テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第十四話 忘れられた村ゴドジン

地底洞へと戻り、先を進んでいく。

 

「なぁ、ミクリオ……」

「なんだ?」

「レイのことだけど……なんか、元気ないと思わない?」

「やっぱりスレイも、そう思うか……」

 

と、二人は目の前を歩くレイを見る。

レイはロゼと話しながら歩いている。

 

「ま、考えてもわからない、さ。そうだろ?」

「そう……だよな、うん!」

 

スレイは元気を取り戻して、歩いて行く。

ミクリオはその背を見て、

 

「スレイの手前、ああ言ったが……最近のレイはレイじゃない。」

 

ミクリオは悲しそうに呟いた。

迷路のような構造をどんどんと進み、

 

「……出口が近いよ。多分。」

「お前も感じたのか?」

「なんとなく、風をね。」

 

スレイの言葉に、デゼルは意外そうに言う。

進むその先に、光が見えてくる。

外に出ると、ロゼは嬉しそうに指をパチンと鳴らし、

 

「いよっし、出られた!お日様最高ー!」

 

レイは空を見上げる。

そしてロゼも空を見上げるが、土煙を含んだ強い風が吹き荒れる。

 

「ちょ……言ったそばからなに⁉」

 

見つめるその先には、竜巻と四歩足の鳥型の憑魔≪ひょうま≫がいた。

飛ばされそうになるレイをミクリオが支える。

 

「憑魔≪ひょうま≫ですわ!」

「グリフォンか!こんなところにいるとはな!」

 

ライラとデゼルが憑魔≪ひょうま≫を見て言う。

スレイ達は武器を手に、戦闘態勢に入る。

スレイは敵と交戦しながら、

 

「鳥なのか?獣なのか?」

「いいとこ取りしようとしたらこうなっちゃったとか。」

「今、『鳥』と『取り』をかけましたよね⁉」

「食いつくな食いつくな!あと言いがかり!」

「それはがっかり……」

 

ライラがロゼの言葉に食いつき、ロゼがそれに怒鳴る。

空を飛んでいるので苦戦しながらも、何とか敵にダメージを与え行く。

そして、何とか大ダメージを与えた。

敵憑魔≪ひょうま≫は地面に落ちる。

 

「風を操るのは百年はやかったな。」

「風、ムカツク……」

 

決めるデゼルに、エドナは傘を回しながら淡々と言う。

そして敵憑魔≪ひょうま≫は再び起き上がる。

そして再び突風を起こす。

レイはミクリオの足にしがみ付く。

 

「はわっ……!きゃっ!」

 

と、尻餅を着く。

その風がやんだ時には、憑魔≪ひょうま≫はいなくなっていた。

ライラが駆け寄り、

 

「エドナさん!」

 

スレイも近付き、しゃがむ。

 

「大丈夫、エドナ?」

 

と、手を差し出す。

エドナはその手を取り、立ち上がる。

 

「ちょっと滑っただけよ。」

「手がかかるね、エドナお嬢様は。」

 

ミクリオは腕を組んで、呆れたように言う。

そしてすぐにスレイの中に入った。

エドナはミクリオのいた場所を睨み、地面を蹴り叩く。

 

「……ミボに言われるなんて。」

 

スレイはそれを頭を掻きながら、苦笑いする。

 

そして一行は、バイロブクリフ崖道を進んで行く。

その道のりは簡単ではない。

岩道を一行は進んでいく。

スレイは辺りを見渡し、

 

「この辺り……ずいぶん荒れた土地だな。」

「だね。辺境なのはイズチも同じだけど、ここは狩猟も農耕も難しそうだ。」

「こんなところにも人が住んでるんだな。」

「案外しぶといわよね。人間って。」

「人間は天族と違って、知恵と限りある命を使うしか生きていけない。」

 

エドナの隣で歩いていたレイが無表情で言う。

ミクリオが腕を組み、

 

「確かに人間は色々なものを作り出しているよね。なら、何か特産物があるのかもしれない。」

「そうかもな。」

 

スレイもそれに同意する。

ロゼは一人考え込む。

 

「とにかく目的はゴドジンだ。」

「ロゼ、この道を進めばいいんだな?」

「あ、うん。崖道の端にあるはずだよ。もうすぐだと思う。」

「わかった。また襲われる前に急ごう。」

 

スレイは元気よく進んでいく。

が、次の道を捜す為、スレイ、ミクリオ、ロゼ、エドナが探しに行った。

レイは崖近くぎりぎりの所に居た。

そこにライラとデゼルがやって来た。

 

