もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
「まさか、葛葉先生が出張だとわーー!!」
「お前は何を期待してんだよ……」
織戸が何やら絶望しているのを、隣にいる相川が若干引いた目で見ている。
「何って!! 一生に一度の修学旅行で、俺たちのマドンナ的存在、葛葉先生がいないんだぞ!コレを嘆かずにいられるかぁーーあぁぁーー!!」
織戸は泣きながら、相川に迫り、胸ぐらを掴んで、前後に勢いよく揺らした。
正直、さっきからこの調子でうるさくて仕方ない。
「いい加減、諦めろ」
「うるせぇ、俺にはロリコンの相川や初等部からいる加賀美みたいに女子との出会いがねぇんだよ!」
「知るか、いつまでも新幹線の中で騒いでんじゃねえよ」
「そうだぞ、織戸。今回は女子もいるんだ、それで良いじゃねぇか。あとロリコン、言うな」
「俺は大人なお姉さんが良いんだよーー!!」
あぁ、そうですか……。
葛葉先生、確か彼氏持ちだった気がするんだが……。
俺は前に座っている二人から視線を外し、手に持った京都の旅行本へ向けた。
因みに、女子がいると言っても、新幹線では車両別、旅館の宿泊は階で分けられているため、実質、男女混合となるのは、団体で回る時と旅館内の自由時間程度である。自由行動の時は上手くいけば一緒になれるかもしれないが、一人だけで動くわけじゃないし、織戸に女子の知り合いがいるわけでもないので、ほぼ無理だろう。
「でも、変だよね。修学旅行なのに担任が来ないなんて」
「確かになぁ」
横にいる沢木と結城が何やら話していたが、俺は聞いていないフリをした。その点については、真実をいうことはできないし、どうせ考えた所で答えなど出ないだろう。それなら特に放っておいても問題ない。
「ねぇ、加賀美は何か聞いてないの?」
「……さぁな、そういうこともあるんじゃねぇの」
「へぇ、加賀美も知らねぇんだな」
結城が話をふってきたので、俺は適当に答えた。本音を言うと、普通なら絶対にないことだとは思う。
「まぁいいや、京都に着くまで暇だし、トランプでもやろうぜ」
トランプを取り出した沢木に誘われ、俺は目的地に着くまで、ポーカーで時間を潰した。
☆☆☆
「これがあの飛び降りるアレか?」
「よし、いけ相川。君に決めた!」
「死ぬわ! バカ!」
「けど、実際に飛び降りて死んだ人は少ないみたいだよ」
「だからって飛び降りるかどうかは別の話だろ……」
京都に着いて、最初に回る観光地は清水寺であった。
今、俺たちは代理の先生についていきながら、クラスで固まって、清水寺の周辺を巡っている。俺は現在、沢木、結城、相川、織戸の五人で固まって歩いていた。
「そういえば、この先に恋占いで有名な石があるみたいだよ」
「なに! 恋占いだと!!」
結城がパンフを見ながら言った言葉に、織戸がメガネを光らせながら反応した。
「うん、なんでも目を閉じながら、二つの石の間を歩くことが出来たら、恋が実るとか……」
「うおぉーー、待ってろ、俺のラブコメ青春ドラマァーーッ!!」
「テンション高ぇなぁ、アイツ」
全速力で走っていった織戸を、俺達は呆然と見送った。
まぁ、しかし、当然放っておくこともなく、俺達は恋占いの石があるという地主神社とかかれた所へ向かった。
☆☆☆
「雪広あやか流、恋の心眼術!!」
いや、アレはただの見聞色の覇気だ。
目的の石がある場所に行くと、そこでは3年A組の女子生徒達がすでに恋占いの石で運試しをしていた。
