テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第三十六話 アリーシャの別れ

スレイ達は情報を集めて、キャメロット大橋に来ていた。

すると、橋に居た商人達が大騒ぎしていた。

 

「おい、聞いたか!また戦争だってよ!」

「ああ。今度はローランスとハイランドも本気だ。すげえ衝突になるって話だ。」

「戦場はまたグレイブガント盆地あたりか」

「こうしちゃいられねぇ!」

「ああ!食料に武器!」

「薬に、棺桶!稼ぎ時だな!」

「「「がははは!」」」

 

商人達は笑う。

レイは辺りを見て、小さく呟く。

 

「……歴史が狂いに狂いまくってる……それに、人は……」

 

スレイは眉を寄せ、

 

「本気の戦争……⁉」

 

そしてロゼ達を見て、

 

「まずい!前以上に穢れが集まったら!」

「それこそが狙いなのでしょう。」

「ヘルダルフの……か。」

 

ライラが眉を寄せ、ザビーダが少し睨むように言う。

ロゼが腰に手を当てて、

 

「それか……人間か、審判者か。」

 

ミクリオがスレイを見て、

 

「とにかく行ってみよう。グレイブガント盆地あたりらしい。」

 

スレイ達は急いでグレイブガント盆地に向かう。

スレイ達がグレイブガント盆地に着くと、

 

「……これは……」

 

レイは駆け出した。

スレイはそれを追いながら、

 

「レイ⁉」

 

そしてレイは立ち止まった。

そこには一人の天族の女性が、地面に座り込んでいた。

スレイが膝を着き、

 

「どうしたんですか⁉」

 

女性は泣きながら、

 

「ああ……あの人が……さらわれてしまったの!獅子の顔をした憑魔≪ひょうま≫にっ!」

「ヘルダルフ!」

 

スレイは眉を寄せた。

レイは拳を握りしめる。

 

「審判者、何を考えている!それは……‼」

「レイ?」

 

ロゼは首を傾げて、レイを見た。

ライラが女性の前に膝を着き、

 

「お気持ちは察します。ですが、ここは危険です。どうか非難を。」

「でも、でも……!あの人が!」

「すぐにこの地から離れろとは言わない。ただ、この地は穢れに満ちる。いや、満ち過ぎている。このままでは……貴女も憑魔≪ひょうま≫と化してしまう。」

 

レイは女性を見る。

女性はさらに涙を流し、

 

「ああ!ああ‼あの人は……‼」

「……貴女が望むのであれば、私は叶えよう。でも、今はその時ではない。」

「……あなたは……」

 

そう言って、レイは駆け出した。

スレイは立ち上がり、

 

「とりあえず、安全な所に逃げて!」

 

そしてレイを追って駆けだした。

 

 

スレイはレイの駆け出した方へ行くと、そこはローランス軍の陣営地だった。

スレイとロゼは物陰に隠れる。

兵達が慌ただしく動いていた。

 

「青嵐騎士団の被害報告!負傷118!死亡30!」

「衛生兵!包帯が足らんぞ!」

「気をつけろ……化け物みたいな女騎士が……」

「伝令!敵部隊に負傷約50を与えり!」

 

スレイは息をのむ。

そしてロゼは鋭い目つきで戦況を把握する。

そしてミクリオが眉を寄せ、

 

「決着したのか?」

「冗談だろ。」

 

ザビーダが肩を少し上げる。

ライラが厳しい表情で、

 

「多分、先発部隊の小競り合いでしょう。」

「両国の本隊同士の衝突なら、この程度で済むはずがないもんね。」

 

ロゼが兵達の状況を整理し、ライラを見ながら言う。

スレイは眉を深くし、

 

「この程度って……」

「言葉通りだよ、お兄ちゃん。」

 

どこに居たのか、崖の上からレイが降りて来た。

その瞳は赤く光っている。

 

「いつの世も、本気の戦争とは命の取り合い。国の為、仲間の為、家族の為、自身の栄誉の為……人それぞれ想いは違えど、同じ意志の元にぶつかり合う。中にはこの戦争を楽しみ、殺すことを面白がってる者もいるけど、根本は変わらない。今はまだ、遊び程度。でなければ、この程度の負傷、死傷ではすまない。」

「レイ……」

 

スレイはレイを見た。

レイは慌ただしく動く兵達を見て、

 

「くだらない、愚かな人間……本当、いつの世も変わらないな。」

 

スレイが言葉をかけようとした時、

 

「白皇騎士団はまだか!」

「ラストンベルの避難誘導に、手まどっている模様です!」

「くっ!そんな場合かっ!」

 

ローランス軍兵の熱気はさらに荒々しくなる。

ライラはスレイを見て、

 

「スレイさん、このままここにいても。」

「白皇騎士団がラストンベルにいるって。」

「セルゲイに会ってみよう。」

 

ロゼとミクリオがスレイを見る。

スレイは立ち上がり、

 