「レイさん、あまりそちらに行くと危ないですわよ。」

 

レイは顔だけそちらを向けた後、顔を元に戻した。

ライラとデゼルがレイの見ているものを見た。

そこには落ちた木の中に巣をつくって休んでいた鳥がいた。

ライラはデゼルを見て、

 

「なんという鳥ですか?」

「グリフィカイト。トビの一種だ。」

「あちらにも一羽。あんなに高く。」

「ああ。見事に風を読んでいる。」

 

レイは空を見上がる。

ライラも空を見上げ、

 

「気持ちよさそうに飛んでいますわね。」

「……人間が発した穢れにまみれた空だがな。」

 

レイは顔を最初に見ていた鳥に戻す。

ライラもその鳥を見て、

 

「もしかしたらグリフィカイトがグリフォンの正体だったのでしょうか?」

「かもしれん。」

「……穢れは人だけでなく、自然をも蝕みますものね。」

「自然は人間や天族が作り出した穢れを吸収する。そして、それを少しずつ浄化する為のパイプとなる。彼らはそれを続けている。動物は自然の声を一番理解している。だから人間や天族以上に早く穢れる。」

「…………」

 

デゼルは帽子を深くかぶる。

だがライラは、力強い瞳で二人を見る。

 

「ですが、穢れは祓えますわ。」

「……スレイなら、か?」

「私たちなら、ですわ。」

 

ライラは微笑んで言う。

 

「ふん……」

 

デゼルは歩いて行った。

ライラはその背を見て、

 

「デゼルさん……」

 

レイはライラを見上げ、

 

「本当にそう思ってるの?」

「ええ、そうです。」

「じゃあ、頑張らないとね。ミク兄と違って、お兄ちゃんは抱え込むタイプだから。」

 

ライラは膝を着き、レイと視線を合わせ、

 

「では、レイさんも手伝ってください。」

「……?」

「だって、私の言った私たちの中には、レイさんも入ってるのですから。」

 

そう言って優しく微笑み、レイを抱きしめる。

レイはライラのその横顔を見て、目を閉じて顔を彼女の肩に乗せる。

 

「……私にできることはあるの?」

「ありますわ。レイさんにしかできない事が……」

「それは――」

「裁判者ではない、レイさんの、です。」

 

レイが言うよりも早く、ライラはレイに言う。

するとレイはライラの背に腕を回し、抱きしめる。

ライラは少し驚いた後、優しくその背を摩る。

 

「もういい、離して。」

「では、レイさんも私を離してください。」

「あ……」

 

レイはすぐに離れる。

そして空を見ながら、歌を歌い出す。

それは風に乗って、響いていく。

 

「レイさん……」

 

レイはライラを見上げ、

 

「これは私がしたいと思ったから。」

 

レイは胸に手を当て、

 

「これが人間で言う感情というもの、もしくは意志と言うものなら……私は私を知りたい。でも、そう思う事は変?」

「いいえ。人は誰しも自分と言う存在を知っているようで知らないものです。それはきっと、裁判者や審判者も。だからレイさん、その気持ちを忘れないで。」

 

ライラは胸に手を当て、祈るような瞳で言う。

レイが何か言う前に、

 

「おーい!道、見つかったよ!」

 

ロゼの声が響く。

ライラは立ち上がり、

 

「さ、行きましょう。」

「……ん。」

 

レイとライラは皆と合流する。

エドナがライラに小声で、

 

「なにを話していたの?」

「自分について、です。」

「は?」

「ふふ。レイさんも変わりつつある、という事ですわ。」

 

困惑するエドナをよそに、ライラは嬉しそうに言う。

ライラは前を歩くレイを見て、

 

「きっと、レイさんはレイさん自身の答えを見つけ出すと思いますわ。」

「……アンタ、ホントおかんね。」

「まぁ!こんなにたくさんの子供ができて嬉しいですわ。」

 

悪戯顔で言ったエドナだが、ライラは頬に手を当てて、本当に嬉しそうに言うのであった。

エドナはつまらなそうに、

 

「もういいわ。」

「え⁉待ってください、エドナさあ~ん!」

 

ライラを置いて、さっそうと歩いて行った。

 

さらに進むと、高い頂上に小さな村を見つけた。

門を開け、中に入る。

中はのどかだった。

男女の子供達が遊んでいた。

と、スレイ達を見た街の子供が、

 

「あ!よそものだ!」

「こら!そういう言い方しちゃダメって学校で習ったろ?」

「そうだった!」

 

女の子の子供はスレイ達の方を見て、

 

「こんにちは!」

「こんにちは。」

「この新しい建物、学校?」

 

