テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第三十八話 ロゼの家族

スレイはペンドラゴに急ぎながら、

 

「ロゼはどうしてるかな?無茶してないといいけど……」

「無茶を期待しないのは無茶かもな……」

 

ミクリオがそう言うと、スレイは苦笑いし、

 

「い、急いで向かおう!」

 

 

帝都ペンドラゴに着くと、街の人達が集まっていた。

スレイ達はそこに近付く。

 

「また、やりやがったか。」

「これで五件目だな。」

 

スレイは近くに居た街人に聞く。

 

「なにがあったの?」

「知らないのか?ここんとこ毎晩、貴族の屋敷が襲われてるんだ。」

「それが妙な盗賊でな。襲う度にあんな張り紙を残していきやがる。」

 

そして街人が見つめる。

スレイもその見つめる先を見る。

そして目を見開き、

 

「『ルナールと再会が先か。貴族どもの財が尽きるのが先か。風の骨・頭領』。」

「一緒に、奪った金をばら撒いていくんだ。残念だったな。もうちょっと早くくれば拾えたんだが。」

「受けたくねぇよ。悪党の施しなんざ。」

 

街人は歩いて行った。

スレイもその場を離れ、腕を組んだ。

ミクリオが眉を寄せ、

 

「ロゼ、一人で無茶を……」

「今、気をもんでも、どうにもなりませんわ。」

「ロゼが動くとしたら夜だ。夜を待とう。」

 

スレイ達は宿屋に向かう。

レイは張り紙を見て、

 

「……信じるしかない……人の力を……」

 

そう言って、スレイ達を追う。

 

 

夜、スレイ達は宿屋を出る。

ライラがスレイを見て、

 

「貴族街を探ってみましょう。ロゼさんに会えるかもしれませんわ。」

 

スレイは頷き、貴族街に向かう。

そして歩いていると、レイが何かに反応する。

それに気付いたザビーダが、スレイの肩を掴む。

 

「待った。」

 

そしてザビーダが一軒の家に近付く。

スレイもそっと近付く。

そこから声が聞こえて来た。

 

「約束の金を払えないって、どういうことだい?」

 

聞き覚えのある声だった。

そして貴族だろう者の声も聞こえて来た。

 

「当然だ。どれだけの被害がでたと思っている。」

「警備30名が負傷。被害総額は2000万ガルド以上だぞ。」

「知らないね。警備がマヌケだからだろ。」

 

面白そうに聞き覚えのある声の主は言う。

貴族だろう者の声は、イラつきながら、

 

「賊は貴様が目的だと言ってるが?」

 

そう言うと、黙り込んだ。

そして他の貴族だろう者の声が、

 

「明朝、風の骨の処刑を執行する。そこでケリをつけろ。」

「報酬の件はそれからだ。」

「どうやって頭領を誘き出す?」

「それを考えるのが貴様の仕事だ。」

「元仲間だ。いくらでも連絡の方法はあるだろう?」

「……わかったよ。」

 

それを聞き、スレイ達はひとまず物陰に隠れる。

屋敷の中から聞き覚えのある声の主、ルナールが走って行く。

ザビーダとスレイがそれを追いかけようとするが、目の前に穢れに身を包んだ兵が現れる。

 

「憑魔≪ひょうま≫⁉」

 

スレイとザビーダは素早く兵を抑えにかかる。

だが、抑え終わった時にはもうすでに風の骨のルナールはいなかった。

ザビーダが舌打ちし、

 

「くそ!キツネ見失った。」

 

そこにライラ達が駆けて来る。

「捜そう。夜明け前に見つけないと!」

 

スレイがみんなを見る。

そして駆けて行く。

 

 

風の骨のルナールが出て言った後、貴族の家の窓が勢いよく開いた。

そこに黒いコートのようなワンピース服を着た小さな少女が赤く光る瞳を向けていた。

そして小さな少女が呟いた。

 

「なるほど。審判者が願いを叶えたのはお前の声か。だが、その後はかなり不正に近いな……」

 

そして目を細める。

その足元の影が揺らめき出し、

 

