テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

27 / 73
第三章 運命のその先に
toz 第二十七話 気付き始めた心


スレイ達は戦場に向かって歩いていた。

ヴァーグラン森林を超え、グレイブガント盆地へと入る。

レイは耳を塞ぎ、深呼吸した後、一人で歩き出す。

 

ローランス帝国側の野営地に向かうと、ロゼの仲間が居た。

双子の兄弟だ。

そして衛兵たちと話していた。

 

「荷は確認した。さすがセキレイの羽、いい品だ。次も頼みたいが……」

「申し訳ないけど、別の仕事が入ってて。またの機会にお願いします。」

 

そう言って頭を軽く下げる。

ロゼはその二人の背に、

 

「フィル、トル。」

「頭領!ちょうど良かった!」

「仕事?」

 

ロゼは二人に近付いて行く。

双子の兄の方がロゼを見て、

 

「そう。実は――」

「トル。」

 

妹が彼の耳とで、話を止めさせる。

後ろの衛兵を気にし、小声で、

 

「……っと、ここじゃあマズイね。」

「とにかくこっちへ。」

「了解。」

 

スレイ達は場所を移動する。

ヴァーグラン森林に戻る。

 

「ローランス秘書官が接触してきた。仕事の依頼があるらしい。」

「なんだと⁈」

 

デゼルが大声を上げる。

レイは彼らをジッと見つめる。

ロゼが眉を寄せ、

 

「秘書官って皇帝付きの執事?」

「うん。それに気になる情報も入ってきたよ。妃殿下が病没した弟の子を自分の養子として迎えようとしているらしいって。」

「……たしか今のローランス皇帝は前皇帝と別の女性の子だよね。」

「そして妃殿下は、あの事件で自分の子と共謀して、皇位を自分の直系に継がせようとした。秘書官はそれを忘れてはいないだろうね。」

 

レイは彼らに背を向け、腕を組み考え込む。

そうしている中、ロゼは頷き、

 

「いいわ。あたしが処理する。」

 

その答えに双子は驚き、

 

「受けるの?私たちの仇敵と言えるヤツからの依頼を。」

「忘れないで。本当にやらなきゃダメな仕事なら、依頼主が誰でも関係ない。それが私たち、でしょ?」

 

ロゼはジッと二人を見る。

二人はどこか納得のいく顔で、

 

「そう……だよね。頭領、すごいよ。」

「頭領の名はダテじゃないってね!」

 

ロゼは腰に手を当て、笑顔で言う。

そんなロゼをスレイは真剣な表情で見つめていた。

 

「あはは。依頼人とどう接触しようか?」

「ペンドラゴの城に忍び込むよ。」

「本気かい⁉」

「呼び出したって本当の依頼主はこないでしょ。代理人じゃ意味がないんだ。ちゃんと見極めたいから。」

「わかった。城に行くならみんなを呼ばないと……」

 

双子が悩みながら言うと、ずっと黙っていたスレイが一歩前に出て、

 

「大丈夫。オレも行くから。導師として見過ごせない事があるんだ。」

「え。」

 

ロゼはスレイを見て驚いた。

そしてずっと考え込んでいたレイがロゼを見上げ、

 

「私も行こう。」

「はい?や、でも、レイ?」

「わ・た・し・が、行くのだ。この意味、お前なら解るだろう。」

 

赤く光る瞳が、ロゼを見つめる。

ロゼは頭を掻きながら、

 

「あー……なるほどね。でも……」

 

双子は疑問に思った後、ロゼを見て、

 

「えっと、いいの?」

「どうするの頭領?」

 

悩んでいるロゼに、ライラが説明する。

 

「ロゼさん、ローランス皇族は憑魔≪ひょうま≫との関わりがあるらしいのです。」

「僕たちだけで行く方がいい。それにレイの……いや、裁判者のこともあるし。」

 

ミクリオが付け足す。

ロゼは二人を見て、

 

「……トル、フィル。あたしらだけで行くよ。その方が動きやすい。」

「……わかった。気を付けて、頭領。」

「スレイ、頭領を頼むよ。」

「ああ。」

 

二人は歩いて行く。

エドナがイラついたように、

 

「で、何でアンタは協力する気なの?」

 

小さな少女は腰に手を当て、

 

「なに。今回は選択の一つで道が変わると言うだけだ。それだけではない。今回は前回と違い、皇族の……そして関わっている者の中に、私の仕事があると言うだけだ。」

「それってどういう?」

 

ロゼが眉を寄せながら言う。

小さな少女はロゼ達をジッと見て、

 