「……そうだな。全面衝突だけは止めないと!」

「うん。いくとこまでいっちゃう気がする。今度こそ!それにさらわれた天族も気になるし!」

「ああ!」

 

スレイ達は走り出す。

レイは一度、兵達を見てからスレイ達を追う。

 

ヴァーグラン森林に入ると、レイはハッとしたように何かを察した。

辺りを見渡し、

 

「お兄ちゃん!ロゼ!」

 

走っていたスレイ達は止まり、振り返る。

レイが指さす方向には、怪我をしてヨロヨロしながら歩く少年。

そして膝を着いて、座り込む。

その少年はロゼを見て、

 

「と、頭領……」

「何があったの、トル?」

 

ロゼは眉を寄せて、彼の元に行く。

彼はロゼを見て、

 

「みんなが……ペンドラゴで捕まっちゃった。枢機卿の暗殺の容疑……僕たちがハイランドに頼まれてやったって。」

「なんで?あれはあたしが勝手に――」

「ルナールが帝国に持ちかけたんだ。そういうことにすればいいって。」

 

それを聞いたミクリオは腕を組み、

 

「なるほど。帝国は開戦の大義名分を探していただろうからね。」

「枢機卿の暗殺をハイランドが謀ったことにできれば。」

「十分すぎるな。」

 

ライラとザビーダが眉を寄せる。

スレイは腕を組み、考え込む。

ロゼの仲間トルは立ち上がり、

 

「ルナールに罠を張られて……エギーユが盾になって僕だけ……。ごめん……逃げるのが精一杯だった。」

 

そして彼は涙を流す。

ロゼは瞳を揺らし、

 

「覚悟はしてた……そういう仕事だから。けど……」

「行ってもいいよ、ロゼ。」

 

スレイが考えをまとめ、ロゼを見て言う。

ロゼは眉を寄せて、スレイを見る。

 

「止めないとヤバイじゃない、戦争。」

「けど、大義名分を得たらやることは決まってる。」

「証拠隠滅だわな。」

 

ミクリオとザビーダはロゼを見る。

エドナもロゼを見て、

 

「放ってけないんでしょ。どうせ。」

「家族は大切ですもの。」

 

ライラも頷く。

スレイはロゼを見つめ、

 

「自分で言ったじゃないか。ロゼとオレの仕事は違うって。」

「……ロゼ。今行かなきゃ、きっと後悔するよ。今のロゼの中にある選択肢は二つ。家族を救うか見捨てるか。貴方はどちらを取るの?」

 

レイはロゼを見つめる。

ロゼは瞳を揺らし、その瞳は力強い瞳に代わる。

そしてロゼは頷き、

 

「ありがと!行ってくる!」

 

そして駆けて行った。

ライラはスレイを見て、

 

「私たちはどうします?風の骨救出と戦争。」

「どっちもなんとかしなきゃだが、体はひとつ。」

 

ザビーダもスレイを見る。

ミクリオもスレイを見て、

 

「セルゲイはラストンベル。」

「ハイランド陣地にはアリーシャがいるかもね。」

 

エドナは傘をトントンして、彼に言う。

ザビーダは帽子を取り、クルクル回しながら、

 

「ここら辺、洞窟を通ってハイランドへ抜けられたよな、確か。」

「ラモラック洞穴ね。」

 

エドナが付け足す。

そして、一人残ったロゼの仲間トルは傷を抑え、

 

「情けないけど、今の僕じゃ足でまといになるだけだ。けど、君たちなら頭領を……。ごめん……頼れる義理じゃないのはわかってる。」

 

そう言って、歩いて行った。

スレイは眉を寄せる。

レイはスレイを見上げ、

 

「私は、お兄ちゃんの選択に従うよ。でもお兄ちゃんなら、もう選択を選んでる。どれかを止めるか、それとも全てを止めるか。」

 

スレイは考え込み、

 

「俺は――まず、アリーシャの方に行く。優勢なハイランド軍なら、アリーシャの言葉を聞くと思うし。そしてセルゲイの所に行って、両国の衝突を少しでも遅らせて貰う。その隙に、ロゼの援護に向かう。」

「……なるほどね。それで行こう。」

 

ミクリオが頷く。

スレイはレイを見て、

 

「レイも、それでいいか?」

「何で私に聞くの?私はお兄ちゃんの選択に従うと言った。」

 

レイは首を傾げる。

スレイは頭を掻きながら、

 

「いや、レイはレイとしての感情と裁判者としての感情があるかも、って思って……」

 

レイは瞳を揺らし、小さく笑って、

 

「私はこの世界で一番人間は信用できないと思ってる。でも、人間以上に儚く、脆く、感情に左右される生き物は少ない。それは天族もそうかもしれないけど、天族はその区切りがはっきりしてる。」

 

そして真剣な表情で、

 

「だから、私はお兄ちゃんが結んだ縁≪えにし≫を、絆を信じる。」

 

そして瞬きし、

 

「導師、見せてみろ。あの先代導師ミケルのように。そしてミケルとは違った選択の答えを。」

 

