テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第四十五話 裁判者や審判者

スレイ達は扉を開けて中に入る。

そして持っていた裁判者の記憶≪瞳石≫が輝き出す。

スレイはそれを取り出す。

すると、それは他の瞳石≪どうせき≫同様に、映像を見せる。

 

――それは世界の始まり

いずれカムランと呼ばれるその土地で、海が、大地が、空が創りだされる。

そこに二人の少年少女が目を開ける。

二人は対照的だった。

一人は感情に溢れ、その土地を駆け回る。

もう一人は無表情でそれを見つめ、木にもたれている。

その奥には、今スレイ達が居る神殿がそびえ建つ。

長い長い時の中、二人一緒に過ごす日々……

 

次第に世界には人や天族が増えて行く。

感情を持つもの達が増えて、彼らは外に出る。

それからは多くの歴史を、文化を、人を、天族を見て、時に傍観し、時に関わっていった。

彼らは、四人の天族と何やら話していた。

それは各地に柱のようにとどまった。

 

裁判者と審判者は願いを叶え始める。

そして彼らは関わりを断った。

それは戒めか、それを表せるのか、彼らは仮面を着け始めた。

そう、変わらない人の世、天族達との関わりを……

 

そして裁判者はある時、影の闇を爆発させた。

それはドラゴンとなり、世界を闇が覆う。

世界に一つの光と七つの闇となって、八つの根元してある場所にドラゴンは飛んで行った。

 

時は流れ、裁判者は憑魔≪ひょうま≫を斬り倒した。

人々は彼らを拝み、恐れる。

 

緋色の満月の夜。

一人の男性が、月と同じ赤い瞳を見上げていた。

そして彼は、底の見えない遺跡の跡地のような崩れかけた柱の上に立つ裁判者に何かを訴えていた。

彼女は、彼の前に降り立ち、底の見えない場所を指差し、何かを言っていた。

彼は眉を寄せて膝を着いて顔を覆った。

だが、彼は裁判者の側に居る赤い髪の天族女性と天族の子供を見て決意した。

彼は自らを犠牲にして、ある儀式を行った……

 

また同じ緋色の満月の夜。

裁判者は柱の上で、それを見下ろす。

ただ違うのは、あの時の男性の側に天族の女性と人間の少年が居た。

少年は男性を見上げ、頷く。

そこに、一人の女性が駆けこんできた。

そして男性は少年に剣を突き出した。

その少年を、底の見えない所に落とす。

女性はその少年の手を掴み、必死に落ちまいと耐えていた。

だが、男性が女性を突き落とした。

彼女の悲痛と苦痛と憎しみと悲しみに満ちた表情でその男性を見ていた。

すると、龍のようなものが少年を喰らい、女性を飲込んだ。

そして女性は左手に穢れを纏って現れた。

 

月日が流れ、そこは大きな街だった。

裁判者と審判者は、集まる人々を見下ろしていた。

そしてそこに、あの緋色の満月の夜に見た男性が、民衆に何かを言っていた。

民衆は彼を見上げて、歓喜の声を上げる。

それを遠くから睨むように、憎しみを籠めた瞳で見る緋色の満月の夜に見た女性が見ていた。

そして男性に飛び掛かりそうになる女性を、仲間だろう者たちが止める。

 

さらに月日は流れ、そこには導師と災禍の顕主の戦いへと変化していく。

それは受け継がれていくかのように、戦い続ける。

そして彼らは出会った。

先代導師ミケルと……

 

彼らは何度も彼と出会った。

そして関わりを断っていた彼らが、仮面を外してまでも彼の村や人の世を見ていた。

だが、次第にそれは闇に覆われて行く。

そう大地の記憶で見た通りに……

 

――そして景色は一変、イズチに変わった。

それはカムランの時のような直接関わる方のだ。

 

「これって、カムランの時と同じか。」

 

スレイが驚きながら周りを見る。

ミクリオも周りを見て、

 

「みたいだな。」

 

そしてスレイ達は木の上にいた裁判者を見つけた。

 

 

