テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第二十八話 デゼルの復讐……

中に入り、ロゼがスレイに小声で言う。

 

「城に忍び込むのは夜。宿で時間潰そっか。」

 

スレイ達は宿屋に向かう。

スレイはずっと外を見ているレイを見る。

そしてミクリオに小声で、

 

「なぁ、ミクリオ。」

「わかってる。レイのことだろ。」

「ああ。なんか悩み事でもあるのかな。」

「……デゼルの事じゃない。」

 

スレイとミクリオの後ろからエドナが言った。

二人はビックンと体を動かし、

 

「「うわぁ、エドナ⁉」」

「うるさいわよ。おチビちゃんに気付かれるでしょ。」

 

エドナは傘で二人を突いた。

そしてエドナを見て、

 

「で、何でレイがデゼルの事で悩むのさ。」

「相変わらずミボはバカね。」

「な⁉」

 

ミクリオは拳を握りしめる。

エドナは傘を収め、

 

「いい、あのおチビちゃんはおチビちゃんなりに、ワタシたちのことを考えているの。で、あのおチビちゃんは今のワタシたちの感情を誰よりも感じ取っているはずよ。」

「それも……そうか。大切な仲間だもんな。」

「スレイ。」

「ああ。」

 

二人は頷き、レイの元に歩いて行った。

エドナは三人を見て、

 

「ま。実際はどうなのかは分からないけどね。でも、きっと変わっているとワタシは思うわ。」

 

エドナは背を向け、歩いて行った。

しばらく宿屋で時間を潰し、夜になるのを待った。

そして夜になり、スレイ達は外に出た。

 

スレイはロゼを見て、

 

「さて、どうやって忍び込む?」

「城に行く前に街の様子を一通り確認させてくれる?忍び込む場所が場所だし、念のため色々と下見しておきたいんだ。」

 

そう言って、街を回り始める。

そしてしばらく歩いていると、レイが立ち止まる。

 

「レイ?」

 

スレイがレイを見る。

レイはジッと暗闇を見つめる。

すると、一人の人物が歩いてくる。

 

「これはこれは頭領……ようこそ。」

「……ルナール⁉どうしてここに⁉」

 

ロゼは眉を寄せて、驚いた。

そこには風の骨の衣装を着たキツネ顔の男。

 

「いや~、なに。そこの審判者に聞いたのさ。」

 

そういう彼の斜め後ろの塀の上に腰を掛けた仮面をつけた少年。

彼は一度手を上げて、こちらを見ている。

 

そしてロゼはその驚きを隠せないまま、

 

「それにあんた、その姿……憑魔≪ひょうま≫?」

「くっくっく。」

 

憑魔≪ひょうま≫ルナールは笑い出す。

スレイとロゼは身構える。

彼は楽しそうに、

 

「おお、怖い。いい目だなぁ!頭領!」

 

そう言って、ロゼの睨む瞳を見る。

デゼルが彼を睨み、

 

「今てめえらにかける時間はない!速攻ケリつけてやるからとっとと来い!」

 

デゼルが構える。

ミクリオが眉を寄せ、

 

「審判者とも戦う気か⁉」

「はっはぁ。いい感じの怒りだなぁ。やっぱり喰いたくてしょうがない!」

 

憑魔≪ひょうま≫ルナールは構える。

そして、仮面をつけた少年、審判者も塀から降りて来た。

スレイは武器を手に、

 

「来るぞ!」

 

そして、憑魔≪ひょうま≫ルナールは襲い掛かる。

レイは俯いて、眉を寄せ、服をギュッと強く握る。

 

ライラが炎で憑魔≪ひょうま≫ルナールの攻撃を防ぐ。

 

「この者は自らの発する穢れが強すぎる……」

「それじゃ、枢機卿と同じだっていうのか?」

「……くっ!」

「倒した後の事なんて今は考えなくていい!」

「……わかった!」

 

スレイ達は動きのない審判者は後回しにして、襲い掛かる憑魔≪ひょうま≫ルナールを片付ける。

動きは速いが、捉えられない早さでもない。

憑魔≪ひょうま≫ルナールの攻撃を防ぎ、スレイ達も攻撃をする。

その彼らの戦いを見た審判者は、

 

「へぇ~、それなりに成長しているね。うん。さすが、導師の試練を全て乗り越えただけはある。」

 

そして口の端を上げて、嬉しそうに言った。

そうしている内にも、憑魔≪ひょうま≫ルナールの方が押されていた。

彼らから距離を取り、

 

「くっそ!まだ足りないのかい……!」

「ここまでだよ。ルナール!」

 

ロゼが彼を睨みつける。

スレイがすかさず、

 

「ライラ!」

「わかりましたわ!」

 

ライラが浄化の炎を出そうとしたが、

 

「はーい、そこまで。」

 

憑魔≪ひょうま≫ルナールの前に立つ。

彼は影から槍を取り出し、

 

「今度は俺が相手になろうかな。」

 

そう言って武器を構える。

スレイ達は再び武器を構えなおすが、

 

「そこまでだ、審判者!なるほど、私がはっきり視えなかったはずだ。今回、皇族ではなく、お前だったからか。」

 

レイが前に出てくる。

スレイ達は驚き、レイを見る。

そしてレイは審判者を見つめ、

 

「……これ以上は私が、許さない!」

「……俺としては君のためを想ってやってるんだけど?迷っている君の、ね。」

「確かに私は迷ってる。これから出される彼らの選択に。でも、それを貴方達に邪魔されるのだけは違うと思うから!」

 

そう言って、レイの瞳は赤く光り出し、影が揺らめき出す。

レイは手を前に出し、

 

「私は裁判者ほど、上手くこれを使えない。だから手加減はできないよ!」

 

そう言って、影が審判者を襲う。

彼の槍は雷がビリビリ流れ始める。

 

「そ。なら、俺も手加減できないかもね。」

 

その影を一太刀で切り裂く。

そして第二波がレイやスレイ達の足元に飛来する。

 

「うわっ!」「くっ!」

 

スレイ達は吹き飛ばされる。

すぐに起き上がり、武器を構える。

レイも立ち上がり、

 

「……私じゃ、今の彼に……でも!」

 

だが、レイは目を見開き、膝を着く。

自身の身を抱え込む。

 

「レイ⁉」

「ダ、ダメ、お兄ちゃん……」

 

レイに触ろうとして、影がスレイを襲いそうになる。

スレイは伸ばした手を引く。

彼は槍を地面につけ、

 

「あーあ、逆に飲まれそうになってるね。気をつけた方がいいよ、若き導師。」

「な⁉」

 

スレイはレイを再び見る。

レイは大きく息を吸い、瞳を閉じる。

影は落ち着き、収まっていく。

レイは地面に手を着き、

 

「はぁ、はぁ……」

 

肩を上下させていた。

最後に大きく息を着き、立ち上がる。

そして審判者を睨んでいた。

審判者は武器を影の中に納め、拍手する。

 

「凄い、凄い。あ、でも安心して。僕はこれで引くよ。本命が来たからね。」

 

そういうと、辺りの気配が変わる。

そして領域が展開される。

エドナが辺りを見渡し、

 

「何?この感覚……」

「気をつけろ……まだ何かいる!」

 