そう言って再び瞬きして、

 

「さ、行こう。お兄ちゃん。」

「ああ!」

 

そしてスレイ達は少女アリーシャに会いに、ハイランドへと向かう。

 

ハイランド側に向かい、ハイランド軍陣営地に来た。

辺りは穢れに満ちていた。

そして中に入り、少女アリーシャを探す。

そこに聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。

 

「総攻撃の準備急げ!勅命が下り次第、総力をもってローランス軍を殲滅する!」

 

そう兵に命令する青い騎士服を纏った女性。

兵は敬礼し、走って行く。

そしてその女性・騎士マルトランはこちらを見て、

 

「これは導師スレイ。ようこそ我が陣地へ。丁度いい。まもなく総攻撃を命ずる勅命が届く予定なのだ。君たちがよく知る人物を使者としてね。」

「まさか……!」

 

スレイは眉を寄せた。

ライラも眉を寄せ、口元を手で覆い、

 

「アリーシャさんにそんな役目を⁉」

 

騎士マルトランは腕を組み、

 

「ふふふ。バルトロの小細工だろうが面白い趣向だ。素直に届ければ大戦が始めり、拒否すれば反逆罪で処罰できる――アリーシャの困り顔が目に浮かぶよ。」

「あなたは……!」

 

スレイは拳を握りしめる。

レイは彼女をいつになく、険しく睨みつけていた。

彼女はスレイを見つめ、

 

「私を斬るか?いいだろう。お前をローランスの刺客だと叫べば、勅命がなくとも総攻撃の名分が立つ。」

「くっ!」

 

スレイは俯く。

ザビーダは騎士マルトランを睨みながら言う。

 

「こりゃあ分が悪いぜ。どうにも。」

「兵たちを抑えるにはアリーシャの力が必要だ。」

 

ミクリオが周りを見て言う。

騎士マルトランは目を細め、

 

「アリーシャ……か。」

 

そして力強い瞳で、スレイ達を見る。

 

「やってみるがいい。できるものならな。」

 

そう言って、背を向けて歩いて行った。

レイはその背を見つめた。

 

「……貴女の願いが叶うか、アリーシャの願いが叶うか……でも、貴女のその選択はきっと……」

 

そしてスレイ達はすでに歩き出していた。

レイもその後に付いて行く。

グレイブガント盆地から出て、

 

「陣地にアリーシャはいなっかった。レディレイクに行ってみよう。」

 

ミクリオがスレイを見る。

ライラが俯き、

 

「でも、アリーシャさんを頼ればマルトランさんが憑魔≪ひょうま≫だと教えることになりますが……」

「傷つくわね。あの子。」

 

エドナは傘をクルクル回していう。

スレイは拳を握りしめ、

 

「それでもアリーシャを頼るしか……」

 

そして一行は急いでレディレイクに向かう。

 

 

レディレイクに着き、アリーシャ邸に向かう。

家の前に着くと、

 

「戦いの邪魔ばかり、よくもぉっ!」

「ハイランドの面汚しが!」

 

兵達が数人、騎士アリーシャに武器を構えていた。

騎士アリーシャは身構え、

 

「急になにをっ⁉」

「アリーシャ!」

 

そこにスレイが駆け込む。

スレイが武器を手に、憑魔≪ひょうま≫兵を落ち着かせる。

騎士アリーシャは現れたスレイとレイを見て、

 

「スレイ⁉レイ⁉」

「話は後!……ライラ!」

「はい!」

 

ライラとレイが騎士アリーシャの元へ駆けて行く。

そしてレイが騎士アリーシャの服を引っ張り、

 

「アリーシャ、手を出して。お兄ちゃんと従士契約を復活させる。」

「だが、スレイに負担が……」

「大丈夫、今のお兄ちゃんなら。」

 

レイは騎士アリーシャを見つめる。

騎士アリーシャは頷き、手を出す。

その手をライラが握る。

そして契約が復活する。

ライラはスレイに叫ぶ。

 

「従士契約、復活させました!」

 

アリーシャは槍を構える。

憑魔≪ひょうま≫兵に突っ込んで行く。

ザビーダがアリーシャに当たりそうになる憑魔≪ひょうま≫兵の武器を弾き飛ばしながら、

 

「よ、お姫様、俺はザビーダ。よろしくな。」

「は、はあ。」

 

アリーシャは首を少し傾けた。

ザビーダは笑いながら、

 

「その顔、聞きたいことがあるって言ってるぜ?」

「いえ、今は戦いに集中します!」

 

アリーシャは再び敵に向かって突っ込んで行った。

レイがザビーダを見上げ、

 

「はい、ガンバ。」

「お、おう……」

 

ザビーダも敵を防ぎに行く。

そして戦いながら、説明をする。

そしてアリーシャと共に、敵を吹き飛ばし、

 

「と、まぁ、おおよそはそんな事情さ。」

「そうですか……」

 

