ワンパンマン ー My only partner ー 〜更新一時停止〜   作:シドー@カス虫

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ジェノスはチバさんて呼びます。サイタマの特訓を真似したとのことで兄弟子みたいな認識です。

普段の倍近い量になった……
オリジナル大変だよ(/ _ ; )


07 Emotion

一昔前に一人の若き天才科学者がいた

彼は圧倒的な知力を生かし世界中に様々な貢献をしてきた

 

しかし 彼は世界に失望した

 

人々は彼の天才的頭脳には賞賛の言葉を惜しまなかった

しかし 彼が常日頃吐き出す思想について認める者は誰一人いなかった

『人類の文明』 ではなく

 

『人類という種の人工的進化』

 

それが彼の実現させたい唯一の夢であったが協力しようとするものは出てこなかった

 

幼少の頃から彼は人間の能力の低さに疑問を抱いていた

自分以外の人間が頭の悪い動物にしか見えなかった

それが彼には苦痛だった

 

70歳を超えてから彼の計画は加速し始めた

まず彼は若さを手に入れた

次に自分のクローンを作り出した

そしてクローン達と共に数え切れないほどの動物実験を繰り返し やがて実験の対象は人間となった

 

彼は自分達の研究所を『進化の家』と名付け 実験によって多くの新たなる種を生み出した……

 

 

 

 

 

「話が長い!俺に関係ないだろ!要点を言え要点を‼︎」

 

「先生は忙しいんだ。20文字以内で簡潔にまとめろ!」

 

「す、すいません。え〜つまりですね。 我々のボスがお二人の体に興味を持ったようです」

 

ちょっと文字数オーバー。

 

「俺オトコに興味ねーぞ」

 

「違うよサイタマ……サイタマの超パワーを進化の研究に利用しようと企んでるんだよ」

 

「チバさんのパワーもです。放っておけば新たな刺客がくると思われます」

 

ジェノス曰く、噂では新世界の到来を唱える排他的な宗教団体とのことだが、モスキート娘や今回の刺客、博士についての話からもっと危ない事をしてるのは明白だ。

 

「こいつらを野放しにする訳にもいかないし今度はこっちから攻め込みましょう‼︎」

 

「どうするサイタマ?俺は行きたいんだけど」

 

「ん〜〜今日スーパーの特売日だからな〜。でも天井は直してほしいし…」

 

「じゃあ俺が博士さんに直すよう伝えるよ。その代わり買い物終わったら助太刀に来てね」

 

「おk。早速買い物行ってくる」

 

「じゃあジェノス君、俺たちは進化の家に行くか」

 

「は、はぁ…」

 

 

 

 

* * *

 

とある山奥

ここには進化の家と呼ばれる研究所がある。

ここの創始者 ジーナス博士は絶望で震えていた。

 

「ば、馬鹿な‼︎選りすぐりの精鋭戦力が全滅だと‼︎」

 

「通信によるとハゲ頭以外の二人がこちらに攻め込んでくるようです」 「奴らが来ればこれまでの研究成果が破壊されかねません」 「……これは一大事かと」

 

ジーナス博士のクローンたちが言う通り、二人が来るのも時間の問題だ。

 

「………ヤツを 切り札を使う………しか」

 

 

ーー阿修羅カブトを 解き放つ

 

ーー失敗した時は 私がどうなるか理解してる……

 

 

 

* * *

 

4時間後

チバとジェノスは山の中を走っていた。超スピードで。

 

「てっきりお二人なら空も飛べるものかと」

 

「俺たち一応人間だから」

 

「いつもよく徒歩で間に合ってますね」

 

「間に合ってないから。それに俺は人助けではあまり活動してないし」

 

「そうですか。あと先ほどから気になってたんですが、そのバッグは何ですか?」

 

そう、チバは何故か細長いバッグを背負っているのだ。

 

「あぁコレ?秘密兵器」

 

 

 

「着きました。ゴリラの言っていたポイントです」

 

「ここみたいだね」

 

「焼却」 「へっ⁈」

 

 

進化の家は到着わずか10秒で瓦礫の山になった。

 

「ジェノス君、早すぎない?」

 

「はい?これが一番効率がいいと判断したのですが」

 

「……相手も準備しただろうに。お気の毒に」

 

実際、フロアの全8Fには大量の罠が仕掛けられてあり、死にはせずとも時間はかかっただろう。

 

「あれ?地下への蓋だ」

 

 

 

「地下、広いね」

 

進化の家の地下は、破壊した建物よりも相当広い構造のようだ。

 

「 ! チバさん!2体の生体反応が近づいてきます」

 

「……よし わかった」

 