「喰らいたい所ではあるが、願いならば仕方ない。だが、覚えておけ人間ども。次はない。」

 

そう言って、風が吹き荒れると、小さな少女は居なくなっていた。

貴族達は震え上り、その場に腰を抜かして倒れ込んだ。

 

 

レイはスレイ達の元に戻り、

 

「お兄ちゃん。明朝と言うことは、今夜のうちにロゼは仲間を救おうとすると思う。なら、それを利用してあのキツネが何か仕掛けてくると思わない?」

「なるほど。確かに一理ある。スレイ。」

 

ミクリオは腕を組んだ。

そしてスレイを見る。

 

「ああ。だけど、問題はそれがどこで行われるか……」

「……人が集まりやすく、かつ処刑できる所……そうか!」

「あそこか!」

 

スレイとミクリオは互いに見合い、駆け出す。

広場のような演技場のような場所に行く。

その舞台の上には吊るされた黒い服装をした元たちと、キツネ顔の憑魔≪ひょうま≫がいる。

そして同じく黒い服を着たロゼが短剣をその憑魔≪ひょうま≫に向けて睨んでいた。

スレイ達はその場に急いで行く。

 

ロゼは短剣を向け、

 

「やっと会えたね。ルナール。」

「ああ、あんたのお膳立ての通りにな。」

「助かったよ。さすがに牢の中じゃ手が出せなかったから。」

 

それを聞いた憑魔≪ひょうま≫ルナールは片手を顔に当て、震え出す。

そして笑い出した。

 

「かかかかっ!」

 

そして笑いを止め、

 

「めんどくさいと思ったが気が変わった。やっぱり――この手で殺してやるよぉっ!」

 

と、ロゼに突っ込んで行く。

その拳は炎に纏っている。

その拳でロゼを殴る。

ロゼは腕でそれを庇いながら、後ろに吹き飛ぶ。

 

「あうっ!」

 

だが、体制を整え、着地する。

縛られていた仲間が、

 

「頭領!」

「ダメだ!逃げろ!」

 

そこに憑魔≪ひょうま≫ルナールが嬉しそうに、楽しそうに襲い掛かる。

 

「どうしたぁ⁉ボロボロじゃねぇか!」

 

だが、ロゼに襲い掛かる前に憑魔≪ひょうま≫ルナールに、ペンデュラムが襲う。

 

「うおっ⁉」

 

それを瞬時に避ける。

その投げた方向を見ると、スレイ達がすでにロゼ達の前に居た。

ロゼは嬉しそうに皆を見た。

ペンデュラムを投げたザビーダは、帽子を触り、

 

「悪いな。この子が死ぬと悲しむ奴がいるんだ。」

「こいつは任せろ!」

「ロゼはみんなを!」

 

スレイとミクリオが武器を出しながら言う。

ロゼは二人を見て、

 

「ごめん!すぐ合流するから!」

 

仲間の元へ走って行く。

レイは少し考え、ロゼを追う。

憑魔≪ひょうま≫ルナールは一度ロゼを見てから、スレイを睨み、

 

「導師か……」

 

そして襲い掛かって来る。

スレイは剣を構えて応戦する。

 

「油断すんなよ!このキツネは!」

「はい!穢れが異常に強まりました!」

 

ライラがスレイを援護しながら言う。

一方、ロゼの方は仲間の元に着き、

 

「助けに来たよ、フィル!」

「ありがとう、頭領……」

「生きてるよね、エギーユ!」

「だ、大丈夫だ。」

 

ロゼが助けた仲間をレイが治癒術をかける。

レイはある程度治癒が終わり、スレイ達を見る。

 

ザビーダが憑魔≪ひょうま≫ルナールにペンデュラムを投げる。

それを交わしながら、憑魔≪ひょうま≫ルナールが近付いて行く。

そしてすぐ傍までくると、

 

「まずは一匹っ!」

「くっ!」

 

ザビーダは後ろに避けようとするが、間に合いそうにない。

そこに短剣が突き刺さる。

 

「うおっ⁉」

 

それはロゼの短剣だ。

ロゼが上から降りてきて、短剣を抜く。

ザビーダはロゼを見て、

 

