もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
15. 仲良きことは美しき...かな?
「ノックして、もしもぉーし」
作りの立派な目の前の扉を三回叩き、俺は中に入った。
「俺、呼ばれました?」
「おぉ、加賀美君」
中ではこの部屋の主たる学園長が自分のデスクでペンを走らせていた。俺が部屋へ入ると学園長はペンを置き、デスクの前に立つように手招きする。
「何ですか?」
「ふむ、今回呼んだのは数日後にある修学旅行のことでのぅ……」
学園長はそう言って話を切り出した。
「加賀美君は関西呪術協会の事は知っておるかの?」
「えぇ、
語尾を濁して言うと、学園長は「うむ」と肯定した。
「実は今回、ネギ君に親書を持たせて、その関西呪術協会との和解をするように頼んだのじゃが、十中八九先方から何らかの妨害がある。君にはネギ君が無事に新書を届けられるようサポートをしてもらいたいのじゃが、頼めるかのぅ」
「えぇ、別に構いませんけど、いくつか訊いていいですか?」
学園長は頷き、机に肘をついて手を組んだ。
「まず、ネギ君をサポートするのは観光地を巡る最中だけで良いんですか? 俺のクラスの旅行先も京都・奈良で、まわる場所も一緒ですから、その時にはサポートできますけど、確か旅館は男女で別の所に泊まることになってるんで、ネギ君が旅館の中にいる時はフォローできないんですけど……」
「本来はそうじゃのぅ。しかし、今回は特例でクラス別に旅館を振り分けた。君のクラスとネギ君のクラスは同じ旅館じゃから、その点は大丈夫じゃ」
ん?
……振り分け“た”?
過去形?
てことは、俺に拒否権なかったんじゃねぇか。
俺は眉間にピクッとさせながらも、「まぁいいや」と話を続けた。
「先方の妨害がって言いましたけど、相手に能力者は?」
「多分おらんじゃろう。悪魔の実の能力者自体、珍しいモノじゃし、先方の考えや風潮的にも能力者を協会に所属させているとは考えにくい」
本当か?
……まぁ、とりあえずはそう信じよう。
「次に、向こうは認知阻害結界の外ですけど、大丈夫なんですか? ネギ君が引率してたら間違いなく、一般人から不審に思われると思いますけど」
「うむ、その点も特に問題はない。ネギ君の他にも魔法先生を同行させておるから、その人に移動型簡易認知阻害魔法を使ってもらい、一般生徒の警護もしてもらうつもりじゃ」
「魔法先生を? ……あぁ、葛葉先生ですか」
「いや、葛葉君は神鳴流剣士ということもあって向こうへ同行することはできんからの。彼女には出張を理由に修学旅行は欠席してもらう」
担任の先生がいない修学旅行とは……斬新だな。
「では、誰が?」
「瀬流彦君じゃ、知っとるかのう?」
「えぇ、顔くらいは……けど良いんですか? ネギ君は特使として扱うから仕方ないんでしょうけど、西洋魔術師がもう一人いたら相手方も嫌がるんじゃ……」
魔法生徒を含めば、見習いとはいえ美空もいれて西洋魔術師二人だけどな。
「良いか悪いか言えば、良くはないの。だから彼にはあまり目立つことはしないように言ってある」
つまりその人にネギ君のサポートを頼むことは出来ないってことか……。
「わかりました。修学旅行中は色々と気にかけておきます」
「ふむ……」
頷く学園長の顔を見ると、なにやら深刻そうな顔色をしていた。
俺はその表情の原因に察しがついた。
「……ついでにこのかにも目を配らせておきますよ」
「ほっほっほ、言わずともバレておったか」
「顔に『木乃香、心配』って書いてありますよ」
コロッと表情を変え、陽気に笑いながら「流石じゃのぅ」と言う学園長を見て、俺は溜息をついた。
……ホント、
☆☆☆
月日は流れ、修学旅行が明後日に迫った今日。
まだそんなに日が昇っていない午前中ではあるが、休日という事もあり、大勢の人が東京の街並みを行きかっていた。
