テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第五十話 裁判者と審判者と……

彼らは奥へと歩いて行く。

アリーシャが一番前を歩く審判者を見て、

 

「あの、審判者様。」

「なに?」

 

と、彼はクルッと回転して、アリーシャを見ながら後ろ歩きで歩く。

アリーシャは彼を見つめ、

 

「い、いえ。大したことではないのですが……なぜ、お一人で一番前を歩くのですか?裁判者様も同じように、歩いていましたが。」

 

エドナも傘をクルクル回しながら、

 

「そういえばそうね。あの裁判者が珍しくあんなに長くいたわね。」

「はい。それに、休息や野営にも共にいらっしゃいました。」

 

ライラも顎に指を当てる。

アリーシャが視線を落とし、

 

「やっぱり、私たちとの距離をつくるため……ですか?」

 

ザビーダは腰に手を当てて、

 

「案外、嬢ちゃんに頼まれちゃんじゃね?」

「でも、あいつならレイが頼んでも、無視しそうだけど。」

 

と、ロゼは眉を寄せる。

ミクリオは腕を組み、

 

「ああ。やりかねない。」

「それはあながち間違いではないね。」

 

審判者の言葉に、全員が疑問の眼差しを向ける。

彼は手を広げて、

 

「だって、この穢れの中はいくら君たちでも厳しいからさ。カムランに向かえば向かうほど、この穢れは強くなる。前の時は、スレイとロゼという器が二つあった。互いに霊応力が反応しあい、穢れに飲み込まれなかったけど、今回はそうはいかない。だから俺らがアンテナになって、穢れを取り込んでるのさ。」

 

審判者はニット笑い、

 

「で、風の陪神さんが言ったことや、ロゼが言ったのも、あながち間違いじゃないってこと。レイは君たちの身を心配してたからね。でも、レイもこの穢れはまだ厳しすぎる。だから裁判者にお願いしたんだよ。でも、裁判者は俺と違って心が狭いからね。メリットがないものを、受け入れるはずがない。でも、ま……大方、条件として自分の要件が済むまで大人しくしている事を言われたんだろうね。で、裁判者が抜けた穴を、俺が変わりにしてるって事。きっとあの子は俺の存在に気付いていただろうからね。」

 

と、今度は「やれやれ」と言うように、肩を上げて首を振る。

そして彼の目付きが変わる。

奥の方には先程よりも広い場所が見える。

 

「はい!ストップ!」

 

と、審判者は全員を止める。

ロゼとアリーシャが審判者の先をを見て、

 

「なになに?」

「あ、あの審判者様なにが――」

 

と、審判者がロゼをアリーシャを引っ張る。

彼女たちが顔を覗き込んでいた所に剣が突き刺さる。

そして壁に裁判者が叩き付けられた。

その裁判者の先には、赤い瞳の金色の毛並みをした魚のようなペンギンの生き物がいた。

裁判者が立ち上がり、剣を抜きの魚ようなペンギンの生き物を睨む。

魚のようなペンギンの生き物は裁判者を見上げ、

 

「随分と腕が鈍ったのではありませんか、裁判者。」

 

その言葉に裁判者の殺気が上がる。

そして、固まっていたロゼ達が、

 

「ペンギンがしゃべった!」「魚みたいな鳥がしゃべった!」「この変な生き物はなんだ⁉」

 

と、アリーシャ、ロゼ、ミクリオが眉を寄せて叫んだ。

エドナが真顔で、

 

「あれはペンギョンよ。しかもただのペンギョンじゃなく、キンギョン。」

「はい。キンギョンはある意味では、裁判者と審判者と同じ存在です。」

 

ライラがキンギョンを見つめて言う。

ザビーダが笑いながら、

 

「昔々、『この世の終わりに物言うペンギョンが現れ、罪人に裁きの言葉を告げる。キンギョンは〝世界に終末を告げる″といわれる不吉な生き物』として恐れられたり、捕獲されたり、疎まれたり、食べられたり、攻撃されたりしてたもんだ。んで、俺のダチが昔、そのしゃべるペンギョンやキンギョンに会ったことあるとか言ってたわ!」

