テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第二十九話 想いを繋いで……そして新たな仲間

翌朝、レイはスレイと共に噴水の所に行った。

目を擦りながらそこに歩いて行く。

ロゼがこちらを見て、

 

「おはよう、スレイ、レイ。よく眠れた?」

「ああ……」

「おチビちゃんは眠そうね。」

 

エドナはレイを見て言う。

そしてスレイを見て、

 

「ま、スレイもそうは見えないけど。」

 

と、スレイは頭を掻く。

そこに、天族ザビーダが声を掛ける。

 

「よう、スレイ。」

「ザビーダ。まだこの街に居たのか。」

 

スレイが眉を寄せる。

天族ザビーダは両手を肩まで左右上げ、

 

「つれないねぇ、なぁ、ライラ?」

 

ライラは辺りを見た後、天族ザビーダを見て、

 

「さぁ、全員揃いましたわ。陪神≪ばいしん≫契約をする理由をお聞かせください。」

「はいはい。」

 

レイは天族ザビーダを見つめる。

天族ザビーダは真剣な表情になり、

 

「俺の目的は導師殿の旅路と繋がってるのさ。」

「ザビーダの目的……」

 

ミクリオが首を傾げる。

そして思い出すように、

 

「たしか決着を付けなきゃいけない相手がいるってヤツか。」

 

それを聞き、スレイは何かに気付く。

スレイの脳裏に黒いコートのようなワンピース服を着た小さな少女が浮かぶ。

 

「そ。一人は可愛いエドナちゃんの兄貴。」

 

そう言って、エドナを見る。

エドナはその視線を避ける。

ライラもまた、エドナを見る。

その表情は暗い。

天族ザビーダは続ける。

 

「もう一人は……マオテラス。」

 

そう言って、今度はライラを見る。

レイは目を細める。

そして彼の視線を受けたライラはハッとして、俯いた。

ロゼが腕を組んで、

 

「マオテラスって五大神の?」

「本来このグリンウッド大陸はマオテラスが護ってるはずだろ?なのにあの坊やは姿を消し、それと時を同じくして災禍の顕主が現れたっていうじゃないか。しかも、それに合わせて裁判者と審判者も互いに対立し始めた。」

 

彼は腰に手をやって説明する。

ロゼは眉を深くし、

 

「こりゃどういうわけだ?」

 

そう言ってスレイを見る。

スレイは考え込んでいた。

ミクリオが何かに気付き、

 

「まさか……」

「俺はそのまさかだと思い至ったわけさ。」

「マオテラスが憑魔≪ひょうま≫になって、ヘルダルフと結びついているって言うのか。それに対し、裁判者と審判者の方でも何か起きた。」

「……確かめないといけないわね。」

 

ミクリオは深刻な表情で、エドナもまた、神妙な面持ちだ。

レイは遠くを見る目になる。

ライラはスレイ達に振り返り、

 

「そのためにはかの者との接触は不可欠ですわ。それに、そこには審判者もいるかもしれませんし。」

「となればヘルダルフの領域下でかつ、審判者にも対抗できる力を振るえないといけないが……」

 

ミクリオが顎に手をやって眉を深くする。

レイは腰に手を当て、顎に手をやって、考え込む。

天族ザビーダが、

 

「そこで俺様の出番ってわけだ。デゼルの抜けた穴を俺が埋めれば、少なくともヤツの領域内でも普通に動ける。どうだ?利害も一致してるっしょ?」

 

彼は一度、デゼルの帽子を持ちあげて言った。

ライラはスレイに振り返り、

 

「……どうしましょう?スレイさん?」

 

だが、ライラの問いかけにスレイは反応しなかった。

レイは横目でスレイを見る。

 

『言葉で取り繕っても、導師も所詮は子供か……。だが、あの従士はあの風の天族の意志と想いを継いだ。後はあの従士

に任せるか。』

 

そう言って、一度目を瞑り開ける。

レイはスレイを見上げた。

そしてミクリオが、

 

「スレイ!」

 

スレイは顔を上げ、

 

「あ、うん。なんだっけ?」

 

それを見たロゼはスレイをじっと見て、

 

「スレイ……ちょっといい?」

「え……」

 

スレイはロゼを見る。

ロゼは大声で、

 