アリーシャは武器をしまう。

ミクリオはザビーダを睨んで、

 

「ザビーダの話ばっかりだぞ。」

「あはは、まぁおいおいね。」

 

スレイは苦笑いする。

そこにザビーダが、

 

「だって、俺様……嬢ちゃんに背中押してもらったし♪」

「押してない。」

 

レイはそっぽ向く。

スレイは真剣な表情に戻り、

 

「でも何で、兵士がアリーシャを?」

「私がもたもたしているからだろう。攻撃を命ずる勅命を届けずにな。」

 

アリーシャは封筒を取り出して、それを見つめる。

ミクリオは腕を組み、

 

「そこまで憎悪と不満が……」

「見ての通りです。戦争は……とめられそうにありません。」

 

アリーシャは背を向ける。

レイは腕を組む。

エドナはアリーシャの背に、

 

「あきらめるの?」

「だって、どうしようもないではありませんか!ローランスを討てと王の命令――勅命は出されてしまったのです!」

 

アリーシャが珍しく怒鳴り声を出した。

ザビーダが帽子を上げ、

 

「そんなもの握りつぶしちまえば?都合が悪いなら。」

「ザビーダ様。握りつぶすとはどういう意味でしょう?」

 

アリーシャは振り返り、眉を寄せる。

ザビーダはニット笑い、

 

「そのままさ。命令書を隠しちまえってこと。」

「無茶な!」

 

アリーシャはさらに眉を寄せた。

ミクリオもザビーダを見上げ、

 

「そうだ。アリーシャにできるはずが――」

「別に強制はしないよ。悲しみにくれる憂い顔も嫌いじゃないしな。」

 

ザビーダは両手を肩まで上げて、首を少し振った。

アリーシャは黙り込む。

レイはアリーシャを見上げ、

 

「アリーシャ。私はライラ達に、自分の気持ちは言うべきだと教わった。だからアリーシャも自分の気持ちに素直になって。もちろん、ザビーダのいうように、強制はしない。お兄ちゃんに協力すると言うことは、国を敵に回す行為かもしれない。それに、アリーシャにとって大切なものを失う結果になるかもしれない。だから、アリーシャのしたいように、想うようにして。」

 

しばらくしてアリーシャは俯いた。

 

「スレイ、戦争をとめるには、ザビーダ様の言う通りにするしかないようだ。また力を貸してもらえないだろうか。」

 

そして、顔を上げた。

ライラが手を握り合わせ、俯く。

 

「レイさんがさっき言ったように、本当にいいのですか?国に反抗することになるますわよ?」

「承知の上です。」

 

アリーシャは強い眼差しで、頷く。

スレイは頷き、

 

「わかった。」

「アリーシャが覚悟を決めたのなら、嫌とは言えないね。」

 

ミクリオはスレイを見て言う。

アリーシャは奥のザビーダを見て、

 

「ザビーダ様も。頼りにしてよろしいか?」

「健気な姫のためとあらば。泣きそうな顔より、ずっと好みだしな。」

 

ザビーダは帽子を上げ、ニッと笑う。

アリーシャは照れながら、視線を外す。

レイはザビーダを見上げ、

 

「アリーシャを泣かしたら、ザビーダは岩の下敷き。アリーシャに手を出したら、火あぶりね。」

「ちょおおぉ!嬢ちゃん⁉」

 

ザビーダは目を見開いて、レイを見た。

エドナが意地悪顔になり、

 

「いいわね。いつでも、どこでも、やってやるわ。」

「そう……ですわね。私も、いつでも、どこでもやりますわ。」

 

ライラも手を合わせて、笑顔で言う。

ザビーダは一歩下がりながら、

 

「ちょっ⁉なんか三人とも目が本気なんですけど⁉」

「日頃の行いだね。」

「はは……」

 

ミクリオは半眼で、スレイは頬を掻きながら苦笑いする。

アリーシャも少し笑った後、真剣な表情に戻り、

 

「幸い、軍を指揮しているのはマルトラン師匠≪せんせい≫だ。きっと師匠≪せんせい≫も協力してくれる。」

 

スレイ達はそれを聞き、各々反応する。

それに気付いたアリーシャは首を少し傾げ、

 

「……どうした?」

「それは無理よ。マルトランは憑魔≪ひょうま≫だもの。」

 

エドナがアリーシャを見て言った。

その表情は少しだけ暗い。

 

「え……⁉」

 

アリーシャの表情が変わる。

目を見開き、固まる。

レイは視線を外す。

 

「災禍の顕主の配下として戦争を煽った張本人なのよ。」

「エドナ!」

 

ミクリオが振り返って、眉を寄せた。

ライラもエドナに振り返った。

エドナは眉寄せて、

 

「教えておかないとマズいでしょ。」

「だな。後ろから刺されてからじゃ遅い。」

 

ザビーダも振り返った二人を見て言う。

アリーシャは眉を寄せ、胸に手を当て、

 