ミクリオが眉を寄せ、辺りに目をやる。

そして、そこに少女の声が響いた。

 

「余計なことはしないでもらおうか。」

「この声は……!」

 

デゼルは辺りを見渡しながら、警戒を強くする。

審判者は腰に手をやって、

 

「いやー。ゴメン、ゴメン。可愛い小さな器≪レイ≫が気になちゃって。ついてでに、導師の力も。」

 

彼の声は明るく、面白そうに言う。

だが、後ろの憑魔≪ひょうま≫ルナールは怒りながら、

 

「うるさい!俺の邪魔をしようってか?」

「キツネ。おまえの役目は彼らを誘う事であろう。余計なマネをしてあの方の怒りを買ったらどうしてくれる!貴様もだ、審判者。」

 

少女の声は怒りと恐怖気味に言った。

憑魔≪ひょうま≫ルナールは目を見開き、

 

「うっ。」

 

そう言って、走り出した。

ロゼが眉を寄せ、

 

「待て!」

 

対して、審判者の方は面白そうに、

 

「え~、俺には関係ないかな~。」

 

と、ロゼの行く手を塞ぐ。

そして女性の声はなおも続く。

 

「ちっ。……だが、予定外でだったが利用させて貰おう。」

 

そういうと、物陰から数人の人物が現れる。

それは全て同じ事物だった。

そう、すべて憑魔≪ひょうま≫ルナールの姿だったのだ。

スレイが武器を構えながら、

 

「わ!なんだこれ!」

「さ。頑張って、若き導師。俺は高みの見物をさせて貰うね。」

 

彼が背を向け歩き出すと、憑魔≪ひょうま≫ルナールは襲い掛かる。

一時的にすべての憑魔≪ひょうま≫を蹴散らす。

姿が消えると、再び声が響く。

 

「さぁ、早く追わねばキツネを取り逃がすぞ。娘。貴様らをここに誘った裏切り者をな……」

「!……じゃあ、あの依頼は……」

「罠か!」

「ルナール……!」

 

ロゼとデゼルは一目散に走り出す。

それを追って、スレイ達も追いかける。

スレイは走りながら、

 

「でもこれって幻⁉」

「夢じゃないのは確実!ホッペつねったら痛いし!」

 

そしてデゼルも走りながら、

 

「遊んでんじゃねえ!出て来い!」

「ふっふっふ。そう急くな。前座を楽しめ。」

 

声は楽しそうに笑う。

デゼルはさらに怒り、

 

「ざけやって!」

「デゼルさん、この声の主をご存じなんですの?」

 

ライラが走りながら、デゼルを見る。

デゼルは拳を握りしめ、

 

「忘れるものか……!俺の狙う相手の声を!」

「なんだって……」

 

ミクリオが眉を寄せた。

レイは唇を噛みしめる。

 

『……デゼル……』

 

エドナは走りながら、ライラを見る。

 

「ライラ、気付いてる?」

「はい。この領域は穢れを持っていませんわ。」

「この状態を作り出してるのは憑魔≪ひょうま≫じゃないってことか。」

「……どうなってるんだ。」

 

スレイ達は困惑を辿る。

レイの瞳は揺らぐ。

 

スレイ達は奥へと進んで行く。

すると憑魔≪ひょうま≫ルナールの声がする。

 

「もういいだろ?な?出してくれ!」

「あの方の意向を無視することは許さん。わかったか?」

「わ、わかった!」

 

彼は少し脅えながら言う。

そして聖堂の入り口に憑魔≪ひょうま≫ルナールを見つける。

 

「ルナール!」

「ひぃ!」

 

ロゼが声を上げると、彼は一瞬脅えるが、

 

「!お兄ちゃん!」

 

レイが叫ぶと、憑魔≪ひょうま≫ルナールは発光し出した。

スレイ達は目を手でかざし、目を瞑る。

スレイ達が再び目を開けると、憑魔≪ひょうま≫ルナールはすでに居なかった。

 

「どうなってるんだ……」

 

そして代わりに一人の少女が現れる。

 

聖堂の屋根の上、審判者は下の光景を眺め、

 

「さて、導師スレイとそのお仲間よ。君たちはどちらの選択肢を選ぶかな。」

 

スレイ達の前の少女は紫の服を身に纏い、髪を左右に結い上げていた。

そしてスレイ達を見ていた。

レイは眉を寄せる。

そしてそれに気付いたデゼルも、殺気が出る。

少女は口を開く。

 

「前座にしては有意義だった。娘よ。なかなか良い怒りだった。それが憎悪として芽吹けばあの方も喜ばれよう。」

 

少女は手を広げ、ロゼを見て首を傾げる。

ロゼは眉を寄せ、

 

「……何?こいつ……」

 

ロゼを背で隠し、デゼルは少女を睨み、

 

「待ちわびた……!」

「機は熟したろう?お互いにな。」

 

そして戦闘を開始しようとするデゼルに、スレイが止める。

 

「待て、デゼル!こいつは憑魔≪ひょうま≫じゃない!」

「関係あるか!ダチを憑魔≪ひょうま≫にし、風の傭兵団を貶めたおまえらは絶対殺す!」

 

ロゼはデゼルの言葉に、戸惑いながら、

 

「何言ってんの?デゼル?」

 

そのロゼの言葉に、少女は目を細め、

 

「ほう。この娘にはまだ語ってなかったのか。」

 

スレイは息をのむ。

レイは眉を深くし、少女を見る。

少女の声は楽しそうに、

 

「いい。実にいい!最高のお膳立てではないか!」

 

攻撃しようとするデゼルの腕をスレイが掴み、

 

「デゼル!やめるんだ!」

「放せ!俺はこの時のためだけに生きてきた!」

 

スレイを見て、怒鳴るデゼル。

そこにロゼが二人を見て、

 

「ちょっと!いい加減感じ悪いぞ!スレイ!デゼル!何なわけ⁈」

「ロゼ……それは……」

 

レイがロゼの手を伸ばすが、自分の目の前に黒いコートのようなワンピース服を着た少女が現れた。

いや、自分の瞳にしか視えていない。

レイは目を見開いた。

そうしていると、スレイ達の前に居る少女が、

 

「……娘、私が教えてやろう。この者は死んだ友との絆の証である風の傭兵団の存続を願うあまりに、霊応力の高いお前を時に操り、利用して、お前たちを暗殺集団という闇社会の住人に仕立て上げた。」

 

デゼルは少女を睨み、歯を食いしばる。

ロゼは瞳を大きく開き、少女の声に耳を傾ける。

 

「そして憑魔≪ひょうま≫を殺すために神依≪カムイ≫の力に目をつけ、全ては友の仇を討つためと言い聞かせ、お前に干渉し続け、復讐の器となるよう仕向けた。」

 

ロゼの瞳は揺らぐ。

デゼルはイラつきながら、

 

「そうだ!貴様への復讐!そのために俺は全てを投げうつ!」

「この不思議ちゃんに付き合うのは良くないわ。」

「同意だ!嫌な予感しかしない!」

 

エドナとミクリオが眉を寄せて、声を上げる。

ライラも察し、スレイの背に、

 