「おまえら、やりたいことがあるんだろうが!いつまでもくよくよしてると俺の鎖で締め上げるぞ!」

 

スレイ達はハッとする。

無論、天族ザビーダもだ。

ロゼのその姿にデゼルを重ねたのだ。

レイは小さく嬉しそうに、懐かしむように笑う。

ロゼは懐かしむように、

 

「あいつの言葉だよ。」

 

そして空を見上げ、

 

「頼まれたんだ。スレイ達のケツ叩いてくれって。そんで……あたしにはそのまま……ガンバレって。」

 

そしてロゼの瞳には涙がたまる。

震える声で、

 

「だから、あたしは……このまま……ガンバろうって…………」

 

そして涙を流す。

ロゼはそれに気付き、

 

「あたし……なんで泣いてんの……」

「ロゼ。」

 

ロゼは必死にその涙を拭う。

レイは動こうとしたが、ロゼの感情が伝わり動くのを止めた。

ロゼはスレイ達に背を向け、

 

「……あいつ、スレイたちと旅できて……良かったって……」

 

スレイはロゼの肩に手を置く。

ロゼは涙ぐむその声で続ける。

 

「あたし……全然気付いてなくて……」

 

そしてスレイの方に振り返る。

 

「あいつ……笑って…………あたし……もっと話しとけば……」

 

そして涙をぐっと飲み込み、再びスレイ達に背を向ける。

 

「あー、もう!以上!」

 

スレイはロゼの背に、

 

「……デゼルの言葉、確かに受け取ったよ。最後まで面倒見がいいな。デゼルは。」

「まったくだ。」

「ロゼ。もう大丈夫だな。」

 

ロゼはスレイに振り返り、笑顔でスレイに言う。

 

「それ、あたしの台詞だし。」

 

天族組は嬉しそうに笑う。

レイは瞳を揺らし、

 

「良かった。」

 

と、小さく呟く。

スレイは空を見上げ、ライラ達に振り返ると、

 

「よし!行こう!」

 

そう言って、スレイは歩き出した。

天族ザビーダはハッとして、

 

「待ってっつーの!陪神≪ばいしん≫契約どうなった!」

「あ!」

 

スレイは口を開けて振り返る。

そこにレイの笑い声が響く。

それにつられ、他の者達も笑い出した。

 

 

陪神≪ばいしん≫契約が終えたザビーダは、レイを見下ろす。

 

「と、言うわけだ。嬢ちゃん。よろしく頼むわ。」

「……貴方はお兄ちゃんの仲間になったの?」

「そうだ。」

 

ザビーダは腰に手を当て、決め顔になる。

レイはザビーダを見上げ、

 

「そう。なら、よろしく、ザビーダ。」

 

そう言って、レイはミクリオとスレイの元へ歩いて行った。

そして小さく呟いた。

 

「誰しも皆、失ってから気付く。だが、人はその後悔や悲しみを乗り越え、歩んでゆく。」

 

それは小さすぎて誰の耳にも届かない。

そして後ろでは、エドナが傘でザビーダを突き始めた。

 

「ちょ!痛い、痛いって、エドナちゃん!」

「どういうつもり。今まであれこれちょっかいだして来たくせに、仲間にコロッと入ってすぐにおチビちゃんに名前呼ばれるなんて!反省なさい!」

「は?意味わかんねぇーって!ちょ!だから痛いって!」

 

エドナは文句を言いながら、さらに突いて行く。

ザビーダはとうとうライラを見て、

 

「ライラ~、助けてくれ~。ロゼちゃんでもいいから~!」

 

ライラとロゼは互いに見合った後、

 

「ごめん、ザビーダ。こればっかりは、エドナに同意。」

「ですね。私たちですら、名前を呼んで貰うのに苦労したのですから。入ってすぐのザビーダさんが、すぐ呼ばれるのが悪いんです。」

 

と、ロゼは頭を掻きながら、ライラはそっぽ向いて言った。

ザビーダは肩を落とし、

 

「そんな~、俺様どうしらいいのさぁ~。」

「だから反省なさい!」

「ちょ!だからやめってくれって!」

 

エドナはさらに突きまくる。

それを遠くから見ていたスレイとミクリオとレイは、

 

