アリーシャ達は合流したロゼ達と共に、カムランへの扉に向かっていた。
扉を見つけ、裁判者と審判者は左右に分けれる。
カムランへの入り口の扉に、ロゼとミクリオが扉の横に立つ。
そしてロゼはアリーシャを見て、
「さ、アリーシャ。」
「君の答えを聞かせてやろう。」
そう言って、ミクリオもアリーシャを見る。
二人は扉に手を向ける。
天族達もアリーシャに笑顔を向ける。
そしてアリーシャはその扉を開く。
アリーシャ達はカムランを進んで行く。
辺りは薄暗く穢れが満ちている。
その歩く先には、大きく空いた場所に光の柱が立っている。
アリーシャ達は立ち止まる。
それを見つめていたアリーシャに、
「あれがスレイだよ。」
ロゼがアリーシャを見る。
裁判者と審判者は後ろに下がり、
「お前の思うがままを言うがいい。それをそのまま伝えてやる。その想いと共に。」
裁判者は横目でアリーシャを見て言った。
アリーシャはロゼを見る。
ロゼは頷く。
アリーシャは一歩前に出て、
「スレイ、君のもたらしてくれた光は世界を変えている。休戦の講和条約は間もなく締結されるだろう。数百年にも及んだ両国の争いが、ついに終わるんだ。私はそのために尽力する。それは伝えた通りだ。けど、気付いたんだ。私の本当の答えに。私は政治家としてだけじゃない、王族としても、騎士としても、女の子としても、みんなの仲間としても生きたいんだって。」
アリーシャは叫ぶ。
瞳を揺らし、力強く。
ロゼ達はそれを見守る。
そしてアリーシャは続ける。
「それはただの欲張りなだけだと思ってた。捨てられない自分の迷いだと思ってた。けど、ロゼと何度もケンカして……師匠≪せんせい≫にお別れを言うことができて……みんなとまた旅ができたから……スレイに会うために、ここまで旅をしてきたおかげで答えに辿り着けたんだ!何も捨てる必要なんてないって気付いたんだ!ありがとう!スレイ!」
と、アリーシャはとても大きな声で叫んだ。
ロゼはアリーシャの背を見て、
「あんたがこの旅で手に入れたのは、答えを信じる心だよ。アリーシャ。」
アリーシャは瞳を大きく揺らし、
「手に入れたのはもうひとつ……」
そして瞳を閉じ、クルッと回ってロゼを見る。
「ロゼ!」
「もういいの?」
「うん。行こう!」
そう言って、アリーシャ達は来た道を戻る。
彼らはグレイブガンド入り口に戻って来た。
裁判者は一人、
「……うるさい。……知るか。」
と、一人そっけなく答えていた。
アリーシャが審判者を見て、
「あ、あの、審判者様。裁判者様のあれは……」
「あー、うん。多分、レイと話してるじゃない?多分。」
と、審判者は頬を掻く。
ミクリオが審判者を見て、
「多分って、あいまいだな。その辺はわかるんじゃないか?」
「いやいや、ホントだって。俺だってあの子の心の会話までわかんないって。」
審判者はミクリオに抱き付いた。
ミクリオはそれを引きはがし、
「だから引っ付くな!」
「ロゼ~、ミクリオが冷たい~。」
と、引きはがされた審判者はロゼの方を見て、頬を膨らませる。
ロゼは頭を掻きながら、
「んなこと言われても。」
「ゼロばっかりミク兄に抱き付いてズルイ!」
と、声が響く。
その声の方に振り返り、
「レイ!」
ミクリオはしゃがんで手を広げる。
レイは駆け出して、ミクリオに抱き付いた。
ミクリオはレイを抱きしめる。
それを見ていた審判者は頬を含ませ、
「何で俺の時とレイの時との差が激しいのさ。」
ミクリオはレイを抱き上げ、
「決まっている。レイは僕らの妹で、君は僕らの友達だろ。」
そう言って彼を見る。
審判者は沈黙した後、視線を外し、
「そ。そういう事なら仕方がないな。」
その表情は仮面をつけていても解るくらい嬉しそうだ。
レイはアリーシャとロゼを見て、
「でもよかった。アリーシャも、ロゼも。アリーシャは答えをちゃんと見つけた。ロゼもちゃんと自分の気持ちに気付けた。二人は想いを繋いでくれた事、とっても嬉しい。」
そう言って、もう一度ミクリオに抱き付いた後、ミクリオから降りる。
そして審判者と共に歩きながら、
「これで少し間、私は離れられる。でも、アリーシャやロゼがくじけそうな時は裁判者を説得して会いに行く。歌を歌って見守ってる。」
レイはクルッと回る。
「……前のようには一緒に居られないんだね。」
ロゼはレイを見る。
アリーシャもレイを見て、
「せっかくまた会えたのに……」
と言うと、他の者達も落ち込み始める。
笑顔でみんなを見て、
「確かに今はそんな長くはみんなの前には居られない。でも、私見たんだ。アリーシャやロゼが繋げてくれたずっとずっと先の未来で、またみんなで旅をするの。」
「だが、それは……」
アリーシャは視線を落とす。
レイは空を見上げ、
「ん。アリーシャとロゼはもう居ない世界。でもね、アリーシャとロゼの意志と想いを継いだ子たちが居るんだよ。形は違うけど、ね。」
そう言って、アリーシャ達を見て、
「本当なら、今のアリーシャとロゼと再び旅をしたい。でも、それにはお兄ちゃんが居ない。それでも、この短い時間でも、私はみんなと居られて良かった。だからまた会おうね。」
そう言って、レイは審判者と共に、風に包まれて消えた。
アリーシャ達は互いに見合って頷き合い、アリーシャをレディレイクまで送っていき、それぞれの道を進み出す。