「う~ん……こっちの帽子なんてどうですか?」
「オジサン臭いな。身につけるのはオジ好きとはいえ女子中学生だぞ」
「では、この美顔器など……」
「アイツは美容とか興味なさそうだけどな」
「やはり、食べ物のほうが良いかもしれませんね」
今、俺は数日前に暴走した雪女こと雪広あやかと共に銀座にある雑貨店に来ていた。目的は明日が誕生日である明日菜の為に誕生日プレゼントを購入することで、発案者は隣で店頭に並んでいる雑貨商品を見ている雪広である。
なんでも春休みの時に明日菜に気を遣わせたためにその御礼にとのこと。俺はその付き添いとして呼ばれた。
「参考までに店員さんにオススメを訊いてみたらどうだ?」
「確かに、このまま考え続けても埒が明きませんね」
記憶処理をしたこともあり、彼女は先日の一件を忘れているわけだが、この場でそのことを暴露すれば、どうなるのか反応が見てみたい気もする。
だが、そんなことをすれば、絶対に俺が疲れる羽目になる。だからそんな馬鹿なことはしない。
俺は店員に話しかけようとしている雪広について行った。
因みに、俺達は朝から、ここ銀座にある色々な店を巡っているが、この店は十店目だったりする。
「あのー、すみません」
「はい、いらっしゃいませ」
「誕生日プレゼントに何かないかと探しているのですが……」
「はい、かしこまりました。彼氏さんのですか?」
「「違います」」
俺を手で示しながら言った店員さんの言葉を、俺と雪広は見事に二人揃って否定した。
というのも、この質問、本日で5回目である。雪広も最初は顔を赤くして動揺しながら否定していたが、5回目ともなると、慣れたものである。
店員さんは「し、失礼しました」と頭を下げた。
「クラスメイトにあげるものなのですが、なにか良いのはありますか?」
「はい、少々お待ちください」
雪広が訊ねると、店員さんは商品を探す為、一度別の商品棚へ向かった。
「なんでこうも勘違いされるんでしょう」
「そりゃあ、同い年の男女が二人でいたら、カップルって思われても仕方ないんじゃね?」
「……納得いきませんわ」
「世の中そんなモノだ」
コイツは案外、箱入り娘な所がある。もっと世の中を知るべきだ。
「てか、そもそも何で俺なんだよ。他のクラスメイトでもよかっただろ? そうすればこんな勘違いされることもなかっただろうに……」
「皆さん、修学旅行の前ということで準備に忙しいらしく、私が声をかけた皆さんには全て断られてしまいましたんですの。あなたに声をかけたのは本当に、ほ・ん・と・う・に、仕方なくです」
「……そうですか」
女子生徒は自由行動日に着る服装とかに気合を入れるだろうから準備に時間が掛かるんだろうな。
対称的に男子生徒は女子と比べて服には拘らないから準備もすんなりと終わる。俺もすでに終わらせているグループの一人だ。
「お待たせしました」
店員さんに連れられ、俺達はとあるコーナーの棚の前まで案内された。
「最近ではプレゼントにと、こちらの紅茶など人気ですよ」
そこには缶に入れられた様々な種類の紅茶の茶葉が置かれていた。
雪広が案内してくれた店員さんに「どうもありがとうございます」と礼をいうと、店員さんは一礼した後、業務に戻った。
棚に並ぶ商品を色々と見定めながら、雪広は顎に手を当てた。
「お紅茶ですか……しかしこれならここで買うより、家で取り寄せた方が良いですわね」
どうやら雪広の眼鏡にかなうような紅茶はないらしい。
コイツは普段からもっと上物の奴を飲みなれているから、ここにある奴では満足しないのだろう。
「……これだから金持ちは」
俺はヤレヤレと手を上げて、身を翻し、反対側にあった棚に目を向けた。
そして、ふとその棚に置かれた商品に目が止まった。
「……なぁ、これなんてどうだ?」
「え?」
俺が声をかけると、雪広も反対の棚に目を向けた。