「うそだ!冗談でも言っていいことと悪いことが!」

「落ち着いて!アリーシャさん!」

 

ライラがアリーシャに歩み寄る。

アリーシャは泣きそうな顔で、

 

「そんな……マルトラン師匠≪せんせい≫は……ずっと私を励ましてくれて――」

 

スレイはアリーシャの視線を外した。

レイは俯いた後、顔を上げ、

 

「エドナの言う通りだよ。私は言った。『お兄ちゃんに協力すると言うことは、国を敵に回す行為かもしれない。それに、アリーシャにとって大切なものを失う結果になるかもしれない』っと。そしてアリーシャは選んだ。こっちの選択肢を。」

 

アリーシャは一度俯くと、顔を上げ、

 

「……取り乱してすまない。会えばわかることだ。マルトラン師匠≪せんせい≫に。」

 

そして一人先に歩き出す。

ザビーダは肩を少し上げ、

 

「また泣きそうな顔になっちまったか。」

 

スレイは俯き、顔を上げる。

そしてアリーシャの後を追う。

合流し、街の入り口まで来ると、アリーシャが立ち止まる。

 

「……スレイ。目は……大丈夫だろうか?」

 

スレイはアリーシャに振り返り、

 

「大丈夫。見えるよ。」

「お兄ちゃんも、あれから力をつけたからね。」

 

レイはスレイを見上げて言う。

アリーシャは少しほっとしたように、

 

「よかった。成長したのだな。」

「けど、少しかすんでる。」

 

アリーシャはスレイの言葉に目を見開き、

 

「少しって!戦いでは致命傷に――」

「だとしても、これはアリーシャが見届けるべきことだと思う。」

 

スレイはまっすぐ彼女を見て言う。

レイは少し笑って、アリーシャを見て頷く。

 

「スレイ……レイ……」

 

アリーシャは眉を寄せて、瞳を揺らす。

エドナが傘を肩でトントンさせ、

 

「今更よ。ウダウダ言わない。」

「どうせスレイにフォローがいる事は変わらないし。ね、レイ。」

 

ミクリオは腕を組んで、スレイを見た。

レイはミクリオを見て、

 

「ん。そうだね。」

 

スレイはアリーシャを見つめ、

 

「行こう、アリーシャ。」

「……ああ!」

 

アリーシャも力強く頷く。

外に出て、しばらくした後、今度はスレイが立ち止まる。

そしてアリーシャに思いっきり頭を下げた。

 

「アリーシャ!……あの、マルトランさんのこと黙っててごめん。」

「スレイ、顔を上げてくれ。私のことを、考えてくれたのだろう?謝るのは私の方だ。こんなに動揺してしまう自分が情けない……」

 

アリーシャは俯いた。

レイはアリーシャを見上げ、

 

「それはアリーシャが本当に、あの人を想っているから。大切だと。それが人にとって当たり前の事なんだよ。」

「ありがとう、レイ。」

 

アリーシャはレイを見て少し笑った。

スレイ達は戦場に急ぐ。

フォルクエン丘陵を進んでいると、レイが立ち止まった。

スレイもそれに気付き警戒する。

スレイ達の前からは青い騎士服を纏った女性が歩いてくる。

アリーシャがその女性を見て、

 

「師匠≪せんせい≫……!」

 

青い騎士服を纏った女性マルトランはスレイ達の前で止まり、しばしスレイ達と睨み合った。

その後アリーシャを見て、

 

「……やっと気付いたか。私の正体に。」

「なぜ……」

 

アリーシャは瞳を揺らして、騎士マルトランを見る。

彼女はアリーシャを見つめ、

 

「私の信じる理想のためだ。お前が使者だろう。総攻撃を命じる勅命を渡せ。」

 

そう言って、腰に手を当ててアリーシャを見据える。

アリーシャは歯を食いしばり、騎士マルトランを睨む。

騎士マルトランはアリーシャ達を見て、

 

「では、力ずくで奪うとしよう。……来い。ここでは人目につく。」

 

そう言って、歩いて行った。

スレイはアリーシャを見て、

 

「アリーシャ……」

「師匠≪せんせい≫は……ずっと私を……」

 

アリーシャは拳を握りしめる。

スレイ達は騎士マルトランを追って、ボールス遺跡に入った。

アリーシャは歩きながら、

 

「なぜ……なぜこんな……」

「アリーシャ……」

 

スレイは心配そうに彼女を見る。

ミクリオもアリーシャを見てから、ライラを見て、

 

「ライラ、マルトランはなんの憑魔≪ひょうま≫なんだ?」

「それが……正体が見えないのです。」

 

ライラは首を振りながら言う。

ミクリオは眉を寄せ、

 

「わかるのは手強いってことだけか。」

「強い美人。相手にとって不足はないね。」

 

ザビーダはニット笑いながら言う。

と、そのとき地面が揺れる。

否、地面から岩が飛び出した。

そしてレイとアリーシャだけがスレイ達と別れ離れとなる。

スレイはエドナと神依≪カムイ≫をし、岩を叩くが何の変化も現れない。

レイは岩を触り、

 

