、少年。イヌとアスナを引き連れて一体どこへ?」

「ちょっと、何で私は名前で呼ぶのよ!」

「今から僕たちは鬼退治に行くんです。キジさんも良ければ一緒に来てくれませんか?」

「別に良いけど……時給いくら?」

「金、取るんかい!」

「えっ! あ、え、えーと……では千二百円ほどで」

「乗ったァ!」

「乗るなァ!! ネギも律儀に答えなくていいから!」

 

 ネギ太郎とキジのやり取りに、サルはツッコミを入れまくります。

 

「ネギせんせっ――いえ、ネギ太郎さん! こんなうっさん臭い鳥にお金なんて払う必要ないですわ! とうもろこしの粉末で十分です」

「ニワトリじゃねぇんだよ。キジなめんな。日本の国鳥だぞ! ただの柴犬や日本猿と一緒にすんなし」

「誰が日本猿よ!!」

「この場合、お前しかいないだろ、ド阿呆」

「ムキーー! コロス! その羽根引ん剥いて羽毛布団してやるわ!」

「ちょ、そんな大剣(ハマノツルギ)振り回すな!!」

 

 キジの言葉に堪忍袋の緒が切れたサルは顔を赤くして、斬りかかりました。

 

「あらあら、物騒なおさるですわね。ではネギ太郎さん、暴れる獣たちは放っておいて、私たちは彼処(あそこ)にある宿屋でゆっくりと――」

「おい、そこのショタ犬! なに、さらっとホテルにベットインしに行こうとしてんだ?」

「あっ、おまわりさん、この人です!」

 

 二人のケンカを横で見ていたイヌの、まさかの行動にキジとサルは声をあげました。

 

「なっ、誰がショタ犬ですか!? アスナさんもさらっと国家権力を呼ばないでください! 私はまだ、やましいことなど、何もしていませんわ!」

「まだ?」

 

 ネギ太郎は首を傾けます。

 

「あ、なっ、ち、違いますわ、ネギ先生! 今のはつい本っ――じゃなくて、言い誤っただけです!!」

「今“本音”って言いそうになったわね……」

「少年、逃げろ! 食べられるぞ!」

「食べません!」

「美味しくいただかれるぞ!」

「大して変わってないではないですか!!」

「じゃあ、×××(ピーーーー)るぞ!」

「ブチ殺しますわよ!」

×××(ピーーーー)って何ですか?」

 

 聞き慣れない言葉に、ネギ太郎は目を点にしました。

 

「ネギ先生!!」

「ちょっとアンタ! 子供の前でなんてこと言ってるのよ!」

「じゃあ、他になんて言えば良いんだよ。※※※(バキューン)か? ☆☆☆(ドカーーン)か?」

☆☆☆(ドカーーン)って言うな!」

「そもそも私はそんなことをするつもりはありませんわ!」

「嘘つけ! “つもり”はなくても、“あわよくば”そうしたいって考えてんだろ?」

「そ、そんなこと……ない、ですわ……」

「言い淀んでんじゃないわよ! このショタコン!」

「な、アスナさんまで言い掛かりはよしてください! 私は少年を愛でているだけ! 本人が嫌がるようなことは決して致しませんわ!」

「当然だ、バカ! てか、×××(ピーーーー)は愛でることに入んねぇよ」

「だから、私は決してネギ先生に×××(ピーーーー)なんてしません! 精々、B――いえ、Aまでです!」

「お前、年いくつ!? 言い方が古いわ!」

「というか、Aでも十分、アウトよ! このショタ委員長!」

「Aならお前もネギ君と経験済みだろうが、人のこと言えねぇぞ。ショタザル」

「「なんですってェーー!!」」

 

 イヌとサルは声をあげました。

 

「誰がショタザルよ! この鳥人間野郎!」

「そんなことより、アスナさん! ネギ先生と経験済みとは本当なんですか!?」

「変な言い方しないでよ! け、“経験”ってそういう意味じゃないわよ!」

「なに、顔真っ赤にしてんだよ、純情か? ネギ君と同じベットで寝てたくせに……」

「アスナさん!! 子供に一体なんてことを!!」

「ち、違っ! ちょっと、総一、紛らわしい言い方しないでよ!」

「事実だろ?」

「アスナさん! あなた本当に!!」

「だから、違うってば!!」

 

 イヌがサルに噛みつきます。

 

「どういうことか、説明してください!」

「だから、あれはネギが夜に勝手に忍び込んで、仕方なく――」

「言えば、言うほどウソっぽい」

「アンタはいい加減に黙ってなさいよ!」

 

