テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第十五話 火の試練神殿イグレイン

中に入ると、長い通路があった。

それを進み、扉を開く。

中は広く、まさに古代遺跡だった。

さらに下にはマグマがあり、とても暑い。

 

「暑い……まさに火の試練だな。」

「あつ~……!ね、スレイ……脱いでいい?」

 

と、ロゼが真顔で言う。

デゼルが後ろから、

 

「ダメにきまってんだろ!」

「じょ、冗談だって……」

 

その迫力から、ロゼは目を見開いて言う。

スレイは話を変えるように、

 

「ミクリオ、ここって相当古い遺跡だよな?」

「ああ、もしかすると大発見かもしれない。」

「う~!興奮して体が熱くなってきた!」

 

そう言うスレイは腕を上げて言う。

と、ロゼはスレイ片手を振って、

 

「いやいや。ここ本当に熱いんだって。」

 

スレイ達は火属性の憑魔≪ひょうま≫と戦いながら先を進む。

時には扉を開くための仕掛けを解き、迷路のような遺跡を回る。

それを小さな少女は後ろで見ながら進んで行く。

 

スレイは歩きながら、

 

「ゴドジンに来て、教皇様――村長さんが慕われる理由がわかったな。」

「ああ。人間くさいんだね。弱さも含めてね。」

「弱くても……あんな償い方もできるんだな。なんて、オレの選択がホントに正しかったのか、自信ないけど。」

 

スレイはミクリオの言葉に、頬を掻きながら言う。

ライラは口に手を当て、

 

「そういう迷いを含めてスレイさんなのです。少なくとも私たちは、そんなあなたについていきますわ。」

「面倒だけど。」

「とりあえずよかったんじゃないか?ロゼも暗殺しないでくれたし。」

「それはね。まだ迷ってるみたいだけど。」

「スレイさんと同じように、ですわ。」

「このままロゼが殺さない道を選んでくれると嬉しいんだけど。」

「そうですわね。」

 

それを聞き、デゼルは帽子を深くかぶり、

 

「殺さない道……か。」

 

そう呟いて、歩いて行った。

 

進む中、ライラは岩から突起出ていた赤精鉱があるのに気づいた。

ライラは手を握り合わせ、

 

「こんなに巨大な赤精鉱があるなんて……」

「やばいわね。」

 

エドナもそれを見た。

デゼルがエドナに、

 

「どういうことだ?」

「赤精鉱はね、巨大な火の天響術の影響で生成される鉱物なの。」

「手強い敵がいるってことか。上等だ。」

「油断してると火傷じゃすまないかもよ。」

 

エドナがいつになく真剣な表情で言う。

ライラも悲しそうに、

 

「はい。少なくとも私程度の炎では赤精鉱は生まれません。」

 

と、エドナは後ろを見て、

 

「アンタは別だろうけど。」

「よく分かっているではないか。今の私でもこれくらいがやっとだ。」

 

そう言って、岩に手をかざす。

すると、小さいが赤精鉱が三本ほど突き出た。

 

「思ったより少なかったな。」

 

腰に手を当て、自身の手のひらを見た。

 

「ま、いいか。」

 

そして、ライラ達を見る。

デゼルがライラを見て、

 

「……実際、どれ程だと?」

「火山の爆発レベルです。」

 

ライラがまっすぐ見て言う。

デゼルは反応する。

 

「!ふん。試練の神殿と名乗るだけのことはありそうだな。」

 

そしてデゼルは歩いて行く。

それを見たエドナは、

 

「熱いわね。」

「頼もしいですわ。退くわけにはいきませんから。」

 

ライラとエドナも、歩き出す。

 

「それにしても、相変わらずアイツは気に入らないわ。」

「そうですね。あれでもまだ、本気ではありませんし……」

「なにより、半分の半分の状態……」

「頑張りましょう、エドナさん。」

「そうね。」

 

二人は黙々と歩く。

 

しばらくして、ロゼが汗を拭いながら、

 

「しっかし、ここが試練の神殿なんてすごい偶然だよね?」

 

しかしエドナが傘をクルクル回しながら、

 