「退きましょう!スレイさん!」

 

だが、少女が目を見開き、

 

「させぬよ。」

 

少女が光り出すと、そこには穢れを纏った物体が現れる。

レイは首を振り、

 

「ダメ、ダメ!ダメ‼」

 

ライラは眉を深くし、

 

「突然憑魔≪ひょうま≫に⁉なぜ……」

「言葉では思い出せないのなら……別の方法を使わせてもらう。」

「やっと正体を現しやがったな!」

 

そう言って、デゼルは構える。

スレイも武器を構え、

 

「くそ!」

「絶対殺す!それこそが俺の存在理由!」

 

そう言って、攻撃を仕掛けるデゼル。

その間にも、少女の声は響く。

 

「よくもこれ程に自己肯定の幻に溺れたものだ……」

「何を言ってやがる!」

「なんとも憐れだ。理解はできるんがな。」

 

スレイ達は憑魔≪ひょうま≫の攻撃を交わしつつ、懐に入り攻撃を繰り出す。

だが、与えられるダメージは少ない。

レイは彼らの戦う姿を見ながら、

 

「ダメ!これ以上は……!」

――今回は手出し無用だ。大人しくしていろ。

「どうして⁉」

――これは人の世の出来事。故に、この件に関るのは後だ。私……裁判者が動くのは選択を見てからだ。

「私は!私なら止められる。二人を救える‼」

――無理だ。お前は私の力を使った。

「……!私は……それにあれは!」

 

レイは瞳を揺らす。

そうしていると、スレイ達の方では動きがあった。

 

「思い出せ。お前が本当は何を望んでいたか。」

「……るせぇ。」

「あの時、友をどうして、何故失ったか……憑魔≪ひょうま≫を殺したあと、その穢れがどうなるのか……それでも思惑通りの術で復讐を成し遂げると?」

「うるせえ!」

 

デゼルの怒りの叫び声が響く。

少女の声はなおも楽しそうに続く。

 

「よく思い出せ。友を失ったのは私のせいか?なぜ風の傭兵団の存続を願う……何が本心だ?」

「ご託はもういい!」

「これほどとはな。憐れに過ぎるではないか!」

 

デゼルの怒りの風の天響術がヒットする。

その隙に、スレイがライラを見て、

 

「よし!ライラ、浄化を……」

 

ライラは頷く。

だが、デゼルが武器を構えなおし、

 

「そうはいくか!こいつはぶっ殺すんだ。」

 

そう言って、デゼルは力を強め、

 

「デゼル⁉はぅ⁉」

 

ロゼの中に入った。

レイは瞳を大きく揺らし、

 

「ダメ……デゼル……ダメ――‼」

 

小さな少女を横切り、ロゼの方に駆けて行く。

小さな少女はレイを横目で見る。

小さな少女は消える。

スレイもその異常な雰囲気を察する。

ロゼは神依≪カムイ≫化の姿となる。

 

「ロゼ!」「デゼルさん!」

 

スレイとライラは叫ぶ。

レイも近付いたが、ロゼはいや、デゼルはスレイ達を見て、憑魔≪ひょうま≫に向かっていく。

レイは立ち止まり、

 

「……遅かった……!」

 

ライラは眉を寄せ、札を取り出し、

 

「仕方ありませんわね!」

 

だが、目を見開いた。

 

「契約破棄⁉まさか⁉」

「デゼル!」

 

スレイは叫ぶ。

スレイは銃を取り出す。

だが、あの少女が目の前に立ち、両手を広げる。

 

「おっと。最後までやらせてやりたまえ。」

「おまえ?どうして。」

 

スレイは目を見開く。

レイは少女を睨み、

 

「そこを退いて!」

 

少女は笑い出す。

ミクリオがスレイの横に並び、

 

「スレイ、構ってる場合じゃない!」

「わかってる!」

「ふっふっふ……」

 

少女はさらに笑うと、少女が増える。

エドナが武器を構えながら、

 

「またなの?」

「私は他者の感覚に作用し、惑わすことが出来る。」

「では突然憑魔≪ひょうま≫になったように見えたのも……」

 

ライラは火の天響術を発動させて言う。

少女はそれを避け、

 

「察しの通り。あの憑魔≪ひょうま≫は本物だがな。そしてその正体を知っているのは――」

 

少女はレイを見て楽しそうに笑う。

レイは少女を睨む。

だが、その瞳に再び黒いコートのようなワンピース服を着た小さな少女が現れる。

 

――力は貸せないな。いや、使わせない……か。

「邪魔をしないで!」

 

レイは拳を握りしめる。

スレイは攻撃を避けながら、

 

「ライラ!主神の命でデゼルを止めてくれ!」

「無理です!陪神≪ばいしん≫契約は破棄されました!」

 

ライラは首を振る。

ミクリオがライラを見て、

 

「そんなことできるのか⁉」

「普通は無理です!陪神≪ばいしん≫から一方的になんて!あるとすれば……」

「審判者か!」

 

少女は攻撃を繰り出しながら、

 

「ほう……ますますおもしろい……」

「おまえは何が狙いなんだ!」

「導師、貴様は知るべきなのだ。」

「何?」

「見せてやろう。『彼』という天族の業を……」

「……!」

 

レイは目を見開いた。

その瞳を悲しく揺らしながら……

少女は語る。

 

「彼は自分の力で正しく加護を与えていたにすぎない。」

 

少女の奥では神依≪カムイ≫化したロゼの姿をしたデゼルが、憑魔≪ひょうま≫に攻撃を繰り返していた。

少女の声は続く。

 

「だが天族の加護とは人にとって幸であるとは限らない。」

 

憑魔≪ひょうま≫の大きな一つの瞳が神依≪カムイ≫化したロゼの姿が映る。

デゼルの声が響き渡る。

 

「やっとだ!やっと貴様を殺せる!」

 

レイはそこを見て、

 

「ダメ、デゼル!その人は……!」

「レイ?」

 

スレイはレイを見た。

レイは首を振りながら叫ぶ。

そして刃を振り降ろす。

 

「死ねぇー‼」

 

だが、デゼル≪ロゼ≫の動きが止まった。

その憑魔≪ひょうま≫は瞼を一度閉じ、開いたその中には一人の男性の顔が浮かび上がる。

そして記憶の蓋は開かれた。

 

――それは懐かしい記憶。

そこには草原にロゼとエギーユ、そして鎧などに身を包んだ仲間たち。

彼は訓練を始める。

それを高い所からそれを見守るのはデゼルと天族の男性。

天族の男性の服装は今のデゼルそのものだった。

彼は嬉しそうに言う。

 

「あいつらとの旅は本当、楽しい……冥利に尽きるだろ?」

「ああ。感謝してる。」

 

デゼルもまた、楽しそうに言う。

さらに月日は流れ……

 

「大陸一の風の傭兵団を是非ともローランスに連ねたいのです。」

「あたしがコナン皇子と婚約?夢みたい!」

 

そこはローランス皇子とロゼ達。

ロゼの目は輝いていた。

そしてまたも、天族の男性は見守っていた。

そしてロゼを見つめ、

 

「よかった。旅が終わっちまうのは残念だがな。」

 

だが、デゼルの心は泣いていた。

 

