もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
――作者の勝手なイメージ(仮)――
ネギ(CV:佐藤利奈)「あ……あなたは……」
ヘルマン(CV:大塚芳忠)「そうだ、君の仇だ。ネギ君」
総一(CV:高山みなみ)「………」
俺に送られてきた、あのメール。アレは恐らく貴族悪魔かスライム悪魔が拐った雪広の携帯を使って送ってきたのだろう。
原作だと、雪広は“この件”に関しては無関係だったはずだが、この世界の雪広は能力者。ただで無力化できるわけがない。よって、スライム悪魔の三人か貴族悪魔――へルマンだっけ?――或いは両方が雪広を捕らえたのだろう。
ここまでは、成り行きの想像がつく。だが、なんでだ? なんで、悪魔どもは俺にあのメールを送ってきたんだ? 奴等の目的は確か、ネギ君の実力の調査だろ?
そんなことを考えながら、足を進めていると、前方に明るい雷撃が走った。恐らく、ネギ君の魔法だろう。
「
俺は、屋根を蹴り、空中を数歩踏んで、ステージの観客席へと着地した。
「ふむ、これで全員揃ったな」
「加賀美さん!?」
「師匠!」
「総一!」
俺が着地すると、その場にいる全員がこっちを見た。
ステージには水の塊が置かれ、中には桜咲と那波さん、雪広、その他(木乃香や
そして、その皆のそばには黒いコートに身を包んだ老人、へルマンと何かの液体が固まってできたような小人が三人いる。
「誰や、あの兄ちゃんは?」
「あの人は加賀美さんっていって、アスナさんや委員長さんの友達なんだ」
「なんや、姉ちゃん達の友達かい。けどなんでその兄ちゃんがここに?」
「私が呼んだのだよ」
「えっ」
ネギ君と関西弁の少年――小太郎君の会話に口を挟む形でへルマンは言った。
ネギ君達はステージ下手側の観客席にいる俺とは違い、中央にいるため、必然的にへルマンとはまっすぐ向かい合う。
「私の知りたいのは、“ネギ・スプリングフィールド”と“犬神小太郎”、そして……“加賀美総一”、きみ達三人の実力だよ。私を倒せば彼女たちを解放しよう」
だから、なんで俺まで?
ネギ君達はともかく、俺とあんた達って初対面だろ?
「なんや、それだけかい! 楽勝や!」
「……よし、じゃあ、僕が行く。小太郎君は下がってて!」
「なっ!!」
ネギ君の言葉に小太郎君は表情を変えた。そして、二人は「僕が戦う!」「俺がやる!」と水掛け論を始めた。
「敵前で何やってんだか……
その場の皆の目がネギ君達に向いてることを好機に思い、俺は脚を横に振って、雪広の入っている水の塊に向け、斬撃を飛ばした。
「ふっ」
しかし、その斬撃はへルマンの拳によって、止められた。
あの状況から、“飛ぶ打撃”で斬撃を正確に突くとは……。
へルマンの強さが窺える。
「ちっ」
「ハッハッハッ、油断もすきもないな」
舌打ちをしてへルマンを睨む俺だが、対してへルマンは愉快そうに笑っていた。
「……ん?」
苦虫を噛み潰したような顔で、へルマンを見ていると、俺に向かって何かが飛んできた。それは俺の前まで来るとウネウネと動く腕を鞭のように打ってきた。
俺は体を斜め後ろに反らし、それを避ける。
「へへっ、おりゃおりゃー!」
八重歯の見えるニヤリ顔を浮かべながら、スライム悪魔の一人は俺に攻撃を放つ。
体が軟らかいため、打撃はあまり効かないかもしれないが、俺は試しにと、うねる相手の腕を躱しながら間合いを詰め、わき腹を狙って拳を放った。
「なっ! このォ!!」
だが、相手はすぐに体勢を整え、回し蹴りを放つ。俺は腕でそれを受け止めた。
「
「無駄無駄ぁ!!」
しかし、流動する体を持つスライム悪魔に打撃は一切通じないようで、相手は体に穴を空けながらも、攻撃を続けてきた。
俺は後ろに下がることで、一度相手と距離をおいた。それによって、相手の手は空を突くが、すぐに地を蹴って、間合いを詰めてきた。
「
「なっ!?」
目の前から俺の姿が消えたことで、相手は目を見張った。
俺はスライム悪魔の後ろへ瞬時に移動した。
「武装」
俺の右足が光沢もった黒色に染まっていく。
そして、俺の姿を見失い、動きが止まっている相手に向かって、俺はそのまま脚を振った。
「ぐっ!」
相手は声を漏らして、横へ飛んでいく。
「痛ェーー!!」
相手は上手く受け身をとり、着地したが、同時にわき腹を押さえて悶えた。
「大丈夫ですか?」
「なんだよ、アイツの蹴り! 超痛ェぞ!」
飛んだ方向はちょうどネギ君達が他のスライム悪魔たちと戦っていた所であり、近くにいた他のスライム悪魔が、打撃による痛みに呻くスライム悪魔に声をかけた。
「やっぱり、効いたか……」
そう呟き、地を蹴って、俺もネギ君達の横に移動した。
「少年、大丈夫か?」
「はい、 大丈夫です!」