「私は納得。あちこちに赤精鉱があったから。」

「そうか。赤精鉱は強力な火の天響術が発動した後に生成される鉱物だものな。」

「強力って、ライラの術みたいな?」

「いいえ。私程度の炎では赤精鉱はつくれませんわ。」

「つまり、ライラ以上の術を使う奴がいるかもってことか……」

 

スレイ達は気を引き締める。

そして中央まで着き、周りを囲む灯台に炎を灯す。

すると中央の紋章が光る。

そしてその紋章の上に乗ると、それは下に下がって行った。

降りると、通路があった。

その奥に扉があり、スレイ達はその扉の中へと入って行く。

すると、円状の石舞台とその奥に紋章が掲げられていた。

スレイとミクリオがその紋章を見て、

 

「あの紋章は……」

「五大神のひとり、ムスヒの神殿か。」

 

ライラは手を合わせ、

 

「原初の火を生み出した天族。世界の始まりと終わりの時に出現するといわれている御方ですわ。ある意味では、裁判者と審判者と同じ方々ですわ。」

 

それを聞き、ミクリオはその紋章を見つめ、

 

「できれば出会いたくない相手だよね。」

「さて、どうすればいいのかな?」

 

スレイもその紋章を見つめて言う。

ロゼが振り返り、

 

「あの石、怪しそう!」

 

スレイ達もロゼの言う意思を見る。

古代文字が掛かれた石碑が立っていた。

 

「怪しい以外は……さっぱりわからん。」

「略して『さぱらん』ね。」

 

エドナが石碑を見つめて言った。

ロゼは意外そうな顔をした。

スレイとミクリオはその石碑に近付く。

 

「古代文字だ。」

「暗号じゃないね。普通に読める。」

 

小さな少女は階段に腰を下ろして、それを見る。

ミクリオとスレイが読み上げる。

 

「『邪なる意に抗さんと欲する善なる者よ』。」

「『四方≪よも≫の石碑に汝が手をかざせ。我、ムスヒの破邪の炎を汝の意に添えん』。」

 

それを見たロゼは、

 

「おお、なんか頭良さそう!」

「遺跡好きの基本だよ。」

 

スレイは笑顔で言う。

ロゼは目をパチクリしながら、

 

「……で、要するに?」

「ええっと、四つの石碑に手をかざせば、ムスヒの力が手に入る……ってコトかな。」

「なんだ、内容は簡単じゃん!」

「簡単……なら、頑張る事だ。私はここで見させてもらう。」

「へ?」

 

ロゼがそう言った途端、領域が展開された。

 

「さて、始まりだ。」

 

小さな少女は階段に座り、頬杖を付いて言う。

ライラは辺りを見て、

 

「スレイさ――」

 

だが、天族組の姿が消えた。

ロゼが紋章の所にいた炎を纏った憑魔≪ひょうま≫を見て、

 

「スレイ!」

「あいつの領域か!」

 

憑魔≪ひょうま≫はこちらにジャンプしてきた。

着地し、咆哮を上がる。

剣と楯を持ち、角の生えた憑魔≪ひょうま≫。

スレイとロゼは武器を構える。

 

「前言撤回!これはやばすぎ!」

「石碑に触って領域を破るんだ!」

「じゃあ、あたしが時間を稼ぐ!」

「頼む!」

 

スレイは四つの石碑を触る。

最期の石碑を触ると、石碑が光り輝く。

天族組が再び現れる。

 

「スレイさん!」

「みんな!」

「領域を打ち破ったんだな!」

「火傷も治った!」

「これでようやく五分五分ってところか…!」

 

そして再び武器を構え、憑魔≪ひょうま≫に向かっていく。

憑魔≪ひょうま≫は攻撃防御ともに強い。

スレイ達は苦戦しながらも、神依≪カムイ≫を駆使して戦う。

少しずつ相手の体力を削いでいき、一撃を与える。

しかし、敵は浄化されず、立ち上がる。

 

「浄化できない⁉」

「……違いますわ。憑魔≪ひょうま≫ではないのです、この方は。」

 

ライラが戦闘態勢を解き、憑魔≪ひょうま≫を見る。

小さな少女はそれを聞き、立ち上がる。

そして彼らの元へ歩いて行く。

武器を構え、立っていた憑魔≪ひょうま≫が、

 

