ワンパンマン ー My only partner ー 〜更新一時停止〜 作:シドー@カス虫
長いと思ったのは気のせいだった
「蚊の異常発生か〜、Z市もいるみたいだし気を付けないとね」
「だな」
サイタマとチバはゴロゴロしながらテレビを見てた。チバは執筆と睡眠以外は基本隣のサイタマの部屋に来てる。
どうやら新種の蚊の大量繁殖が世間で問題になってるらしい。Z市の家畜もミイラ化してしまったようだ。
「サイタマ、蚊取り線香ある?」
「ない」
「ウヘェ、じゃあ買ってくるよ」
「サンキュな」
* * *
「ありゃりゃ、みんなシェルターに入っちゃったのか」
A〜Z市の住民はヒーロー協会の呼びかけで近場のシェルターに逃げることがある。
シェルターに逃げるということはそれだけ外が危険ということ。今回の蚊の大量発生もそれだけ深刻というわけだ。
「どうしよう、店みんな閉まっちゃってるしな〜……ん?」
ーー遠くから爆発音。誰かが戦闘をしている。
「……せっかく外に出たしヒーローに取材でもするか」
チバは常に携帯してるメモ帳を取り出し、爆発音がした場所に向かった。
* * *
3分ほど前
後に爆発音が聞こえる場所には、一体の女型の怪人ーーモスキート娘がいた。
「ぷはぁ~なによアンタ達。こんだけじゃ全然足んないわよ。もっと吸ってらっしゃい」
「――なるほど。蚊の大群に血を吸わせてそれをお前が独り占めしていたのか」
そこに1人の青年が加わった。
「あはっ♪ 食事が来たわ。吸いつくしてあげなさい!」
「焼却」
蚊の大群が青年の体を埋め尽くすが彼の体はサイボーグ、吸う血がない以上蚊は何もできず『焼却』によって灰燼に帰す。
「お前を排除する。――そのまま動くな」
「――ッ! やってみなさい‼︎」
青年の放つ火球を全て回避しながら接近するモスキート娘。
やがてモスキート娘はすれ違いざま機械仕掛けの左腕をもいだ。
「ふふ、次は足かしら?」
口端を吊り上げたモスキート娘だったがすぐに自身の体の違和感に気付く。
「――あ、あれ? 私の足……」
青年もまた、すれ違いざまモスキート娘の両脚を引きちぎっていたのだ。
「逃がすか」
距離を取るモスキート娘に火球を放つ青年。だが大量の蚊によって防がれる。
やがて何千何万、億はいるであろう蚊はモスキート娘を中心に集まった。
「奴にとって血は単なる食糧ではないのか。これは早急に方をつけるべきか」
青年が再び火球を放とうとしたが、それは1人の闖入者によって妨げられる。
チバだ。
「うおぉおおおおおおおおお‼︎サイボーグだ‼︎」
「っ!何だお前は?」
「俺?俺はチバ。君は?」
「俺の名はジェノスだ。いや違う!お前は逃げろ。巻き込まれたいのか?」
「へっ?あの黒い雲ってまさか……蚊?」
「そうだ」
「ヤ、ヤバイじゃん!逃げないと!あっ、これ俺の住所書いた紙だから今度取材させてね」
「あ、あぁ…」
だが、チバが逃げる間もなく億の蚊は道路を埋め尽くす。
『焼却』
青年ーージェノスは街ごと蚊を焼却した。
「言葉を話すから人間程度の知能は持っていると思ったが……所詮は虫か。わざわざ焼却しやすく蚊をまとめて俺に向けるとは」
周囲の建物は延焼してる。街の住民は皆シェルターに避難してるが。
「お前を発見時に周囲500メートル内に生体反応がないことは確認済みだった。ここなら遠慮なく吹っ飛ばすことが……しまった!一人巻き添えに…」
「ああ⁈俺のメモ帳が灰に⁈」
チバの服やメモ帳は灰になったが、キズ一つ負ってない。
「ほほほほほほほほっ。その子たちは必要なくなったのよ、バカねぇ」
空には先程のモスキート娘が。いや、姿が少し違う。引きちぎられた脚は再生し、全身がまさに血の色をしている。
「こーんなにぃ 強くなったんだもの‼︎」
腕を薙ぐと、その先の建物が粉砕した。
モスキート娘はジェノスの背後に一瞬で回り込み、脇腹を切り裂く。
ジェノスは拳を叩き込もうとしたが宙に吹き飛ばされる。
「そんなパンチじゃ蚊も殺せないわよ」
モスキート娘の圧倒的な力の前にジェノスはなす術もなく蹂躙される。
「(ーーそうか。血液を吸収するほど、身体機能が進化する仕組みだったのか……)」
「次はぁ 頭獲ったげる‼︎」
「(ーー完全に油断した。もう、勝機はない……)」
ジェノスの胸部にあるコアが発光する。
「(こうなったら 自爆するしか……)」
「すまない 博士……」
「死にさらせぇええええええ‼︎」
結果から言うと ジェノスは自爆しなかった。
モスキート娘がトドメを刺す前に、地面に叩きつけられたからだ。
「ガバァッ⁈……な、なんなのよあんたは‼︎」
「うるさいんだよババァ‼︎よくも!よくも俺の大切なメモ帳を!!!!」
殴り飛ばしたのはチバだ。メモ帳が灰になった腹いせに全裸で挑むつもりだ。
「ハァ⁈このあたり燃やしたのはあのサイボー『ガスンッ‼︎』
「だからうるさい‼︎お前が!『ドゴンッ‼︎』いなきゃ!『バキッ‼︎』彼が燃やす必要も!『ズガンッ‼︎』なかったじゃないか‼︎『ボガァンッ‼︎』」
殴る 殴る ただただ殴る。
強化したモスキート娘を圧倒する。その余波によってあたりの建物も崩壊していく。
人はいなく相手は怪人。圧倒的な暴力による解決を取り締まる人もいなければ法もない。
だが、それでも怪人に同情してしまうほど一方的にねじ伏せられていた。
「(し、信じられない!あそこまで圧倒的な力があの男にあったなんて‼︎)」
ジェノスもこの光景を信じられない風だ。
「ぐっ!このままじゃ殺される‼︎」
モスキート娘は満身創痍でありながら何とかチバの暴虐から逃れた。
「あっ!こら待て逃げるなぁああああああ‼︎」
「(このままじゃ追いつかれる‼︎せめて人間1匹分の血さえ吸えれば‼︎)」
「うわー、マジでここら辺燃えてるじゃん。チバじゃん奴どこだろ?」
逃げるモスキート娘の前方にハゲ頭の男ーーサイタマが通りかかった。
「血を 寄越しなさい‼︎」
「蚊 うぜぇ」
一撃だった。
サイタマの右平手によってモスキート娘は、跡形も無く消し飛んだ。
完全に肉片も残らず、建物がモスキート娘の血で染まった。
その一撃は、チバの叩き込んだ拳数十発分を超えていた。
「おっチバじゃんやっと見つけた。サイフ忘れて……なんで裸? しかもロボ持って」
「俺のメモ帳の仇がぁあああああ‼︎」
「メモ帳?朝俺の部屋でパソコンにまとめてなかったか?」
「………あ〜忘れてたよ〜。なんだ全然大丈夫だったじゃん怒って損した〜」
「ん?まぁいいか。チバ全裸だし俺が線香買いに行くよ」
「ちょっと待った!是非、名前を教えてほしい!」
「サイタマだけど」
「あなた方の弟子にしていただきたい‼︎」
「あ、うん…………えっ?」
チバのアウトローっぷりが……