「オホホホホホ、これで私の恋も成就しますわ!!」
「ズルい、いいんちょ!?」
「「えっ!?」」
雪広が覇気を使って独走し、ピンク髪の女子生徒――佐々木まき絵がそれを追いかける形で走っていると、二人の姿が声を合わせて、ストンと消えた。
よくみると、そこには綺麗な四角形の穴が一つ。
「なっなんですか、これは!!」
「こんな所に落とし穴が!!」
穴に落ちた雪広とピンク髪の生徒、佐々木は、ネギ君と他の生徒によって、助け出された。
「ズルいことしたから、バチが当たったんじゃないの?」
「なっ、失礼な! ズルなどしていませんわ」
「いや、アレはどう見てもズルい……」
「ひゃっ!! ちょっと加賀美さん! 驚かさないで下さい!!」
明日菜に向け、何やら叫んでいる雪広の後ろに、俺はジト目で立った。
「総一、なんであんたがいるのよ!」
「逆になんでいないと思うんだよ? 今回の修学旅行は男女混合って、しおりに書いてあったろ」
「でも、アレはクラス同士って……まさかあんたも」
「残念ながら、A組だよ」
「うわっ、最悪!」
「なんでだよ」
明日菜が何やら頭を抱えているが、俺はそんなことは気にせず、「あっ、総くん」と話しかけてきた木乃香に手をふった。
「おーす、このか」
「総くんは、恋占いせぇへんの?」
「あぁ、興味ないしな」
「なんや、総くんも占いは信じてへんの?」
「いや、そうじゃなくて、恋愛に興味がないってだけ。占いは人並みには信じてるよ……まぁ、そこで膝をついてる奴ほどではないけど」
俺はジト目で横の林に向かって倒れている男子生徒を見た。目線の先には、織戸が四つん這いになって号泣している。
「くそぉぉ、何度やってもできねぇ! もうダメだ、俺の青春は死んだ、何故だ!!」
「「………ボウヤだからさ」」
相川と言葉がハモりつつも、俺達は織戸を引きずりながら、次の音羽の滝へと向かった。
しかし、そこでもまた、A組の女子生徒が騒いでいた。
「何やってんだ、アイツら……」
「さぁ……あの滝にも御利益かなんかあるのか?」
「うん、なんでも三本の滝の内、左にある滝の縁結びの水を飲むと恋愛成就するらしいよ」
「恋愛!?」
恋愛成就と聞き、頭に縦筋を浮かべ白くなっていた織戸が復活した。
織戸は目に闘志を宿し、先程と同様、全速力で音羽の滝へ向かった。
しかし、しばらくして、これまたA組の様子が変わり、何人かの顔色が赤くなり、倒れていった。
「なんだか縁結びの滝の水を飲んだ奴らが続々と倒れて行ってるんだが……」
「そうだね、しかもなんだか酒臭いよ」
沢木と結城が、呆然として倒れていく生徒を見ている。
端に目を向けると、織戸や一部男子生徒も顔を赤くして倒れている。
「……ヤレヤレだぜ」
俺は手を額に当て、顔を横に振った。
「ん? なんかお前ら、酒臭いぞ」
「あははは、イヤだなぁ、新田先生、瀬流彦先生! 甘酒ですよ、甘酒!」
「いいんちょ、起きて下さい!バレたら修学旅行中止の上、停学ですよ!!」
酔いつぶれた連中をバスへ詰め込み、仕方なく、俺らは半ば強制的に旅館へと向かった。
☆☆☆
旅館に着いた俺達は、早速、酔いつぶれた連中を各部屋に寝かせた。
半ば男子の方が女子に比べ数が少なく――それでも微小の差だったが――楽だったのだが、女子生徒は二階、男子生徒は三階だったので、かなり時間が掛かってしまった。
部屋へ押し込んだのが終わり、俺は一階にあるロビーへと向かった。現在は自由時間であるのだが、そのわりには旅館の中は静まりかえっている。
ふと見ると、隅にある椅子でネギ君とオコジョと明日菜が何やら話し込んでいた。