――イズチの近くの木の上で腰を掛け、木にもたれながらイズチを見ていた。

正確には幼いスレイとミクリオを。

 

「あれって小さい頃のスレイとミクリオ?」

 

ロゼが二人を見る。

スレイが懐かしそうにそこを見ながら、

 

「ああ。あの時は二人ともやんちゃだったな。」

「特にスレイが、ね。」

「お前もだろ。」

 

二人は互いに見合って笑った。

と、エドナは幼いスレイとミクリオを見て、

 

「あの頃のミボは素直そうね。」

「あ~、ホントだねぇ~。今と違って素直そうだ。」

 

ザビーダは今のミクリオを見て言った。

ミクリオは腕を組んで、

 

「悪いね。今は、素直じゃなくて!」

 

そう言ってそっぽ向いた。

と、景色が変わる。

 

 

――彼女が瞳を閉じると、そこには人間だ頃の災禍の顕主ヘルダルフが映る。

彼はどんどん闇に飲み込まれていく。

 

「レイが言っていたのは、こういうことか……」

「かもしれないね。」

 

スレイとミクリオは俯いた。

 

 

――裁判者はしばらくそんな日々が続いた。

と、幼いスレイとミクリオが遺跡に迷い込む。

裁判者は彼らの後を追って歩いて行く。

 

「スレイ。これは……」

「ああ。あの時の……」

 

ミクリオとスレイは互いに見合った。

そしてスレイ達も裁判者に付いて行く。

 

 

――二人が落ちそうになった時、彼らの襟首を掴み引き戻す。

幼いスレイとミクリオは裁判者を見上げる。

裁判者は二人を見下ろし、

 

「全く……冒険を求める事は悪い事ではない。しかし、時と場合を考えろ。知識も力のないただのガキには何もできないことが多い。まずはお前達の持っているその本で知識を得ろ。そしてお前達の目で確かめたときにこそ、伝承の本当の意味が見えるはずだ。そして歴史とは、お前たち自身が築き上げるものだ。」

 

二人は目を輝かせて裁判者を見上げる。

そして彼女は腕を組み、しばらく考え込んでた。

再び幼いスレイとミクリオを見下ろし、

 

「お前達は親は欲しいか?」

「「いらない。」」

「何故だ。」

 

二人は見合ってから裁判者を見上げ、

 

「だって、イズチの皆が親だもん。」

「それにお兄ちゃん、お姉ちゃんみたいな。でも、俺らがイズチの中で子供なんだ。」

「だから弟か妹が欲しかったよなー。」

 

と、二人はまた見合って言った。

裁判者は視線を外し、

 

「……弟か妹、か。」

 

そう言って、彼らに背を向ける。

そして歩くその先には老人天族が居た。

彼の横に来ると、裁判者は止まり、

 

「……しっかり見ているんだな。導師になる前に死なれては意味がない。」

「あの子らは、物ではないぞ。」

「……私は盟約に従うだけだ。」

 

そう言って、再び歩いて行った。

それから少し年数が経ち、裁判者はある村に来ていた。

 

「ここ……何か見覚えが……」

 

ライラが必死に思い出そうとする。

そして裁判者が向かうその先を見て、

 

「そうか……ここはリクド村……」

 

スレイは眉を寄せてそこを見た。

 

 

――地の主と地の主によく似た天族男性と楽しそうに小さな子供の所に行き、

 

「お前か、私を呼んだのは。」

「何のこと?」

 

小さな子供は裁判者を見上がる。

地の主ももう一人の天族男性は警戒をしている。

それを無視し、

 

「お前の願いを叶えに来た。お前の探し物を――」

 

裁判者がそう言うと、子供は裁判者の手を取って、二人から離れる。

そして裁判者を見上げ、

 

「あれを知ってるのか!」

「……ああ。お前の願いを叶えるために、私は来た。」

 

子供は俯く。

 

「あれはクー君がくれたお守りなんだ。失くさないように、しっかり持ってたのに……」

 

子供は顔を上げ、

 

「だから一緒に探してくれるってことだよな。」

「ああ。お前のその願いは、私が叶えよう。」

「じゃあ、約束な。」

「約束?」

「うん。俺とアンタの秘密の約束。」

 