ロゼは前の大きな建物を見る。

それはこの中で一番新しいものだった。

女の子の子供は嬉しそうに、

 

「そうだよ!村長さんがつくったんだよ。」

「村の将来のためにね。」

 

それを聞いたスレイ、ミクリオ、ロゼはそれを見上げ、

 

「「「学校か!」」」

「街のものに比べたら、ささやかすぎるだろう?」

 

後ろから声がする。

スレイ達は振り返りそこを見る。

と、一人の眼鏡をかけた老人と街の大人二人が居た。

スレイは村長であろう人に、

 

「そうなの?オレの育った村にはなかったから。」

「ちょっと憧れだったよね。でも、レイだけは嫌がってたけど。」

 

ミクリオはそう言って、スレイの足元に隠れているレイを見る。

スレイもレイを見下ろして、苦笑いする。

 

「ゴドジン村長のスランジです。こんな辺境まで、どんな用で?」

「えっと、人を――」

 

と、言いかけた時、スレイの目の前にエドナが現れる。

傘を広げた先のことは見えないが、スレイはもごもごしている。

ミクリオはそれを見て一歩下がり、レイはスレイから離れ、ミクリオの後ろに行く。

ロゼがすぐにスレイの前に行き、

 

「仕事で。辺境の食べ物について調べてるとか、そんな感じ。」

「それはご苦労なことです。幸いこの村は、大きな飢饉はにはみまわれていません。」

 

エドナはスレイから離れる。

スレイは肩を落とした後、村長を見る。

と、村長の横の女性と男性が、

 

「それどころか前より豊かなくらい。」

「村長のおかげでな!必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ。」

「また自分の手柄みたいに。」

 

その光景を見て、スレイは小さな声で、

 

「いい村だな。」

「ちょっとイズチを思い出したよ。ね、レイ。」

「……少しだけ。」

「少し?」

「この村は偽りだらけだから。」

「え?」

 

ミクリオの側にいたレイは小さく呟いた。

だから聞こえたのはミクリオだけであった。

と、ロゼがスレイに小さく、

 

「スレイ。」

「ん、わかってる。手分けして教皇様の手がかりを探そう。」

 

スレイ達は頷く。

と、学校を見ていたスレイとロゼに、

 

「村の将来のために学校をつくる。なかなか賢明な判断だね。」

 

ミクリオが言う。

レイはスレイ達を見上げる。

スレイは学校を見上げ、

 

「学校か……通ってみたかったよな。」

「うん。あたしも。」

「ロゼも?」

「ずっと旅暮らしだったからね。風の骨のみんなが先生代わりだったんだ。」

 

ロゼは腰に手を当て、嬉しそうに語り出す。

 

「ロッシュなんて、ああ見えてすごい達筆だし、ブンガクにも詳しいんだよ。」

「へえ。」

「エギーユも色々なことを知ってそうだ。」

「うん。格闘術や忍び込みの仕方を教えてくれた。ま、体育の先生だね。」

「物騒な体育だ……」

 

ミクリオは片手で口元を隠して言う。

と、今度はスレイが腰に手を当て、嬉しそうに語り出す。

 

「オレとミクリオも同じ。イズチのみんなが先生だったんだ。」

「思い出すな。ジイジの礼儀作法の授業が厳しくてね。」

「おかげでミクリオがこんな感じになったわけ。」

 

スレイは頬を掻きながら言った。

ロゼは笑いながら、

 

「あはは。スレイはあんまり覚えなかったんだ。」

「そうでもないけど……」

「そうだろ。天遺見聞録ばかり読んでて困った。」

「ミクリオも似たようなもんだろ⁉」

「僕は歴史と古代語の勉強を兼ねてだよ。」

「オレだってそうだ。」

「要するに、今と同じってことね。」

「まあね。だから寂しいことはなかったけど。」

「もっと大勢と勉強したり遊んだりしたかったなって。」

 

スレイとミクリオはどこか悲しそうに言う。

ロゼも同じように、

 

「……わかるな。その気持ち。」

 

と、ロゼはレイを見て、

 

「で、レイはどうだったの?」

「私?」

「そ、レイもスレイ達と勉強したんだよね?」

「……さあ?」

「へ?」

 

レイはロゼを見上げたまま、首をかしげる。

スレイとミクリオが腰に手を当て、

 

「レイは何というか……」

「勉強は出来てた。むしろ、古代語とかはレイの方が詳しくて。」

「オレらが間違いを指摘された。」

「へぇ~。レイってすごいね。」

 

レイは首をかしげたままだった。

 