「おーす、少年にアスナ」
「あっ、加賀美さん」
「総一」
手を降りながら俺はネギ君たちに声をかけた。
「親書は無事か?」
「えっ! なんで加賀美さんが!!」
「ひょっとしてあんたも西の刺客か!」
オコジョが前足で俺を指したが、俺はひょいひょいと手を横に振った。
「いやいや、ご生憎違うよ。俺は学園長に少年のサポートをしろって頼まれたんだ」
「「「えっ!!」」」
ネギ君と明日菜とオコジョは目を点にして、固まった。
「それはどういう――」
「あら、ネギ先生、教員は早めにお風呂をすませてください」
「あっ、は、はい」
ネギ君がなにか訊こうとしたみたいが、間が悪く、源先生によってその場の話し合いは解散となった。
仕方なく、俺は自分の部屋へ帰ろうと足を進めようとした。
「あ、それと加賀美君」
「ん?」
しかし、それはまた源先生によって遮られた。
「良かったら、加賀美君も早めに入っておいてくれないかしら」
「え、何でですか?」
「加賀美君、広域指導委員でしょ? だから、新田先生と一緒に就寝時間に見回りをしてほしいのよ」
「は、はい。別に良いですけど……そういうことは前もって言っておくべきなんじゃ――」
「じゃあ、よろしくね」
「――って聞いてないし……」
俺は仕方なく、温泉へと向かった。
☆☆☆
「はぁぁ、気持ち良いなぁ」
「おぅーよ、これで桜咲刹那の件がなけりゃな」
横で、ネギ君とオコジョが空を見上げながら、露天風呂に浸かっている。
「それより大丈夫か、兄ちゃん」
「あぁぁぁ、大丈夫、大丈夫ぅぅぅ」
大丈夫ではあるんだが……あぁぁぁ、力が出ねぇぇぇ。
俺は露天風呂の隅にもたれ掛かって湯に浸かっていた。
「そういえば、加賀美さん、さっきのはどういうことですか? 僕のサポートをするって……」
「どうもこうも、そのままの意味だよ。学園長から少年が関西呪術協会……だっけ? そこに親書を無事に届けることができるようにサポートしてくれって言われたんだよ」
「へぇー」
「そもそも、兄ちゃんって
オコジョの言葉にネギ君が「そうなの?」っと驚いていた。
そういえば、ネギ君には仮契約してることは話してなかったな……。
「オコジョに前に見せた通り、麻帆良にいる魔法使いの一従者だよ」
「その魔法使いって、まさかエヴァンジェリンさん?」
「いやいや、あの人とは色々あって、世話になってるだけ」
「え、じゃあ――」
ふと、脱衣所から聴こえた物音に反応して、ネギ君の言葉は止まった。
ネギ君はその物音がした方へ目を向けたが、俺は体を動かす事すら、しんどく思い、その場に顔を伏せた。
あぁぁぁぁ、ダメだ、水に浸って力が出ない……。
もう、横でネギ君が何やら言っているが、耳に入って来ない。
後ろで何か岩が斬れたような音がしてるけど……もうなんかどうでもいいや。
「あぁぁぁ、もういいや。出よう」
「ひゃああぁぁーーー!!」
「この悲鳴は!?」
「このかお嬢様!!」
「え、お嬢様」
なにやら騒がしいなと思い、やっとの思いで風呂から出ると、ネギ君とサイドポニーの少女が脱衣所へ向かっていた。
「なんだ? ……
ふと、風呂場のさくの向こうにある茂みに“気配”を感じて、俺は隅にある木桶に入れていた仮契約カードを手にして、アーティファクトを取り出した。
「おい、そこで覗いてる変態!」
俺は魔弾の矢を生成し、構えた。すると目の前にある茂みがガサリと揺れる。
逃げようとする“気配”に向けて、俺は矢を放った。
「……チッ」
手ごたえがないな、避けたか?