「そっか、そっちの少年は?」
「へへっ、こんなヤツ等にやられるわけないやん!」
両者とも余裕の表情である。
対して、スライム悪魔三人は“覇気”を知らないのか、俺の蹴りが効いて慎重になっている。
「さて、じゃあ、どうする? 三人で協力して、このスライム三人を倒した後に、あの
「はん! そんなことせんでも、俺が全員倒したるわ」
「いや、僕がやる! 小太郎、狗神使えないんでしょ?」
「なんやと!」
「おい、またケンカすんのか? 勘弁してくれ……。じゃあ、あの
「「えぇー!」」
少年達は声を揃え、不満そうな表情でこちらを見た。
「……じゃあ、この三下(スライム三人)は俺が相手する。少年達はあの
「はい!」
「よっしゃ、頼んだで!」
「……仲良いな、おい」
同じようなリアクションを取る少年二人に、俺はため息をつきながら肩を落とした。
しかし、そんなことは知らずと、ネギ君と小太郎君はへルマンに向かって走り出す。
「させるかよ!」
スライム悪魔三人は邪魔しようとネギ君たちを追うが、俺は間に入り、それを阻止する。
「
脚を横に振り、大きな斬撃が三人に向かって走る。
三人の悪魔は揃って上に飛ぶことでそれを躱すが、同時に俺は、左端にいるメガネのスライム悪魔に向かって、地を蹴った。
「武装色、硬化」
間合いを詰めると同時に、俺の両手がさっきのように黒く染まる。対し、メガネのスライム悪魔は迫る俺に向けて手を握りしめ、突いてきた。俺はそれを腕で払いのけるが、真っ直ぐ伸びたその腕は、俺の腕を軸にぐるりと回り、巻き付いてきた。
巻き付いた手は、俺の体勢を崩そうと前へ引っ張るが、俺は踏ん張り、腕を引き、逆に相手を寄せた。
巻き付いている手とは逆の手で、俺はスライム悪魔の顔に掌底をいれる。
「いたっ! ぶちましたね、親にもぶたれたことないですのに!」
「スライムに親なんているのか?」
掌底の当たった頬を押さえ、メガネのスライム悪魔は涙目になって、こっちを見た。
攻撃によって巻き付いた手は取れたが、その間に、他のスライム悪魔が俺に向かって飛んでくる。
二人は左右に別れ、俺を挟むように飛び、両手を使って、殴り掛かってきた。
「
「おらおらおらぁーー!!」
「………」
一人はニヤリと笑みを浮かべながら、もう一人は無表情のまま、俺を殴り付けてくる。
「まるで、“ガトリング”だな」
俺は小声で呟いて、腕で顔を覆い、ガードする。前と違って技の練度も高くなっているため、痛みはほとんど感じない。
やがて、攻撃の手が止まったのを見て、俺は後ろへと下がった。
「よし、“六式”は、まぁまぁ物にしたな」
あとは、
「ひゃあああぁぁぁ!!」
急に響いた悲鳴に反応して、俺は後ろを向いた。
ステージでは中央で悲鳴をあげている明日菜のつけたペンダントが光り、逆にネギ君のかかげたフラスコのような魔法具が光を失う。
どうやら封印するための魔法が
「ふん!」
「ぐはっ!!」
「小太郎君!!」
魔法を無効化されたことに驚愕し、動きが止まっていた小太郎君にへルマンは拳を入れた。
「ふむ、実験は成功のようだ。これで君たちは放出系の魔法や術は使えない」
「な、なんで!?」
「はぁ!」
そして、へルマンはネギ君の後ろに回り込み、また拳を放った。小太郎君と同様、ネギ君も飛ばされ、地に転がる。
「さて、では私もそろそろ本気を出そう」
ぎゅっと自身の手袋をはめ直し、へルマンは一歩一歩ゆっくり前へ出る。同様に俺と戦っていたスライム悪魔三人が身を引いた。
「三人纏めて、掛かってくると良い」
「くっ!」
「ちっ!」
「……三対一か」
少年二人が苦い顔をしているのを見て、へルマンの発する殺気を感じながら、俺は小さく呟いた。
さっきから薄々感じていたが、おそらく、この
へルマンから感じる強者の“気配”が、今にして頭角を現した。俺の推測では、この
俺とネギ君と小太郎君で倒せるかどうか……。
「………」
だが、ここで相手の挑発にのる必要はない。
周りの気配を探っても、ここにいる全員以外に
なにも、本気でやり合う必要は無い。人質(特に明日菜)を解放すれば、すべて丸く済む話だ。
「
俺はステージに立つへルマンを無視して、中央にいる明日菜を目指して地を蹴った。
「無駄だ」
「おわぁ」
真横から飛んできた拳に、俺は地を踏み、動きを止めた。高威力の魔力が俺の前すれすれを過る。しかも、ちょっと前髪がかすった。
「……この野郎ぅ」
この
俺は仕方なくへルマンと向き合い、拳を握りしめ、戦闘態勢をとった。そして、右足で地を蹴って、一気に間合いを詰める。
「
「武装」
お互いの拳がぶつかり合い、周りに重く鋭い音が響き、衝撃波が飛んだ。
俺はすぐに二発目、三発目と入れるが、相手も攻撃の手を止めない。
「ハァァ!」
「ふん!」
しばらく激しい攻防が続いた。