「いや、勉強は出来てたんだけど……会話やコミュニケーションを取る方が難しくてね。今でこそよく話すようになったけど、昔は本当に無口で、僕らにでさえ会話をしてくれない時があったんだ。」

「それに、イズチの時は体調をよく崩していたもんな。」

「それも決まって、僕らが遺跡探検の時とかね。」

「それって……」

 

ロゼが眉を寄せる。

スレイとミクリオは真剣な表情で、

 

「うん。今ならわかる。レイはオレらを守ってくれてたって。」

「あの頃の僕らはそれすら気付いていなかった。」

「……ま、でも、レイがレイになったのはきっと、スレイとミクリオの影響だね。」

「「ん?」」

「だって、今のレイが過剰なまでにスレイとミクリオの側にいるのは、二人が大切だって学んだからでしょ?」

 

ロゼは笑顔で二人を見る。

レイに関してはすでに彼らから離れ、ライラ達と話していた。

スレイとミクリオはレイを見て、

 

「だと、いいな。」

「ああ。」

 

そして一行は各自、情報を集める。

 

スレイはライラとロゼの元に行く。

ライラは辺りを見て、ロゼは腕を組んで考え込んでいた。

 

「ゴドジンって幸せそうな村だよね。」

「ええ。前向きで、活気があって。」

「みんな家族みたいだね。」

 

ライラとロゼは、明るい声で言う。

 

「けど、天族の加護は感じないな。」

「はい。加護天族は不在ですわね。一時はかなり荒れていたようです。それを今の村長さんが立て直されたということですわ。」

「だからみんな村長さんを尊敬してるんだな。」

「そうなのでしょうね。ここはずいぶん貧しい土地のようですし。」

「うん。誰にでもできることじゃないよ……」

 

ロゼは眉を寄せて言う。

ライラはロゼを見て、

 

「ロゼさん、どうかされました……?」

「ごめん、ちょっと考え事あって。もうちょっと調べたら、ちゃんと話すよ。」

 

そう言って、ロゼは歩いて行った。

ライラは頬に手を当て、

 

「ですが、このような村なら、きっと地の主とも上手く共存していけると思うのですが……今そうなっていないのが残念ですわね。」

「そうだね。」

 

そしてスレイは、門の入り口前にいるレイとミクリオの所に行く。

ミクリオは腕を組み、辺りを見ていた。

 

「どうした?難しい顔して。」

「妙だな。この村、かなり豊かみたいだ。」

「いいことじゃないか。」

「なぜかが問題。」

 

そう言って、スレイは気が付く。

 

「……収入源か!」

「そう。周りは農業にも狩猟にも適さないやせた土地だ。」

「街道沿いでもないし、特別な産物もないっぽい。」

「変だろ?普通なら真っ先に飢饉に苦しむような村なのに。」

「訳があるんだろな。なにか。」

「ああ。村がやっていけてる特別な理由があるはずだ。……と、言ってもレイが言うまで気付かなかったけど。」

 

ミクリオは遠くをみているレイを見る。

そしてスレイに視線を戻し、

 

「まずはそれを探ってみよう。ただし、村人に警戒されないように気をつけながら、ね。」

 

スレイは頷く。

と、レイはどこかに歩き出す。

追いかけようとするスレイに、

 

「僕が行くよ。」

「頼む。」

 

スレイは再び村を探る。

エドナの側によると、エドナはステップしながら傘を突き出していた。

 

「……どうしたの、エドナ?」

「別に。ミボから受けた屈辱を思い出しているだけ。」

「そ、そうなんだ……」

 

エドナは傘を降ろし、

 

「そんなことより村の奥に遺跡があったわ。相当古くて凝ったものみたい。」

「古いってどれくらい?」

「多分『クローズド・ダーク』より前。ワタシより年上かも。」

「って、『アヴァロストの調律』時代⁉本当なら超貴重だよ、それ!」

 

と、エドナに食って掛かる勢いだったが、スレイは眉を寄せて、

 

「……あれ?えっと、エドナって何歳――」

 

と、スレイの頬ギリギリの所にエドナが傘を尽き出してきた。

スレイは目を大きく開く。

当の本人は怖い目で、

 

「なに?」

「なんでもないです……」

 

スレイはさっそうとその場を後にする。

後ろからは、エドナが再び傘を突き出して、

 

「覚えていなさい……ミボ……」

 

と、聞こえてくる。

スレイは少し奥の木に背を預けているデゼルの元へ行く。

 

「デゼル、教皇様の手がかりあった?」

「……いや。」

「そっか。なんかわかったら教えてくれ。」

 