「
茂みの中の気配を探っていると、俺の横をぬいぐるみチックなお猿の一団が「ウキーーッ」と鳴きながら横切った。続いて、横からサイドポニーの少女――桜咲刹那が横切る。
「神鳴流奥義――百烈桜華斬!!」
「……あ!」
「このかーー」
「このかさん、大丈夫ですかーー」
桜咲の剣技に俺が感嘆としていると、ネギ君と明日菜が脱衣所から出てきた。
ネギ君にアスナ、風呂場で走るなよ……。
てか――
「この露天風呂って混浴だったんだな……」
「このかー、だいじょ――きゃっ!!」
「あぁ~、案の定、ころん――って、え、ちょ、あぶなっ」
明日菜が足を滑らせ、こっちに向かって倒れ込んできた。
その勢いに押され、俺も床に叩きつけられる。
「痛たたぁ~――ん?」
「……良いから、早くどけ」
「ひゃ!!」
うつ伏せに倒れた俺にのる形で倒れ込んだ明日菜が、そそくさと立ち上がった。
「な、なななな、なんであんたがいるのよ、この変態!!」
「グハッ!!」
動揺した早口で言いながら、明日菜は踏みつけ蹴りをかました。
「ッツゥー、男性教員の入浴時間に入って来たお前が悪いだろ」
蹴られた腰をさすり立ち上がりながら俺は呟く。
……まぁ、俺も教員ではないけど。
「うるさい!」
「おっと――あり?」
明日菜の回し蹴りを後ろに下がって躱した俺であるが、足を滑らせて、露天風呂の中に再度倒れ込んだ。
そこそこ大きい水しぶきがザブーンと上がった。
風呂の底に頭を打ちつけ、たんこぶを作った俺は、底に沈んだ状態で気絶した。
「ちょ、か、加賀美さん! 大丈夫ですかぁ!?」
その後、ネギ君によってお湯の中から体を上げてもらい、俺は一命をとりとめたが、危うく、露天風呂で溺死するところであった。
☆☆☆
「3-A防衛隊結成ですよ!関西呪術協会からクラスのみんなを守りましょう!!」
「え、なにその名前」
目が覚めて、目の前でネギ君と明日菜と桜咲が手を合わせるのが見えた。
どうやら俺はロビーのソファで寝かされていたらしい。
「……んーーふぁぁぁ」
「あ、加賀美さん、大丈夫ですか?」
「おぉーす、少年」
俺は背伸びをしながら、返事をした。
「やっと起きたのね」
「気絶させといて、ひでぇ言いぐさだな」
微かに痛む頭をさすりながら、俺は明日菜をジト目で見る。
「……んで、今、どういう状況?」
「それはですね――」
ネギ君は俺が気絶していた最中に話した内容を簡潔に話してくれた。
「――へぇー、関西呪術協会に神鳴流がねぇ」
「はい、そして、桜咲さんも一緒にこのかさんや3-Aの皆さんを守ってくれるそうです」
ネギ君の話を聞き、俺は相槌をうちながら、桜咲へと視線を向ける。すると彼女はコクッと会釈をしてくれた。
「神鳴流って事は……桜咲は、葛葉先生の弟子か何か?」
「え、えぇ、弟子というわけではありませんが、刀子さんには学園に来た際に剣を教えていただきました。加賀美さんは神鳴流についてはご存じなんですか?」
「わけあってちょこっとだけな。お前は
「はい、多少は……しかし、私にはこのかお嬢様を守る使命があるので、こうして修学旅行に同行させてもらいました」
俺は「ふぅーん」と呟き、腕を組んだ。
「じゃあ、俺も頼まれた任を実行しましょうかね」
「はい、敵は今夜も来るかもしれません! 僕、外に見回りに行ってきますね」
「あ、ちょっとネギ――」
ネギ君は外に向かって走って行った。
「いえ、大丈夫ですよ。わたし達は部屋の方を見回りましょう」
「う、うん……あんたはどうするのよ?」
「そうだな……俺も外で見回りしてる」
そうして、俺も旅館の外へと足を進めた。
さぁーて、ここからの最寄り駅ってどこだっけなぁー。
TO BE CONTINUED ...
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
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