「助かった。」

「さっきのお礼。」

 

ロゼはニッと笑う。

スレイも駆けつけ、

 

「いけるのか?」

「つけるよ。身内の不始末は。」

 

そして短剣を構える。

空はすでに火が出始めている。

憑魔≪ひょうま≫ルナールは大声で怒りに燃える。

 

「うるせえっ‼」

 

そして再び襲い掛かって来る。

ロゼが短剣を振るう。

それを避け、ロゼに襲い掛かろうとする炎をミクリオの天響術で防ぐ。

そうやって、敵の攻撃を仲間が防ぎつつ、攻める方法で戦っていく。

勢いのあった憑魔≪ひょうま≫ルナールだったが、だんだんと勢いが落ちていく。

憑魔≪ひょうま≫ルナールは助けたロゼの仲間に近付く。

 

「くくくっ!」

 

レイは彼らの前に立つ。

憑魔≪ひょうま≫ルナールは前に移動し、レイの首を締め上げる。

スレイは動きを止める。

 

「お、お兄ちゃん。大丈夫、私は……どうなっても死なないから……」

「それでも痛みや恐怖は感じるだろ!」

 

レイはスレイを見つめる。

だが、レイの首を絞める方の手が炎に包まれる。

 

「くくく、くはははぁ‼」

「ルナール‼」

 

ロゼが眉を寄せて睨みつかる。

と、レイがその腕を掴む。

 

「憐れだな、否定しているその気持ちは、お前が求めていたものであり、縋っていたものだというのに……」

「黙れ!」

「……だが、お前の歩んだ道がそれを肯定し、否定を続けている……か。」

「俺の炎で燃やし尽くしてやる!その目が、その目が気に入らん‼」

 

するとレイが掴んでいた憑魔≪ひょうま≫ルナールの腕に黒い炎が燃え上がる。

 

「ぐあぁ⁉」

 

憑魔≪ひょうま≫ルナールはレイを離す。

レイは赤く光る瞳で彼を見つめ、

 

「だが、それとこれとは話が別だ。人間無勢がいきがるな!」

 

と、黒い炎をぶつけた。

憑魔≪ひょうま≫ルナールはスレイ達の方に吹き飛ばされた。

レイはその場に膝を着く。

そしてスレイがその隙を狙って、浄化の炎を叩き付ける。

だが、その炎の中で憑魔≪ひょうま≫ルナールは笑っていた。

 

「くくく……あれと違って、焼けないねぇ、導師ぃ……」

 

スレイは身構え、

 

「これは――」

「枢機卿と同じ。」

 

ロゼの仲間たちは困惑しながら、

 

「と……頭領。」

「一体なにが……」

 

ロゼが憑魔≪ひょうま≫ルナールに近付く。

スレイがロゼを見る。

 

「ロゼ。」

「あたしの仕事。」

 

そう言って、浄化の炎に包まれる憑魔≪ひょうま≫ルナールに突っ込んで行く。

そして彼を短剣で突き刺す。

 

「がっ……‼」

「『……眠りよ、康寧たれ』。」

「ざけん……じゃねえ……!安らぎもクソもあるか……。格好つけようが人殺しだ。ただの。」

「わかってる。」

「家族ゴッコの建前のクセに。」

「だったら?」

 

苦しみながら言う彼に、ロゼは静かに言う。

すると、彼の穢れが膨れ上がり、

 

「きめぇんだよぉ。」

「あっ⁉」

 

ロゼは吹き飛ばされた。

空中で回転し、着地して彼を見る。

 

「死ぬほどなあっ!」

 

そして穢れの炎に包まれ、彼は消えた。

そこに仲間のトルが駆け込んできた。

 

「頭領!」

 

ロゼは仲間に振り返り、そして憑魔≪ひょうま≫ルナールが居た場所を見つめた。

そこに仲間たちが集っている。

 

ザビーダは手を着いて座り込んでいるレイに近付いた。

レイは顔を上げ、

 

「ザビーダ……」

「大丈夫かい、嬢ちゃん。」

 

そう言ってしゃがむ。

 