 

それを聞いた審判者は視線を外して、遠くを見つめる。

それは隣に居る裁判者の殺気を感じたからだ。

 

「食べられていたんですか⁉あんなにかわいいのに⁉」「裁判者と審判者と同じ?ってことは、結構現れるんの?」「これは新しい発見だ!スレイが見たり、聞いたりしたら喜びそうだ!」

 

と、アリーシャ、ロゼ、ミクリオはライラ達を見た。

ライラ苦笑し、

 

「ふふ。裁判者と審判者が世界を裁き、管理するものなら、キンギョンは人に対して裁きを下し、管理するものだすわ。その出現率は裁判者と審判者以上に稀ですわ。私もノルミンさん達から聞いたお話ですし。」

「まぁ、簡単にいえば……裁判者と審判者を足して2で割ったカンジらしいわ。性格込みでね。ま、ノルの話によれば。」

 

エドナは半眼で、ノルミン人形を握りつぶしていた。

ザビーダは笑いながら、

 

「んで、そのキンギョンは裁判者とは相性悪いらしいぜ。ダチに聞いた話じゃ。」

 

それを聞いた三人は、

 

「つまり、裁判者と審判者が合体した姿、と言うことか。」

「確かに、今さっき裁判者を吹き飛ばしたもんね。」

「はい。キンギョン様はお二方の力も同じ、それ以上と言うことでしょうか?」

 

と、三人は互いに見合って、

 

「「「似た者同士?」」」

「アレと一緒にするな!」「アレと一緒にしないで!」

 

裁判者と審判者は三人を怒鳴った。

三人は目を見開き、

 

「え、あ……も、申し訳ありません……」「なんか、ごめん……」「す、すまない……」

「あー、ごめん。その……あれが俺らと同じって……アレに叩かれた時の裁判者と来たら……」

 

と、審判者は顔を覆って震えていた。

裁判者はそんな彼の背を蹴り、

 

「そんなことより、また異界人をこちらに呼び込んだな。そのせいで、四大神には呼び出されたあげく、こっちは後処理をやらされたんだ。呼んだ貴様は何もせずな。」

 

裁判者は仮面をした状態でも解るくらい怖いし、物凄く睨んでいた。

キンギョンは腕をパタパタさせ、

 

「当たり前です。あれは裁判者にして裁判者にあらず。手を貸す理由はありません。それに、あれは迷い込んだのです。あなた達が兄妹姉弟≪きょうだい≫ケンカしていたせいで、乱れが生じたのです。自業自得です。」

「まったくもってその通りね。世界を巻き込んだ壮大な兄妹姉弟≪きょうだい≫ケンカだったわ。」

 

エドナがうんざりした顔でノルミン人形を握りつぶす。

ライラとザビーダに関しては、すでに視線を外して知らんぷりをしていた。

なぜなら、剣を振り上げていた裁判者を審判者が必死にとなって止めていたからだ。

 

「だいたい、異界人を招き入れると裁判者がうるさいのです。まったく、子供ですね。心が狭いですね。」

 

と、腕をパタパタしている。

裁判者は審判者を無理やりはがし、キンギョンに剣を振るう。

キンギョンはジャンプし、剣を腕で受け止め、叩く。

そして、横に一回転して、裁判者に平手打ちした。

裁判者は影から違う剣を取り出し、

 

「貴様……!」

 

着手して腕をパタパタしているキンギョンに再び剣を振るう。

その剣をキンギョンは腕で受け流していた。

そして一人と一匹の攻防戦は続く。

審判者はそれを苦笑いで見る。

ついに裁判者は影を広げ、影にも武器を持たせて振るい出す。

審判者は一歩下がり、

 

「うわっ⁉大人げない。」

「うるさい!」

 

だが、キンギョンは光り出し、それが凝縮されて裁判者に向けて放った。

裁判者は目を見開き、剣でそれを防ぐ。

後ろに少し下がり、自身の影を見る。

影は弱弱しく、小さくなっていく。

裁判者は剣を影にしまう。

キンギョンは腕をパタパタさせて、

 

