テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第三十九話 戦争

一人の少年が岩に座り、戦場を眺めていた。

そこに紫色の髪を左右に結い上げた少女が現れる。

彼の背後に居る穢れを纏った男性に頭を下げる。

そしてその少女は、

 

「審判者。」

「なに?サイモンちゃん。」

 

少年は振り返る。

仮面をつけたにもかかわらず、瞳は赤く、笑顔が解る。

少女、天族サイモンは無表情で、

 

「裁判者がお前に伝えろと。『お前の答えに裁判者は同意した。だが、お前のやり方には同意しないと』とな。」

「へぇ~。でも多分、それは裁判者じゃなくて器≪レイ≫の方だね。俺の答えに否定してたわりには、肯定しちゃったんだ。ま、当然か。俺らと感情ある者とは、見ている世界が一緒になる事は絶対にないもんね。」

 

少年、審判者は笑い出す。

そして立ち上がり、

 

「君の願いを叶えてあげようか?ヘルダルフが君を穢れの渦に落とす前に。」

 

だが、審判者の影に捕らえられた天族の男性は恐怖に駆られしゃべる事もできない。

審判者は残念そうに、

 

「しゃべる事もできない、か……。さてさて、導師は間に合うかな。ね、スレイ。」

 

戦場を見下ろして、彼はニッと笑う。

そして視線を戦場についた若き導師に向け、見つめていた。

審判者は影を消す。

そして穢れを纏った獅子の男が、天族の男性を戦場へと突き落とした。

 

 

スレイ達は戦場に戻って来た。

そして息をのむ。

 

ハイランドとローランスが全面衝突を行っている。

いつぞやの剣と剣がむつかり合い、所々に金属音が響く。

怒鳴り声、悲鳴が響き渡る。

次々と人が敵に、剣に斬られ、槍に刺され、地面に倒れて行く。

敵を討ち、仲間を助けに来た敵にまた斬られ、刺されてと連鎖が続いて行く。

そしてそれは憑魔≪ひょうま≫を生み、穢れと共に広がっていく。

それは次第に人の戦いではなく、憑魔≪ひょうま≫同士の戦いへと変わっていく。

 

それの穢れの中に落とされた天族の男性は身を起こし、それをまじかで見ていた。

彼は首を振り、頭を抱えて震え出す。

穢れが彼を中心に渦を巻き、柱のようになる。

彼はその中で、涙を流し苦痛と悲鳴と恐怖に叫ぶ。

そして中には雷鳴が轟き始め、光が闇へと変わり爆発する。

 

兵達は争いを止め、その中心を見た。

爆風が彼らを襲う。

彼らは腕を当てそれを収まるのを待つ。

そして収まってその先を見ると、強大な足が頭上から振って来た。

それを避け、逃げまどう。

彼らの前に現れたのは強大なドラゴン。

ドラゴンはシッポで地面ごと兵を薙ぎ払う。

さらに、ドラゴンが唸りを上げると雷が戦場を襲う。

そしてドラゴンが死体を貪り食う。

ドラゴンは顔を上げ、逃げまどう兵達を見て唸り出す。

そこにドラゴンが炎を吐く。

兵達は炎に包まれる。

辺りは火の戦場へと変わる。

 

スレイはローランス軍陣営地を走り抜けながら、

 

「ライラ、あれは――!」

「ああ……生まれてしまった……」

 

ライラは走りながら、俯く。

スレイは拳を握りしめる。

レイは眉を寄せ、歯を食いしばる。

 

「ドラゴン……!本当にいるなんてぇ……!」

「あんな化物……!どうにかできるか……!」

「ははは!終わりだ!世界はもう!」

 

通り過ぎて行く兵達は心身ともに抜け殻のようになっていた。

完全に諦め、虚ろとなっている。

 

ロゼは走りながら、兵達を横目で見る。

 

