テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第二十三話 地の試練神殿モルゴース

一行は奥まで行くと、遺跡を見つけた。

その中に入ると、エドナは傘をクルクル回しながら、

 

「ああ……面倒……」

「なんだよ、エドナ?」

「ここはワタシの番なんでしょ?まったく……なんでこんな面倒な事を……」

 

スレイは苦笑いしながら、エドナを見る。

と、入ってすぐに大きな憑魔≪ひょうま≫を見つけた。

その憑魔≪ひょうま≫は手には斧を持ち、頭には角が生え、牛のようだった。

それを見たロゼは、

 

「うわぁ……」

「いきなりすごいのがいるな……」

 

スレイも頭を掻きながら、苦笑いする。

憑魔≪ひょうま≫を見たライラが、

 

「あれは……ミノタウロスですわね。」

「そうなんだ……あいつがあそこに陣取ってるせいでどうにも……」

 

と、言うと後ろの方から声が響く。

スレイ達は後ろを向く。

そこには白い服を纏った仮面をつけた男性が肩を落としていた。

そしてその者を見たライラは驚きながら、

 

「導師パワント⁉」

「ライラちゃん。いつもながら見事だ……」

 

と、顔を上げ、ライラを上から下まで眺める。

ミクリオ達は呆れ顔になる。

ライラは呆れたように、

 

「相変わらず困った人ですわね……」

「全く、貴様は変わらんな。」

 

と、ライラの横で、いつの間にか黒いワンピース服のような服を着た小さな少女が彼を見上げて言う。

彼は驚き、

 

「うわぁ‼裁判者⁉な、なぜ、そのようなお姿に⁉それは、それでいいが、前の方が~‼」

 

と、腕を目に当て泣き出した。

ミクリオ達はさらに呆れ顔になる。

小さな少女の足元の影が揺らめきだす。

スレイはそれを見て、

 

「こ、この天族も導師だったのか?」

「その通り。死に方ひとつで種族を越える。げにこの世は愉快よな。ですよね、裁判者。」

 

と、泣きやみ、腕を組んで頷く。

そして再びライラを見るのである。

特に、彼女の胸元を……

 

小さな少女の足元の影は治まり、

 

「さてな。あいつの方はそう思っているのではないか。」

「相変わらずですな~。」

 

と、小さな少女を見つめる。

そしてため息をついたが、何かに納得しかのように改めて見るのであった。

ミクリオは呆れながら、

 

「愉快はいいけど、あれじゃ祭壇に近付けないじゃないか。」

 

と、スレイの横に居るロゼを見て、驚きながら近付く。

ロゼは困惑しながら、

 

「なに?」

「導師の力を求めてきたんだよな?試練だろ?そうだろ?」

 

と、腕に力を入れながらロゼに言う。

ロゼは眉を寄せながら、後ろに下がる。

スレイが頭を掻きながら、

 

「うん……まぁ……」

 

と、答えると、彼は残念そうに口を開き、肩を落として、

 

「そっちの娘ではないのか……」

「こいつ、ホントに導師だったの?」

 

ロゼが腕を組み、半眼で彼を睨む。

ライラは手を前に置き、

 

「これでも導師パワントは一万以上の憑魔≪ひょうま≫を鎮めた、天族の間にも名を馳せた方ですのよ。」

「うむ!」

 

と、腕を組み威張る。

ロゼはなおも半眼で、

 

「へぇ、このエロ助がね~。……で、真意は?」

 

と、小さな少女を見る。

小さな少女は腰に手を当て、

 

「見た通りだ。」

 

そうしていると、エドナが傘を広げたまま彼に近付き、

 

「エドナにちょうだい♪おじたまの♥は~や~く~♥」

 

と、甘い声と顎に手を掛け、笑顔で言う。

彼は嬉しそうに、

 

「おお!かわいい子だの~!エドナちゃんか~。」

「おじたま~ん♥ワタシ我慢できないの~♥♥」

 

と、体を左右に揺らしていた。

彼は腕を組んだまま悩み、

 