「おや?やっと諦めましたか?」

「否!諦める気はない。こんな事をしても、意味がないと判断したからだ。」

 

裁判者は睨みながらキンギョンに言う。

審判者は笑顔で、

 

「いやー、良かった、良かった!とりあえず、収まって……」

 

そして肩を落とした。

キンギョンは裁判者と審判者を見て、

 

「では、改めて言います。今すぐ、あなた達の中に居る器≪人間≫を消しなさい。」

 

その言葉に裁判者と審判者はジッとキンギョンを見る。

そしてアリーシャ以外も裁判者と審判者を見た後、キンギョンを見た。

アリーシャは首を傾げ、

 

「エドナ様、キンギョン様が言っていることはどういう事でしょうか?」

「……仕方ないわね。いい、裁判者と審判者には天族が清らかな器が必要なように、裁判者と審判者はワタシ達心あるものに関わるのに、人間という器が必要になったの。わかりやすくいえば、おチビちゃん。裁判者はおチビちゃんを通して、ワタシたちとの関わりを良しとする。裁判者としてではなく、レイと言う一人の人間としてね。」

 

ライラはジッとアリーシャを見て言う。

アリーシャはジッとエドナを見て、

 

「それがロゼが言っていた、疑似体と言うやつですね。」

「ええ。」

 

と、前の方では裁判者と審判者が、

 

「断る。」

「同じく。」

 

裁判者は腰に手を当てて、審判者は笑顔で言った。

キンギョンは二人をじっと見上げたまま、

 

「どうしてです?今更、心あるものたちに関わりを持つなど。それに、今回の件で解ったはずです。何の意味もないと。」

「確かに意味はないだろうな。私達は関わっても意味はないとかつ想い知った。だが、今回は賭けてもいいと私達は考えている。」

「それが、俺達を成長の一手に導いた二人の導師の想いだ。」

 

二人はその二人の導師を思い出しながら言う。

そして裁判者はキンギョンを見下ろし、

 

「……では、賭けをしよう、終末の使者。今、聖主マオテラスの浄化を行っている導師が自身の願いを、己の意志と想いで成し遂げられるかどうか。」

「……その見返りは?」

「導師が成し遂げた時は、私たちの中の器≪人間≫を受け入れ、見定めろ。もし、成し遂げられなかった時は、貴様の言う通りに事をなそう。」

 

と、睨み合う。

そしてキンギョンは審判者を見上げ、

 

「それで、あなたもいいのですか?」

「構わないよ。俺が言うのも変だけど、俺はあの導師を認めているからね。もしかしたら、どの導師も成し遂げられなかった事を、本当の意味で成し遂げられるかもしれない。」

 

審判者はニッと笑う。

そして後ろの方で、

 

「そうです!キンギョン様!スレイはきっと成し遂げます!」

「だね!スレイはやると決めた時は、最期までやる。」

「ああ!スレイはそういうヤツだ!」

 

と、アリーシャ、ロゼ、ミクリオが力強い瞳で言う。

ライラが手に当て微笑み、

 

「そうですわね。スレイさんなら、きっと……」

「まったく、ガキね。でも、スレイはこれだけの縁≪絆≫をつくり出したのは事実よ。」

 

エドナは傘を閉じ、真っ直ぐキンギョンを見つめた。

そしてザビーダもニッと笑い、

 

「ああ。あいつは約束は違えない。俺らはそう信じてんだよ。」

 

キンギョンはその場の全員を見渡し、

 

「そう、なのですね。分かりました。裁判者の賭けに乗りましょう。ですが、成し遂げられなかった時は、ちゃんと事をなすのですよ。」

「ああ。」

 

裁判者はうんざりしたように言う。

そしてキンギョンは腕をパタパタし出し、

 

「では、我はこれで……」

 

と、光り出して消えた。

裁判者は審判者を見て、

 

「あいつには会ったのか?」

「すれ違いになっちゃった。」

「お前の事を話したら、余計なお世話だと言っていたぞ。」

「えー、ウソ。でも、ま。それを言うだけの元気は出たって事だよね。ならいいや。」

「相変わらずの能天気だな。」

「ぶー!」

 