子供は笑顔でそう言った。

 

「きゃああぁぁぁー‼」「ぎゃああぁぁぁ―‼」

 

そこに叫ぶ声が響き渡る。

と、裁判者は子供を掴み上げ、地の主の所までジャンプする。

彼らの居た所には穢れを纏った憑魔≪ひょうま≫が現れる。

子供を地の主に投げる。

剣を影から出し、

 

「地の主、すぐに住民を避難させろ!」

「ではやはり君は……」

「早くしろ!これは本来の歴史ではない!」

 

そう言って、憑魔≪ひょうま≫を斬り裂く。

そして根元へと走って行く。

そこは炎が燃え盛る。

そしてそれはドンドン広がっていく。

 

「もしかしてこれがチグサたちが言っていた事件だね。」

 

ロゼが腰に手を当てて言った。

 

――その先には炎に交じって穢れが舞っている。

人々の叫び声、その声に交じり、悲痛な叫び声も混じり合う。

そこに笛の音が響き渡る。

裁判者はその炎と炎の間を歩き続ける。

辺りに憑魔≪ひょうま≫が生まれては、彼女の影からできたもの影のようなヘビが喰らい潰していく。

 

「……お前はそこまで落ちたか……」

 

そう言って、その先を彼女は見ながら言う。

その先には仮面をつけた少年。

彼は笑っていた。

 

「君は変わりつつある。あの導師のせいで……」

「それはお前自身の事も含めてか。」

 

審判者は影から剣を取り出し、構える。

 

「……かもしれないね。前の俺だったら、こうは思わなかった。」

 

裁判者も再び剣を影から取り出す。

そして互いに剣と剣がぶつかり合う。

金属音が鳴り響く。

 

「やっぱり強いですわね。」

「そうね……」

 

ライラとエドナは彼らの戦いを見つめる。

 

 

――そして裁判者は横に視線を送る。

そこには穢れを纏った獅子の憑魔≪ひょうま≫が居た。

審判者から距離を置き、

 

「……ヘルダルフ、だったか。今宵の災禍の顕主として、やはり君臨したか。」

「ふ。あの頃と何も変わらんな、お前も。」

「お前は随分と変わったな。」

 

裁判者がそう言うと、辺りの地形が変わる。

裁判者の足元は溶岩の中に変わる。

 

「サイモンの幻術か!」

 

ミクリオは辺りを見る。

エドナも辺りを見ながら、

 

「わかってはいたけど、すでにあの不思議ちゃんはひげネコに協力していたのね。」

「ああ。」

 

スレイは裁判者を見つめる。

 

 

――裁判者の瞳が赤く光り出し、影が飛び出してきた。

そしてそれは揺らぎだし、

 

「この程度の幻術が私に効くと?」

 

そう言うと、彼女の影が爆発した。

天族サイモンが吹き飛ばされる。

 

「くっ!」

 

天族サイモンは尻餅を着く。

そして裁判者を睨む。

裁判者は災禍の顕主ヘルダルフを見て、

 

「で、お前はなにをする。」

「世界に混沌を。」

「成程な。私はお前が災禍の顕主として行うことには、手を出す気はない。だが、歴史にないこの村の運命を変える事は、許さない。」

「どうすると?」

 

裁判者は地面に剣を突き刺し、

 

「裁判者たる我が名において命ずる、地よ。かの者を飛ばせ。」

 

そう言って、災禍の顕主ヘルダルフと天族サイモンは影に飲まれた。

裁判者は剣を抜き、審判者を見て、

 

「お前もお前だ。何故、歴史にないこの村をこんなにした。」

「それは、その方が面白いからだよ。」

「意味が解らんな。」

「だろうね、君じゃ……」

 

そう言って、再び剣と剣がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。

裁判者は距離を取り、災禍の顕主ヘルダルフと天族サイモンにやったように影に飲み込まれた。

裁判者は近付いて来た天族男性を見て、

 