「おぉ⁈だが試練だからの~。やっぱ祭壇までいかねば……ですよね、裁判者。」

「……ああ。そうだな。だが、私に聞くな。」

「ですが……」

「試練では、我々は関与しないと言ったはずだ。」

 

と、小さな少女は目を細めて言う。

その彼女をエドナが彼には見えないように睨んでいた。

小さな少女はため息をつき、

 

「全く。どうなっても知らんからな、陪神。」

 

小さな少女は風に包まれ、白いワンピース服のような服を着た小さな少女へと変わる。

レイは目をパチクリさせながら、

 

「……?ここは試練神殿?」

 

と、ライラを見上げる。

ライラは頷き、

 

「ええ、そうですわよ。」

「終わった……わけではないみたいだね。」

 

すると、彼は驚いたように、

 

「おぉ‼こっちの方がいい!やっぱりあの方は、いつもの方がいいですからなあ~。」

 

と、レイに近付いて行く。

レイは彼を見て、スレイの後ろに隠れる。

彼は残念そうに、見た。

エドナが再び彼を見上げ、

 

「そ~れ~で~おじたま~♥どうなのぉ~♪」

「すまんのぉ~、エドナちゃん。やっぱりムリかもしれんのぉ~。」

 

と、言うとエドナの態度が変わり、

 

「ちっ……使えない……」

 

と、彼を睨んだ。

レイはさらに奥側に居たミクリオの方の足にしがみ付いた。

そして彼も驚きながら、

 

「え……」

「ワタシに今更試練とか?何なの?」

 

エドナは彼に背を向ける。

彼は困惑しながら、

 

「いや、試練が要るのは導師で……」

「要はあの牛が邪魔で祭壇に戻れない、あの牛を何とかして欲しい、そうなのよね?」

「や、えーっと……」

 

エドナは傘を閉じながら歩いて行く。

他の者も驚き、

 

「ちょっ⁉」

「エドナ?」

「危険ですわ!」

 

スレイは目を見張ってエドナを見る。

そしてロゼとライラも彼女を見て驚く。

レイがその後を追い、

 

「エドナ、ダメ!」

 

しかしそれは遅かった。

エドナは憑魔≪ひょうま≫の前に立つと、

 

「……消えろ。」

 

エドナは怖いほど殺気立っていた。

視線は外していたが、その殺気に憑魔≪ひょうま≫は一歩後ろに下がる。

そしてエドナは憑魔≪ひょうま≫を見上げ、

 

「消・え・ろ。」

 

憑魔≪ひょうま≫は震え上り、エドナの側にいたレイを掴み、すぐさま逃げ出した。

ミクリオが目を見張って、

 

「レイ――⁉」

 

エドナの側についたスレイとロゼは立ち止まり、

 

「レイ⁉」

「スレイ、ちょっとタンマ!一人じゃダメ!」

 

駆け出しそうになるスレイの腕を引っ張る。

エドナは一度深呼吸し、

 

「……あとは祭壇に行けばいいのね?その後、おチビちゃんを拾いに行きましょう。」

「や、あいつを鎮めろっていう試練なんだわ……」

 

だが、答えは違った。

彼は腕を組んで困り果てていた。

 

「え……」

 

スレイ達は彼を見た。

そしてスレイとミクリオは顔を青くした。

ロゼも気まずそうに、

 

「けど、どっか逃げちゃったよ。レイを持って。」

「すごいメンチだったからな……。そしてチビと一緒に逃げたな。」

 

後ろでデゼルが帽子を深くかぶり、呟く。

ミクリオは腕を組み、

 

「……きっと僕たちを見たら逃げ出すに違いない。どうしてくれるんだ、エドナ!レイに何かあったら!」

「はい……」

 

ライラも今回ばかりは呆気に取られていた。

エドナは導師パワントを睨み、

 

「どうしてちゃんと言わないの?バカなの?おチビちゃんに何かあったら、どうしてくれるワケ?」

「すいません……」

 

彼は肩を落として謝るのであった。

エドナは前を向き、

 

「しょうがない。あなたは先に祭壇に行ってていいわ。探して鎮めるから。」

「はい。」

 

エドナはスレイの中に入る。

そして導師パワントは肩を落としながら、歩いて行く。

エドナはスレイの中で、

 