――……イヤだ。終わらないでくれ……

 

 

さらに時は少し進み、ローランスの皇子が兵に言う。

 

「ぬかるなよ。行かぬか!」

「コナン皇子!団長が居ないんです!」

 

そこにロゼがやって来る。

彼は不敵に、君の悪い笑顔になる。

デゼルが叫ぶ。

 

「その子に近づくんじゃねえ。」

「私に指図する貴様は何者か。」

 

だが、それに皇子は答えた。

デゼルの横に居た天族の男性は身構え、

 

「こいつ……すでに憑魔≪ひょうま≫に……」

「え?誰に話して……?」

 

ロゼは戸惑う。

そうの皇子の顔は豹変する。

 

「貴様らのその旨そうな匂い……たまらんなぁ!」

 

そしてそんな彼らの後ろの塀の上には、あの少女が降り立つ。

 

「何故これほどの短時間で憑魔≪ひょうま≫と化したのだろうな?」

 

そして少女はデゼルの横の天族の男性の横に降りる。

天族の男性は彼女を見る。

そしてデゼルもまた同じく見た。

そこにエギーユが掛けて来る。

 

「皇子!俺たちが第一皇子を殺しただと⁉何の冗談だ!」

「衛兵!逆族がここに!」

 

皇子は兵に命令し、エギーユを捕らえる。

 

「罠にかけたな……俺たちを!」

 

そしてエギーユは連れて行かれる。

ロゼは目を見開く。

デゼルの横の天族の男性は、

 

「なぜこんな事に……」

「風の傭兵団、団長ブラドは第一皇子レオンを殺害。身柄をペンドラゴ守隊によって拘束された。よって貴様ら全員も拘束する。」

 

皇子は命令する。

少女は楽しそうに言う。

 

「わかるだろう?コナン皇子が憑魔≪ひょうま≫と化し、我欲に従い、邪魔者を除こうと考えたからだ。」

 

彼からは穢れが満ちる。

そして彼の横の衛兵たちからも穢れが溢れる。

少女は楽しそうに続ける。

 

「そして……コナン皇子が憑魔≪ひょうま≫になった原因もわかっていよう?」

 

そう言って、男性の横に居たデゼルを見て、

 

「『彼』だ。」

 

デゼルはハッとした顔になる。

そして天族の男性を見る。

天族の男性もまたデゼルを見る。

ロゼはその場に虚ろな瞳で座り込んだ。

そして皇子を見上げる。

 

「おまえは私のものとなるなら特別に赦免しよう。」

「なっ⁉」

「ぐふふ。次期皇帝の側妾≪そばめ≫となれる!これほどの栄誉はあるまい!」

 

皇子は笑う。

少女も笑う。

ロゼは立ち上がり、二本の短剣を構える。

デゼルの横に居た天族の男性は駆け出す。

 

「こんのー!」

 

ロゼは皇子に突っ込む。

皇子の手には穢れに満ちた玉をロゼに向ける。

 

「間に合え!」

 

ロゼに穢れの玉が当たる前に、ロゼを庇う。

そして皇子の手を薙ぎ払った。

ロゼの刃は皇子にあたる。

 

「ぎゃああああ!」

 

彼の中の穢れが爆発した。

 

「うおぉおお!」

 

それがロゼに行く瞬間、再び天族の男性がロゼを庇ったのだ。

彼は穢れに飲まれる。

 

「ぐ、うぅぅああ!」

 

デゼルはそれをただ見ている事しかできなかった。

デゼルはその場に膝を着く。

少女は言う。

 

「すべて貴様の加護の賜物≪たまもの≫……人はその力を持つものを何というか知っているか?」

 

彼女は嬉しそうに、楽しそうに言う。

 

「疫病神だ。あーはは、はは!」

「……俺のせい……だった?」

 

デゼルは彼を見る。

穢れに包まれ、穢れて行く。

 

「全て……俺の……?」

 

 

ロゼ≪デゼル≫は目を見開いた。

そしてスレイもまた目を見開いた。

そう、あの憑魔《ひょうま》はデゼルの親友天族ラファーガ本人だったのだ。

少女は後ろを見て、

 

「彼もどうやら全て思い出したようだ。」

「ダメ、逃げて!」

 

レイが叫ぶよりも早く、その隙を突かれ、ロゼの体は憑魔≪ひょうま≫に貫かれた。

レイは目を見開いた。

その瞳が大きく揺れる。

デゼルがロゼの中で、憑魔≪ひょうま≫に抵抗する。

だが、ダメだった。

ロゼ≪デゼル≫は後ろに倒れ込む。

 

「ロゼ!デゼル!」

 

スレイとレイは同時だった。

 

「どけぇー‼」「邪魔だ!」

 

スレイはミクリオと神依≪カムイ≫化し、レイの影と共に少女を薙ぎ払う。

そしてスレイの放った水の矢が、少女の本体にあたる。

 

「うっ。」

 

少女は尻餅を着き、倒れ込む。

だが、すぐに起きあがり、

 

「くっふふ。さぁ、ここからだ導師。括目するのだな。」

 

ロゼとデゼルの神依≪カムイ≫化が解ける。

そしてロゼは穢れに飲み込まれる。

スレイがミクリオと神依≪カムイ≫化したまま、突っ込む。

レイもまた、目の前の小さな少女を横切って、駆け出す。

小さな少女は駆け抜く彼らに言う。

 

――さぁ、導師達……選択のときだ。

 

そう言って、再び消えた。

 

彼らの元まで来たスレイはミクリオとの神依≪カムイ≫を解き、敵の攻撃を防ぐ。

ミクリオが倒れ込むデゼルを腕を抱え、その場から離れる。

そして少し離れた所で、彼を仰向けにする。

彼の腹には穢れの攻撃が残っている。

そこにレイが駆け寄り、

 

「デゼル!」

 

そう言って、穢れのある彼の腹に手を置く。

すると魔法陣が浮かび上がる。

ミクリオはこの魔法陣に見覚えがあった。

 

「これは……あの時の……レイ……」

 

それは自身の中に穢れを移し替えるものだ。

そしてデゼルはやっと言葉を発する。

 

「ロ……ゼ……」

 

ミクリオは立ち上がり、

 

「デゼル!ここを動くな。いいね!レイ……」

「デゼルは任せて。……何としてでも!」

「わかった!」

 

そしてスレイの元に駆けて行く。

スレイは敵を薙ぎ払い、ライラと神依≪カムイ≫化する。

そして炎の纏った剣を振り下ろす。

 

「こいつ!」

「いけません!」

 

ライラがそれを止める。

 

「ロゼさんのあの負傷!たとえ穢れを浄化しても負荷に耐える体力は残っていませんわ。」

 

スレイは敵から距離をとる。

ライラは悲痛な声で叫ぶ。

 

「だから攻撃してはいけません!ロゼさんが……!」

「このままだとロゼは完全に憑魔≪ひょうま≫に……」

「あの怪我じゃその前に命が尽きてしまうわ。」

 

ミクリオやエドナも叫ぶ。

そこに少女の楽しそうな声が響く。

 

「導師は時に決断を迫られる……そうだろう?決めたまえよ。憐れな道化の命も尽きるぞ?」

「お黙りなさい‼」

 