「見抜いたか。この姿が仮初めのものと。」

 

スレイ達は武器を降ろすが、警戒心は解かずにいた。

ライラが姿勢を正し、

 

「貴方は五大神ムスヒ様に仕える護法天族のお一人では?」

「いかにも我が名は、火の護法天族エクセオ。」

「ちっ、憑魔≪ひょうま≫のふりをして俺たちを試してたのか。」

 

デゼルが舌打ちをして言う。

ロゼは後ろのデゼルを見る。

 

「加護を与えるに値する存在かどうか量るため。悪く思うな。」

 

ロゼは再び前を向く。

スレイは剣をしまい、まっすぐ前を見て、

 

「試練の結果は?」

「力の試練は合格だ。ゆえに五大神ムスヒが生みし火の秘力を与えよう。よろしいですか?」

 

と、こちらに歩いて来た小さな少女を見る。

小さな少女は腰に手を当て、護法天族エクセオを見上げる。

 

「なぜ、私に聞く。導師の試練についてはこちらは何もしない、と以前に話したはずだ。その結果、導師がどうなろうとな。」

「アンタ!」

 

小さな少女はエドナを見て、

 

「事実、私は今回何もしていないだろ。」

 

視線を憑魔≪ひょうま≫姿の護法天族エクセオへと向ける。

 

「お前はお前のやるべきことをやれ。」

「そうですか。では……」

 

護法天族エクセオに視線をスレイに戻し、

 

「さぁ、剣を抜け。」

「ありがとう、エクセオさん!」

 

スレイは剣を抜く。

 

「その炎での契約の刻印を刻むのだ。」

 

スレイは剣を見る。

その剣には燃え盛る炎が纏っている。

 

「契約の刻印?」

「簡単なこと。その炎で自分か、炎の契約天族の顔を焼けばよい。」

「え……?」

 

スレイは驚く。

それは他の者もだ。

小さな少女はスレイの答えを黙って待つ。

 

「案ずるな。死にはしない。」

「そういう問題じゃないだろう⁉」

 

ミクリオが若干怒りながら言う。

それはロゼ達もそうであった。

 

「お前たちが望んだ試練だ。覚悟を示してもらうぞ!答えよ、導師!汝は、その炎を何者に向け、何物を焦滅せんとす!」

「オレは――」

 

スレイは燃え盛る剣を顔の前に向ける。

そして剣を睨みながら呼吸を早くする。

意図を察したライラが、

 

「いけません、スレイさん!」

 

スレイは意を決して目をギュッと瞑り、顔に近付ける。

が、

 

「あああっ!」

 

と、ライラの悲鳴を上げる。

スレイは目を開ける。

ライラは燃え盛る炎を纏った剣を握っていた。

 

「ライラ!」

「お願いです!ひとりで全部背負おうとしないでください。その強さは、必ずあなたを気付けてしまいます……。きっとまた……」

 

ライラは何かを思い出し、辛そうに、悲しそうに言う。

そして剣を握ったまま、スレイを見て、

 

「私は……もう同じ過ちは……」

 

スレイは剣を下げる。

ライラもその手を放す。

 

「……ごめん。オレらしくなかったね。」

 

ライラは息を整え、スレイを見る。

スレイは力強い決意の目をライラに向ける。

小さな少女は一歩下がる。

そしてライラもそれに気付き、

 

「『フォエス=メイマ≪清浄なるライラ≫』!」

 

スレイはライラと神依≪カムイ≫する。

そして剣を護法天族エクセオに振りかざし、

 

「こんなことを誰かに強いる穢れだ!」

 

炎の纏いし剣で焼き尽くす。

護法天族エクセオの姿はなかった。

その力を見たミクリオは、

 

「すごいな……」

 

スレイ自身も、ライラとの神依≪カムイ≫を解き、

 

「なんだ今の力?」

 

と、周りを見る。

 

「五大神ムスヒが残した火の秘力。」

 

護法天族エクセオの声だけがどこからか聞こえてくる。

スレイ達は辺りを見渡し、警戒する。

 

「憑魔≪ひょうま≫の領域……そして災禍の顕主に抗するための力だ。」

 