「早速仲がいいな!」

「い、いや、あれは多分、エドナの逆鱗に触れたんだろ。」

「エドナだけじゃないけど。」

「「ん?」」

 

レイはそっぽ向いて言った。

解放されたザビーダは、

 

「さって!どうすんだ?」

「予定通り、グレイブガンド盆地に行ってみようと思う。」

「最初にヘルダルフに会った場所だからね。」

 

スレイとミクリオは頷き合う。

ザビーダは彼らの先頭を歩き、

 

「グレイブガンド盆地な!了解ー!」

 

と、どんどん歩いて行く。

が、途中振り返り、

 

「手っ取り早く俺がここに馴染むために、お前らに頼みたいことがある。……お前らの弱点を俺に教えてくれ!特に、裁判者!」

「教えるかそんなもの!」

 

ミクリオが叫んだ。

そして、レイはザビーダを見上げ、

 

「……わからない。」

「だよな~。しっかし、ミク坊は冷たいねえ~。嬢ちゃんは教えてくれたのに。ちなみに俺は教えられるぜ?実は俺、気温が低い日は肌寒い。」

「教えてもなけりゃ、見りゃ分かる上にじゃあ着れ!」

 

今度はロゼが叫ぶ。

ザビーダは口の端を上げ、

 

「もっと重大な秘密がいいのかい?ホントのところ、女の涙に弱い。」

「んな情報いらない。」

 

エドナが冷たい視線を送る。

彼は笑い出し、

 

「おねだり上手過ぎだろ~これはヤバいぜ!……地属性に強いが火属性には弱い。」

「……知ってた。」

 

スレイが真顔で言った。

彼は腕を組み、

 

「これもダメか~!他にお得な情報っていったら、俺の目測だと、ライラは上から……」

「弱点の話じゃなくなってますわ!」

 

ライラはザビーダを睨んだ。

ロゼは呆れ、

 

「……もはや馴染む馴染まないの、意味がさぱらん。」

 

ロゼ達は彼をおいて歩いて行った。

スレイ達も歩き出す。

 

前を歩くのはスレイ達男組で、後ろは女子組だ。

そしてレイは真ん中にいた。

スレイは歩きながら、

 

「ザビーダ、デゼルの穴を埋めるって言ったよな?」

「おうよ。いい女には百言くらい言っちまうが、男には二言はないぜ。」

「けど、それってできるのか?」

「おろ、疑われてる?俺様の実力知ってるだろ。」

 

スレイの言葉に、ザビーダが自信満々に言う。

ミクリオは呆れたように、

 

「知りたくなかったが無理矢理教えられたからね。」

「いやあ、悪かったって。」

「実力はわかってる。けど風の秘力は?もう一度とりにいかなくてもいいのか?」

 

スレイは腕を組んで悩む。

ザビーダは帽子を上げ、

 

「そのことなら心配無用。秘力ってのは導師が身につけたもんだ。だから問題なし!俺様みたいな実力派の風の天族がいればな。そうだろ、嬢ちゃん!」

 

ザビーダはレイを見る。

レイはザビーダを見上げ、

 

「実力はともかく。秘力は貴方の言うように、あの力は導師の中に宿る。あれは元々、導師を鍛えるものであり、導師の成長を図るものだから。」

「ヒュー、手厳しいねぇ~。」

 

そう言って、早歩きしていく。

ザビーダは口笛を吹いて言った。

スレイは少し間を置いた後、

 

「それならよかった!」

「無駄にはならないさ。」

「無駄にはしないよ。」

 

ザビーダとスレイは互いに見合う。

レイはそれを見て、小さく微笑んだ。

と、ミクリオが意外そうな顔で、

 

「ちょっと意外だが、ザビーダは秘力や導師のことに詳しいんだな。」

「くくく、そりゃあ軽軽を積んだ大人の男だからよ。安心して頼ってくれていいんだぜえ♪」

 

と、口の端を上げる。

二人は少し距離を置き、

 

「なんだろうな?この安心できない感じは……」

「ははは……」

 

ミクリオの言葉に、スレイは苦笑いする。

 

道中休息を取るスレイ達。

各自、自由行動をしていた。

しばらくしてエドナはザビーダに、

 

「ザビーダ。あの話のことちゃんと聞かせて。」

「あの話って……告白の返事だっけ?」

「誤魔化さないで。言ったでしょ。お兄ちゃんと決着をつけるって。」

 