「何故、逃げ出していない。」

「ここを守ると、チグサと約束しているからね。」

「……この穢れの中を、か。」

「無理かもしれないし、無理じゃないかもしれない。やれるところまでやっていくよ。」

 

裁判者は彼に背を向けて、

 

「なら、再び私がこの地を訪れた時、まだお前に意志が残っていた時は、私がお前の願いを叶えよう。」

 

そう言って、裁判者は消える。

そして場所が変わる。

そこは草原だった。

裁判者は剣を構える。

目の前には審判者が居る。

二人は日が昇り、沈み、また昇る……

ずっと斬り合いをしていた。

 

「俺様が見たの、これだわー。」

「あー、前にザビーダが見たっていう。」

 

ザビーダが頭に手をやって言った。

ロゼは腰に手を当てて、彼を見た。

 

 

――それは長い長い戦いだった。

と、裁判者は彼の感情のようなものを感じ取り、

 

「……ああ、そうか……お前は、こんなにも乱れていたのか……」

 

裁判者の動きが止まる。

そこに審判者の剣が切り裂く。

裁判者は後ろに倒れ、すぐに目を開ける。

審判者は裁判者を見下ろし、

 

「苦しんだ。前はここまで苦しい想いはしなかったのに……」

 

そして審判者は再び嬉しそうに、悲しそうに、再び横たわる裁判者に剣を振り上げた。

裁判者はそれをじっと見て、

 

「そうか……私は逃げていたのか……」

 

剣が振り下ろされた。

裁判者はそれを避け、

 

「審判者、答えろ。何故、災禍の顕主に手を貸す。」

 

審判者は両手を広げ、

 

「この苦しみを消すには、世界には面白くなってもらわなきゃ。だったら、導師ミケルが望んだ逆の事を広げる。ヘルダルフに協力はしない。でも、ちょっかいは出すよ。だって、その方が俺はミケルの事を忘れることはない。あの愚かな選択を選んび、災厄を生み出した導師ミケルという人間を思い出し、この狂った世界を見ることができる。」

「……穢れを抱えきれなくなっているのか……憑魔≪ひょうま≫にはなっていないが……これは……」

 

裁判者は目を細めて彼を見つめた。

裁判者は立ち上がり、剣を構える。

互いに、こん身の力を籠めた力がぶつかり合う。

それは大きく爆発し、二人の姿は消えていた。

 

「これは何が起きたんだ⁉」

「おそらく、同等の力のぶつかり合い。二人とも吹き飛ばされたのだと思いますわ。」

 

ミクリオが眉を寄せて、その爆発を見た。

ライラも眉を寄せて、それを見た。

 

 

――裁判者は自分に触れる何かに気付く。

そして瞳を開けると、子供が目の前に居た。

 

「アンタ、生きてたの?」

 

その子供を見ると、赤い髪をした穢れのない青い瞳をしていた。

その子供はボロボロだった。

そして子供から、お腹の音が鳴り響く。

お腹を抑え、顔を赤くする。

 

「……あの子たちと同じくらいか……」

 

そして裁判者は、よろけながら立ち上がる。

子供の頭を撫で、

 

「選択肢を選べ。抗いてでも生きるか、諦めてここで朽ち果てるか。」

「意味わからん。でも、私は生きるよ。」

 

子供は首を傾げながら言う。

裁判者は子供の手を引き、

 

「あいにくお前の腹を満たすものを、私は持っていない。だが、あそこに向かって歩いて行け。」

「何で?」

「その先に、お前の仲間が、家族となる者が居るからだ。」

「は?」

 

そう言って、裁判者は子供の背を押した。

子供はトテトテしながら、転びそうになる。

それを支えたのは、一人男性。

それは前髪が長く、歯がギザギザになっていた。

 

「何だ?このガキ。」

「お……」

「お?」

「お腹空いた……」

 

そう言って、ダランとなった。

デゼルは戸惑いながらも、ロゼを抱えて傭兵団の元に行った。

子供が最後に見上げたその先には、裁判者はもういない。

 

「……あれって……もしかして……」

「うん。あたしだね。」

 

スレイがロゼを見る。

ロゼはデゼルに抱えられていく、幼い頃の自分を見つめていた。

ロゼは頭を掻きながら、

 