そう言って離れようとするスレイに、

 

「……違和感がひとつ。あの村長、妙なものを身につけていたな?」

「眼鏡!レンズなんて貴重品、なかなか出回るものじゃない。もってるのは貴族とか聖職者とか……」

「しかもスランジは新参者らしい。状況証拠はそろっている。」

「まさか村長さんが……?」

「可能性を言ったまでだ。事実かどうかは知らん。」

「調べてみる。ありがとう。」

 

スレイがデゼルを見て言うが、彼は即答で、

 

「別にいい。」

「なに?」

「いちいち礼はいらないと言ったんだ。」

「わかった。」

「あと、ロゼの方も何か掴んでいるはずだ。もたもたするなよ。」

 

スレイは頷いて村を歩く。

と、ミクリオを見つけた。

 

「ミクリオ!」

「ん?スレイ。どうした。」

「……レイは?」

「ああ。何でも村長と話してる。」

 

と、視線の先にレイと村長が見える。

レイは話しながら、地面に何かを書いていた。

 

「それより、スレイ。この村はやっぱりおかしい。」

「ああ。……そうだ、ミクリオ。この村、遺跡があるみたいなんだ。」

「それならあれだろ。」

 

と、指さす方に遺跡のようなものが見える。

スレイがミクリオと共に向かおうとすると、

 

「スレイ。」

 

家の壁に隠れていたロゼが、しゃがんで村長を見ていた。

そしてそこに村人がやって来た。

レイは立ち上がり、地面に書いたものを足で消した。

そして村長を見上げ、何かを話した後、その場を離れる。

ミクリオがレイを追いかけようとすると、ロゼの隠れている反対側から現れた。

そしてしゃがむ。

スレイが話し掛けるよりも前に、村人と村長の会話が聞こえてくる。

 

「やつら、村長を捕まえにきたんじゃないのか?」

「冗談じゃねえ!村長がいなくなったらゴドジンは……」

「心配はいらんよ。聖域に入れさえしなければ大丈夫だ。」

 

そう言って、村長が奥に入って行く。

その奥に向かう村長から穢れが出ていた。

 

「穢れが!」

「……一回戻ろ。」

 

ロゼは立ち上がる。

スレイは戻りながら、

 

「村長さんから穢れが……なんで?」

「答えはあの遺跡にあると思う。」

「……だな。やっぱり村長さんが……」

「……まだ結論は早い。けど、理由を調べる理由はあるよね?」

 

スレイ達は全員が集まり、

 

「さて、どうするか。」

「聖域に入る入り口は固められてる。」

「他に入り口はないのか?」

 

スレイはロゼを見る。

ロゼは指を指しながら、

 

「反対側に崩れた入り口ならあった。」

「じゃあ、ひとまずそこに行こう。」

 

スレイ達はそこに向かう。

スレイはレイを見ながら、

 

「そう言えばレイは、村長さんと何を話したりしてたんだ?」

 

レイはスレイを見上げ、

 

「……内緒……?」

「へ?」

「今、これは話せない。」

「……そっか。」

 

そして崩れた岩場に着く。

その崩れた岩場を見て、

 

「どかすのは無理だね。」

 

ミクリオが言うと、エドナが後ろから

 

「そうでもないけど。」

「エドナの術なら!」

 

スレイはエドナを見る。

ミクリオもエドナを見て、

 

「試してみてくれ。」

「やってあげてもいい。」

 

エドナは傘を広げる。

そしてクルクル回し、ミクリオを見ながら、

 

「ミクリオが『エドナお嬢様、どうか岩をどかしてください』って頼むなら。」

「おい、ふざけてる場合じゃ――」

「手がかるのよ。『エドナお嬢様』はね。」

「ぐっ……根にもつな……」

「ほら、早く言いなさい。」

 

それを聞いたロゼは笑顔になり、スレイとライラは苦笑いする。

レイにいたってはデゼルを見て、

 

「ケンカ?」

「……スキンシップだろ。」

 

エドナは続ける。

 

「『エドナお嬢様、どうか未熟なミボに代わって岩をどかしてくださいませませ』って。」

「増えてるぞ⁉」

「早くしないともっと増えるけど。」

 

エドナは傘をたたみ、肩でトントンする。

ライラが苦笑いえで、

 

「エドナさん、イジワルはその辺にして――」

「この岩をどかして欲しいんだ、エドナ。お願いします。」

 

スレイがエドナを見て言う。

そして頭を下げる。

エドナは首を振りながら、

 

「スレイはいいのよ⁉」

 

スレイは顔を上げ、

 