「ちょうどよかった。抱っこしてくれない。」

「なになに、俺様の魅力に惹かれちゃった?」

「違う。……今、こうしてるのがやっとだから。」

 

そう言って、ザビーダは真剣な表情になり、レイを見た。

レイの手は自身を支えるのさえ、震えていた。

ザビーダは目を細める。

 

「嬢ちゃん。」

「ん。さすがに人間の体に近い今、あの力は負荷が大きい。ドラゴンをも焼き尽くし、喰らう黒い業火……ま、昔は他のもやっていたけど……。でもあれじゃないと影は、ロゼの大切な家族を喰べてしまいかねなかったから。でも、久しぶりに使ったな……」

 

そう言って、空を見上げた。

ザビーダはレイを抱えて立つ。

 

「こりゃあ、スレイとミク坊に嫉妬されちゃうな。」

「するの?」

「さてな。」

 

そう言って、スレイ達の方に歩いて行く。

 

 

ロゼ達の方は話し込んでいた。

ミクリオはその姿を見て、

 

「大丈夫かな、ロゼ……」

「エギーユ達が一緒だ。心配ないさ。」

 

スレイが仲間と共に居るロゼを見ながら言う。

ミクリオも頷き、

 

「そうだな。しかし残念だよ。ルナールにロゼたちの気持ちが伝わらなかったのは……」

「伝わっていたのかもしれませんわ。」

 

ライラも仲間と共に居るロゼを見ながら言った。

スレイはロゼを見て、

 

「どういうこと?」

「ルナールさんは、家族や仲間を否定したかったのだと思います。裁判者も、そのような事を言ってましたわ。だからこそロゼさんたちにこだわった。」

 

ライラはスレイを見る。

エドナもスレイを見上げ、

 

「多分、認めたら否定されると思ったのね。独りで生きてきた自分が。こればっかりは裁判者に同意するわ。」

 

それを聞いたミクリオは眉を寄せ、

 

「バカな!苦しい時にこだわってなんの得が――」

「そう簡単には捨てられないのさ。重い過去であるほどな。」

 

そこにレイを連れて来たザビーダが言う。

ライラは黙り込む。

そしてスレイは俯き、

 

「風の骨は、過去をみんなで背負って生きてる。それが許せなかったのかもな……」

「だとしたら……悲しいヤツだね。」

 

ロゼの仲間達を帝都ペンドラゴから逃がす。

ロゼがその仲間の背を見つめる。

スレイはロゼの背に、

 

「ロゼ……」

「……あたしは大丈夫。」

 

ロゼは拳を握りしめる。

そしてレイはその背を見つめた後、ザビーダを見上げ、

 

「もういい。降ろして。」

「はいよ。」

 

そして降りると、壁を見上げ、

 

「いつまでそこで、見ているつもりだ。」

 

スレイ達も上を見る。

すると紫髪を左右に結い上げた少女が現れる。

そしてスレイ達の前に降り立つ。

 

「やはり主には見つかってしまったか……」

「サイモン!」

 

スレイは天族サイモンを睨む。

天族サイモンは笑いながら、

 

「導師、何やら策を投じていたようだがもう遅い。ハイランド軍とローランス軍は本隊同士で衝突を始めた。お主が託していたハイランドの姫も、ローランスの騎士も無駄だったのだ。」

「違う。二人が頑張ってくれたからロゼを助けに来れた。二人のおかげだ。」

「スレイ、戦場に急ご。これはあたしの意志。」

 

ロゼがスレイに振り返る。

スレイはロゼを見て頷く。

と、レイは天族サイモンを見て、

 

「……審判者に伝えろ。お前の答えに裁判者は同意した。だが、お前のやり方には同意しないと。」

「なぜ私が言わねばならない?」

「言わないのであれば、それはそれで構わん。だが、ここでお前が死ぬだけだ。」

 

そう言うと、影がヘビのようにニョッキと地面から出てくる。

天族サイモンは一歩後ろに下がって消えた。

スレイはレイを見下ろして、

 

「レイ?」

「さ、行こう。お兄ちゃん。手遅れになる前に。」

 

そう言って、レイは先に歩き出した。

スレイは戸惑いながらも、歩き出す。


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