 そして、サルがキジの胸ぐらを掴みます。

 

「そもそも、なんでアンタが知ってるのよ!?」

「このかに聞いた。きちんとお姉さんやってるみたいじゃん?」

「うっ……!!」

「南の島に言ったときもネギ君のことが心配で心配でたまらないみたいだったし、惚れたって言うのもあながち間違いじゃな――」

「う、うるさい! このぉ!!」

「あ、ちょ、やめっ!!」

 

 首を絞め上げるサルから離れようと、キジはサルを押し退けようとしましたが、キジが手を払い除けるその前にサルは力ずくでキジの身を放り投げした。

 

「うわっ!」

「ひゃ!」

 

 キジはイヌを巻き込み、倒れ込みます。

 

「いてて、なにす……えっ」

「ふぇ!?」

 

 キジは自分の手が触っている感触に違和感を持ちました。

 そして、同時に、倒れたイヌはみるみる顔を赤くしていきます。

 

「キャァァァァ!!」

「ウシロッ!!」

 

 イヌは悲鳴を上げながら、キジの顔にパンチしました。キジは変な声をあげ、殴り飛ばされてしまいました。

 

「痛ェーーッ!!」

「お、おおお、乙女の胸を揉むなど! い、一体何を考えてるんですの!? セクハラですわ!! このケダモノ!」

「触ったことは謝るが、今のは不可抗力だろうが! 文句を言うなら、アスナに言ってくれ!」

「私のせいにしないでよ! 鼻血なんて垂らして、気持ち悪いわね」

「顔面に右ストレート入れられたら、鼻血くらい出るわ、ボケ!!」

「とか言って、ホントは委員長の胸に興奮したんじゃないの?」

「誰がするか! 殺すぞ、くまパンザル!!」

「殺れるもんならやってみなさいよ! このドスケベ鳥!」

「ちょっと、アスナさんに加賀美さん!! お二人とも話はまだ終わってませんわよ!!」

 

 こうして、イヌ、サル、キジは互いに仲違いをしてしまいました。そのいざこざは時間が過ぎるにつれ、更に発展していきました。

 

「「「やるか、こらぁーーっ!!」」」

 

「あ、え、ちょ、えと、三人とも落ち着いて……」

 

 ネギ太郎は、そんな争う三匹を見て、あわあわとするしかありませんでした。

 

 これが世にいう『犬猿の仲、雉が加わり、手つけられず』であります。

 

 やがて、三人の喧嘩もおさまり、ネギ太郎一行は、翼の生えたヒト、もといキジを仲間に加え、鬼ヶ島を目指しました。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ――五日後。

 

「アレが鬼ヶ島ですわね」

「うわぁ、なんかやな感じねぇ」

 

 ネギ太郎一行の前には、遥か海の向こうに鬼ヶ島がありました。島の上空には暗雲が立ち込め、雷鳴が響いています。

 

「さて、あそこまでどうやって行くか……」

「船を使って行くしかないでしょ、アンタと違って私達は皆飛べないんだし」

「あ、僕は飛べますよ」

 

 ネギ太郎は背中にある杖を手に持ちました。

 

「じゃあ、俺と少年は飛んで行くから、二人は海を泳いで行くってことで……」

「そんなの却下に決まってるでしょうが!」

 

「そうですわね……では、近くの村から小舟を貸していただきましょう」

 

 ネギ太郎たちは近くに住む漁師から小舟を一隻貸してもらいました。

 船に乗り込んだネギ太郎一行は、まっすぐ鬼ヶ島に向かいました。船は大きなエンジン音を響かせてどんどん鬼ヶ島に近づいていきます。

 

「……なんでモーターボート?」

 

 キジが疑問に思います。

 

「手漕ぎ船よりも楽だからって、村の人が貸してくれました」

「いや、確かに楽だけどさ……」

 

 やがて、船は島へと到着し、一行は鬼ヶ島に降り立ちました。

 

「なんで、船着き場があるんだ?」

 

 イヌとキジは、ボートと係船柱――船着き場にあるL字の柱――をロープで縛りました。

 

「ついに来たわね。さぁー鬼でも蟹でも、どこからでも掛かってきなさい!」

「カニ?」

 

 サルが意気込み、ネギ太郎が首を傾げます。

 一行は島を散策し、鬼の住みかを探しました。

 

「鬼といえば、太鼓にエレキギターにトランペット……?」

「なにを言ってるんですの?」

 

 キジの呟きに、イヌが目を細めます。

 