エドナは彼を睨む。

レイはそれを目にして、木陰に隠れた。

ザビーダは腰に手を当て、

 

「そのままの意味さ。アイゼンとは、ちょっと因縁があってね。」

「それがどんな因縁か聞いてるの。それに裁判者も関わってるみたいだし。」

「『妹さんを僕にください』って言ったら殴られた。」

「ウソね。」

「けど、絶対やるだろ。アイツ?」

 

と、笑う。

エドナはまっすぐ彼を見上げ、

 

「……わかった。話す気はないのね。」

 

そう言って、エドナは歩いて行った。

レイは視線を落とし、俯いた。

ザビーダは笑い、

 

「くくく、アイツが心配するわけだ。」

「本当はどうなんですの?」

「なにか頼まれたんじゃないの?エドナのお兄さんに。」

 

そこにライラとロゼがやって来る。

だが、彼はとぼけ顔で、

 

「さあて、どうだったかな?」

「もしかして誓約なのですか?」

「いやいや、そんな大したもんじゃないって。」

 

と、笑うが、真剣な表情になり、

 

「けど、口にしないもんだろ。男の約束ってのは。」

 

レイが視線を上げると、ロゼ達がまだ話している。

 

「じゃあ、質問を変える。ザビーダは、なんで憑魔≪ひょうま≫を殺すわけ?」

「こりゃまたドストレートな質問で。」

「誤魔化すような問題じゃないでしょ。」

「確かにそうだ。」

「つまり、それが俺の流儀だからさ。」

 

ザビーダは口の端をニッと上げる。

ライラは静かに、ジッとザビーダを見つめ、

 

「殺すことが……ですか?」

「そうなっちまうこともある。」

「浄化しようとしてもできない奴がいるもんね。」

 

ロゼは視線を落とす。

ザビーダは顎に手を当て、

 

「ああ。元に戻せない憑魔≪ひょうま≫もいる。」

「それでも……スレイさんは元に戻す方法を見つけると約束したんです。エドナさんと。」

 

ライラは手を握り合わせ、まっすぐザビーダを見た。

ザビーダは遠くを見るように、

 

「……導師らしいねえ。ま、それが見つかんなかった時にケジメをつけるならかまわねぇさ。」

「ケジメか……」

「殺すということですわね。」

 

二人が眉を寄せて悲しく俯く。

が、ザビーダは二人を見て、

 

「ちょっと違う。答えを出すってことさ。」

 

ライラはハッとして、顔を上げた。

レイもまた瞳を揺らす。

デゼルは腰に手を当て、笑う。

 

「今いいこと言ったぜ~、俺様。」

 

レイは視線を落とし、歩いて行った。

その後、ロゼとライラはその場から離れた。

その日は森で野営にした。

 

 

ミクリオはエドナの傘を見て、

 

「度々気になってはいたんだが……」

「なによ。」

「地の天族であるエドナが、どうして水属性っぽい傘を武器に選んでいるんだ?」

「……まあ、教えておいてもいいかしら。理由はね、地の天族だからよ。」

「……?」

「地・水・火・風の優劣関係は知ってるでしょう?地は水を調伏できる。ということは……特に天響術の行使の際、優位な属性を触媒にすることで霊力を引き出す効率を高めるの。」

「何だって……!」

「一応言っておくけど、ライラも風に舞う紙葉絵を使っているし、ペンデュラムは地属性の鉱石を触媒にしてるわ。アンタの使っている杖は基本的に土属性。水の天族のくせに不利なもの使ってバーカバーカ。」

 

と、悪戯顔になる。

ミクリオは拳を握りしめる。

だが、エドナは真剣な表情になり、

 

「……と言いたいところだけど。」

「もう言ってるぞ!」

「負荷をかけて鍛錬する目的や、天響術ではなく物理的な攻撃を起点にするのであれば、別に間違ってないわよ。長い間生きていると、より楽な道を選びたくなるもの。もし今に満足せず、もっと強くなりたいのなら……自らに鎖をかけて、苦難の道を歩くのもいいかもね。……天才を超えたいのなら。」

「エドナ。」

「まあどうせ知らずに使ってたんだからやっぱりバーカバーカ。」

 