「出発。発進。探検開始。おチビちゃん捜索。」

「エドナさん……実はヘコんでいますわね……」

 

ライラがそう言うと、スレイの中から怒り気味に、

 

「出発。発進。探検開始。おチビちゃん捜索。」

 

スレイは苦笑いし、歩き出す。

 

 

スレイは歩きながら、ロゼを見る。

 

「妙な展開になったな。」

「まさか牛を追っかけるはめになるなんてね~。レイも無事だといいけど。」

「そもそも、なぜレイが連れて行かれたんだ?」

「さあ?でも、何か理由があるんじゃない?」

「……レイ……」

 

スレイ達はドンドン進んで行く。

最初は逃げた方向に進んでみる。

すると、レイが憑魔≪ひょうま≫を見上げ、何か話していた。

 

「――大丈夫、大丈夫だから。」

 

だが、スレイ達を見た瞬間、再びレイを抱えて逃げて行った。

ミクリオは腕を組み、

 

「やっぱり逃げ出した、か……」

「なんとか見つからずに近付かないと。レイが無事なのも確認できたし。」

「だね。それにあの憑魔≪ひょうま≫は、レイに危害を加える気はないみたいだし。」

 

ロゼも頷く。

と、外庭に出ると壊れた木馬おもちゃを見つけた。

ロゼはこれを見て、

 

「むむ……なんでこんなところに木馬が?」

「小さいね。子ども用かな?」

 

スレイも腕を組んで悩む。

そこにエドナが出てきて、傘をさし、

 

「元々子どもの玩具でしょ。」

「だからなんで玩具が試練の神殿に?」

「知らないわよ。でも試練に関わりがあるとは思えないけど?」

「けど、気になるんだよ。」

「なにかのヒントかも?木馬……馬……馬車……」

「人参……馬刺し……バフンウニ……グンカン巻……イクラ丼……あ。違う連想になっちゃった。」

 

スレイとロゼは互いに驚く。

エドナが呆れたように、

 

「可能性があるとしたら、そうやって時間を無駄にさせるための罠ね。」

「バカやってないで、行くぞ。」

「安全だろうとは思うが、レイが心配だ。」

 

と、ミクリオが歩き出す。

 

遠くからレイの声が響いて来た。

その声の方へ行くと、レイが前の時と同じように憑魔≪ひょうま≫に話しかけていた。

 

「――という事があったの。面白いでしょ。君たちにもそう言った事がきっとある。だから聞かせて。」

 

ロゼがデゼルを見て、

 

「いくよ、デゼル!」

「ちっ。仕方ないな。」

 

二人はそっと近付いて行く。

が、隠れていたスレイ達の方で、ライラがくしゃみをしてしまう。

 

「クシュンっ!」

 

それでこちらのことがばれ、レイを再び抱えて逃げて行った。

ロゼはライラを見て、

 

「あ~!ライラ~、また逃げられた!」

「ごめんなさい~!」

「あの巨体でなんて逃げ足だ。」

 

デゼルは逃げ出した方向を見て言う。

 

「仕方ないさ。追いかけよう。」

 

スレイが苦笑いしながら歩き出す。

そして意外そうな顔をしながら、

 

「それにしても、あんな厳つい憑魔≪ひょうま≫なのにめちゃくちゃ怯えてたな。」

「……あれは仕方ないだろう……」

 

デゼルがエドナの方を見ながら言う。

そしてライラが説明を始める。

 

「ミノタウロスは虐げられた者の想いが集合し、歪んでしまったものなんです。いつも怒りを露わにしているのも、その反動なんですの。」

「怒られないように怒ってる感じ?」

「要は逆ギレね。」

「少しは反省すればいいのに……」

 

と、ミクリオは呆れたように言う。

ライラは苦笑いし、

 

「ですから、自分のそんな感情に気付いた……いえ、それを解っていたレイさんだから連れて行ったのではないでしょうか。」

「……むしろ近い存在だったから、かもしれんな。」

「つまり、今もこうして逃げているのは怖いのと、レイを守るため……か。」

 