俺の右拳とヘルマンの左拳が衝突し、その衝撃によって辺りに突風が吹く。
ヘルマンのパンチが空を突き、俺の左回し蹴りがヘルマンの右腕に防がれる。
「ぐっ」
「ぬぅぅ」
互いの攻撃が風を切り、相手に当たる。
ヘルマンのアッパーが俺のアゴに入り、俺のかかと蹴りがヘルマンの顔に決まった。
「ちっ、
やがて、俺は後ろへと下がり、一度へルマンと間合いを取った。
「……すごい!」
「なんや、あの兄ちゃん、あのおっさんと互角に渡り合っとんで!」
横でネギ君たちが小声でなにか呟いているが、俺は気にせずにへルマンを見据えた。
「ハッハッハッ、私の動きについてくるとは、なかなかやるではないか」
「まだまだ余裕ってか、この野郎……」
楽しそうに笑うへルマンを見て、俺は顔を引きつらせた。
「覇気を纏った攻撃を魔法障壁なしで受け止めてかすり傷のみとか、アンタ本当に“人間”か?」
「ふむ、それは君にも言えることでは無いのかね、総一君?」
「……どういう意味だ?」
「………」
俺が訊き返すと、へルマンは表情を消し、帽子を押さえ、顔を隠した。
「ところで、総一君、確か
「は?」
へルマンの唐突な言葉に俺は戸惑いの声をあげた。
だが、その瞬間、俺は後ろに“気配”を感じ、振り向くのと同時に、“それ”に向かって回し蹴りを放った。
視界に映るのは、さっき俺に向かってきたスライム悪魔。しかし、俺が蹴った“それ”は、ガチャリと音をたてると、俺の足に纏わりつき、ぐるぐると巻き付いた。
「やばっ!」
耐え難い脱力感が俺の体を襲った。
「はぁ!」
「ぐはっ!!」
俺がその“物体”に驚愕していると、突然、背中や頭に衝撃を受け、体が横に吹き飛ばされた。おそらく、へルマンが俺を後ろから殴るか蹴るかしたのだろう。俺の体は観客席に叩き付けられ、辺りのイスや地面のコンクリートを破壊した。
「ちっ、錠、つけ損ねたぜ」
「構わん、つけてないにしろ、“
ステージに立つへルマンとスライム悪魔の一匹がこっちを見て何か言っている。
しかし、その姿はぼやけ、揺らいでいき、俺の視界は酷く曖昧になっていった。
「くそっ……たれ……」
やがて、俺の視界は黒く染まり、体は地に倒れた。
☆☆☆
近くで聴こえる轟音に気づき、俺は意識を取り戻した。視界には鉛色の空が映り、顔には雨粒が激しく打ち付ける。
「くっ……!」
俺は体を起こすが、体を襲う脱力感に顔をしかめた。脚には先程巻き付けられた海楼石の錠の鎖が絡み付いている。
「ちっ……錠がされなかったのが唯一の救いか」
俺は巻きついた鎖からなんとか抜け出し、痛みの走る体を無理矢理起こし、立ち上がった。
「あのくそジジィ、マジで――ん?」
へルマンに悪態をついていると、急に横から明るい光が差した。俺はすぐに視線をそれに向けたが、その“光源”はかなりの速さで向かってきて、そして――
「加賀美さん!」
「師匠ッ!」
「総一ィーー!!」
―――俺の体を石へと変えた。
TO BE CONTINUED ...
総一君が石化したぁーー!!
というわけで、『もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら』これにて、完結。
……まぁ、当然、そんなわけはないんですが。
そんなことより、作者としては、ここで問題が一つありまして……。
総一君が石化したということは、総一君視点で物語が書けないわけでして。
つまり、三人称視点で書かざる負えないわけです、はい。
なるべく、統一しようと前に言ったのにも関わらず、この始末。
ホント、読みにくくて、すみません。
ということで、次回は多分、三人称視点です。
ご了承ください。m(__)m
もう、ずっと三人称で書いた方が良いのかなと思っている、今日この頃。
では『待て、次回!!』
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
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ネギ・スプリングフィールド
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神楽坂 明日菜
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雪広 あやか
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エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
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超 鈴音