ジェノスが示す方の通路を見ると、一体の大男が近づいてきていた。

4m近い巨体。カブトムシに近い姿。こいつが進化の家の切り札『阿修羅カブト』だ。

どういう訳か、阿修羅カブトは怪我をしたジーナス博士を摘まみながら迫っている。

 

「ロボ野郎、テメェに用はねぇ‼︎」

 

ジェノスは猛スピードで間合いを詰められ、反応する前に壁に叩きつけられた。

 

「俺は阿修羅カブトってんだ。チバっつったか、戦闘実験用ルームがあるからよぉ そこでやろうぜ〜」

 

「…あんたがここの最高戦力か。上等だ‼︎」

 

 

 

 

「ジェノス君はこの博士を見張っててくれ。そのダメージじゃ戦えないだろうし」

 

「ですが奴を相手に1人で‼︎」

 

「大丈夫。ジェノスはサイタマの弟子になるんだろ、兄弟子ポジの俺を信用しな」

 

博士のことはジェノスに任せ、臨戦態勢に入る。

 

「準備は出来たか〜?」

 

ーーんじゃ 殺し合いますか

 

 

2人は歩を進め、互いの距離は縮まる。

一歩、一歩……

 

やがて2人の距離が5mにまで近づくと………

 

 

 

* * *

 

2人は、己の拳をぶつけ合った。

 

衝撃

空気が震え、今まで抑えてた2人の殺気が噴き出し極端に重くなる。

 

「やるじゃねえか」

 

「そっちこそね!」

 

阿修羅カブトが腕を振り下ろす。チバは距離を取ったが、叩かれた床は砕けクレーターができる。阿修羅カブトのパワーを暴力的なまでに物語っている。

 

すぐに阿修羅カブトはチバに拳を叩き込む。

チバは紙一重で躱し、目の前に伸びてきた膝の部分を、膝と肘で勢いよく挟み潰す。

 

 

「止まってんじゃねえよ‼︎」

 

だが阿修羅カブトの頑丈な甲殻が少し凹むだけで、攻撃で止まった所に阿修羅カブトは腕を薙ぎ払い、チバは数十m先の壁に吹き飛ばされる。

 

 

「俺の甲殻にキズをつけたのは褒めてやる。まだ足りねえけどな」

 

「……だったら、もっと強くするだけだ」

 

 

阿修羅カブトに迫るチバ。阿修羅カブトは迎え撃とうとするが、

刹那 チバの姿が消えた。

 

 

「なっ⁈消えボゴッ‼︎」

 

 

チバは腹に腰の捻りを加えた鋭い肝臓打ちを放った。

 

チバは縮地と呼ばれる技術を使っていた。

ーー縮地とは瞬時に間合いを詰めたり、死角に入り込む技術だが、チバ流の縮地は相手のタイミングを読んで近づくやり方だ。チバは阿修羅カブトが瞬きをして視覚が塞がった瞬間にスピードを上げて近づいたのだ。

ただしチバとはいえこのやり方の縮地は相手との間合いが狭くなければ上手くいかないが。

 

 

 

それでも相手にとってはチバが瞬時に消えてるように見え、次の攻撃に反応できない。阿修羅カブトといえど動体視力の通じない技術で迫られ攻撃を受ける回数が増えていく。

だが……

 

 

「…パワーが足りない」

 

そう、致命傷が与えられないのだ。

甲殻は傷つき、衝撃でダメージは与えられてるが、致命傷には至らない。

それに比べチバは硬い甲殻がある訳ではない。1発ごとに受けるダメージはチバの方が大きく、下手に長期戦になったらチバの方が分が悪い。

 

 

「だったら、やり方を変えるか!ジェノス君、例のバッグを!」

 

「はい!」

 

 

ジェノスは預かっていたバッグを投げ、それから中身を取り出す。

取り出したのは 剣だ。岩で作られ、刀身部分は淡く光っている。

これがチバの秘密兵器 地底王の剣だ。

 

 

「まずは燃やす‼︎」

 

かつて地底王が無人街で放った熱線をぶつける。

阿修羅カブトはその熱線を息で跳ね返す。

 

 

「やっぱ物理が一番か‼︎」

 

側面に周り剣を叩きつけるチバ。

だが、阿修羅カブトは腕でそれを受け止める。とうとう縮地を理解し対応できるようになったのだ。

 

 

「やっと動きが見えてきたぜ」

 

「この短時間で対応するのはスゴイよ。でも……」

 

ーー俺も やっと届いた

 

叩きつけた腕の甲殻にヒビが入った。

岩石という性質上切るより叩くという使い方だが、甲殻等が硬い敵には有効な攻撃方法だ。チバの攻撃がやっと効いてきた。

 

 

「「……ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」」

 