ライラが本気で怒っていた。

そこにデゼルの声が響く。

 

「スレイ、いったん下がれ!俺に策がある!」

「デゼルさん⁈」

 

スレイはライラとの神依≪カムイ≫を解く。

 

 

レイはデゼルの穢れを自信に移し替えていた。

そのレイの手をデゼルが握る。

 

「デゼル!待って、もうすぐ――」

「いや……いい!それよりも……ロゼだ!」

「でも!」

 

デゼルは寝たまま、レイの頭に手を置き撫でる。

 

「俺は俺の選択を取る。だから頼む、レイ≪裁判者≫!」

 

レイはの瞳が揺らぐ。

レイは瞼を閉じ、そして開くその瞳は真っ赤に光り出す。

 

「……わかった……私は、デゼルの意思に従う。」

 

そしてデゼルはスレイに叫ぶ。

 

 

ライラが結界をつくる。

その間にスレイ達はデゼルとレイの元にいく。

デゼルは横になったままだった。

そしてその腹にはまだ穢れが残っている。

そこに少女の声が響く。

 

「自棄を起こす事だけはやめてくれ、導師よ!それではせっかくここまで整った舞台が台無しだ。」

 

ミクリオとエドナが左右を警戒する。

その中、レイが立ち上がり、

 

「黙れ、天族!これ以上、私を怒らせるな!」

 

レイが地面を一蹴りすると、その波動が行き渡り、少女の声が聞こえなくなる。

そのレイの瞳は真っ赤に光っている。

 

スレイがデゼルの前に膝を着く。

 

「……スレイ、聞け。」

 

デゼルは弱弱しい声で言う。

スレイは眉を寄せ、

 

「デゼル、無理するな。」

「いいから聞け……憑魔≪ひょうま≫と……ロゼの結びつきだけを……破壊するんだ。」

 

デゼルの言葉に、ミクリオとエドナも彼を見る。

そしてライラも眉を寄せ、悲しそうに言う。

 

「たとえ導師であっても、そんな奇跡のようなこと……」

「できるわけがない……」

 

ミクリオも首を振る。

エドナは一度レイを見た。

レイは俯いていた。

デゼルはスレイを見て、

 

「……スレイ、ザビーダから預かった、……アレを貸せ。これは力を撃ち出すもんなんだろう?」

 

そしてデゼルは銃を手に起き上がる。

 

「俺がその力になる。俺自身を攻撃として撃ち出せ。」

「なんだって?」

 

エドナはそれを察した。

まっすぐデゼルを見て、

 

「憑魔≪ひょうま≫と同化しつつも、意思のある攻撃となって繋がりを見つけて、そこにのみ打撃を与えられる……そういいたいのね。」

「それはただの特攻だ!」

 

ミクリオが怒る。

デゼルは力を振り絞り、

 

「……これに込められてる最後の弾の力と俺の残りの力を振り絞って合わせれば、きっと飲み込まれずに繋がりだけをぶっ潰せる。」

「それでも力が足りない。」

 

レイがデゼルを見つめる。

そしてデゼルを見つめ、

 

「だから私が残りの分を補う。あの人にも、あの人達にも邪魔はさせない。デゼルの意思がある限り。」

「ああ……スレイ……俺にもロゼにも、もう時間がない……わかるだろう。」

「デゼル……」

 

スレイは眉を寄せて、見つめる。

そして憑魔≪ひょうま≫のすぐ傍に居た。

デゼルは銃口を自信に向ける。

その表情は穏やかだった。

 

「デゼル⁉」

 

そしてその引き金を引く。

彼は風の渦が包み込む。

スレイ達は眉を寄せた。

そしてデゼルはスレイを見下ろし、

 

「頼むぜ……しくじるなよ!」

 

そう言って、スレイの中に入る。

スレイは胸に手を当て、覚悟を決める。

そしてデゼルと神依≪カムイ≫化をし、憑魔≪ひょうま≫に銃口を向ける。

レイもまたスレイの横に立ち、

 

「デゼルの本当の願い、私が叶える!叶えてみせる!」

 

レイが歌を歌い出す。

そしてスレイは引鉄を引く。

 

「うわぁぁ!」

 

弾丸は憑魔≪ひょうま≫へと当たる。

レイの後ろで小さな少女が呟く。

 

――まったく、これでは私は表には出られないな。……だが、選択は見れた。そしてあの天族の願いも叶えねばならん。故に、手伝ってやろう、器……

 

小さな少女はレイの方に歩いて行き、レイと一つになる。

力が急激に増し、それは想いを繋げる。

 

 

デゼルは光の濁流の中、ロゼを見上げる。

 

「ロゼ……俺は謝らなきゃならん。」

 

ロゼはデゼルを見つめる。

デゼルは続ける。

 

「俺のせいでおまえを……風の傭兵団を不幸にした。すまなかった。」

 

そう言って、デゼルは俯いた。

そこに、ロゼの声が響く。

 

「言いたかったのはそれ?」

 

デゼルが顔を上げる。

ロゼは腰に手を当て、デゼルを優しく見つめる。

 

「ハタから見たら不幸って事になるのかもだけど、あたしはぜんっぜん、不幸とか感じた事ないよ。五年前のあの出来事で、あたし達はバラバラになってもおかしくなかったのに。風の骨、セキレイの羽としてまた一緒に旅ができた。」

 

ロゼは遠くを見るように言う。

嬉しそうに、誇らしげに、

 

「嬉しかった。感謝してるよ、あたしは。」

 

そう言って、笑顔になる。

俯くデゼルの肩を叩き、

 

「ほーら!言いたいことがあんでしょ。」

「……俺は半端もんだ。結局、何も碌≪ろく≫にできなかった。けど、たったひとつだけ。ちゃんと出来たよ。そのたったひとつをやり遂げられた事が本当に嬉しい。俺も……感謝してる。サンキュウな。」

 

彼のその濁りなき済んだ瞳がロゼを見る。

その顔は誇らしげで、嬉しそうだった。

彼の体はロゼより上にゆっくり上がっていく。

だからロゼはそれにまっすぐ見て、笑顔で、

 

「おう。」

 

そして、そこにレイの歌が聞こえてくる。

デゼルは懐かしむようにそれを聞き、

 

「スレイたちに、おまえらとの旅、悪くなかったって言っといてくれ。」

「おう!」

 

ロゼは彼を見上げ、力強い瞳で頷く。

 

「あいつらがもし悩んでたら……おまえら、やりたいことがあるんだろうが!いつまでもくよくよしてると俺の鎖で締め上げるぞ!ってケツを叩いてくれよ。」

「おう!」

 

デゼルはどんどん上がっていく。

ロゼは涙を堪え、頷く。

見えなくなるその最後の一瞬まで。

デゼルはロゼを見下ろし、最高の笑顔を向ける。

 

「じゃあな。そのままでガンバレよ。」

「おう!」

 

ロゼは最後の返事を大声で叫ぶ。

光がロゼを包む。

 

 

スレイはロゼを揺する。

 

「ロゼ!」

 

ロゼは目を開き、スレイ達を見上げる。

そのロゼの体には穢れも、傷もない。

ライラはホッとしたように、

 

