テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第五十四話 記憶~その2~

裁判者は彼らを追って、

 

『……地脈から出られるとすれば、四大神ウマシアを祀った神殿か。ま、対魔士と契約を破棄したあの器≪欠片≫が業魔≪ごうま≫になっていなければ、の話だが……。だが、対魔士が一人吸い込まれたから問題はないだろうが……。あれは真実を知れるに足りるか……』

 

と、裁判者は風に身を包む。

そしてその場から消えた。

 

 

裁判者は緑≪草木≫と河と岩崖に来ていた。

辺りを見て、

 

「あそこか……」

 

裁判者は歩き出す。

しばらくして、立ち止まる。

そして岩の上に座って、

 

「ここでいいか……」

 

空を見上げる。

と、下を見下ろす。

そこに刀を握った業魔≪ごうま≫が現れる。

 

『……あれは……まだ、さ迷っていたのか。』

 

裁判者はその業魔≪ごうま≫を見据える。

それに合わせるかのように、ある集団が歩いてくる。

黒髪の女性達だ。

彼らは刀を握った業魔≪ごうま≫を見て、武器を構える。

しばらく斬り合った後、業魔≪ごうま≫の男が短剣を構えて斬り込むが、吹き飛ばされる。

すぐに立ち上がり、彼の右目が赤く光り、ニッと笑う。

小さな聖隷が聖隷術を、敵に繰り出す。

それが業魔≪ごうま≫の男の横を抜け、剣を振り上げる剣を握った業魔≪ごうま≫を吹き飛ばす。

業魔≪ごうま≫の男は小さな聖隷に振り返り、

 

「邪魔をするな‼」

 

と、剣を振るう。

 

「ひっ⁉」

 

小さな聖隷は眉を寄せて、悲鳴を上がる。

裁判者は立ち上がり、下に降りる。

それと同じくして、赤い髪の対魔士が槍を構えて小さな聖隷の前に出る。

赤い髪の対魔士は業魔≪ごうま≫の男に槍を構えたまま、

 

「仲間を殺す気ですか‼」

「なら、あんたを殺す。」

 

と、小さな聖隷の前に出て、黒髪の女性も右手の武具から剣≪刃≫を出す。

裁判者は彼らの間に着地をすると、業魔≪ごうま≫の男の剣≪刃≫を握る。

そして赤く光る瞳を同じく赤く光る瞳で見据える。

彼の赤く光っていた瞳が消え、

 

「……すまん。つい熱くなった。」

 

と、落ち着く。

裁判者は彼の短剣を離す。

赤い髪の対魔士と黒髪の女性は武器を構えたまま、

 

「あなたは!なぜここに⁉」「アンタ!どう言うつもり!」

 

裁判者を睨む。

裁判者は顎に指を当て、

 

「今、そこの器≪欠片≫を壊されては、意味がないからだ。」

「は?と言うより、アンタはアルトリウスの仲間なのね!」

 

と、黒髪の女性は睨みつける。

隣の赤い髪の対魔士は目を見張り、

 

「え⁉そんな⁉だって、彼女は第一級指名手配犯ですよ⁉」

 

逆に困惑する。

裁判者は二人を見て、

 

「仲間じゃない。いや、そもそも人間共達と同じくくりにされてること自体、ふざけてるな。」

「……じゃあ、アンタは聖隷なの、それとも業魔≪ごうま≫なの。で、アルトリウスの敵なの。」

 

黒髪の女性はさらに裁判者を睨みつける。

裁判者は彼女を見据え、

 

「一緒にするな、と言っている。」

 

黒髪の女性は一瞬、ビクンと動くと剣をしまう。

赤い髪の対魔士も槍をしまう。

場が落ち着いたところで、業魔≪ごうま≫の男は後ろに振り返る。

そこにはもう刀を握った業魔≪ごうま≫の姿はない。

黒い服を纏った聖隷は業魔≪ごうま≫の男に近付き、

 

「知っている奴なのか?」

「刀だけな。あれは“征嵐”って刀だった。」

 

業魔≪ごうま≫の男が答えると、

 

「セイラン……?」

 

魔女の姿をした女性は眉を寄せる。

黒髪の女性は腕を組み、

 

「なんだっていいし、刀にようわないわ。問題はあんた。何の用なの。」

 

と、裁判者を睨らむ。

裁判者は腰に手を当てて、

 

「……なに、導師アルトリウスと戦い、惨敗したお前と器≪欠片≫の様子を見に来ただけだ。どうやら、器≪欠片≫は穢れていないようんだな。そして、お前も心は壊れていないようだ。」

「……その器≪欠片≫とはライフィセットの事よね。どういう事なの。」

「言う必要性はないな。」

「アンタ!」

 

と、黒髪の女性は再び武器を構える。

裁判者は彼女を見据え、

 

「事実だ。」

 