と、審判者は頬を膨らませる。

ミクリオは腕を組み、

 

「で、レイは大丈夫なんだろうな。」

「心配はないよ。てか、俺の心配もしてよ、ミクリオ~!」

 

と、審判者はミクリオに抱き付いた。

ミクリオは審判者を引きはがしながら、

 

「離れろ!大体、君は心配されるような性格じゃないだろ。」

「おぉ~。ミクリオ以外にも俺を解ってるぅ~♪」

「うるさい!」

 

と、再び抱き付いてきた審判者を引きはがすミクリオ。

裁判者は睨み、

 

「茶番はそこまでにしろ。それと、これ以上お前達に絡まれるのも面倒だ。だから言っておく。今、器は逆の形となっている。以前は私が器の中に居る事で、その存在を保っていた。だが、現在は器≪人間≫が我々を器としている。審判者の方は姿自体は変わりないからな。あまり時間を有さなかったが、あれは違う。まずはその姿を固定させ、理と力を固定させる。そうしない限り、器≪人間≫たちは理に弾かれ、まともに動く事すらできない。その為には時間が必要なのだ。」

「だからレイは僕たちの前から消えた。」

「そして現れても、すぐに離れたのは……その準備がまだ整ってないから。だからあんなに……」

 

ミクリオとロゼは視線を落とし黙り込む。

裁判者はアリーシャを見て、

 

「ですが、今回……レイは私の前に現れた。少しずつではあるが、その傾向は見えている……と言うことでしょうか、裁判者様。」

「……そうなるな。だが、長時間はお前たちとは関われない。だが、私を通してお前達を見ている。まったく、うるさかったぞ。」

 

そう言って、裁判者はアリーシャ達を見た。

アリーシャは首を傾げ、

 

「え?」

「お前達のケンカや、雰囲気、その他いろいろ……何かある度に外に出しようとしては、文句を言ってきたりな。だが、今は逆に落ち着いている。安心したのだろな。」

 

そう言った裁判者に全員が唖然とした。

そして審判者は裁判者を見て、

 

「……随分と君が優しい……あの短気な君が……」

 

裁判者は審判者を睨みつける。

そして背を向け、歩き出す。

 

「なら、行くぞ。導師スレイの元へ。」

「は、はい!」

 

アリーシャが頷き、裁判者に付いて行く。

ロゼが目をパチクリし、

 

「なにあれ……あれさ、本当に裁判者⁉」

「レイとの干渉で若干雰囲気が変わったんじゃないか?」

 

ミクリオも眉を寄せた。

エドナは地面に傘を突きながら、

 

「何よあれ!調子狂うじゃない!」

「エドナさん、文句を言う気満々でしたものね。」

 

ライラはエドナを見て苦笑した。

ザビーダは笑いながら、

 

「いやー。案外、元は変わってないかもだぜ~。昔に、ちょいっとあんな感じのヤツを見た事あるぞ。あん時も以外とこっちに乗ってくれたもんだから驚きだった。」

「へぇ~、意外。そういや、ザビーダは昔会ってんだけ。」

 

ロゼが思い出し笑いをしているザビーダを見て聞いた。

 

「おうよ。会ったさ。で、そうダチが……アイゼンが言ってたんだ。ま、俺自身も会ってはいたが、あの頃の俺は若かったからな……」

「そういえば、そうか。俺もちょっとしか見てないけど、あの子が珍しく関わってたよね。」

 

と、審判者は笑い出す。

ザビーダが審判者の方に腕を乗せ、

 

「お前もあの時居てさ、面白がってたたなぁ~。」

「う~ん、まぁね。なんたって、初代導師し初代災禍の顕主の誕生の時代だからね。ホント、時代とは面白い。」

 

と、審判者はザビーダを見上げて、ニット笑う。

そしてミクリオはその二人を見て、

 

「……聞きたいことは多々あるが、まずは裁判者とアリーシャを追いかけよう。いつの間にか、見えない所まで歩いている。」

 

そう言って、二人が歩いて行った方を見ると、確かに居なかった。

ロゼ達は急いで二人を追いかけた。


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