と、スレイ達の目の前に、トカゲ顔をした白い服を纏った人物が現れた。

 

「見事な返答だったぞ、導師よ。」

「憑魔≪ひょうま≫!浄化したのに⁉」

「いや、これが私の本当の姿なのだよ。」

「そうなんだ?じゃあよかった。」

 

スレイ達は警戒を解く。

護法天族エクセオは笑いながら、

 

「ははは、こだわりがないな。さすが二つの試練に合格するだけのことはある。」

「あ!力と心の試練!」

「あらためて挨拶しよう、導師スレイ。私が護法天族エクセオだ。」

「全部わざとだったのか。悪趣味だな。」

 

ミクリオが護法天族エクセオを見て言う。

 

「仕方あるまい。人間の悪趣味に相対するのが導師の運命なのだから。」

「案外、アンタの思いつきもあったりして。」

 

エドナが小さな少女を見て言う。

小さな少女は腰に手を当て、

 

「提案をしたのは事実だ。お前達の嫌とするものは理解しているつもりだからな。」

「アンタにもそう言うのがわかるなんて知らなかったわ。」

 

そう言って、睨み合う。

 

「だがこれは私、というよりはこいつ自身だろ。」

 

そう言って、護法天族エクセオを見上げる。

 

「まあ、確かに多少ケレンがすぎたのは、私がかつて人間だったせいかもしれないな。」

「人間だった⁉」

 

スレイは目を開いて驚く。

 

「おやおや、なにも知らないのだな。天族になって久しいが、元はあの通り。」

 

と、紋章の方を見る。

その先を見ると、小さなへこみがあった。

見ると、人がトカゲのような仮面をかぶった黒服の人物が座っていた。

驚いているスレイに、エドナが説明する。

 

「天族には二種類あるのよ。」

 

スレイはエドナを見る。

 

「天族として生まれた者と人から天族になった者と。」

 

スレイは驚きながら、護法天族エクセオを見る。

 

「驚いたな!」

「新事実だ!」

 

ミクリオも驚きながら言う。

そして二人は互いに意見を言いし始める。

護法天族エクセオは、ライラを見て、

 

「ライラと言ったか?誓約で浄化の炎を手にしたのだな。大変な覚悟をしたのだろう。一体どれほどのものを失った?」

「……なにも。」

 

ライラは首を振る。

そして、護法天族エクセオを見て、

 

「スレイさんは、なくした以上のものを与えてくれる方ですから。」

「ほう。」

 

と、スレイがライラを見て、

 

「オレが、なに?」

 

ライラは手を合わせて、スレイを見る。

 

「いえ……アップルグミ的な方だと。回復と味で二度美味しい。」

「へ?」

 

それを聞いた護法天族エクセオはまた笑い出す。

 

「ははは!お前は面白い導師だということだよ。」

「どういう意味?時々言われるんだけど?」

「いいじゃありませんか。」

 

ライラは嬉しそうに言う。

と、護法天族エクセオは小さな少女を見て、

 

「貴女が気にかける理由はこれですかな?」

「ん?さぁな。」

「……ところで、なぜそのようなお姿と――」

「力か?」

「はい。今の貴女は半分……いえ、それよりも弱弱しい。」

 

護法天族エクセオは目を細め、

 

「違いますな。正確には漏れ出している。だから今の貴女は不安定だ。」

 

その言葉にスレイ達も小さな少女を見る。

小さな少女は無表情で、

 

「こうなる事は大体予想はしていた。これを対処する為にも、早くこの器には答えを出して欲しいものだ。」

「……器。その人間に近い源のことですか?」

「やはりお前には見えているか。ま、そう言うことだ。」

 

二人はしばらく視線を合わせる。

スレイは眉を寄せ、

 

「それってレイのことか?レイは大丈夫なのか?」

「それを決めるのはこの器とお前達だ。だが、早く答えを見つけないと……私が消させてもらうがな。」

「な!」

「何度も言っている。これは私の器だ。それに、私にもやるべきことがある。この器はそれには適さない。いや、邪魔でしかない。」

「貴様!だったらレイから出て行けばいいだろう!」

 

ミクリオが怒りながら、前に出る。

 