棚には、色様々なマグカップが並んでいる。
「マグカップですか……確かに日常的に使うことができて良いかもしれませんわね」
「デザインも色々あるしな、これなんて保温機能付きだってよ」
目の前にある沢山のマグカップを俺達はどれが良いかと見定めた。
やがて雪広が端にある商品を手に取った。
「あら、これなんてどうですか?」
「ん? ……おぉ、良いんじゃねぇ」
俺は雪広が手に取ったマグカップを見て、素直な感想を言った。
それは、明日菜の髪色と同じような明るいオレンジ色で適度な大きさのマグカップであった。しかも、側面にはAの形を描いたような赤いラインが入っている。
「……えぇ、これが良いですわ」
雪広も今度は気に入ったようで、そのマグカップをレジに持っていき購入した。もちろん、レジの人に頼んでプレゼント用に包装してもらっている。
俺達はレジの店員さんに「ありがとうございました」と礼をいわれて、その店を後にした。
☆☆☆
目的の物を購入して、俺と雪広は帰る為に麻帆良へと足を進めていた。
「あなたは何か渡したりしないのですか?」
「あぁ、特に考えてないな」
片手に先程の雑貨店の名前が書いてある紙袋をぶら下げながら、雪広は訊ねてきた。
「冷たいですわねぇ」
「そうはいうけどさぁ……じゃあ、お前、自分の誕生日に俺からいきなり『誕生日おめでとう!!』って言われてプレゼントもらったら、どう思うよ?」
「不審に思いますわね」
「………」
雪広は即答した。
自分から言っておいてなんだが、傷つくぞ。
「……まぁでも、確かに一度くらいなら渡すのもありかねぇ」
俺はそう言いながら、顎に手をあて考えた。
「高畑先生でもリボンで
「折角、渡すのなら、もっと真面目に考えてはいかがですか?」
「冗談だよ……ん?」
ふと俺は足を止めて、そこから見えたとある店に目をやった。
「う~ん……お!」
「どうしました?」
俺が足を止めた事に気づいた雪広は、振り向きながら訊ねてきたが、俺は構わずその店の前へと足を運んだ。
「……これなんて良いんじゃないか?」
「ん? ……あなたは、また」
指差した店頭に並ぶ商品を見て、雪広はヤレヤレと頭に手を当て、首を横に振った。
☆☆☆
「本当にいいのですか?」
「まぁ、あまり高価なモノでもないし、大丈夫だろ」
「いえ、私が訊いてるのはそういうわけじゃ……もういいですわ」
雪広は俺が手に持った紙袋を見て、ヤレヤレと肩をすくめる。その中には『Happy Birthday‼ By 毒舌指導委員』と書かれた袋状の包みが一つ。
「しかし、買ったは良いがどうやって渡すかな……」
「アナタの場合、渡すと同時に、下手をすればケンカになりそうですが……」
「まぁ、それもあるが。俺の場合、明日渡すとすれば、女子寮にまで行かなきゃならんからな」
「……はぁ、では私が渡してあげましょうか?」
「お、良いのか?」
「えぇ、どうせ、ついでですから」
俺は手に持っていた紙袋から包みを取り出し、雪広へ渡した。雪広はそれを自分の紙袋の中へと入れる。
「サンキュ、悪いな」
「いえ、お気になさらず」
☆☆☆
「では、今日はありがとうございました」
「おぅ、じゃあな」
麻帆良学園に帰って来た俺達は、寮の近くの駅にて、それぞれ自分達の寮へと帰って行った。
しかし、途中、昼時ということもあり、俺は昼食をとる為に駅の目の前にあるファーストフード店へと入った。
店内で軽く昼食を食べ、男子寮へ帰ろうと足を進めると、店から出て数分としない内に、俺は後ろから来た何者かから勢いよく後ろ襟を掴まれた。
「ウグッ!! な、なんだ!?」
「とりあえずアナタも来なさい!」
「ちょっと、いいんちょ、落ち着きなさいよ!」
後ろと横から聴こえた声に反応し目を向けると、そこには先程別れた雪広と明日菜の姿が……。
……というか、今はそれより!!
「絞まっでる!!