「……見えてるんだね。」

「ああ。完全に実体化してる。」

 

ミクリオがロゼを見て言う。

 

そしてスレイ達はハイランド軍陣営地へと足を踏み入れる。

 

「ドラゴンだぁ!ドラゴンが出たぁっ!」

「ああ……助けて……母さん……」

「痛え……痛えよぉ……」

「アリーシャ様の言う通りにしていれば、こんなことには……」

 

ドラゴンの方に近付くにつれてけが人が増えていく。

怪我を負いながら必死に逃げる者、岩にもたれて救いを求める者……

それを見ながら、そこを通り抜けていく。

エドナは走りながら、いつも以上の真剣な表情で、

 

「なんとかできるの?あれを。」

「できなきゃ救えねぇさ。誰もな。」

 

ザビーダがニッと口の端を上げる。

だが、その表情は真剣だ。

 

 

そしてスレイ達はドラゴンの前へときた。

ロゼが見上げ、

 

「やっぱでかい……!」

「ドラゴン!」

 

スレイはドラゴンを見上げて睨む。

 

「スレイさん、あそこ!」

 

ライラが指さすところに、傭兵ルーカス達が居た。

スレイは目を見開く。

彼らのすぐ傍にドラゴンが迫る。

スレイが剣を抜き、走り出す。

ライラとミクリオが急いで天響術を詠唱する。

 

「グロロロ……」

「くそ……ここまでか……」

 

傭兵ルーカスの目の前に、ドラゴンの口が迫りくる。

そこに声が響く。

 

「うおおぉ!あきらめるなぁぁぁっ!」

「ギャイヤァァ〰っ‼」

 

ドラゴンの頭を叩き付けたスレイが彼らの前に着地する。

スレイはすぐに、

 

「立って‼」

「はあぁ!」

 

そしてそこにロゼが短剣でドラゴンを斬り付ける。

傭兵ルーカス達を見て、

 

「走れぇー‼」

 

スレイとロゼがドラゴンを足止めしている間に、傭兵ルーカスが仲間を抱えてその場を離れる。

地面を滑り、下に流れる。

そこに軍を連れた騎士アリーシャと騎士セルゲイがやって来る。

 

「一体なにが起こっている⁉」

 

騎士アリーシャが、傭兵ルーカスを見て言う。

彼は騎士アリーシャを見て、

 

「ドラゴンと戦ってるんだ……スレイが!」

 

それを聞き、騎士アリーシャ達は上を見る。

そこにはドラゴンと戦うスレイ達が遠目から見える。

そしてスレイ達の声が響く。

 

「「生きるんだ‼」」

 

スレイ達は必死にドラゴンと戦う。

スレイ達はドラゴンに立ち向かっていた。

ロゼは果敢に挑む。

 

「あたしも!あんたも!」

「もちろん!こんなところで死ぬ気はないよ!」

 

スレイも果敢に挑みながら言う。

天族組は天響術を繰り出す。

だが、ドラゴンは一向に疲労も、傷も大して受けていない。

 

「グロロロッ‼」

 

ドラゴンは近くの穢れが自身に取り込む。

ロゼはドラゴンから距離を取り、

 

「しぶとい……!」

「穢れを食べているのです。自分を恐れる人間たちの。」

 

ライラが悲しそうにドラゴンを見上げる。

ザビーダは冷や汗を拭いながら、

 

「さすが質が悪い。」

 

スレイ達にも、不安を拭いきれない。

それでも果敢に挑み続ける。

レイはドラゴンと戦うスレイ達を見た後、

 

「私は私のできる事を!」

 

そう言って、傭兵ルーカス達が滑った地面を降る。

 

 

遠目でその戦いを見ていたハイランド軍とローランス軍。

騎士セルゲイでも、なかば諦めた瞳で、

 

「勝てないのか……導師の力をもってしても。」

 

他の兵達も、

 