ミクリオは腕を組み、先を見る。

そしてレイの歌声が響いて来る。

スレイ達は頷き、奥へ入る。

ミクリオがスレイを見て、

 

「スレイ、ここは僕の力で。」

「ああ。」

 

水の膜に身を包み、近付いて行く。

そして憑魔≪ひょうま≫の前に現れる。

レイは歌を止め、スレイ達に笑顔を向ける。

が、憑魔≪ひょうま≫はスレイ達に唸り、斧を振り下ろす。

 

「ブフォオオオオ!」

「危ない!」

 

レイが叫ぶ。

スレイ達はそれを避け、武器を構える。

ロゼが突進しながら、

 

「観念したみたい。」

「こいつも必死だ!みんな気を抜くな!」

 

スレイが、斧を避けながら言う。

すると、多くの子供達の鳴き声が響いてくる。

 

「うわぁぁん!」

「……恐いよね、辛いよね……」

 

その子供の泣き声を聞き、ロゼが眉を寄せながら、

 

「虐げられた者って……まさか子ども?」

「……ありえない話ではないですわ。だからレイさんは……」

「……そうだったの。」

 

ライラとエドナがどこか納得したような顔になる。

なおもその泣き声は響く。

 

「うわぁぁん!」

「お兄ちゃん!」

 

レイはスレイを見て叫ぶ。

スレイは頷き、

 

「ああ、救ってやる!救ってやるからな!」

 

スレイはまっすぐ憑魔≪ひょうま≫を見て言う。

ライラとミクリオが詠唱が終わり、叫ぶ。

 

「はい!穢れから解放することが……」

「この子たちへの鎮魂になる。」

 

そして、スレイはエドナを見て、

 

「エドナ!」

「……わかってるわよ。」

 

二人は互いに見合い、

 

「『ハクディム=レレイ≪早咲のエドナ≫』‼」

 

神依≪カムイ≫化をして、一撃を与える。

憑魔≪ひょうま≫は後ろに崩れ落ちた。

ロゼは武器をしまい、

 

「これで救われたのかな?」

「……そう信じるよ。」

「…………」

 

スレイは憑魔≪ひょうま≫を見て、言う。

そしてエドナも、無言でそれを見る。

そこにはレイが憑魔≪ひょうま≫の頭を撫でていた。

エドナはそこに近付き、膝を着く。

そして優しい声で、

 

「恐がらせてごめんね。」

 

その声に、憑魔≪ひょうま≫エドナを見る。

そしてエドナは優しく微笑み、

 

「ばいばい。安らかに。」

 

そしてレイを見る。

レイは頷き、歌を歌う。

憑魔≪ひょうま≫は炎に包まれ、光の玉が宙に浮いていった。

 

「子ども達の魂が天族となったのか……?」

「さぁね。」

 

ミクリオの問いかけに、エドナはそっけなく答える。

そして歩き出す。

ライラは微笑み、手を合わせ、

 

「さぁ、導師パワントが待つ祭壇に行きましょう。」

「うん。」

「ラジャー!」

 

と、歩き出す。

エドナは先頭を歩きながら、

 

「……やっぱり無知は罪ね。よくわかったわ。」

「エドナさん……」

「もう面倒でも手は抜かないわ。面倒でもね。そうでしょ、おチビちゃん。」

 

エドナは横で歩くレイを見る。

レイは微笑み、頷く。

が、視線を前に戻し、

 

「面倒だけど。」

「エドナさん……」

 

ライラは苦笑いする。

そしてミクリオが、

 

「しかし、ミノタウロスと化していたのが子どもの魂だったとはな……」

「あの子たち……なんでこんなところに居たんだろう。」

「災厄の時代となってから、あのようないたたまれない憑魔≪ひょうま≫が増えています。」

「あの子たちは寂しかった。生まれたのに、認めてもらえなかったんだよ。だから恐くて、恐くて仕方がなかった。」

 

レイが空を見上げながら言う。

ロゼは悲しそうに、

「そっか……あれは親に望まれなかった子ども達なんだ。」

「……捨てられた子たちってことか。」

 

ミクリオが拳を握りしめる。

ライラは辺りを見て、

 