チバは技術で鋭くした攻撃を、阿修羅カブトはパワーを込めた重い攻撃をぶつける。

 

2人の戦いは熾烈を極めた

 

 

 

* * *

 

「ずおりゃぁあああああ‼︎」

 

チバが剣で突く。息を吸うタイミングを狙い口に狙いを定める。

阿修羅カブトはその剣を噛み砕いた。

 

「歯ぁ食いしばれ‼︎」

 

阿修羅カブトが噛み締めているところに膝蹴りをかます。

 

 

 

「プッ……歯が何本か欠けたじゃぁねえか」

 

「こっちは大事な剣のが壊れたんだ。そんなんじゃ足りないよ」

 

阿修羅カブトは甲殻のいたる所にヒビが入り、チバはいたる所に打撲痕がある。

2人の肉体は満身創痍だ。 が、阿修羅カブトの顔から自信のある笑みは消えてない。

 

 

 

 

「テメェを殺す前に一つ 聞きたい」

 

「なんだよ、闘いはまだ終わってねえだろ」

 

「……その力 どうやって手に入れた?」

 

「………そうだな」

 

ーー俺は 手を伸ばしてるんだ。

 

最初は強くなる気は無かった。

でも、サイタマは日に日に強くなった。分け隔てなく手の届く人を助けた。

その姿が俺にはヒーローに見えた。

でも、怖くも感じた。

サイタマが一人でどこかに行ってしまう気がした。

いつか強すぎる力に恐怖を感じるかもしれない、それが怖くてしょうがない。

だから必死で特訓した。今も続けてるし、あらゆる戦いの技術を学んだ。これからもそれは変わらない。

 

俺は、サイタマの背中を見失わないために強くなった。そしてこれからも。

目の前に確かにある目標が、俺を強くしてくれる。

 

 

 

「お前には、形ある目標なんて…な………」

 

チバの意識が薄れ、後ろに倒れる。

 

「ナイスファイト」

 

倒れるチバを受け止める男、サイタマが買い物を終えやってきたのだ。

 

「前より強くなったな」

 

「まだ まだ足りないよ。いつか、サイタマと肩を並べるには……」

 

「おう いつでも待ってるぞ」

 

 

 

 

 

「目標だあ?背中を見失わないだあ?バカバカしいんだよ‼︎そんなつまらないもん、全部ぶっ壊してやる‼︎」

 

「や、やめろ阿修羅カブト!また暴走する気か‼︎」

 

ジーナス博士の制止を無視し、阿修羅カブトはその姿を更に悍ましく変える。

 

 

『阿修羅モード』

 

身体が倍以上に大きくなり、全身が青く変色する。

1週間殺戮を尽くすこの姿こそ阿修羅カブトの最強最悪の切り札だ。

 

 

「俺を笑わせんなよヴァァァァカ!だったらその目標とか言うハゲをブッ殺して、全部台無しにしてやる‼︎」

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す‼︎

 

 

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死ィィ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑うな」

 

阿修羅カブトの拳をサイタマは片腕、いや 人差し指だけで受け止める。

 

 

「なっ‼︎バ、バカな‼︎」

 

「チバは、本気で強くなろうとしてるんだ‼︎お前がそれをバカにする権利なんかねぇんだよ‼︎」

 

 

サイタマは、趣味でも本気でヒーローをやってる。だから、本気で強くなろうとしてるチバの気持ちも理解できた。

 

 

「男が本気で目指してる夢を お前なんかが‼︎」

 

 

 

 

 

笑ってんじゃねえ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

「歩けるかチバ?」

 

「うん、なんとか」

 

「チバさん 肩貸します」

 

闘いは終わった。

サイタマの拳に暴走した阿修羅カブトは倒れ伏した。上半身が消し飛んだ。

 

壮絶な死闘をした2人が可愛く見えるほど、圧倒的な力だった。

 

 

「博士、俺ん家の天井ちゃんと直せよ」

 

「…………………コクンッ」

 

「じゃあ 帰るか」

 

サイタマの拳の余波で穿たれた穴から帰る3人。

その姿を虚ろな表情で見つめるジーナス博士。

 

 

 

ーーもうやめよう、こんな研究は

…………私が変わるべきなんだ。

 

 




以前指摘されたような チバの力の理由として納得出来るかはわかりません。

でも、人間にとって大切なのは『目標』だと俺は思ってます。
目標があるからそれに向かって前に進める。

三年前にサイタマが本気でヒーローを目指した熱い心、目標に向かって全力で手を伸ばし掴もうとする意思。

その強い思いがチバにもあるから 本気でサイタマの背中を見失わないよう、全力で手を伸ばす。


目標と、本気で目指す強い思いがあるから チバは充分人外の力を手に入れたと考えてます。

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