「立っているだけでも奇跡だ。」

「なんで戦えるんだ……?」

 

そこに小さな少女が転がり込んできた。

そして立ち上がり、彼らの前に行く。

騎士アリーシャと騎士セルゲイが、

 

「レイ⁉」「妹君⁉」

 

レイはすぐに彼らの前に行き、

 

「アリーシャ、セルゲイ。お願い、お兄ちゃん達を助けて。」

「だ、だが……」

「我々には……」

 

二人は眉を寄せる。

二人は解っている。

彼らの方に行っても、足を引っ張るだけだと。

 

「共にドラゴンの前に立つだけが、戦うのではない。ドラゴンに隙や足止めをしてくれるだけでいい!一人一人で無理でも……あなた達、双方が共に手を合わせれば大きな力になる!お兄ちゃんが繋げた想いを、絆を、縁を壊さないんで!そうすれば、私もあなた達に手を貸せる!お願い、アリーシャ、セルゲイ!」

 

二人は俯き、顔を上げて互いに見つめ合った。

そして未だドラゴンと戦っているスレイ達を見る。

 

「これが導師か……」

 

そこに傭兵ルーカスが呟いていた。

騎士セルゲイは首を振り、呟く。

その瞳は先程と違い力強い。

 

「……いや、違う。」

「これがスレイなんだ。」

 

アリーシャの瞳にも先程と違い力強くなる。

騎士アリーシャと騎士セルゲイが後ろに振り返り、

 

「すぐに兵と矢をかき集めろ!」

「全戦力を持って、導師スレイを援護する!」

 

二人は兵に命令する。

だが、大半の兵達は震え、脅えている。

 

「無理です、アリーシャ様!」「セルゲイ隊長、無理があります!」

 

脅える兵達を見て、

騎士セルゲイは胸を張って、声を上げる。

 

「我々が脅えるのはドラゴンではない!真に脅えるのは自分自身の心だ!奮い立て!我々が今すべきことは戦争か!否!力を合わせて、ドラゴンを、自身の中にある恐怖を打倒すことこそが真の戦いだ!」

「そうだ!私たちがここで逃げれば、あのドラゴンは私たちの国に、民に、仲間に、家族に襲い掛かるだろう!我々は騎士だ!国の為に、民の為に、仲間の為に、家族の為に、立ち上がれ!」

 

騎士アリーシャも、兵を見渡して声を張った。

兵達は互いに見合い、

 

「す、すぐに武器を用意しろ!」

「動けるものをかき集めろ!」

 

兵達は動き出す。

そして多くの兵が集まる。

 

「ハイランドの力を見せつけろー‼」「ローランスの力を見せつけろー‼」

「否!ハイランドでもなく、ローランスでもない!」

「我々人間の力を見せつけるのだ!」

 

騎士セルゲイと騎士アリーシャが先頭に立って、声を上げた。

レイは二人の前に立つ。

 

「アリーシャ、セルゲイ、ありがとう。これで私は力を使える!」

 

レイは前に手を出す。

魔法陣が自分の前に出て、手を左右に広げるとそれは巨大な魔法陣に変わる。

 

「裁判者たる我が名において、その業を燃やせ!祖は虚無の神髄、汝の想いを力に変え、奮い立て‼」

 

それが空に浮かび、レイは二人を見る。

 

「あの魔法陣に矢を放って!」

 

そう言って、手を広げたまま、歌を歌い出す。

二人は驚きながらも頷く。

 

「「わかった!」」

 

 

スレイ達は何度も何度もドラゴンに攻撃を仕掛ける。

時に交わし、神依≪カムイ≫し、攻撃し、神依≪カムイ≫を解いて攻撃を交わす。

それの繰り返しだった。

それでも未だにドラゴンはピンピンしている。

 

ロゼがドラゴンのシッポで吹き飛ばされた。

 

「うわぁあ!」

 

だが、空中で態勢を整えて着地する。

息を整えながら、

 