「この地はもしかしたらそのための場として人々に伝わってしまったのかもしれませんね。」

「血が繋がっているのに親から拒絶されるなんて……」

「人とはそういうものだよ。血の繋がっているから大切だと、我が子だといえるものは本当はないのかもしれないね。だって、人は他人とは相いれないものだもの。それが繋がりでもないのなら、人はなぜ、家族を求めるのかな。」

 

レイはスレイ達を見てそう言った。

スレイは拳を握りしめ、

 

「……それは何か違うと思う。血の繋がりなんかなくても、ジイジはオレを大切に育ててくれた。だからきっと、繋がっている人達だって……」

「ああ。やるせないな……」

 

ミクリオも悲しそうに、呟く。

と、暗くなっている二人に、

 

「ほーら!うつむくなっつの!」

 

ロゼがその背を思いっきり叩く。

そしてエドナも傘についた人形を握りしめ、

 

「そうよ。ちゃんと救えたじゃない。あなたのおかげでね。」

「うん。」

「エドナ、妙にしおらしいじゃないか。」

 

ミクリオが意外そうな顔で見る。

エドナは真顔で、

 

「自分の過ちぐらい認められるわ。あなたと違って大人なんだから。」

「そうですか……」

 

ミクリオは腰に手を当て、そっぽ向く。

レイはそれを見て、静かに微笑む。

 

祭壇に着くと、導師パワントがスレイを見て、

 

「どうやら上手くいったな。」

「うん。悲しい憑魔≪ひょうま≫だった。」

「うむ。君も無事で良かった。」

 

と、レイを見る。

レイは微笑む。

彼は腕を組み、

 

「……エドナちゃんがメンチでびびらせてどうなるかと思ったが……」

「さすがに反省したみたいだよ。」

 

と、エドナを見る。

エドナは体を振りながら、

 

「反省シター。」

 

その姿に、スレイ以外はそれぞれ呆れたり、微笑んだりした。

ま、スレイも手を頭にやって、ニット笑うのだが。

それを見た彼も、

 

「……なかなか珍妙な導師一行だな。裁判者を入れた人間もいるし。」

「……え?」

 

ライラがそれを聞き、改めてレイを見た。

そして眉を寄せていた。

ロゼは腕を組み、

 

「で、試練はクリアって事でいいの?」

「うむ。導師、エドナちゃん、祭壇に祈りを捧げるのだ。」

 

二人は奥の祭壇に進み、膝を着いて祈りを捧げる。

そして神依≪カムイ≫化して、力を確かめる。

ミクリオはスレイを見て、

 

「スレイ、エロの悪影響は出てないか?」

「それはヤバイ!お兄ちゃん大丈夫⁉」

 

レイもスレイを見て言った。

スレイはミクリオとレイを見て、

 

「え?そんなのもあるのか?」

「あるのか?」

 

導師パワントもミクリオとレイを見て聞いた。

ミクリオは俯き、

 

「悪かったよ……」

「……?」

 

レイは首をかしげる。

スレイは向きを前に戻し、

 

「どう?エドナ?」

「……力を感じるわ。」

 

そういうと、神依≪カムイ≫化を解く。

後ろの者達は頷き合う。

導師パワントはスレイを見て、

 

「いくのかの?」

「うん。ありがとう、パワントさん。」

 

彼は腕を組み、

 

「何事も事象の前には原因がある。それを理解し、よく考え、そして進め。答えを焦るな。導師の道程は世界に渦巻く情念の根本を理解する事から始まると知れ。」

「はい、ありがとうございます。」

「やっとまともな助言!」

 

ロゼが指をパチンと鳴らす。

すると、彼は胸に手を当て、

 

「きゅぴーん!」

「バカなの?」

 

それを見たエドナは呆れ気味に言う。

彼は後ろに引くが、

 

「でも礼は言っとくわ。」

 

それだけ言って、スレイの中に入る。

彼はレイに視線を向け、

 

「裁判者の器よ、そなたも答えを焦るのではないぞ。」

「……私の答え?」

「ああ。そなたの答えだ。」

 

レイは視線を外した後、

 

「考えてみる。」

 

そう言って、歩き出した。

スレイは彼に敬礼して、

 