「以前、器が話していただろう。生きるもの全ては本のようだと。紡がれる道は枝のように多い。今回はその分かれ道の内の一つという事だ。選択肢は二つ。私はその出された選択の結果によって、動かねばならない。」

「なるほどね~。」

 

ロゼとスレイは腕組んで頷いていた。

小さな少女は彼らには聞こえない声で、

 

「その選択肢を選ぶのはお前だがな、導師。」

 

小さな少女は赤く光る瞳を細めて、スレイを見た。

だが、すぐに彼らに背を向け、

 

「では、その時が来たら、私は表に出よう。」

 

そう言って、振り返るのはレイだった。

レイは目をパチクリした後、首を傾げた。

そしてロゼは少しの間を置いた後、スレイに背を向け、

 

「……でも、なんか悪いね。風の骨の事に付き合わせちゃって、さ。」

「やっぱ心配だし、ほっとけないよ。憑魔≪ひょうま≫だけじゃなく、裁判者も絡んでるのならなおさらだ。」

 

デゼルがスレイを見て、

 

「……やっとだ!ついてに来た!行くぞ!ペンドラゴに!」

「デゼル……。ホントにやるつもりなのか。」

「今更だな。」

 

二人の会話に、ロゼが首を傾げ、

 

「何の話?」

「お前が知る必要はない。」

「何それ!言え〰!」

 

と、いつかの時みたいに、彼の首に腕を回し、首を絞める。

デゼルはそれを振り解きながら、

 

「やめろ!くっつくんじゃない!」

「仲のよろしいこと。」

 

それを見たエドナが棒読みで言う。

レイはそれをジッと向け、俯いた。

そしてデゼルはロゼを離し、エドナに怒鳴りながら、

 

「黙れ!とっとと行くぞ!」

「デゼル。ローランス皇族は本当に憑魔≪ひょうま≫なんだな?」

 

スレイがジッと彼の背を見つめる。

デゼルは背を向けたまま、

 

「火付きの悪いやつだ。行けばわかる。それに、やつも絡んできたんだ。」

 

デゼルは歩いて行く。

スレイはライラを見て、

 

「ライラ……」

「わかっていますわ。スレイさん。」

 

その雰囲気に、ロゼは少し拗ねたように、

 

「なんかあたしに黙っている事多くない?」

「ごめん……」

「ちゃんと話せるようになるまで、もう少しお待ちください。」

「ま、いいわ。わかった。」

 

ロゼも納得し、一行はペンドラゴへと進むことにした。

 

 

ペンドラゴの少し手前で、彼らは野営を始める事にした。

デゼルはイライラしていた。

 

「たく!やっと来たっていうのにここで足止めとは!」

「いいじゃん、デゼル。理由はよくわかんないけど、焦って失敗するよりかはいいでしょ?」

 

ロゼが巻木を整えながら言う。

デゼルは舌打ちをした後、どこかに歩いて行く。

レイは彼の背に付いて行く。

しばらくした所で、デゼルが立ち止まり、

 

「何だ、チビ。」

「…………」

 

レイは無言だった。

デゼルは背を向けたまま、

 

「だから何だ、チビ。」

「…………」

 

デゼルはしばらく黙ったままのレイに振り返る。

レイはデゼルを見上げていた。

デゼルは怒鳴りながら、

 

「だから何だと、聞いている。黙っていないで言え、チビ。」

「…………」

 

それでも黙り込んでいるレイ。

デゼルが舌打ちをし、再び背を向け歩き出そうとすると、

 

「デゼル。」

「あ?」

 

デゼルは振り返り、レイを見る。

レイはジッとデゼルを見つめたまま、

 

「本当にやるつもりなの?」

「……当たり前だ。その為に俺はここにいる。」

「それで、ロゼが死ぬようなことがあっても?」

「……そうだ。止めるつもりなら――」

「止める気はない。」

「あ?」

「止める気はない。それが貴方の選んだ選択なら、それは貴方の運命だから。そして、その結果でロゼが死んでも、それはそれでロゼの運命でしかない。」

「だったら――」

 

レイは胸を抑え、そしてデゼルを悲しそうに見上げる。

 

「……それでも、私は貴方にその選択肢を選んで欲しくない。結果はどうあれ、貴方はロゼを大切にしている。そしてお兄ちゃん達の事も。何より、貴方はぬくもりを知る人だ。だから復讐という選択肢を選んだ。このまま続けても、貴方を生かし、貴方にその選択肢を選ばせた友は……それを望まない。」

「……お前に何がわかる!本当の願いを叶えるのがお前達なら、俺の願いを叶えない道理がない。俺は本当に復讐を選んだ。あいつが何を想っていようが、だ。俺はあいつの仇を討つ!それにお前は、前回は動かなかった。聞けば、王族が絡む事にはお前も関わると聞く。なのに、あの時は動かなかった。それが今になって動くとはどういう事だ!」