「審判者の仕業か……お兄ちゃん!私とアリーシャは別方向から合流する!お兄ちゃん達はそのまま進んで。」

「スレイ。そうしてくれ。必ず追いつく!」

 

と、岩の向こう側からスレイの声が響く。

 

「わかった!気をつけて!」

「ああ!」

 

アリーシャが返事をし、レイを見る。

レイはすでに辺りを見渡し、

 

「アリーシャ、ここから行こう。」

 

レイは岩を登り始める。

その先は少し森がかったようになっていた。

レイに続き、アリーシャも岩を登る。

そして森の中を進んで行く。

レイは歩きながら、

 

「アリーシャ、もし憑魔≪ひょうま≫が現れたら――」

「レイ、憑魔≪ひょうま≫が現れたら私が守る。その時は私の後ろに隠れてくれ。」

 

アリーシャがその時の事を先に話した。

レイは自分の後ろに、と言おうとしたので少しビックリした。

なので、アリーシャを見上げ、

 

「……なら、私はアリーシャを守るよ。」

「え?」

「お互いに無茶はしない程度にね。」

「ああ!」

 

アリーシャは頷く。

さらに突き進み、レイがアリーシャを止める。

 

「待って、アリーシャ!」

 

レイとアリーシャの前には無数のゾンビのような兵が現れる。

赤く光る眼がゆらゆらと闇の中から出てくる。

アリーシャは恐怖にかられたが、すぐに槍を構えてレイの前に立つ。

レイは震えながらも、力強く立つアリーシャを見て、

 

「ありがとう、アリーシャ。でも、あれはただの憑魔≪ひょうま≫じゃない。」

 

そしてアリーシャの前に立つ。

アリーシャは眉を寄せて、

 

「レイ!」

「大丈夫。でも、私の前には出てはダメ。」

 

そう言うと、レイの足元の影が揺らめき出した。

レイの瞳も赤く光り出す。

 

「今からやる事を、お兄ちゃん達には内緒にしておいて。でないと、お兄ちゃん達の側に居られなくなる……」

 

レイは手を前に出す。

影がゾンビ兵達を襲う。

が、中には対抗する者もいる。

 

「抵抗するか……だが、お前達をあるべき所に返さねばならない。裁判者として!」

 

レイは前に出していた手を左右に広げる。

魔法陣が浮かび、結界を張る。

影から弓を取り出し、

 

「アリーシャ、恐かったら目を閉じていて……」

「わ、私は……」

 

アリーシャは構えていた槍を強く握りしめ、自分を保っていた。

レイは弦を引く。

そしてそれを放つと、雷がゾンビ兵達を襲う。

 

「あなたたちは帰らねばならない。喰らえ!」

 

レイの影は痺れて動かなくなった無数のゾンビ兵達を喰らい出す。

影がゾンビ兵達を喰らい尽くすと、影に戻る。

レイは弓も影に戻す。

 

「れ、レイ……」

「怖いのは当然。お兄ちゃん達も、前は恐がってたし。今も、かもだけど。」

「君は憑魔≪ひょうま≫なのか?」

 

レイは首を振り、アリーシャに振り返る。

そしてアリーシャを見上げ、

 

「私は憑魔≪ひょうま≫ではないよ。」

「では――」

「でも、人でも、導師でも、従士でもない。勿論、天族でも。」

 

アリーシャは眉寄せる。

レイは悲しそうに笑い、

 

「結構、ややこしいから詳しくは言えないんだけど……アリーシャにも、解りやすく言えば……人間、天族、憑魔≪ひょうま≫、ありとあらゆる世界の理や歴史を見届けるもの……って思ってくれればいいよ。」

「レイ……は……昔のことを思い出したのか?」

「ん~、まぁ……そんな感じ。」

 

レイはアリーシャに手を差し出し、

 

「さ、行こう。お兄ちゃん達が待ってる。そしてアリーシャはアリーシャの出した選択を信じ、進んで。そして忘れないで、アリーシャは一人じゃない。今もこの先も。それは前にも言ったけど、友が貴方を支え、そしてその友を貴女が支える。ま、信じる信じないは、アリーシャ次第だけど。」

「……ああ。レイ、約束だ。今回の事はスレイには言わない。」

 

そしてレイの手を取る。

レイは微笑み、

 

「ん。ありがとう、アリーシャ。」

 

そして森を抜け、下に降りる。

と、走って来る足音があった。

 

「レイ!アリーシャ!」

「スレイ!」

 

スレイは二人を見て、

 

「良かった。無事みたいだ。」

「ああ。心配をかけた。」

「さぁ、行こう。」

 

スレイはアリーシャを力強く見た。

アリーシャは頷く。

そして騎士マルトランの元に着くと、彼女は自身の影から穢れに包まれた槍が出て来た。

 