「あっ!? あそこ」

 

 そんなこんなして、しばらく歩くと、ネギ太郎は鬼の住みかを見つけました。

 

「これは……」

「ここが鬼のいる住みかですの?」

「いかにもって感じね!」

「皆さん、行きますよ」

 

 おどろおどろしい雰囲気を漂わせる建物にネギ太郎一行は身構えました。

 しかし、その内一人、キジだけが目の前にある鬼の住みかに首を捻っていました。

 

「鬼の住みかっていうか……お城、だよな、これ……西洋の」

 

 ネギ太郎一行がお城(?)の前に立つと、城の天辺にあるドアが開き、ついに鬼が姿を現しました。

 

「フハハハハハハっ!!」

「閣下?」

 

 キジが呟きました。

 

「よく来たなボウヤ達」

 

 鬼はネギ太郎達を見下しながら、高らかと笑います。

 ネギ太郎達が声のする方へ目を向けると、そこには虎柄の胸当てとパンツを身につけた“鬼”がいました。

 

()は鬼でも、“吸血()”って……」

「ま、師匠(マスター)!?」

「「エヴァンジェリンさん!?」」

 

 ネギ太郎達は鬼の姿を見て、目を見開きました。

 しかし、ネギ太郎は臆することなく、鬼に立ち向かいます。

 

「あ、そうだ。え、えぇーと……僕は葱から生まれたネギ太郎! お前を退治しに来たぞ」

「フハハハハハ、威勢の良いボウヤだな。だがその程度で私に勝てると思うなよ。出てこい、我が手下共、“三大将”よ!!」

「「「三大将?」」」

「三大将だと……!?」

 

 上にいる鬼が合図をすると、お城の玄関のドアが開き、鬼の手下である小鬼三匹が出てきました。

 

「あいあい」

「とぉー」

「……うぅ」

 

 青、黄、白の小鬼が、それぞれイヌ、サル、キジの前に立ちはだかります。

 

「長瀬さん!?」

「くーふぇ!?」

「桜咲……お前まで何やってるっちゃ?」

 

 出てきた三匹の小鬼を見て、イヌとサルは驚き、キジは呆れた表情をしました。

 

「拙者達はエヴァ殿の手下でござる」

「うむ、三人とも、いざ尋常に勝負アル!」

「………」

「勝負するの? 一人そんな雰囲気じゃないヤツがいるんだけど?」

 

 キジはそう言って、青鬼と黄鬼の横で顔を赤く染め、小さくなっている白鬼に目を向けました。そして、キジにつられて、イヌとサルも視線を向けます。

 

「あ、うぅぅ……」

「桜咲さん、大丈夫ですか?」

「ほんとすごい顔が真っ赤よ」

「うっ、あの、その……あ、あまり見ないでください」

 

 イヌサルキジの三人に見られて、白鬼は更に小さくなり、視線を合わせては逸らし、チラチラと動かします。

 

「随分としおらしいというかなんというか、可愛いらしい鬼だな、おい。恥ずかしいなら、そんな格好しなきゃ良いのに」

「か、かわっ! そ、そうじゃなくてこれは、そのっ! (イヌ)(サル)(キジ)の方角に対極する鬼門に合わせた鬼の衣装であって、仕方なくでふね」

「でふねって……」

「はぅぅぅ、だ、だからその、これは、えぇーと」

「わかった、わかったからもう何も言うな。恥ずかしいのは十分伝わったから。そんな虎柄ビキニ着せられたら、誰だって恥ずかしいって。もういいから、すぐに舞台裏に行って着替えてきなさい」

「……はい」

「『はい』じゃなーーい!! おい、待て、桜咲刹那! なに勝手に帰ろうとしている!! さっさと戦わんか、馬鹿者!!」

「無茶を言うな、エヴァさん。桜咲のMPはもうゼロだ。おい、(くー)に長瀬、すぐに桜咲を舞台裏に連れて行って、暖かい毛布に暖かい飲み物、それと暖かい家庭を与えてやれ!」

「分かったアル、師匠!」

「御意。さぁ、刹那殿、こっちへ」

「だから、お前たちは勝手に帰ろうとするなァァ!!」

 

 ボス鬼の制止を聞かずに、小鬼たちはその場から立ち去って行きました。

 

