ワンパンマン ー My only partner ー 〜更新一時停止〜 作:シドー@カス虫
「動力球ってのはこの先でいいんだね」
「そうです………おうち帰りたい(ボソッ)」
グロリバースとの戦いから少し経ち、俺ことチバは適当な下っ端を捕まえて、船を動かす動力球に案内させていた。
瓦礫が刺さっていた傷痕はまだ痛むが、休んでる場合じゃない。
一分一秒でも早く宇宙船を墜とさないと被害は広がる。サイタマがいても、早く堕とすに越したことはない。
案内を信じ巨大な扉の先に進むと、だだっ広い部屋、広間にたどり着いた。
巨大な球だけが広間の光源になっていて薄暗い。たぶんあの球が船の動力だろう。ちゃちゃっと壊そう。
この時の俺は、レベル竜の強敵を倒して浮かれていた。
動力を壊そうと周りへの集中力を欠いていて、ソレに気付かなかった。
「ザコの方か……死ね」
「……っ⁈」
横を向くと、鎧に身を包んだ一つ目の宇宙人が迫ってきていた。
今までの戦闘経験と直感が警報を鳴らし、咄嗟に捕まえた下っ端を投げ飛ばし防御態勢を取ると、一瞬で遥か後方まで吹き飛ばされた。
「〜〜っ‼︎ガフッゴホッ‼︎」
「ほぅ、一撃で死なないとは意外だな」
敵は何かを言ってるが俺には聞いてる余裕なんてない。
たった一発のパンチで全身は悲鳴を上げ、右腕の骨がへし折れた。
なんだよコイツなんだよコイツなんだよコイツ‼︎
グロリバースが可愛く見えるぐらい地下が違うじゃねぇか‼︎
コイツが親玉かよ‼︎
俺には次の攻撃に備える余裕もなければ、できたとしても間違いなく死ぬ。それほどまでに力の差があった。
気合いじゃどうにもならないレベルの 絶体絶命の状況だ。
ヤバイ 今回はさすがに死ねる
何で下っ端を投げ飛ばしたんだろ
無視して避ければ まだ逃げるチャンスはあったかもしれないのに
あーあ 結局サイタマの背中を追い続けることはできなかったな
少し前に地球が滅ぶほどの事が起きるってわかったのに
サイタマん奴 戦いと世界 どっちを天秤に取るんだろ…
親玉の野郎 トドメ刺しにきたわ
……まだ 死にたくねぇな
「 ………助けてくれ 」
「 当たり前だろ。俺はヒーローだしな」
トドメを刺そうとする親玉の一撃を、突如やってきたサイタマが防いだ。
止められた拳のエネルギーは衝撃波となり俺や下っ端は軽く飛ばされたが、死ぬことはなかった。
「……素晴らしい!俺の拳を軽く受け止めるとは!」
「テメェ、俺の親友を虐めてんじゃねえよ!」
親玉はサイタマが拳を受け止めた事にむしろ喜びを感じてるが、サイタマの言葉からは、怒りが感じられる。
薄れゆく意識の中、二人は言葉を交わす。
「虐めるなと、笑わせるな。わざわざこんな雑魚を助ける意味なんてないだろうに」
「だからなんだよ。
親友だから助ける
助けてって言ったから助ける
ヒーローとして 親友として……
これ以上助ける理由なんていらないだろ」
普段の気の抜けた調子が嘘みたいに、真剣味を帯びた口調のサイタマ。
本気の戦いを望むでもない
純粋なまでにヒーローのサイタマが立っていた。
「悪いな、チバ。あとは任せてゆっくり休んでろ」
…ホント サイタマは強いよ。
ヒーローとして、人として、誰よりも強い。
戦いと世界 どっちを選ぶなんて、さっきまで悩んでた俺がバカみたいだ。
そうだよ。
サイタマは 誰よりもヒーローだから、その背中を追うって決めたんだよな。俺は。
「…任せる。 頑張れ」
「あぁ、頑張る」
俺は言葉を絞り出し、そこで意識は途切れた…
* * *
あの日から3カ月後
ヒーロー協会は本部施設の拡大と本部から他市への
直通快速道路を、メタルナイトに莫大な契約金で作らせた。
メタルナイトは、協会が10年かかるつもりで依頼したこの大工事を、わずか7日で竣工させた。
サイタマはいつもの調子でヒーロー活動を続け、すでに俺を越してB級7位まで上がってる。
俺は ボロスとかいう親玉にへし折られた腕を治療し、やっと完治した。普通の人間じゃ信じられない速さの回復だけど。
そして、俺には同居人ができた。
「いや〜 この星の娯楽は凄いですね」
「でしょ。グレン◯ガン超絶凄いよね」
あの時捕まえてた、下っ端宇宙人だ。宇宙人は3本の触覚にもある目も加えた五つ目でアニメを見ている。
サイタマの戦いが終盤になったろう辺りで目覚めた俺は、下っ端も連れて痛む身体に鞭打って船の下層に逃げた。
実際サイタマとボロスの戦いによって船の上層部は大部分が更地になり、決着の余波で動力球が粉々になったぐらいだ。逃げなかったら危なかった。
下っ端は故郷に帰れないと悟って、今は地球での生活を満喫してる。
まぁその代わりと言ってはなんだけど、今まで攻めた星について事細かに聞いている。
だって 小説のネタになんじゃん‼︎
結局下っ端を生かしたのは無意識にネタになると思ってたからかな。職業病で死にかけるとかシャレにならない。
「チバー、中心街ででっかい豚の怪獣が出たって」
玄関から顔を出したサイタマが俺を呼ぶ。
いつも通り俺を誘いに来たみたいだ。
俺は 来たる日でサイタマが道を踏み外さないように、強くなろうとしてた。
でも、あの時のサイタマの言葉で、目標が変わった。
俺は 純粋にサイタマのチカラになれるよう、強くなりたい。
あいつはどこまでいってもヒーローだから。
俺の親友だから、チカラになりたい。
「行くか」
「…だな」
いつもと何も変わらない。
強いて言えば、俺の心構えが変わっただけだ。
今日も今日とて、俺は誰よりも強い親友と、ヒーローとして戦う。
ーーー正義執行
今回をもってこの作品は更新を一時停止します。
半年ほどの間、拙いにもほどがある作品でしたが、読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
コミックスがある程度進んだら再開しますが、その時はよろしくお願いします。
重ねて、今まで読んでくれた皆さん ありがとうございます。