「良かった……」

 

ロゼはハッとして、辺りを見渡す。

そこにはデゼルの姿も、憑魔≪ひょうま≫の姿もない。

ただ一人、あの少女以外は……

 

「彼の死をどう思う?」

 

彼女はこちらに歩きながら、いう。

 

「なぁ、導師。どう思う?彼のように、人に惹かれるほど……」

 

そして目の前まで来て、

 

「加護を与えれば与えるほど人を不幸にする天族は存在してはならないのだろうか。」

 

ライラが眉を寄せて、怒りの瞳を彼女に向ける。

だが、彼女は続ける。

 

「彼の存在自体が悪で、滅されるべきなのだろうか。」

「そんなワケない!」

 

ロゼは眉を寄せて、少女に叫ぶ。

少女は冷たい視線をロゼに向け、

 

「吠えるなぁ。娘よ。貴様も一時は同じ理由で導師を葬ろうとしたと言うのに。」

「!」

 

ロゼは目を見張る。

そこに影が少女を喰らおうとする。

それを審判者が彼女を喰らおうとする影を斬る。

 

「ふぅ~、危なかったね。」

「余計なお世話だ。」

 

そう言って二人は歩いてくるレイを見る。

赤く真っ赤に光る瞳が、二人を見て、

 

「これ以上のここでの導師の干渉を今すぐやめろ!さもなくば、私は全身全霊を持って、お前達を喰らい尽くす!」

「……まったく。裁判者の言葉とは思えないな。」

「黙れ!」

 

審判者は、仮面をつけていても解るほどの殺気が辺りを漂い、

 

「俺は、レイと言う存在を大切に思ってるんだけど――」

「……兄弟姉妹《きょうだい》ケンカならよそでやれ。私は巻き込まれるのはゴメンだ。」

 

少女がため息を着きながら言う。

そう言うと、彼の方もため息をついた後、殺気を消す。

スレイは少女を見て、

 

「お前は一体何者なんだ。」

「我が名はサイモン。彼と同じく業を背負った憐れな天族だよ。」

 

そこに天族ザビーダが駆け込んできた。

現状を察し、天族サイモンを睨む。

彼女もまた、彼を見て、

 

「この舞台は幕だな。」

 

彼女は背を向け、歩いて行こうとする。

その背に、

 

「待て!」

 

スレイは彼女を睨む。

無論、他の者達も。

天族サイモンは目を細め、

 

「今は悼んでやりたまえ。」

「そういことなら、俺も帰るかな。じゃあね。」

 

そう言って、裁判者も彼女と共に歩いて行った。

 

天族ザビーダがデゼルが被っていた帽子を拾い上げ、見つめる。

その瞳はとても悲しそうだった。

一行は無言となる。

 

しばらくしてレイがロゼを見る。

 

「……ロゼ、ごめんなさい。」

 

そう言って、悲しそな瞳を向ける。

スレイがレイとロゼを見て、

 

「それだったら俺も謝らなきゃいけない。ごめん、ロゼ。」

「無論、僕たちもだ。」

 

ミクリオが、スレイに続く。

そしてライラとエドナも頷く。

ロゼは立ち上がり、

 

「あはは!気にすんなって!もう気にしてない――」

「違う……」

「レイ?」

 

レイは自分の服の裾を握りしめ、

 

「私は知ってた。こうなる運命を……知ってて何もできなかった!本気で止めようとしなかった‼︎私《裁判者》なら二人とも……彼も救う手があった!なのに……」

 

レイは瞳を大きく揺らしながら言う。

ロゼは頭を掻き、

 

「だとしても、変わらない運命もある。それに、私も真実を知れた。そしてデゼルも自信を見つめ直し、自分に誇れるものを持てた。何より、やっと自分の大切なものを口にできたんだよ。あたしも、改めて大切なものを見れた。だからレイ、ありがとう。」

 

レイは首を振る。

そこに優しいそよ風がそっと彼らを包む。

レイは口を開け、瞳を揺らす。

 

「……デゼル……」

 

レイの頬に涙がつたう。

全員が驚いた。

ロゼが慌てて、

 

「いや、レイ⁉︎泣かすつもりじゃ――」

「う、う……うわぁぁーー‼︎」

 

と、泣き出した。

スレイがしゃがみ、レイを抱き寄せる。

 

「そうだよな。辛かったんだな……ごめん、気付いてあげられなくて。でも、ありがとう。レイが頑張ってくれたから、デゼルもきっと勇気を持てたんだと思う。」

「うわぁぁー‼︎」

 

レイはスレイにしがみつく。

その背をスレイは優しくさする。

そして少し落ち着くと、

 

「そうか……悲しかったんだ……あの人も、彼も……」

 

レイの瞳には一人の導師のマントを羽織った男性がよぎる。

だが、それはすぐに消える。

レイは先ほどとは違う涙を流し、

 

「あの人を失ったことを……助けられなかったことを……」

「レイ?」

 

スレイはレイを見る。

そしてライラは手を口元に当て、目を見開いた。

当のレイはそう呟くと、スレイの肩で眠っていた。

 

 

その後、宿屋に向かい眠っているレイをベッドに寝かす。

そして他のもたちは気持ちを整理する為に、それぞれ外に出ていた。

レイが目を覚ます。

いや、レイじゃない方のレイが目を覚ます。

 

「……さて、行くか。」

 

小さな少女は風に包まれ、白から黒へと変わり、外に出た。

 

スレイ達は各自で別れていた。

その中、スレイは噴水の前に立っていた。

そこにミクリオがやって来る。

 

「みんなにも明日の朝ここに集合と伝えておいた。たまには一人になるのもいいだろうしな。」

「サンキュ、ミクリオ。」

 

そう言って小さく笑うスレイに、

 

「……スレイ、レイにああいった矢先、あまり気に病むなよ。」

「ん……」

 

ミクリオは一呼吸した後、

 

「……デゼルの死も、彼の業も、あのサイモンの言葉も……災禍の顕主を鎮めるために、導師は受け入れなくてはならないんだろうか。」

「うまく気持ちがまとまらないよ。」

「嫌ならやめればいい。」

「ミクリオ!」

 

スレイはミクリオを見つめた。

ミクリオは静かに、

 

「最後まで聞いてくれ。導師の使命や宿命などに押しつぶされるぐらいなら……いつでもやめればいい、少なからずそう思ってた。昨日まではな。でも今は違う。」

「デゼルのためにも、答えを見つけ出したい。」

「そうだ。彼に報いるとかそんなのじゃない。ただ知りたい。もう同じ事は繰り返さないために。」

 

ミクリオがスレイを見て言う。

彼は力強く、拳を握りしめて言う。

 

「だからもう、やめればいいなんて思ってない。」

「きっと答えを見つけ出さないとな。」

「ああ。導師の使命だからじゃない。僕たちの旅は僕たちのものだ。」

「そうだな。ありが――」

「礼は不要だ。僕の事を話しただけだからな。続けよう。僕たちの答えを探す旅を。」

 

二人は小さく笑い、頷いた。

そんな彼らを屋根の上から見ていた小さな少女がいた。

夜の暗さに紛れ、その身を闇と同化させていた。

ただ一つ、暗闇の中で光る赤い瞳以外は。

その小さな少女は満月を見上げ、

 