「まっさか、子供の時に会ってたなんてね。」

 

 

――景色がレディレイクに変わる。

その暗い暗い場所に居た。

と、裁判者は誰かにぶつかった。

下を見下ろすと、茶色の髪を横にロールした子供だった。

その子供は座り込み、泣いていた。

 

「うっぐ、うっぐ……お父様!……お母様!」

 

その子供の近くには憑魔≪ひょうま≫が近付いてきていた。

裁判者は子供を見下ろし、

 

「……何で、こんなに子供に出会うんだ……」

 

子供の手を引く。

子供は裁判者を見上げ、

 

「怪我をしているのか?」

「気にしなくていい。」

「だが……」

 

そして立ち止まる。

 

「ここを振り返らずに、行け。」

 

その先の方から声が響く。

 

「アリーシャ!アリーシャ!」

 

子供は走り出した。

裁判者は振り返り、近付いてくる憑魔≪ひょうま≫を喰らう。

 

「アリーシャも会ってたんだな……」

「そうだな。」

 

スレイとミクリオは、両親と嬉しそうに手を繋いでいる彼女を見た。

 

 

――景色は森へと変わる。

彼女は木にもたれながら、

 

「……眠い……かなり力を使ったな……」

 

そして再び立ち上がり、

 

「……弟か、妹……か。」

 

裁判者は風に身を包む。

そして場所はイズチ近くの森へと変わる。

そこに足音が聞こえてくる。

そして幼いスレイとミクリオが裁判者を見つける。

裁判者は幼い小さな少女へと変わっていた。

 

「「レイ……」」

 

スレイとミクリオはレイを見つめた。

 

 

――そしてレイは、幼いスレイとミクリオと共に過ごしていく。

そして二人は成長し、外の世界に歩んで行った。

レイはその瞳で世界を見た。

感情を知り、絆を知り、関わりを知る。

次第に、裁判者としての記憶、これまで裁判者が受けて来た感情、人々の歓喜、憎悪……

レイは耳を塞ぐ。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

そして暗闇の中に居た。

丸く縮み込み、

 

「お兄ちゃん、ミク兄……」

 

そして自分が消えるのを待っていた。

だが、その闇の中に光が灯る。

レイはそこを見上げる。

そこにはスレイ達が居た。

レイはそこに手を伸ばす。

そしてスレイとミクリオがその手を掴み引き寄せる。

 

「ああ……私はみんなとまだ一緒に居たい……でも、裁判者でもいなきゃいけない……」

 

レイが見つめる先には、楽しそうに笑い過ごすスレイ達。

レイは空を見上げ、

 

「私の答えは……レイと言う人間であり、裁判者だ。」

 

そう答えると、映像が消えた。

そしてスレイの持っていた瞳石≪どうせき≫が砕け散った。

スレイは瞳石≪どうせき≫を持っていた手を握りしめ、

 

「行こう。レイが繋げてくれた道だ。俺達は、俺達のけじめをつける!」

「ああ!」「うん!」「はい!」「そうね。」「おうよ!」

 

ミクリオ、ロゼ、ライラ、エドナ、ザビーダは声を揃えて言う。

スレイ達は最奥へと走って行く。

 

 

審判者は遺跡の天井を見上げ、座り込んでいた少女の前に立つ。

そして膝を着き、

 

「俺、君の事はほとっけなかった。ある意味どこか、俺に似ていたから。でも、君と俺とでは少し違ったみたいだ。君は誰かに自分を見て欲しかった。自分と言う存在を、誰かに認めて貰いたかったんだね、サイモンちゃん。」

「そんな私を、笑いに来たのか……私にはもう価値はない。我が主が成す事を、もはや近くで見ることもできぬ。」

 

天族サイモンは天井を見上げたまま言った。

審判者は立ち上がり、

 

「いつか、君と言う存在を認めてくれる者が現れるよ。サイモンちゃんが、自分を受け入れる事ができたらね。」

 

そう言って、背を向けて歩いて行った。

天族サイモンは拳を握りしめる。


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