黒髪の女性は裁判者に斬りかかる。

全員が驚きながら、だが、ある者≪魔女≫は面白そうに、ある者≪聖隷≫は眉を寄せて見ている。

裁判者はいとも簡単にそれを避け続ける。

裁判者は遠くの方を横目で見て、

 

「……これは……」

「はあぁぁぁ!」

 

と、黒髪の女性が動きの止まった裁判者に剣を振り上げる。

裁判者は視線を戻し、影を使って彼女を捕らえようとした時、

 

「ベルベット‼」

「……‼」

 

裁判者はビクンと反応し、影が消える。

そして彼女の剣は、裁判者の仮面にヒビを入れた。

そこに彼女の左手が裁判者の顔面を掴み、力を入れると仮面は砕けた。

裁判者は彼女を蹴り飛ばす。

踏みとどまった彼女は裁判者の顔を見て、

 

「アンタ!あの時の……‼」

 

と、今度は困惑する。

裁判者は仮面の破片を拾い上げ、

 

「……なるほどな。あの聖隷の仮面を砕けるに至っただけはある。」

 

と、黒髪の女性を見据える。

仮面の破片を彼らに見せ、

 

「これは強い感情や意志がないと壊れないという特殊なものだ。お前の知る聖隷にも、これを与えたのも私だ。」

 

黒髪の女性は何かを思い出すように、凄く睨みつける。

裁判者は仮面の破片を服にしまい、

 

「……いいだろう。しばしの間、お前達と行動を共にするとするか。気が向いたら、手を貸してやろう。」

「は?」

 

黒髪の女性は眉を寄せる。

無論、他のメンバーも。

裁判者は風に身を包み、風がはじけ飛ぶと黒いコートのようなワンピース服に変わる。

 

「なに、その方が都合がいい。私の、な。そうだな、お前達の所で言うと……何だったか。まぁ、いい。そういう事だ、心ある者達よ。」

「だから意味がわからないわよ!」

 

黒髪の女性は剣をしまう。

業魔≪ごうま≫の男は腰に手を当てて、

 

「別にいいんじゃないか?戦力が増えるし。」

「……奴の気が向かない限りは、戦力外だがな。」

 

と、黒い服を纏った聖隷は裁判者を睨む。

裁判者は横目で彼を見て、

 

「よく解っているではないか、聖隷。」

 

二人は睨み合う。

小さな聖隷が脅えながらも、裁判者を見上げ、

 

「えっと、ぼ、僕はライフィセットって言います。よろしくね。えっと、あなたの名前は?」

「……裁判者だ、器≪欠片≫。」

「ライフィセット。」

「ん?」

「僕の名前はライフィセット!ベルベットがつけてくれた!」

 

と、力強い瞳で裁判者を見つめる。

裁判者は少し考え、

 

「いいだろう、ライフィセット。お前達と共に居る間は、名で呼んでやろう。」

「ありがとう!」

 

何故か、小さな聖隷……いや、ライフィセットは笑顔になる。

裁判者はそれをじっと見つめる。

横に居た業魔≪ごうま≫の男は腰に手を当てて、

 

「俺はロクロウ。よろしくな。んで、この目付きの悪い聖隷はアイゼン。」

「……知っている。二人ともな。」

「へ?」

 

黒い服を纏った聖隷・アイゼンは裁判者に背を向け、業魔≪ごうま≫の男・ロクロウは首を傾げる。

魔女の姿をした女性は手をポンと叩き、

 

「儂の名は――」

「あれはマギルゥ。で、あれがエレノア。あたしはベルベットよ。」

 

黒髪の女性・ベルベットは、魔女の姿をした女性・マギルゥの言葉を遮って言う。

そして赤い髪の対魔士エレノアは眉を寄せて、裁判者を見る。

マギルゥは肩を落とし、

 

「儂に言わせてくれてもぉ~。」

「長いから却下よ。」

「ぶ~。」

 

と、ベルベットに頬を膨らませる。

ライフィセットはマギルゥの側で浮いているノルミン聖隷を指差し、

 

「あれはビエンフーだよ。」

 

と、裁判者が視線だけビエンフーに向けると、彼は脅えたようにマギルゥの後ろに逃げ隠れた。

そしてライフィセットは今度は首を傾げ、

 

「でも、もう一人の人は?」

「……審判者の事か。あいつとは別行動中だ。それに、あいつとは近い内にお前達に会うだろうな。」

「え?」

 

ライフィセットは首をさらに傾げる。

そして裁判者は彼らに背を向け、歩き出す。

エレノアがその背に、

 

「どこに行くのです⁉」

「港に行くのだろう。」

 

裁判者は背を向け歩いたまま言う。

ベルベットも歩き出し、

 

「そうね。港に急ぐわよ。」

 

と、皆歩き出す。

だが、一番後ろで、

 

「いやはや~、面白い事になってきたわい。」

「マギルゥ姐さん~……」

 

と、マギルゥは冷たい笑みを浮かべて歩き出す。

その後ろにビエンフーが脅えながら付いて行く。


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