「……願いに関しては、それがデゼルの本当の願いではないから、としか言えない。そして貴方が言う前回のことは……決まっていた運命だからとしか言えない……」

「は。運命だと?ふざけるな!お前はいつもそうだ。裁判者は未来を知っていて、その者の運命とやらを知っていて、見捨てる!助けようとすらしない!」

「それは――」

「自分には関わりがない、世界の認める未来だから、運命だからと言いたいのだろう。だったら、なおさら俺に関わるな!」

「……デゼル……」

 

レイは俯く。

デゼルは帽子を深くし、

 

「俺はやると決めた。変える気はもうとうない!何があろうと!」

 

レイは彼に背を向け、

 

「……デゼル。貴方が選ぶその道に、裁判者が関わる。貴方の願いは叶う。裁判者が貴方の願いを叶えるから。でも、それは復讐ではないもの……貴方が気付けることを私は願うよ。」

「は。余計なお世話だ。俺は復讐以外何も望まない。それに、お前自身はどうなんだ。お前も、答えを出せていないだろ。自分が消えかかっているというのに。」

「……私は……自分の答えに気付いているのだと思う。でも、それを言葉にできる程の感情も、意志もない。でも、貴方は違う。だからデゼル……未来を諦めないで。」

 

レイは背を向けたまま言うと、歩いて行った。

レイは歩きながら、

 

「……あの風の人にも……手伝って貰おう……ごめん、デゼル。それでも私は……」

 

レイは風に身を包む。

レイが居なくなった後、デゼルは木にもたれ、

 

「たく。裁判者ではなく、あいつ≪レイ≫自身が話すとな……」

 

デゼルはしばらくそうした後、スレイ達の元へ戻る。

今日は会話も少なく、みんな床に入って休んだ。

 

スレイ達はペンドラゴの門の近くまで歩いて来た。

すると、スレイと手を繋いていたレイが立ち止まる。

そして、ジッと木の陰を見つめる。

スレイもそこを見ると、一人の天族の男性が木にもたれていた。

長髪で、上半身裸にペイントが入った謎の天族。

 

「ザビーダ!」

「偶然……ってかんじじゃないね。」

 

天族ザビーダはこちらに一度、手を振る。

デゼルは天族ザビーダを睨む。

彼は木にもたれたまま、

 

「今回の相手だけは俺に任せなって。悪いことは言わないから。」

「ふざけんなよ。ザビーダ。」

 

デゼルはさらに睨みながら言う。

ザビーダは今までとは違い、真剣な表情で、

 

「ふざけてないぜ。特に今回はな。ま、聞く耳持たないってんなら、俺はいつも通りやらせてもらうだけだけどな。」

「行かせるか!」

 

デゼルが歩き出す天族ザビーダに、ペンジュラムで攻撃する。

だが、彼はいとも簡単に避けた。

その余裕差に、見ていたエドナはイライラしながら地面を蹴っていた。

しかし、天族ザビーダは頷いた後、

 

「わかったよ。デゼル……。俺にはどうしてもケリをつけなきゃならんヤツがあと二人いる。」

 

そして拳を握りしめる。

レイは俯く。

天族ザビーダは銃に手を掛け、

 

「だからこの最後の2発はその時のために大事に取ってたもんだ。」

 

そして弾丸を詰め込む。

ミクリオが眉を寄せ、

 

「お、おい。話が見えない。」

「ミク坊。男の本気は、本気で受けとめるもんだ。覚えておけ!」

 

そう言って、銃を頭に向け引鉄を引く。

風が彼を中心に吹き荒れる。

レイは顔を上げ、一歩下がる。

その瞳は悲しみに満ちていた。

天族ザビーダはスレイ達に振り返り、

 

「さぁ!来な!」

「上等だ!」

 

天族ザビーダとデゼルは武器を構える。

ロゼは眉を寄せ、

 

「なんでこうなんの!」

「しょうがない!やるぞ!」

 

スレイ達も武器を手に構える。

デゼルは天族ザビーダの攻撃を交わし、ペンジュラムを投げる。

 

「てめえの酔狂で俺の目的を邪魔させねえ!」

「その酔狂に勝ってから吠えな!」

 

天族ザビーダも、デゼルの攻撃を交わしながら言う。

ザビーダは再び攻撃しながら、

 

「スレイ!こいつは俺がシメる!俺を引っ込めんじゃないぜ‼」

 