「オレも、いつの間にか力を貸してもらうのを当たり前に思ってたかもしれない。そういう心のせいで穢れが広まるのを見てきたのにな。感謝を忘れちゃダメなんだよな。天族を祀るにも。仲間と旅をするにも。」

 

エドナはスレイを見上げ、

 

「いいわ。私の『巨魁の腕』を、あなたに預ける。」

「スレイに冗談は通じないよ。」

 

エドナはスレイの中に入る。

スレイは声を上げ、

 

「よーし、未熟なミボに代わって岩をどかしてみるか!」

「それも言うのか⁉」

 

ミクリオは驚きながら言う。

エドナは面白交じりに、

 

「ホント、冗談通じない。」

 

スレイが岩を殴ると、岩が跡形もなく砕け散る。

 

「すげえ威力!」

「そう?」

 

エドナは少し嬉しそうだった。

一行は中へと進む。

 

中に入ると、いくつもの道となっていた。

そしてその近くには箱が多く置かれている。

 

「なんだここ?倉庫みだいだ。」

 

スレイは辺りを見て言う。

ロゼは辺りを探り、

 

「倉庫なんだよ。」

 

そして積み上げられた箱の中から瓶を一つ取り出す。

レイも近くにあった箱から瓶を一つ取り出す。

 

「近頃、貴族の間で流行ってるコレのね。」

 

そして、それをミクリオに手渡す。

ミクリオがそれを見て、

 

「エリクシール⁉」

 

蓋を開け、それを口に含む。

 

「偽物だ。けどなんか体が熱く……」

「偽エリクシールって滋養強壮薬だから。」

 

ミクリオに説明しながら言う。

そしてミクリオは再びそれを口に含む。

 

「しかも結構な依存性がある。」

 

それを聞いたミクリオは急いで吐き出す。

エドナがそれを見ながら、

 

「一回売れば需要が保証される。悪質ね。」

「そんなものが教会のお墨付きで売られているのですか?」

 

ライラも腕を組み、口に指を当て考える。

ロゼは腕を組んで、

 

「証明書はローランス教会の印が押された本物。なのに売上金は、この村に流れ込んでた。」

「調べたお金の流れって、それか。」

 

ロゼは頷く。

ライラは眉を寄せて、

 

「ゴドジンに本物の証明書を書ける人物がいるとすれば……」

「失踪した教皇様。」

 

スレイは眉を寄せて言う。

そしてミクリオとロゼも、

 

「村の資金源も説明がつくね。」

「村長の穢れの理由も。」

 

スレイは俯き、

 

「共犯か。もしくは……」

「村長が教皇か。」

 

デゼルがスレイを見て言う。

そこにエドナが、

 

「ところで、スレイ、ミボ。」

「「なに?」」

「おチビちゃんが偽エリクシールを飲み干してしまったけどいいのかしら?」

「「え⁉」」

 

レイを見ると、偽エリクシールを一本飲み干していた。

ロゼがそれを取り、

 

「あ~……本当に全部飲んじゃった……」

 

と、瓶の口を下にし、上下に振る。

レイは唇を下で舐め、

 

「これはあまり飲まない事を進める。今も昔も、人間にも、天族にも、毒でしかないコレはな。」

「アンタ!」

「怒るな、陪神≪ばいしん≫。器に影響はない。」

「そういうことじゃないわ!」

「器を気にして声をかけたら、私だっただけだろう。」

 

エドナはレイを睨む。

スレイは苦笑いしてそれを見た後、真剣な表情で、

 

「さっきの人間や天族にも毒なんだ?」

「……それは辺りをしっかり見ればわかる。」

「え?」

 

と、レイの見る方から、

 

「貴様らっ!どうやってここにぃッッ‼」

 

そこに現れたのは、虎の姿をした憑魔≪ひょうま≫だった。

スレイ達は戦闘態勢に入る。

ロゼとデゼルがその憑魔≪ひょうま≫を見て、

 

「こいつ、まさかっ!」

「村長か!」

 

広くも狭くもない場所で、動き回る憑魔≪ひょうま≫を抑え込み、抑えながら戦う。

大振りの隙を付き、スレイが止めを刺す。

浄化の炎に包まれ、現れたのは村人だった。

武器をしまい、それを見たロゼは驚きながら、

 

「れっ!村長じゃない⁉」

「やっぱり村長さんを捕まえにきたんだな……?」

 

村人は傷を抑えながら立ち上がる。

そしてスレイ達を見て、

 

「そんなことさせねえっ!」

「やめろ!一体何があったんだ!」

 

そこに村長が間に入る。

スレイは村長を見て、

 