「そうなれば、この器は消えるだけだぞ。」

 

赤く光る瞳がミクリオを射貫く。

ミクリオは一歩下がる。

 

「なにもそこまでイジメなくても。そういうところは変わりませんな。」

 

護法天族エクセオが小さな少女を見下ろして言う。

小さな少女は護法天族エクセオを見上げ、

 

「そう言うお前も変わってないが。」

「ははは!そうですか?」

 

小さな少女は腕を組み、

 

「ここにあいつは来たか?」

「審判者なら来てきてませんよ。」

「ならいい。もし来ても、今のあいつとは関わるな。」

「それはまたどうしてです?昔から一緒にいたでしょうに……随分と嫌ってますな。」

「……今のあいつと私とでは考えが違う。あいつもまた答えを出さねばならない。審判者として。」

 

小さな少女は視線をスレイに向け、

 

「試練は終わった。そろそろ返してやる。」

 

そう言いて、小さな少女は風に包まれた。

風が収まると、白いコートのようなワンピース服の少女が倒れていた。

 

「「レイ!」」

 

スレイとミクリオが駆け寄り、体を起こす。

レイは目を擦りながら、

 

「おはよう。」

 

と言いながら立つ。

レイは護法天族エクセオを見上げ、

 

「……ここって火の試練神殿の中?」

「ええ、そうですよ。」

「……そっか。」

 

レイはスレイ達に視線を戻す。

ミクリオが膝を着き、

 

「……ちなみにレイはどこまで覚えてる?」

「……『未熟なミボに変わって岩をどかしてみるか!』って、お兄ちゃんが言ったところまで。」

 

ミクリオは目を見開いて別の意味で驚き、スレイ達は笑う。

ミクリオは笑うスレイ達を見る。

と、スレイ達は笑うのを止め、視線を外す。

レイはその光景を首をかしげて見る。

ロゼが何かを思い出したように、

 

「ところで、レイはあの碑文のことホントに読めてたの?」

 

レイは少し考え、スレイ達を見上げる。

 

「『『導師に四つの秘力あり。すなわち地水火風。其は災禍の顕主に対する剣なり。世界に試しの祠あり。同じく地水火風。其は力と心の試練なり。力は心に発し、心は力を収める。心力合わせば穢れを祓い、心、力に溺るれば己が身を焦がさん。試せや導師、その威を振るいて。応えよ導師、その意を賭して』。」

「村長さんが言ったのと同じだ。」

「じゃあ、ホントにレイは読めてたんだ。」

 

スレイとロゼは互いに見合う。

と、レイは目を擦りながら、コクコクし始める。

 

「ミク兄、抱っこ。」

 

と、手を上げる。

ミクリオはそれを抱き上げ、

 

「はいはい。」

 

その背を摩る。

レイはそのまま眠りに入る。

ミクリオが立ち上がると、

 

「なるほど。力の大半がそちらの方に流れてしまっている状態なのか。」

「それって?」

 

護法天族エクセオの呟きに、スレイが聞く。

護法天族エクセオは腕を組み、

 

「裁判者としての力は世界を壊すこともできるほどの力だ。その膨大なまでの力が漏れ出すしている程、その子の方に流れ出ている。それをその子は無意識にギリギリまでとどめている状態だ。ゆえに、そのように疲れているのだろうな。」

 

スレイ達はレイを見る。

ミクリオに抱っこされ、スヤスヤ寝ている。

スレイは眉を寄せて、

 

「それって……」

「危険ではないが、気をつけた方がいいぞ。その子自身が消えかかっている。今は消える方が小さいが、それがいつ大きくなるか……」

「わかった。気をつけるよ。」

 

ライラは手をパンと一つ叩き、あえて明るい声で言う。

 

「さぁ行きましょう。」

「うむ。では試練はまだ三つ残っている。油断なく精進するがよい。」

 

そう言って、護法天族エクセオは消えた。

スレイ達は入り口へと戻る。

スレイはロゼを見て、

 

「そう言えば、ロゼはわかる?面白い導師の意味?」

「すでに面白いよね。それを聞いちゃうところが。」

「え~。」

 

ロゼはニッコリ笑いながら言う。

それを後ろで天族組は笑っていた。


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