「お前が生かし、お前の妹が守った子供達はちゃんと成長している。お前の妹が想い、願った通りに……」

 

そう言って、その場を後にする。

 

ミクリオはスレイに背を向け、

 

「じゃあ、僕もちょっとぶらついてくる。」

 

そう言って歩いて行った。

スレイも月明かりが灯る街を歩く。

 

聖堂の方に行くと、エドナがベンチに座り、月を眺めていた。

そしてスレイに気が付くと、その状態のまま言う。

 

「……あの不思議ちゃん。自分は業を背負うものだって言ってたわね。」

「ああ。導師は悲しい業を背負った天族の事を知る必要があるとも言ってた。」

「人にとって存在しているだけで悪という者――死を解放と言うこともあるわ。そこに居るだけで望まない結果を導くものにとって死は――」

「エドナ!それ以上は言わせない!」

 

スレイは眉を寄せて大声を上げた。

エドナはスレイを見て、

 

「……バカね。デゼルの事じゃないわ。」

「お兄さんの事でもダメだ。言っちゃ。」

 

エドナはまっすぐスレイを見つめ、

 

「言ったとしても、そんなのただの言葉じゃない。それも何度も耳にしたでしょ。」

「それでもイヤなんだ。今、聞きたくない。」

 

スレイは少し悲しそうな声で言う。

エドナは視線を落とし、

 

「……そう。じゃ、話は終わりね。」

「ん……」

 

スレイはエドナに背を向け、トボトボ歩いて行く。

その背に、

 

「スレイ!」

 

スレイはエドナに振り返る。

エドナは立ち上がり、

 

「言いたかったのは、デゼルは救われてたんじゃないかって事。」

 

そしてスレイから視線を外し、

 

「さっきのはワタシが悪い。謝る。ごめん。」

 

そして最後はスレイを見つめた。

スレイは笑顔を彼女に向け、

 

「ありがとう。エドナ。」

「どういたしまして。」

 

エドナは傘を広げ、スレイに背を向ける。

その表情はどこか嬉しそうだ。

スレイは再び歩き出す。

エドナはベンチに座り、月を見上げ、

 

「……今の気持ちをまとめるのには、夜は短すぎるわね。でも、今回の事で裁判者も、審判者も、本当は……でも、それでもワタシは許せない。」

 

それを屋根の上で、小さな少女は聞いていた。

立ち上げり、エドナを一目見てから次の屋根へと移る。

 

「人も、天族も、闇はある。加護とは時に幸せを、不幸を運ぶ。加護を与える天族もまた、心あるもの。故に、人々が同じ人を、天族を、信じられなくなったと同じように、天族もまた、同じ天族を、人を信じられない。喜びも、悲しみも、連鎖を引き起こす。いつかそれは終わりに、そして始まりに繋がっている。人の世も、天族の世も、同じように……」

 

小さな少女は前を歩くスレイを見下ろす。

その儚く、小さく、純粋な心にして、命。

 

「見極めろ、導師。お前自身の目で、心で……」

 

スレイはエドナと別れた後、高台に来ていた。

そこにはライラが一人、黙々と何かをしていた。

 

「ライラ、何してるんだ。」

「これですか?」

 

ライラがスレイにそれを見せる。

ライラの手には紙で作られた一羽の白い鳥の形をした紙細工だった。

スレイは目を見開いて、驚いた。

 

「すごい!どうなってるんだこれ。」

「こうやって紙細工をしていると落ち着くんですの。余計な事を考えなくなって、どんどん自分の世界に入っていって……」

「へぇ~。」

「……スレイさん、一人で抱え込まないでくださいね。」

「……今回のは抱え込んでなくても辛いな。」

 

スレイは視線を外し、

 

「ホントにああすることしかなかったのかとか、ちゃんと話しあっとくべきだったんじゃないかって。色々考えちゃうよ。そう思うと、今になってレイの気持ちがよくわかる。」

 

スレイは悲しそうに瞳を揺らす。

小さな少女は屋根の上からそれを見ていた。

そしてライラは鳥の形をした紙細工をスレイに渡し、

 

「スレイさん、反省することはいい事です。ですが、後悔はダメですわよ。」

 

彼女はスレイに優しく微笑む。

スレイはライラを見て、

 

「ライラ?」

「人の習慣に、亡くなった方への追悼を込めた紙の舟を河に流すというのがあるんですって。デゼルさんは風の天族でしたから、風に舞う鳥が良いじゃないかって思ったんですの。さぁ、スレイさん。送りましょう。」

 

だが、スレイは鳥の形の紙細工を見たまま、動かなかった。

しかしスレイは、顔を上げ、優しく鳥の形をした紙細工を空に上げる。

ライラもそれを見て、力を使う。

だが、鳥の形の紙細工は降下していく。

二人が戸惑うように見合う。

それを見た小さな少女は、

 

「……仕方がないな。」

 

小さな少女は歌い出す。

スレイは聞き覚えのある歌を耳にする。

それに合わせ、そよ風がスレイ達を優しく撫でていく。

さらに、風に合わせ鳥の形の紙細工は上がっていく。

そして見上げるそこには、綺麗な月が照らしていた。

鳥の形の紙細工は早く、それでいて、高く上がっていく。

スレイはそれを見つめ、

 

「……きっと届いたよな。」

 

そして隣のライラを見る。

彼女は目を瞑り、黙とうを送る。

スレイはそれを優しく、嬉しそうに見る。

そして、優しく声を掛ける。

 

「ライラ……」

「はい。」

「ありがとう。けど、ライラも一人で抱え込んじゃダメだよ。」

「私は大丈夫!心配ご無用ですわ。」

 

ライラは明るい声で言う。

ライラは月夜を見上げ、

 

「私はもうしばらくここにいます。風が気持ちいですし。」

「そっか。じゃあオレ先に戻るよ。……なんか、あの人も起きてるみたいだし。」

「……そう……ですね。」

 

ライラは月夜を見ていた瞳が揺れる。

そしてスレイが居なくなった後、

 

「……私もまだまだですわね。」

 

スレイは宿に向かいながらレイを……いや、裁判者を探しながら歩いていた。

すると、見覚えのある後姿を見つけた。

その人物はデゼルの帽子をクルクル人差し指で回していた。

そしてその人物もまた、スレイの気配に気づき、

 

「なぁ……導師殿。あいつ……デゼルのヤツの最期はどうだった?」

 

そう言って、スレイに振り返った。

スレイは天族ザビーダを見上げ、

 

「……笑ってたって。」

「そっか……あいつの望みはかなったのかねぇ。」

 

天族ザビーダはクルクル回す帽子を見る。

スレイは俯き、

 

「……ザビーダ、デゼルの事知ってたんだな。」

 

そして顔を上げて、彼を見る。

天族ザビーダは、どこか楽しそうに、懐かしむように、

 

「まぁな……あいつがもっとガキの時に、当時の仲間と助けてやった事があったんよ。」

「じゃあデゼルとザビーダの戦い方が似てるのは……」

「そ。あいつが真似してたってわけ。なのに全然俺に気付かないでやんの。色々かなぐり捨てたんだろうよ。思い出すらな。」

 