「大仕事が控えている。手早く終わらせよう。」

「なぜです!師匠≪せんせい≫っ!」

「この期に及んで、まだ問いを吐くかっ!」

「……っ!」

 

アリーシャは眉を寄せ、歯を食いしばる。

騎士マルトランは槍を構え、

 

「今見ているものが現実であり事実だ。そんな基本もわきまえぬ者が導こうなど、笑止極まる。」

「理解はしています。でも……」

「では、悟っただろう。お前の青臭い理想など、一片の意味も持たないという現実を。国にとっても。民にとっても。もちろん私にとってもだ。」

「だったら!どうして私を支えるフリをしたんですか⁉」

「ふたつだけ利用価値があったからだ。お前は、ハイランドとローランスを最大の力で衝突させるための道具だった。バルトロを反発させ暴走させる役には立った。」

 

アリーシャは俯き、黙り込む。

スレイは眉を寄せ、

 

「アリーシャの理想には、意味も価値もあるよ。」

「ああ。少なくともスレイは信じてる。」

「スレイさんだけではありませんわ。」

 

スレイの言葉に、ミクリオ、ライラが続いた。

騎士マルトランはスレイ達を見て、

 

「愛弟子への最期の授業だ。邪魔しないでもらいたいな。」

「邪魔が入るのが現実ってもんさ。」

「そっちもよくしゃべるのね。この期に及んで。」

 

ザビーダとエドナが騎士マルトランを見て言う。

騎士マルトランは少し間を置いた後、

 

「確かに。最早かわすのは刃だけで十分だ。もうひとつの価値のためにもな。」

 

最後の方は小さく呟いた。

そしてレイが騎士マルトランの前に歩み出る。

そして赤く光る瞳で、騎士マルトランを見る。

騎士マルトランは槍をレイに向け、

 

「貴様でも邪魔はさせんぞ、裁判者!」

 

そして槍を突き出す。

影が槍の先を掴み、

 

「別に手を出す気はない。私はお前達の選択の結果を見るだけだ。」

 

そして槍を押しやった。

赤く光る瞳で、レイでなく、裁判者として彼女に言った。

 

「お前の中にあるその想いが最終的にどういう結果になるか、のな。現に、私はお前の話が終わるまでは手を出さなかっただろ。」

 

レイ≪裁判者≫は岩の上に乗った。

そしてアリーシャを見た後、視線を全体に戻した。

騎士マルトランは槍を構えなおす。

 

「アリーシャは下がって。」

 

スレイ達が武器を構える。

だが、アリーシャは一度瞬きし、槍を構える。

スレイはそれを見て、

 

「わかった。」

 

そしてアリーシャは騎士マルトランに突っ込む。

 

「やってみせる!」

「ふん!隙だらけだぞ、アリーシャ!」

 

騎士マルトランはアリーシャの槍を簡単に弾く。

そして槍先でない方で、叩き飛ばす。

そこにザビーダの天響術を繰り出す。

 

「ライラ!こいつの弱点は?」

「わかりません……この方は!憑魔≪ひょうま≫なのに正体を抑え込んでいる!」

 

ザビーダの天響術を避けた騎士マルトランは槍をザビーダに突き出してくる。

ザビーダもそれを避けながら、ライラの説明を聞いた。

彼女から距離を取り、

 

「へぇ~、それはすげえ!」

 

そして天響術を再び繰り出した。

そこにエドナ、ミクリオ、ライラの天響術も繰り出した。

だが、それらすべてを騎士マルトランは切り裂いた。

 

アリーシャは立ち上がり、再び槍を構えて騎士マルトランに突っ込んで行く。

そこにスレイも加わるが、騎士マルトランは華麗な槍さばきで受け流す。

それでもアリーシャは何度も挑んで行く。

その姿を、瞳を騎士マルトランは見つめた。

そして騎士マルトランは槍に力を込めて、アリーシャを叩き飛ばす。

レイ≪裁判者≫はそれを見て、

 

「それが貴女の≪お前の≫選択か……」

 

そしてアリーシャは踏みとどまり、スレイを見て、

 

「スレイ!」

 

そこにタイミングを合わせたように、天族達の天響術を繰り出した。

そこにスレイが浄化の炎を纏った剣で、騎士マルトランを包み込む。

 

「う、うわぁ!」

 

騎士マルトランは膝を着く。

だが、浄化の炎は穢れの炎へと変わる。

そしてそれは消えた。

レイ≪裁判者≫はスレイ達も元に降りてきた。

ライラは騎士マルトランのそれを見て、

 

「この方も……!」

「ふふ、浄化などされてたまるか……真に浄化されるべきはっ!」

 

そして騎士マルトランは立ち上がる。

彼女はスレイ達を、裁判者≪レイ≫を睨み、

 

「この世界の方なのだから!」

「もうやめてください、師匠≪せんせい≫‼あなたは災禍の顕主に騙されてるんです‼」

 

アリーシャは泣きそうな顔、瞳で彼女を見る。

騎士マルトランはじっとそれを見た後、少し笑い、アリーシャの方に歩いてくる。

 