凄い勢いで走る雪広に後ろ襟を掴まれながら、俺は駆け込み乗車で強制的に電車に乗せられた。
「ゲホッゲホッ! 何なんだよ!?」
走り出した電車内で呼吸を整えながら、俺は雪広と明日菜に現状説明を要求した。
事情を聞くと、何でも原宿でネギ君と木乃香が二人っきりで買い物をしているのをチアリーダーの三人が目撃したらしい。その様子を撮った写真が明日菜の携帯に送られ、それを見た雪広が現在暴走しており、現場へ急行しているとのこと……。
「まぁ、雪広のことだし、ネギ君とこのかのデートと聴いて、その場へ向かおうと考えるのは分からなくはない……けど、なんでアスナと俺まで?」
「知らないわよ」
明日菜に訊くが答えが分からず、当の本人へ訊こうとするも、本人は電車のドアに寄りかかり、手を組んでつま先だけを動かして足踏みしていた。見るからに『私、イライラしてますわ』ってオーラが発されていて、とても訊ける雰囲気ではない。
というか、紙袋を手に持っている辺り、コイツは寮に帰り着いてすぐに飛び出したのだろうか?
「はぁ……なんもいえねぇ」
先程までの雪広の様に、今度は俺がヤレヤレと首を横に振った。
「このかさんといえどネギ先生に手を出すなんて、絶対に許せませんわ」
「だから、このかに限って、そんなことないって」
「けど、このか姉ちゃん、カード目当てに兄貴を連れ出したのかもしれませんぜ?」
「そんで、ネギに無理矢理キスしようっての? このかに限ってそんな……」
肩に乗っているオコジョと小声で話しながら、明日菜は「う~ん」と顎に手を当て考え込んだ。
「……アスナお前、そのオコジョって」
「えっ!? あ、あぁ、コイツはネギのペットよ」
明日菜が肩を少し前に出すと、白いオコジョはヒョイッと前に手を上げた。
ふと明日菜は何か思い出したように俺に小声で訊ねてきた。
「そういえば、アンタって何なの? この前の話じゃ、魔法使いじゃないって言ってたけど、魔法のことは知ってるみたいじゃない」
「あぁ、まぁな……魔法は使えないけど」
明日菜の質問に、俺は懐から一枚のカードを取り出して答えた。明日菜とオコジョはそれを見て目を見張る。二人が見たのを確認した俺は、すぐにカードをしまった。
「仮契約カードじゃねぇっすか!?」
「アンタも魔法使いと?」
「まぁね」
明日菜とオコジョの声が少し大きくなるが、逆に俺は声を低くして答えた。
「一体いつからよ?」
「結構、前からな……詳しくはまた今度な」
小声で話してはいるが、あまり公の場で話す内容では無いので、俺は話を区切った。
時が経ち、車掌が次の停車駅、原宿に着くことをアナウンスした。
☆☆☆
日が傾き、空が夕日によって橙色に染まった頃。
「あ、いた」
視線の先にいた木乃香を見つけ、雪広と明日菜、俺はダッシュで駆け寄った。傍にある茂みの中からは、何故かチアガールの三人が転がり出てきている。
「あ、皆そろって、こんな所でどないしたん?」
「な、このかさん!! ネギ先生に膝枕など……」
「このか、あんたホントに」
雪広は「私がしたいですわぁぁーー!!」と欲望丸出しな言葉を器用に小声で叫びながら、目の前の木乃香を指差した。
「あちゃーー、バレてたんかな?」
「んー……あら、皆さん、なんで! アスナさんも」
木乃香がそう呟くと、タイミングよく、ネギ君が目を覚ました。ネギ君は周りにいる明日菜やチアガールズ達を見て、驚きながら立ち上がる。
「ネギ君、なんやバレてたみたいやで」
「えぇ!! そんなぁ。驚かそうと思ったのに」
「バ、バレたって……」
「じゃあやっぱり……」
雪広と明日菜は顔を赤くして呆然とした目で二人を見た。
しかし、当の二人は「しゃーないな」「ホントは一日早いけど」とネギ君は四角い箱状の包みを取り出した。
「はい、アスナさん、お誕生日おめでとうございます」
「………」
「……へ?」
ネギ君は両手で持ったソレを、明日菜へ手渡した。明日菜はそれを見て驚き、キョトンとしている。雪広とチアガールズ達を見ると、彼女達も目を点にしていた。