最後の方は帽子を回すのを止め、暗い口調だった。

スレイはデゼルの帽子を見つめる。

彼は帽子を被り、

 

「捨てられたんなら拾やいいってな。あんたらはちゃんと拾ったんじゃね?」

 

そう言って、口の端を上げる。

スレイは少し驚いたように、

 

「ザビーダ。慰めてくれてるのか?」

「おうよ。これからは俺様の大事な器だからな。穢れられたらたまったもんじゃない。」

 

と、彼は腰に手を当てて言う。

スレイは目をパチクリさせて、

 

「え?」

「っつーことで、これからひとっ走り、ライラと陪神≪ばいしん≫契約いってくらぁ。」

「なんでそうなるんだよ!」

「俺はもう一人じゃ、憑魔≪ひょうま≫を始末できなくなっちまっただろ?それに一緒に行けば導師殿への貸しを、いつでも取り立てられるってな。」

「そんな事勝手に決めるなって。」

 

スレイは詰め寄るが、天族ザビーダは笑いながら、

 

「まぁいいじゃねえの。それにあの嬢ちゃんの借りも返さなきゃならん。」

「え?」

「んじゃあ、明日な!導師殿。」

 

そう言って、歩いて行った。

そして、天族ザビーダは階段を降りると、

 

「と、言うわけだ。これから、お世話になるぜ。嬢ちゃんにも、そう言っておいてくれ。」

「知るか。自分で言え。」

「ケチだな。」

「だが、何故動いた。あれの弾丸が少なくなっていたことはお前自身が理解していたと思っていたが?」

「そりゃー、あんなに必死めいた顔で、〝デゼルを止めて‼”って、言われたら動きたくなっちゃうだろ。それに、何だかんだ言って、アイツは俺の弟みたいな奴で、俺の願いで望んだアイツと同じくらい大切だったんだ。」

「……そうか。……それと、今回は器が世話をかけたな。」

「へ?」

 

天族ザビーダが声のしていた所を見たが、そこには誰もいなかった。

天族ザビーダは頭に手をやり、

 

「いやー、珍しい事もあったもんだ。」

 

そう言って、再び歩いて行った。

 

 

スレイは頭を掻きながら、

 

「まったく……。」

 

と、歩いていると、

 

「スレイ。」

「んん?」

 

そこにはロゼが居た。

ロゼはスレイを見て、

 

「あたしさ、あの時、最後にデゼルと話したんだ。で、その時のあいつ見て、ずっと忘れてたこと思い出した。あたし、ちっちゃい頃にあいつに会ってた。きっとその時からあいつはあたしを守ってたんだね。」

 

ロゼは懐かしむように、それでいて嬉しそうに言った。

スレイは俯き、

 

「……デゼルはロゼにそれを知られたくなかったんだ。ロゼは自分の力で生き抜いてきたと思ってるからって。」

「確かにそのつもりだったけどね。けど、話してくれなかった事の方がイヤだよ。おかげであたしは感謝もしない、思い込みバカみたい。」

 

ロゼはスレイの前で、腕を組んで頬を膨らませる。

スレイはロゼを見て、

 

「ごめん……」

「これからはちゃんと話して、ね!」

 

と、腰に手を当て、ニッコリ笑う。

スレイは小さく笑い、

 

「ああ。……ちゃっと安心した。すごくへこんでるんじゃないかって思ってたから。」

「ん~。なんかいっぺんに色々あったからかな。あいつに二度と会えないって実感もわかないし。前にも、裁判者がなんか生まれ変わる的な事言ってたじゃん。もしかしたら、デゼルは案外はやく生まれ変わってて、あたしたちを見てたりしてね。……なーんて……」

 

ロゼは頭を掻きながら、

 

「それに、サイモンってのに言われたことも、やっぱ間違ってたのは自分かなって納得しちゃってるし。」

「……ロゼってすごいな。」

「考え込むのが苦手なだけ。ほら。今日はゆっくり休みな、スレイ。」

「そうするよ。」

 

スレイがそう言うと、ロゼは頷く。

そこに、再び聞き覚えのある歌が流れてくる。

スレイはレイ≪裁判者≫の歌が聞こえた場所に行ってみた。

そこには月明かりに照らされ、まるで光り輝いているかのような小さな少女が居た。

小さな少女は歌うのを止め、スレイを見る。

 

「……来たか、導師。」

「ああ。その……体は平気なのか?レイがあれこれやって……疲れてたみたいだから……」

 

小さな少女は腰に手を当て、

 

「ああ。私はな。」

「!じゃあ、レイは‼」

「安心しろ。器にも影響はない。体の影響は、な。」

「…………」

 

スレイは小さな少女を見つめる。

いや、眉を寄せて睨む。

小さな少女は目を細め、

 

「そう睨むな。今回の件で解ったはずだ。器は私に、裁判者に戻ろうとしている。」

「君が途中で出たり入ったりしてたんじゃないのか?」

「いいや。今回の件に、私は一度も出ていない。全て器がやったことだ。私の力を使ってな。」

 

小さな少女はスレイを見据える。

その赤く光る瞳で……

 

「新たな風の陪神≪ばいしん≫を入れ、お前はこれからこの災厄の時代の真実に触れる。お前はお前自身の答えを出さねばならん。無論、お前の仲間もこの後の先の答えを。」

 

小さな少女はスレイに背を向け、

 

「……導師、時機にこの器は思い出す。そして私達の中のものに気付く。この器を大切に想うのであれば、器の答えを聞き、その手を放すな。そして器を器とし、あれとともに、歯車の一つとしろ。」

「……それって……?」

「私から言える事はこれだけだ。後はお前達で知れ。今回の事をいつまでも引きずっていては、想いを繋げたあの風の天族の想いは無駄になるぞ。いつの世も、こういう事は幾度となくあった。だが、どの導師も、仲間も、……そして時に災禍の顕主もまた、託された想いを繋げていた。お前も、そしてお前の仲間も、あの風の天族の想いを無下にするなよ。」

 

そう言って歩いて行った。

スレイは頭を掻きながら、

 

「……相変わらず、よく解らない人だ……でも、あの人なりに励ましてくれたのかな?」

 

スレイは照れくさそうに笑う。

が、すぐにハッとして、

 

「じゃなくて!あの人、ちゃんと宿屋に行ってくれたかな⁉」

 

スレイは宿屋に急いで帰る。

部屋に入ると、肩を上下して寝ているレイが居た。

スレイはホッとして、自分も床に入る。

 

「想いを無下にしない、っか。そうだよな……デゼルの想いは今も傍に残ってる。でも……」

 

そう言って、力強い瞳で天井を見つめる。

その左手は胸にあった。

そしてスレイは眠気が襲い、そのまま眠る。

 

レイは起き上がり、スレイの寝顔を見る。

そして安心したように、だが不安そうに再び布団に入って眠る。

 

ミクリオが部屋に入ると、スレイとレイが眠っていた。

その表情はとても穏やかでもあった。

 

「良かった……ホント。」

 

そう言って、ミクリオも床に入る。

 

それぞれの想いと共に、全員が今日という夜をそれぞれの想いで過ごした……


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