二人の激突はすごい迫力だった。

スレイは何とか二人を止めようと、

 

「頭を冷やせ!デゼル!ザビーダも!」

「ここで引けるか!」

「こりゃ、本気のケンカっつったろ!」

 

二人はなおも交戦を続ける。

 

レイはそれを悲しそうにじっと見つめる。

 

「互いに譲れない想い……私は……」

 

そして、デゼルの一撃が天族ザビーダにヒットする。

天族ザビーダは膝を着いた。

 

「はぁはぁ……」

 

なおも攻撃しようとするデゼル。

スレイが駆け寄りながら、

 

「デゼル!」

「うるせえ!黙ってろ!」

 

デゼルはペンジュラムを投げた。

だが、天族ザビーダの前に、レイが両手を広げて立つ。

そしてジッとデゼルを見る。

ミクリオが目を見開き、

 

「レイ!」

「ちっ!もう止まんねぇ!」

 

レイの頭にあたりそうになった瞬間、天族ザビーダがレイを引き寄せた。

デゼルのペンジュラムは地面に刺さる。

そしてそれを引き戻す。

ロゼがデゼルの背を叩き、

 

「まったく、頭冷えた?」

「ああ……すまん。」

 

デゼルは帽子を深くかぶる。

天族ザビーダはレイを離す。

 

「大丈夫だったか、嬢ちゃん。」

「……逆に助けられた。ありがとう。」

「お安い御用よ。……でも、ちっと注意した方がいいぜ。怪我しない為にもな。」

「……貴方をここに呼んだのは私……そのせいで貴方に何かあればそれは私の責任。貴方の歴史を狂わせる。……違う、私は……ごめん、なさい……」

 

レイは小声でそう言うと、服をギュッと握る。

天族ザビーダはレイの頭を撫でた。

 

「わりぃーな、嬢ちゃん。そんな顔をさせるつもりはなかった。それに、こんな結果で。」

「ううん。ありがとう……」

 

天族ザビーダは立ち上がり、デゼルを見る。

 

「それにしても、……ってぇ……やるようになったじゃねえの……」

 

そして銃を取り出し、弾丸を入れてそれをスレイに渡す。

視線をデゼルに向け、

 

「スレイ……こいつが憑魔≪ひょうま≫を殺すのを止められねえ時はこいつを撃て。これの力なら穢れと結びつくのをしばらくは防げる。」

「わかった。」

 

スレイは頷く。

天族ザビーダは伸びをし、

 

「最後の一発をくれてやるんだ。この貸し、後で返せよ。」

 

スレイは銃をしまい、頷く。

ミクリオは眉を寄せ、

 

「何故そこまで……?」

 

ロゼやスレイも改めて天族ザビーダを見る。

彼らはため息をついた後、

 

「へっ、何となくさ……」

 

デゼルは帽子をさらに深くかぶり、舌打ちをする。

天族ザビーダは門を見て、

 

「行けよ。俺ぁ、ちっと寝るわ。」

 

そう言って、木陰にあたり、大の字で横になる。

そして空を見上げ、目を瞑る。

 

スレイ達は門に向かって歩いて行く。

スレイはしまった銃を触り、

 

「でも、ザビーダ、なぜこの道具をオレに……?」

「「なんとなく」って言ってたね。多分、本心なんじゃない?」

 

ロゼは頭に手をやって、答えた。

スレイも苦笑いする。

 

「かもな。しっかし、不思議なものだよな、コレ。」

「ザビーダがくれたやつか。あいつは力を撃ち出す道具だと……」

 

ミクリオが腕を組んで言う。

スレイが頷いて、

 

「言ってた。これで穢れに対抗する力を得てるって。」

「自分を撃てば力を増し、誰かに撃てば穢れとの結びつきを断つ。そういう『力の矢』を撃つための『専用の弓』というところか。」

「この弾に、その力が?」

「おそらく。それに、コレを創ったのは裁判者だ。そう言った力があるのは当然だと思う。」

「そしてこれが最後の一発か……」

「そうなるね。僕たちじゃ作りが分からない以上は。」

「分解してみたらなんかわかるかも――」

「スレイ。」

「わかってる。元に戻せなくなるだけだよな。」

 

スレイが頬を掻く。

ミクリオは真剣な表情で、

 

「慎重に扱おう。貴重なものなのは間違いない。」

 

デゼルは後ろを歩きながら、

 

「力を撃ち出す……か。」

 

そう言って、歩いて行く。

 

レイはスレイがペンドラゴの門を開ける前に、

 

「……決めなきゃ。でも……」

 

レイは空を見上げ、悲しそうに呟いた。

そして一行は門を開け、中に入って行く。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。