「やば……結構限界かも……」

 

そこにドラゴンが近付く。

スレイがロゼに叫ぶ。

 

「ロゼ!」

 

そこに聞き覚えのある歌が聞こえてくる。

そしてドラゴンの背に無数の矢が突き刺さる。

ドラゴンが咆哮を上げる。

 

スレイが矢が飛ばされてきた方向を見ると、空中に巨大な魔法陣が浮かんでいた。

そこに矢が飛び、その魔法陣を通り抜けるとそれは黒い炎を纏ってドラゴンに向かっていく。

そしてその奥には手を広げて歌っているレイと、騎士アリーシャ、騎士セルゲイ、傭兵ルーカスの他に、ハイランド軍、ローランス軍と多くの者達が居た。

両軍ともに、魔法陣に向かって矢を放っていた。

騎士アリーシャがスレイを見上げ、

 

「スレイ、私達も戦う!」

「恐れるな!ドラゴンなど!」

 

騎士セルゲイが声を上げる。

そして傭兵ルーカスも、

 

「でかいトカゲだ!」

 

そう言うと、そこに居たすべての兵達が腕を上げ、叫ぶ。

 

「おおおおお――っ‼」

 

その声に、ロゼは立ち上がり、

 

「はは、なんか希望出てきたかも。」

「オレもだ。もうちょっとだけ――」

 

レイの歌が全体を包む。

そしてスレイ達の怪我を、疲労を吹っ飛ばす。

二人は見合い、ドラゴンに武器を構え、

 

「「やってみるかぁ!」」

 

ドラゴンに突っ込んで行く。

その間も、矢はドラゴンに向かって突き刺さる。

騎士アリーシャの声が響く。

 

「てぇーーっ‼」

「はあああ!」

「せやああ!」

 

そして兵達の声も響く。

だが、そこにドラゴンがこちらを向く。

そして火を噴き出した。

レイは歌を止め、手を前に出し、魔法陣でそれを防ぐ。

だが、支えきれずに、けれど懸命に踏みとどまる。

 

「私だけの力じゃ……」

 

しかし、レイは驚いた。

後ろを誰かが支えた。

 

「大丈夫だ、レイ。」

「アリーシャ?」

 

騎士アリーシャはレイを支えたまま、

 

「私に言ったではないか。一人ではないと。なら、レイも同じだ。レイも一人ではない。私が、ついている。」

「いや、アリーシャ姫。我々が、だ。」

 

そう言って、騎士セルゲイもレイを支える。

レイは瞳を揺らし二人を横目で見た。

そして前を向き、力を籠める。

そこに影が現れ、二人を弾き飛ばした。

 

「アリーシャ、セルゲイ!」

 

レイの瞳が赤く光り出す。

 

「絶対、守り抜く!お兄ちゃんが繋げた縁を!それに応えた彼らの想いを!」

――仕方がない。私も力を貸そう。今回はあの導師の縁を繋げたお前に免じてな。さぁ、真の裁判者としての力を使うぞ。

 

それは自分と同じ小さな少女。

違うのは表情と服の色。

その小さな少女がレイの手を後ろから握る。

レイは目を閉じ、開く。

その瞳は真っ赤に燃え上がる。

 

「裁判者たる我が名において、命ずる!審判者の力を一時封じる‼拘束せよ!」

 

 

遠くでドラゴンと戦う彼らを見ていた審判者。

だが、裁判者が手を貸したことで戦況が変わる。

彼が少しちょっかいを出した。

そして再びちょっかいを出そうとした彼の影が、彼自身を拘束し、体の中に消えた。

彼はクルッと振り返ると、

 

「あっちゃー、先を越された。これじゃ、俺はこれ以上何もできないや。ま、この後のことは見てるしかないね。」

 

と、面白ろそうに言いった。

 

 