「ははは、それじゃあ!」

「うむ。」

 

そして彼も消えた。

彼らは外に出て、デゼルが呟く。

 

「最後の秘力は風か。」

「ゴホ!ゴホ!」

「……つっこまんぞ。」

 

ふざけるエドナに静かに言う。

エドナは真顔で、

 

「ボケてないわよ。熱でもあるんじゃない?」

 

一行は少ししたところで野営を始める。

スレイ達が眠りについたころ、ミクリオは一人腕を組んで悩んでいた。

そこに、ライラとエドナ、レイがやって来て、

 

「ミク兄、見っけ。」

「まだ起きているのですか?」

「ああ。考え事をしてたら眠れなくなって。」

「思春期なのね。」

 

エドナが意外そうな顔でミクリオを見る。

ミクリオは腰に手を当て、

 

「半分はエドナのせいだよ!」

「半分?」

「ああ。前に言ったろ。天族には二種類あるって。」

「……」

 

レイはミクリオを見上げ、そして視線を外した。

そして少しの間を置き、

 

「ええ。天族として生まれた者と人から天族になった者。」

 

エドナが真剣に答える。

ミクリオは腕を組み、

 

「人が天族に転生することがあるわけだな。」

「エクセオやパワントがそうでしょ。元は人間だったって。」

「修行を積めばできるのか?それって。」

 

ミクリオのそれに答えたのはライラだった。

ライラは十とミクリオを見て、

 

「確立された転生術があるわけではありません。」

「方法は二つ。一つは裁判者と審判者がそれを行うこと。エクセオとパワントはそれに近いもの。」

 

レイは、ミクリオに背を向けたまま答えた。

ライラはレイを見た後、ミクリオに視線を戻し、

 

「……そしてもう一つは純粋な心をもった人の魂が導かれ、天族として再生すると伝えられています。」

「修行は純粋な心を得るための方法でしょ。ミイラになるのが純粋かどうかは置いといて。」

「再生すると、天族の赤ん坊が生まれる?」

「いえ。生前の姿をした天族として『出現』するんです。」

「人間だった頃の記憶はなくなるみたいだけど。」

「それは、もう別の人物だと思うが……」

「それはそうだよ。人と天族とでは世の理が違う。でも、あの二人は例外。裁判者と審判者が関わる転生は、記憶もそのまま受け継がれていく。ま、使命があるわけだから当然だけど。」

 

レイは遠くを見ながら呟く。

エドナはため息をついた後、

 

「おチビちゃんの言うように、基本はそうね。天族であって人間じゃないもの。」

「それでも、人だった頃の性格や嗜好、大切な想いは受け継がれると聞きますわ。」

「なるほど。天族も不思議な種族だね。」

「そうですね。改めて考えると。」

 

ライラは手を当て、楽しそうに言う。

ミクリオはライラを見て、

 

「ライラはどっちなんだ?」

「私は……」

 

ライラは考え込んだ後、

 

「すみません。覚えていないんです。」

「女性天族にそれを聞くのはマナー違反よ。」

 

と、傘の先をミクリオに向けるエドナ。

ミクリオは目を見張って、

 

「そ、そうなのか⁉」

「完全にセクハラ。」

「すまない、ライラ!知らなかったんだ。」

 

ミクリオは慌てて謝る。

ライラはきょとんとして、

 

「いえ、別にそんなマナーはありませんけど……ねえ、レイさん。」

「私もそう聞いてる。」

 

レイはくるっと回って、ライラを見る。

ミクリオは眉を寄せてエドナを見る。

エドナは悪戯顔で、

 

「人間だったら転生できそうね。ミボは。」

「エドナ~!」

 

と、怒りだす。

エドナはすました顔で、歩いて行く。

ミクリオも、その後を追って行った。

レイはあくびをしながら、スレイの寝ている所に行く。

ライラは思い出したように、

 

「そういえば、ミクリオさんが悩んでいたもう一つの悩み事って何だったんでしょうか……」

 

ライラは首を傾げたが、

 

「ですが、今は置いときましょう。また相談してくださるでしょうし。」

 

ライラは一人納得して、ロゼの眠る場所に向かう。


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