「あなたは……マシドラ教皇様?」

 

村長はスレイを見て、

 

「……調べはついているのだな。」

「なんで教皇様がこんなことを?」

「聞きたいのはこっちだ。なぜ私が教皇などという望んでもいない仕事をしなければならない?私が聖職に就いたのは、家族にささやかな加護を与えたかったから……ただそれだけだったのに。」

「でも、あなたを慕っている人は大勢います。騎士団のセルゲイたちだって。」

 

スレイの言葉を聞いた村長は一歩前にでた。

 

「わかっている!そこの子供と同じ事を言うな!だからできることを必死でやった!自分を顧みず!皆のために何十年も!その結果――!」

 

スレイ達はレイを見る。

そこにはいまだ中身だけ裁判者のままのレイがいた。

村長を無表情で見ているその瞳は鋭い。

そして一歩下がり、俯く。

 

「気が付けば、家を顧みない男と憎まれ私の家族は跡形もなくなっていた……。私は……一体なんのために……」

「そんなものは建前だ。お前は皆のためと言いながら、目を背けていただけだ。自信を祀り上げられ、それに乗り、行動すれば……家族もわかってくれる。自分は正しいと理解してくれると勝手に思い込んでいたに過ぎない。それがいざ振り返ってみたら、自分の思っていた事とは違た結果があったに過ぎない。」

「子供にはわからないこともあるのだ。」

「私はお前達人間社会を知ろうとは思わないさ。そしてこの村のこともな。お前は望んだ結果ではない今も、目を背け、その責任から逃げ出しているだけに過ぎない。」

「私は!」

「別に逃げ出す事は悪い事ではない。人間も、天族も、感情と言う概念を捨てれず、それに囚われ落ちていくに過ぎないのだからな。だが、政に深く関わってしまっているお前は別だ。勝手に祀り上げられ、利用された哀れな導師の盟約、それに反しようとする者は消すだけだ。」

 

そう言って、レイの影が蠢きだす。

それを見た村人は脅えながら、

 

「ば、化け物!」

「レイ!」

 

スレイが大声で、レイを見ながら言う。

レイは一度何かに反応した後、

 

「だが、今はしない。お前のような人間は幾度となく見てきた。せいぜい苦しみ、足掻くことだ。」

 

レイの足元の影は静かに収まり、彼女は入って来た入り口の方へ歩いて行く。

追いかけようとするミクリオに、

 

「入り口に居るだけだ。ここに居てはその人間を殺しかねんからな。」

 

そう言って、さっさと歩いて行く。

村長はその彼女の背を見て、

 

「人の姿をしていながら、人とは異なった理に生きる少年少女。彼らは世界を管理りし、裁く者。そうか……本当に実在していたのか……」

 

村長は再び俯く。

スレイが村長を見て、

 

「それは……」

「教皇クラスに伝わる書物の中の秘文だ。」

「話していいの?」

「もう関係ないさ。」

 

ロゼが腕を組み、

 

「……なら、もう一つ。ハイランドとの戦争には関わったの?」

「彼女の言う通り、私は逃げ出した。戦争も国も民も、全部投げ出して逃げた。すべてがどうでもよくなったのだ。死ぬつもりで森をさまよい、動けなくなったところを彼らに救われた。ゴドジンの皆は、私に何も求めず、ただ家族のように接してくれた。」

 

ライラは悲しそうに村長を見て、

 

「それで村のために働こうと思われたのですね。」

「偽エリクシールを売り捌いてまで。」

 

ミクリオは箱の中に入っている偽エリクシールを見る。

村長は声を上げ、

 

「帝国も教会も知らん。卑怯者と言いたければ言うがいい。今の私は――」

 

村長は顔を上げ、悲しそうに、

 

「村人≪かぞく≫のために生きている。」

「村人≪かぞく≫のため……」

「……か。」

 

ロゼは遠くを見るように呟く。

そしてスレイも、俯いて呟く。

デゼルも何かを思ったのか、帽子を深くかぶる。

ミクリオは腕を組み、考え込みながら、

 

「同情はするよ。けど、教皇を連れ戻さないと。」

「碑文を読まなきゃ秘力が得られないし、セルゲイたちも枢機卿に対抗できない……よな。」

 

スレイは複雑そうに言う。

ライラもスレイを見ながら、

 

「ですが、村長さんの人望と手腕がなかったら加護のないゴドジンはどうなってしまうか……」

「わかるけど、同じことはペンドラゴにも言えるよ。」

 

ミクリオは額を抑えながらいう。

後ろからエドナが、

 