「……どこまでも優しいな。私は、そんなお前が――」

 

そしてアリーシャの方に手を伸ばし、彼女の槍を掴んで自身に刺した。

アリーシャは眉を寄せ、目を見開く。

騎士マルトランは顔を上げ、アリーシャを一度見た後、

 

「がはっ……‼」

 

そして俯いたまま、

 

「反吐が出るほど嫌いだったよ。」

「……っ‼」

 

そしてアリーシャの顔に手を伸ばし、その頬を触る。

アリーシャの表情は戸惑いと悲しみになっていた。

騎士マルトランはいつもの師としての顔で、

 

「これが現実だよ……アリーシャ。」

 

そう言って、後ろに倒れ込んだ。

アリーシャの槍には穢れに塗れた血がついていた。

アリーシャは瞳を揺らし、悲しみに震え出す。

そしてその場に座り込んだ。

騎士マルトランは空を見上げ、

 

「あの方の理想に身を捧げた証――後悔は……ない。」

 

そして騎士マルトランは穢れの中に飲み込まれた。

アリーシャはその場所に手を伸ばす。

だが、それはすでに消え、何も残っていない。

 

「あああ……!」

 

アリーシャは涙を目に溜め、俯いた。

スレイがその肩に手を伸ばした時、

 

「ううっ……‼」

「アリーシャ!」

 

アリーシャは走り出した。

スレイもそれをすぐに追いかける。

 

 

レイは消えた騎士マルトランの居た場所を見て、

 

「……お前の願いは叶えられない。だが、想いは繋げられる。」

 

そう言って、走って行ったスレイ達を追いかける。

 

 

アリーシャは立ち止まり、俯いていた。

その背に、スレイが声をかけた。

 

「アリーシャ……」

「もう嫌だ……」

 

そう言って、アリーシャは泣きながらスレイに振り返った。

そしてスレイの胸に抱き付き、

 

「嫌だ!嫌だ!家に帰りたい!知らないよ!戦争も国も民も!陰口を言われるのも、意地悪されるのも、もうたくさん!王女も騎士もやめる。バルトロでも誰でも勝手にすればいい!」

 

泣きながらそう叫ぶ。

スレイはアリーシャの肩に手を乗せる。

そこにレイ≪裁判者≫現れる。

 

「では、全てを捨て自分は逃げ出すと?今までやってきたこと全てを投げだし、民の期待や想いに背を向けて。」

「だって、みんなのためにって頑張っても……いいことなんかなかった……なにも……」

「本当に?あの騎士は、何も教えなかった?……アリーシャの繋げた縁≪えにし≫や想いは、なにも生まなかった?」

 

レイ≪裁判者≫はスレイに泣き縋っているアリーシャを見つめる。

その表情は裁判者というより、レイだった。

レイは優しく、それでいて厳しい瞳でアリーシャを見つめる。

アリーシャは首を振り、

 

「ああ……なのに……それなのに……」

「思っちゃうんだよな。戦争を止めたいって。」

 

スレイが優しく微笑みながら言う。

そしてアリーシャの見上げたスレイの顔は、ニッと笑う。

 

「なんかオレも同じカンジだから。」

「『騎士は守るもののために強くあれ。民のために優しくあれ』」

 

アリーシャは思い出すように、噛みしめるように呟く。

レイは嬉しそうに微笑んだ。

アリーシャは続ける。

 

「師匠≪せんせい≫の言葉が耳から離れないんだ。きっと私を騙すための言葉だったのに……」

「あの人が嘘を言ったとしても、アリーシャが受け止めた気持ちは本物だろ?」

 

そう言って、スレイはアリーシャの手を強く握りしめる。

そして力強い瞳で、

 

「それで今ここにいるアリーシャは、間違いなく現実だよ。オレが保証する。」

 

アリーシャは涙を拭い、スレイを見上がる。

そして笑顔に戻り、

 

「ふふ……みっともない現実を見せてしまった!ハイランド軍のことは任せてくれ。最後まで青臭くあがいてみせるよ。それが私だから!」

 

スレイは頷く。

そしてアリーシャも頷き、背を向ける。

そしてハイランド軍がある陣地のある方向に走って行く。

 

「若いねぇ~!素であんなセリフを。」

 

ザビーダがニット笑いながら言う。

ミクリオは視線を外し、

 

「すまない。」

 

そしてエドナが顔を覆って泣いているライラを見て、

 

「なに泣いているわけ?あなたまで。」

「だって感動して……」

「なんか言った?」

 

スレイはきょとんとして、後ろに振り返った。

ライラ以外の天族組は、

 

「「「別に。」」」

 

スレイは頭を掻いた。

が、手を上げて、

 

「次はセルゲイの所に行こう!」

「ああ。そうだな。」

 

そう言って歩き出す。

レイは胸を抑え、

 

「もう少し……もう少しだけ……」

 

そう言って、手をギュッと握りしめた後、スレイ達を追う。


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