スレイがエドナと神依≪カムイ≫をして、ドラゴンを殴り飛ばす。

ドラゴンが再びスレイ達の方を向く。

レイはドラゴンの炎を何とか防ぎ、再び手を横に広げて歌い出す。

騎士アリーシャと騎士セルゲイも立ち上がり、再び矢をドラゴンに向けて放つ。

 

そしてついにドラゴンが倒れる。

ロゼはガッツポーズになり、

 

「やったぁ。スレイ、さぁ。」

 

そしてスレイを見る。

スレイは剣をドラゴンに向けて構えるが、自分の剣をじっと見つめた。

その間も、ドラゴンは体勢を整えようと起き上がる。

そしてスレイ達を見て睨んでいる。

スレイは瞳を閉じ、そして開いてドラゴンを見つめる。

再び力強く剣を構え、ロゼを見る。

ロゼもまたスレイを見る。

そして笑みを浮かべる。

スレイは覚悟を決めて、ドラゴンを見て、

 

「『フォエス=メイマ≪清浄なるライラ≫』!」

「『ハクディム=ユーバ≪早咲きのエドナ≫』!」

 

ロゼもドラゴンを見つめて声を上げる。

スレイはライラと、ロゼはエドナと神依≪カムイ≫をして、ドラゴンが振り上げた手を交わす。

ロゼがドラゴンに拳を上げながら、

 

「これでぇっ!」

「決めるっ‼」

 

スレイも炎を纏った剣をドラゴンに叩き込む。

ドラゴンは咆哮を上げながら暴れる。

そして空に飛び上がった。

スレイとロゼはそれに必死に耐え、力を籠める。

ドラゴンが吐く炎が雲を弾き、光が戦場を包む。

 

レイは空を見上げ、

 

「貴方の願いは私が叶える。その想い、貴方の大切な人に……」

 

レイは魔法陣を消し、胸に手を当てて歌う。

そして歌を止め、騎士アリーシャと騎士セルゲイに笑顔を向ける。

騎士アリーシャの瞳が輝き、空の光を見上げ、

 

「やった……」

「人間の勝利だ!」

 

騎士セルゲイが兵達に振り返って手を上げる。

兵達は大声で叫ぶ。

 

「おおぉぉ――っ‼」

 

そこにはハイランド軍もローランス軍も関係なしに、互いに肩を抱き合って喜ぶ者、腕を組み合って喜ぶ者、互いに手を上げて喜ぶ者達。

時に笑い、泣き崩れる者、それを共に笑い、支えるのは自国の仲間であり、敵だった者達。

そこにはもはや憎しみはなく、ただただ喜びを分かつ仲間が居た。

騎士アリーシャはそれを嬉しそうに見守る。

そして微笑み、空を見上げる。

 

レイもその光景を見て、

 

「これがお兄ちゃん達が繋げた想い……そして人間の想いという名の力……」

 

レイは胸に手を当てた。

そしてその場を騎士アリーシャと騎士セルゲイが仕切り、一時的に戦争は中止となった。

騎士セルゲイがレイを見て、

 

「妹君、貴殿はどうする?スレイ達を探しに――」

「お兄ちゃん達は多分、三日くらい経たないと見つからないよ。多分、今日はドラゴンと戦って、みんな疲れて寝てるだろうし。」

「では、我が軍で貴殿を保護しよう。」

 

レイは首を振り、騎士アリーシャの手を握り、

 

「私はアリーシャといるよ。それに今日、明日は互いにこの戦争の後始末やら、話し合いとかあるでしょ。それに私がアリーシャの側に居た方が、セルゲイに会いに行きやすいし。ね?」

「……何でもお見通しか。セルゲイ殿、今後のことをまた後程。」

 

騎士アリーシャはレイに苦笑いした後、真剣な表情になって騎士セルゲイを見た。

騎士セルゲイも頷き、

 

「私もかねてより、アリーシャ姫とはお話をしたかった。また後程、話し合おう。」

 