と、再び悪戯顔になった。

ミクリオは拳を握りしめ、

 

「ぐっ……!」

 

レイはそれを見て笑っていた。

そして二人はまだ続けていた。

 

食事を終え、スレイとロゼはテントに入る前に寝てしまった。

二人は互いに寄りかかって口を開けて寝ている。

スレイの足元にはレイも寝ていた。

ザビーダが彼らを見て、

 

「人間が背負うには、あまりに辛いことが重なっちまったかねえ。」

「私が連れ出さなければ……いえ、詮無きことですわね。」

「苦しいことがイヤなら、部屋に閉じこもっていればいいわ。『外』に出たのは彼らの意志よ。」

「ああ。別に誰かに責任を取ってもらいたいなんて思っていないさ。スレイも、ロゼも……そしてレイも。」

 

悲しそうな表情で言うライラに、エドナとミクリオが言う。

レイは目を開けた。

彼らには背を向けた状態なので天族組は気付いていない。

ザビーダは顎に手をやり、

 

「コイツらすっかり天族との生活に慣れきっちまってるみたいだが、最初っからこうなんかい?」

「スレイと僕は赤ん坊のころから一緒だったからな。レイも途中介入だけど一緒にいたし。」

「……ミクリオにも小っちゃいころがあったのかい?」

「失礼だな!」

「悪い悪い。さぞかし小さいころは、素直でよい子だったんだろうなあ。」

「悪いね、今は素直じゃなくて。」

 

ザビーダの言葉に、ミクリオはそっぽ向く。

レイは目を伏せた。

そして胸の服を握りしめ、眉を寄せた。

 

 

グレイブガンド盆地に向かう途中の街で、スレイ達は宿に泊まっていた。

するとザビーダがスレイを見つけ、

 

「導師殿、ライラ達は?」

「疲れたから、みんなサウナに入るって。」

「……あの嬢ちゃんも、か?」

「ああ。ロゼ達に連れてかれた。」

 

すると、ザビーダは腕を組んで悩んだ後、スレイを見て、

 

「スレイ、サウナ行こうぜ!」

「後でいいよ。オレは。」

「つれないこと言うなって。男はハダカのつきあいが大事なんだぜ?」

「普段でもハダカだろ、ザビーダは。」

「意外に心は厚着してんだって。そんな殻は脱ぎすてて絆を深めたいわけよ。共犯的な関係でな。」

 

そう言うと、スレイは腕を組んで、

 

「もしかして……風で女サウナを探る気じゃ……?」

「お?真面目な顔してわかってんじゃねえか。この不良導師♪」

「やめた方がいいよ。絶対気付かれるって。それにレイもいるし。」

 

と、そっぽ向いて拗ねる。

ザビーダは腕を組んで、

 

「ふう……損得で考える大人にはなりたくないねえ……しっとりと流れる汗、熱く火照った体……サウナという健康的かつマニアックな美がそこにある。スレイ……一緒に美の狩人になろうぜ。」

 

そう言って、スレイの肩を寄せる。

そこにミクリオがやって来た。

 

「ふう……いい汗かいた。スレイたちもサウナに入ったら?」

「こういうこと?」

「あってるけど違うっ!」

「ん?」

 

ミクリオは首を傾げた。

そしてそこにレイもポッカポッカで出て来た。

 

「何やってるの?」

「さぁ?」

 

レイはジッとザビーダを見上げ、

 

「…………」

「なになに、コレ。」

 

ザビーダはスレイとミクリオを見る。

二人は肩を上げる。

レイはザビーダに背を向け、

 

「ロゼ達の所に戻る。」

「え?あ、うん。珍しいな。」

「ん。ザビーダの思っていた事を全て話して――」

 

ザビーダはレイの口を押えて持ち上げる。

 

「ちょーと、待とうかぁ!お兄さんとちょっと話しよ~ぜ。」

 

レイはそれを外し、

 

「……する話はない。」

「いやいや、俺様があるのよ!」

「じゃあ、ロゼ達の所ですれば?」

「それはちょっと~……」

 

と、二人はやり取りをしていた。

それを見たミクリオはスレイを見て、

 

「で、結局何なのさ。」

「ははは……」

 

スレイは苦笑いするだけであった。


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