「明日はアスナさんの誕生日なんですよね? 実は僕たち、朝からずっとアスナさんの誕生日プレゼントを選んでたんですよ」
「ホントは明日渡すはずやったんやけどな」
ネギ君と木乃香がそういうと、チアガールズ達は「あ、そういえば私達からも!」「おめでとう、アスナ!!」と手に持った箱や紙袋を手渡した。
「ありがとう……ネギ、このか、みんな……わたし、うれしいっ」
明日菜は目を潤ませながら、そう呟いた。
それを見て、ネギ君と木乃香は「良かった」とにっこりと笑った。対して、チアガールズ達は手に持ったプレゼントを渡し終ると、忍び足でフェードアウトしようとしている。だが、雪広が「あなた達」とギロリと睨むと、彼女たちはピクッと体を震わせ、足を止めた。
「いやぁー、ごめんね、いいんちょー」
「なんか勘違いだったみたい……えへへ」
「勘違いじゃありませんわ、まったくあなた達はいつも人騒がせなことをして!!」
「いいんちょだって、変な命令出してたじゃん!!」
チアガールズ達がその場から逃げ出そうとしているのを、雪広が追いかけようとするが、俺は「おい、雪広」と後ろ首を掴んでその動きを止めた。
雪広の鋭い視線がチアガールズから俺へと向けられる。
「なんですか!?」
「ほら、お前も……」
「え……あぁ」
俺が明日菜を顎でクイッと指すと、雪広は思い出したように自分の手に持った紙袋を見た。
「……ア、アスナさん」
「え、なに?」
「あ、あの、えぇーとですね……」
明日菜や後ろにいるネギ君と木乃香も、なんだろうと、こちらを見る。
雪広は顔を赤くし「こ、これを」と言って、手に持った紙袋を渡した。
渡された明日菜は、意外な人物からのプレゼントに驚いたのか「えっ」と声を漏らして驚いた。
「べ、別に深い意味はないですが、アスナさんには春休みに御世話になりましたから、そのお礼というか…」
「えっ!? ……あ、あぁ! アレは別に……」
お互いに照れながらも、明日菜は素直に「ありがとう」といって受け取った。明日菜は受け取った紙袋の中を見る。
「変なモノじゃないでしょうね……」
「失礼ですわね、ちゃんと考えて選んだモノですわ」
「それを選ぶまでに、いくつ店を回ったか」
「えっ!?」
俺の呟きを聞き、明日菜はまた意外そうな声をあげた。
まぁ、朝からさっきまで買い物をしていたネギ君達と比べると、回った店の数は少ないだろうが、それでも、“雪広がアスナの為に”というのを考えると、結構多いと思う。
「んで、いいんちょは何を選んだん?」
「そうね、開けてみても良いかしら?」
「……えぇ、どうぞ」
照れくさそうにしながらも、雪広は了承した。明日菜は紙袋の中から四角い包みと袋状の包みを取り出す。
「二つも?」
「いえ、そっちの袋のモノは、この人からですわ」
「え! あんたからも!?」
「……まぁねぇ、ついでだ、ついで」
俺は目を逸らしながらも、頬をポリポリと指でなぞりながら答えた。
明日菜はまた意外そうな顔をしながらも、手にもった四角い包みを開けた。中からは、勿論、昼間に見つけたオレンジ色のマグカップが出てきた。
「……本当にまともなプレゼントね」
「だから、そう言ったでしょうに……」
互いに目を逸らしながら、二人は言った。明日菜は今にも泣き出しそうで、目の端には涙が溜まっている。
「……あ、ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」
照れくさそうにお礼を言うアスナに、雪広は微笑みながら応えた。
「折角だからあんたのも開けて良い?」
「どうぞー」
気を取り直して訊いてきた明日菜は、袋状の包みを持って俺に訊いた。
少し離れた位置にいた俺は、やや大きな声で返事をした。
「……なにこれ?」
袋から取り出したものを見て、明日菜は目を点にした。
「なにって、ぬいぐるみ」
「それは分かるわよ」
「しかも、それ、手にマグネットついてるから、ベットの柱とかにつけておける代物だぞ」