そう言って、騎士セルゲイは歩いて行く。

レイも騎士アリーシャと共に、彼とは別の方に歩いて行く。

 

 

スレイとロゼは森の中で横になって空を見上げていた。

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

そしてスレイの中からミクリオが出てきて、戦場の方を見た。

 

「消えたな。穢れの気配。」

「……ああ。」

 

スレイは立ち上がり、戦場の方を見る。

そしてその気配を感じ取り、目を瞑る。

ロゼも立ち上がり、

 

「ちょっと疲れたね。さすがに。」

「……うん。」

「やることはやったよ。」

 

ロゼがスレイを見て言う。

そしてライラ、エドナ、ザビーダも出てきて、

 

「そうですわ。レイさんもレイさんなりに協力してくれました。」

「そうね。アリーシャ達を説得したのは、おそらくあの子でしょうし。裁判者は、絶対に自分からは動かないもの。」

「いやー、随分とたくましくなって。」

 

戦場の方を見て言う。

スレイは目を開き、

 

「うん。でも、レイもそうだけど、みんなも力を合わせてくれたおかげだ。」

「だね。」

 

ロゼは笑顔で頷く。

そしてくるっと回り、

 

「一休みしよ。元アジトとかどう?」

「でも、レイは……」

「あの嬢ちゃんのことだ。誰かの側に居るって。」

「そうね。大方、アリーシャかセルゲイでしょうね。」

 

眉を寄せるスレイに、ザビーダとエドナがすでに歩きながら言う。

ミクリオも頷き、歩き出す。

 

「そうだな。その辺はスレイよりしっかりしているから大丈夫だろう。」

「ですわね。」

 

ライラも頷き、歩き出した。

ロゼはスレイに振り返り、

 

「行くよ、スレイ。」

「わ、わかった……」

 

スレイとロゼも歩き出した。

ミクリオは歩きながら、

 

「ふぅ……こっちもクタクタだ。」

「……はい。ドラゴンを倒したんですものね。」

 

ライラが俯きながら言う。

エドナは無言で歩く。

ザビーダが帽子をクルクル回しながら、

 

「最悪の事態をなんとかしたんだ。今は生き残ったことを喜ぼうぜ。な。」

 

スレイ達は遺跡についた途端、布団の中に入る。

そしてすぐに眠ってしまった。

そのスレイの寝顔を見たミクリオは苦笑しながら、

 

「しまりのない顔だ。」

「元からでしょ。」

 

エドナはロゼの寝るベッドに腰を掛けながら言う。

そんな光景をライラは遠くから見つめていた。

そこにザビーダが近くに腰を掛け、

 

「心配いらねぇよ。スレイは大したヤ奴だ。」

「それはもう。ですが……」

「しっかりしすぎてても……ってか。母親の心境だな。」

 

そう言うと、ライラは少し頬を膨らませ、

 

「せめて姉にしてください。……歳、離れてますけど。」

 

そして再び寝ているスレイ達の方を見ると、ミクリオはスレイの横のベッドに、エドナはロゼのベッドに腰を掛けたまま寝ていた。

ザビーダもそれを一度見た後、

 

「俺らも一休みしようぜ。お姉さん。」

「はい。みなさんに毛布を掛けてから。」

 

そう言って、立ち上がり彼らに毛布を掛ける。

 

 

レイは騎士アリーシャの元に居た。

彼女は今は今後の話し合いをしている。

レイは月を見上げていた。

 

「……もう少しだけ時間が欲しいな……」

 

そう言ってしばらく月を見ていた。

と、そこに騎士アリーシャがやって来た。

 

「まだ起きていたのか?」

「ん。頑張ってるアリーシャより先には寝ないよ。」

「ふふ。では、一緒に寝てくれないか?さすがに今日は疲れた。」

「ん。いいよ。」

 

そう言って、彼女の元に行く。


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