「……行っちゃいましたわね」

「……大丈夫かしら、刹那さん」

「……すべてはアスナのせいだっちゃ」

「はぁ!? なんで私のせいになるのよ? あとその語尾やめなさい!」

「バカレッドのお前がネギ太郎(こっち)サイドにいるから、桜咲が肩代わりになったんだろ? つまり、そういうことだ」

「知らないわよ!!」

「え、えぇーと……け、けど、何はともあれ、これで残ったは師匠(マスター)だけになりましたよ」

 

 小鬼たちをやっつけた(?)ネギ太郎たちは、ボスである鬼を倒すべく、構えました。

 

師匠(マスター)、大人しく降伏してください!」

「……ふふふ」

「ま、師匠(マスター)!?」

「ふふふ、フフフフフ、フハハハハハハハ」

 

 鬼は声高らかに笑い始めました。

 

「もう怒ったぞ、貴様ら! 私の力、思い知るが良い!!」

 

 顔に青筋を浮かべ、鬼は窓の手すりから飛びあがり、ネギ太郎たちの前に浮かびました。

 

「リク・ラク、ラ・ラク、ライラック、来れ氷精――」

「極大魔法!?」

 

 鬼の詠唱する呪文を聞いて、ネギ太郎は驚きました。

 

「エヴァさん、相当お怒りだな」

「ち、ちょっと、どうすんのよ?」

「お前がハマノツルギで打ち消せば?」

「……あっ、そっか」

 

 キジの言葉を聞いて、サルが大剣を構えました。

 

「けど、このまま馬鹿正直に戦うのも、かえってアホらしいし……少年、ちょっと良いか?」

「えっ!?」

 

 キジはネギ太郎に耳打ちすると、“なにか”をネギ太郎の巾着から取り出しました。

 

「闇の吹雪!!」

「とおりゃぁーー!!」

 

 鬼の手から出た強烈な吹雪が、サルが大剣を横に振りかぶると、一気に消失しました。

 

「今だ! 相手の(ゴール)にシュート!!」

「うっ、ん、うぅゴクっ」

 

 吹雪が消えた瞬間、キジは鬼の口の中にその“なにか”を投げ入れました。

 それを口に入れた鬼は、急に黙りこみ、みるみる顔色を変えました。

 

「……おや!?」

「エヴァさんのようすが……!」

 

 鬼の変化にネギ太郎たちは様子を窺います。

 

「ぎっ」

「「「「ぎっ?」」」」

 

「ぎゃァァぁぁぶるァァぁぁ!!」

 

 すると突然、鬼は大きな悲鳴を響かせました。

 

「うぇぇ、き、きひゃま、何を食わせた!?」

「なにって……これ」

 

 キジは巾着からだんごをひとつ取り出し、鬼に見せました。その手には黄緑色をしただんごがひとつ。

 

「それは……お婆さんが作ってくれた“きびだんご”?」

「“きびだんご”だと!? バカなっ、こ、こんなっ、おぇぇ」

「まぁ、うん。エヴァさんがえずくのも仕方ないよ……来る途中に少し摘み食いしたけど、これ、もう“きびだんご”というより、葱をこねて作った“葱だんご”だから。もち米なんて、ほとんど入ってねぇーよ。九割がた葱だよ」

「食べたんですか?」

 

 ちづ姉、一体、どんな意図でそんな物を……あ、ごほんごほん、ネギ太郎の“葱だんご”もとい、きびだんごを食べた鬼は地に降りて、膝をつきました。

 

「おえっへっげへっごほっ、こ、このぉ!!」

「まだ、やるか? では続投。おだんごだんだん、だだんのだぁーん!」

「や、やめろ、貴様!! そんな毒物、私に向かって投げるなぁーー!!」

 

 キジが再度投げるふりをすると、鬼はすたこらさっさと、逃げていきました。

 

「……行っちゃったよ」

「………」

「………」

「………」

 

 鬼が去り、四人の間に静寂が流れます。

 

「………」

「………」

「………」

「……えっ、終わり!?」

 

 こうして、鬼を退治したネギ太郎は鬼の奪った村の人たちの金銀財宝を持ち帰り、お爺さんやお婆さんと幸せに暮らしましたとさ――

 

 

 ――めでたしめでたし。

 

 

 






配役

ネギ太郎:ネギ・スプリングフィールド
イヌ:雪広 あやか
サル:神楽坂 明日菜
キジ:加賀美 総一

鬼:エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
小鬼(黄):古菲
小鬼(青):長瀬 楓
小鬼(白):桜咲 刹那

お爺さん:犬神 小太郎
お婆さん:那波 千鶴
ナレーター:村上 夏美


この話にオチはありません。
あと、残った葱はキャストの全員が美味しくいただきました。

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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