「そんな事はどうでもいいのよ! なんで、“サル”のぬいぐるみなのよ」
「ちょうど店頭にあったのがそれだっただけだよ。特に深い意味は……すこしあるよ」
「あるんかい! ……まぁ、いいわ。とにかく、ありがと」
なんだか納得していないような表情ではあったが、明日菜は渋々ながらも礼を言った。
「……くまの方が良かったかねぇ」
「なんでよ」
「なんでって、そりゃ……いや、なんでもない」
「えっ、なんで総くん、アスナがくまパンはいとるの、知っとるん?」
「え!!」
「な! ななな……!!」
木乃香の言葉に明日菜と雪広、チアガールズ達は顔を赤くして、俺を見た。
「加賀美さん! どういうことですか!?」
「え、いや、どうもこうも――」
「あんた、まさか……」
「まさかって何!? なにもしてねぇよ!」
顔を赤くして、迫ってくる二人に恐れを抱きつつ、俺は後退りする。
「じゃあ、なんで逃げるのよ!」
「お前らが怖いんだよ!」
「何か後ろめたい事があるのではないですこと!?」
「なんもねぇよ!! てか、なんで二人共そんなドス黒オーラで詰め寄ってくんだよ!! 怖ぇよマジでッ!!」
何も悪い事してないのに、さっきから恐怖で冷や汗が止まらない。
「まさか……あんた、覗きとかしてないでしょうね!?」
「してねぇって言ってんだろ!!」
「じゃあ、逃げるな!」
「じゃあ、お前もそんな邪悪なオーラ出して迫ってくんじゃねえよーー!!」
「あっ、逃げた!」
「コラーーッ、待ちなさーーいッ!!」
あまりの二人の怖さに、ついに俺は二人から背を向けて、脱兎の如く逃げ出した。
俺が逃げ出したことで二人の疑いは更に深まり、二人はまるで生け捕り、処刑するかのような勢いで追いかけてきた。
ホント、なんにもしてねぇんだってぇーー!!
☆☆☆
残されたネギと木乃香、チアガールズ達は走り出した三人を見て、苦笑いしていた。
しかし、ふと木乃香は明日菜が置いていったサルのぬいぐるみにスポーツタオルが結ばれているのに気がついた。
なんだろう、と木乃香はそのタオルを解き、そこに書いてあるものを見た。
「ははは」
木乃香はそれを見て、思わず笑みをこぼす。
「どうしたんですか、このかさん」
「総くん、こっちがホントのプレゼントやったんやろうなぁ」
「えっ? ……あぁ」
木乃香はタオルを広げて、ネギとチアガールズ達に見せた。
ネギはそれを見て、少し目を見張った後、はははと微笑む。
「なになに?」
「なんて書いてあるの、これ?」
「ねぇねぇ、ネギ君教えてよ」
タオルに書かれた英語が読めず、チアガールズ三人はどういう意味なのか、ネギに訊いた。ネギは「これはですね――」と、タオルに書かれた英語を読み上げた。
そこに書かれていた文字は――
『I wish that this friendship continues all the time...』
そして、その意味は――
「コラーーッ、待ちなさーーい!!」
「加賀美さん!! 素直に捕まって白状なさい!!」
「なんでだーー! 俺はなにもしてねぇーー!!」
――この友情が、ずっと続きますように...
TO BE CONTINUED ...
それでも、総一はやってない……。
さて、こんな拙いモノを読んでくださっている読者様、おはよう、こんにちは、こんばんは、そして、さよなら。
はてさて、次回からやっとこさ修学旅行編に突入ですが、作者が書きたいのは――おもしろくなるかどうかは別の話ですが――学園祭編だったりします。
まぁ、だからなんだって事もないのですが……
肩の力を抜いて読んでいただけたら、うれしく思います。
では、『待て、次回』
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
-
ネギ・スプリングフィールド
-
神楽坂 明日菜
-
雪広 あやか
-
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
-
超 鈴音