「アイツの言った通り、そもそも、コイツが逃げ出したのが原因。責任を果たさなくていいわけ?」

 

スレイは振り返って、

 

「何か方法あるんじゃないか?碑文を読んでもらってゴドジンに戻るとか。」

「騎士団や教会があの状況では……」

「この人を開放してくれるって思う?」

 

ライラとエドナが指摘する。

スレイは無言となる。

 

「ぐっ……!」

 

苦しみ出す声が聞こえ、スレイは振り返る。

見ると村長が胸を抑え、

 

「げほっ!げほっ!がはっ!」

 

と、崩れ落ちる。

村人とスレイとロゼは、

 

「村長!」「「村長さん⁉」」

 

村長を抱え、外に出る。

外に出て、村長をとりあえず横にする。

村人は村長を囲み、心配そうに見守る。

それを岩陰に隠れ、見ている小さな少女。

 

「村長がゲンキじゃないとツマンナイ。学校でベンキョウおしえてもらえないもん。」

「おれ、いっぱいベンキョウして村長の跡を継ぐんだ!」

 

子供達が話していた。

スレイ達はそれを見て、

 

「でもどうして、村長はいきなり?」

「なにかあるとは思うけど……」

 

と、一人の村人達が、

 

「あのエリクシールは生産時に強い毒素がでる。村長の発作は、そのためだ。この人は危険を承知で、俺たちのために独りでエリクシールを作り続けてきたんだ。おそらくこの人は、もう……」

「頼む、村長を見逃してくれ!偽のエリクシールを売った罪は俺が被るからよ。」

「村長が無責任だっていうなら責任を押しつけた奴らはどうなるんだい?少なくともこの人は、ゴドジンを助けてくれたよ。命懸けでね!」

「村長がどんな人か、みんな知ってる。捕まえる気なら、俺たちは最後まで戦うぞ!」

 

村人達は村長を守るようにスレイ達を見る。

スレイは村人を見て、

 

「安心して。オレの用事はもう済んだよ。」

 

すると、村長が体を起こし、

 

「みんな、落ち着いてくれ……」

 

そして立ち上がり、スレイを見て、

 

「心配はいらない。この方は本物の導師だよ。導師よ、ひとつだけわかってください。村の皆に罪はない。すべては私の――」

 

スレイは首を振る。

 

「オレは事情を知りたかっただけなんだ。だから帰るよ。このまま。」

 

そしてライラとミクリオを見て、

 

「いいかな?」

 

二人は頷く。

が、横から、

 

「……わかんない。」

 

そちらの方を見ると、ロゼが腕を組み、悩んでいた。

 

「けど、スレイがこの人を信じたのはわかった。だからいいよ。」

「ロゼさん……」

 

ライラは悲しそうにロゼを見る。

ロゼもライラを見て、

 

「あるのかな?白でも黒でもないって――」

 

ライラはしばらくロゼと見つめ合った後、

 

「セルゲイさんたちも、きっと理解してくれますわ。」

「問題は枢機卿の領域にどうやって対抗するかだよ。」

 

ミクリオの言葉に、スレイは頬を掻きながら、

 

「それなんだけどさ。きっとあの人は教えてくれないだろうし、解読できないかなー?」

「碑文の暗号をか⁉」

「自分で解く気?」

 

ミクリオとロゼが驚きながら聞く。

 

「無茶じゃないだろ?人が考えた物だし、なにより面白そうだ。」

「そうだけど、せめてヒントくらい教えてもらわないと……」

 

ミクリオがそう言っていると、

 

「導師よ、こちらへおいでください。」

 

そう言って、村長は再び洞窟の中に入って行く。

するとレイもやって来た。

 

「追うのであろう?」

 

スレイ達はその後を追う。

スレイは改めて周りを見て、

 

「ここ、何かを掘った跡っぽいな?」

「この赤い石じゃない?」

 

と、ロゼが立ち止まり、赤石を見て言う。

エドナがそれを見て、

 

「赤精鉱ね。」

「セキセイコウ……?」

 

ロゼが首をかしげて言う。

ライラが説明する。

 

「珍しい鉱物ですわ。地の栄養素が結晶したもので薬になるんですが……」

「本で読んだことがある。毒性も含むから扱いが難しいんだっけ。あ!」

 

そこで気が付いた。

スレイも気付き、

 

「そうか!これが偽エリクシールの材料なんだな。」

「やっぱり、ワタシはアンタが嫌いよ。」

 

エドナはレイを見て言う。

レイは腰に手を当て、

 

「別に好きになってくれとは言ってない。それに、好きになってもらわなくてもいい。」

「大体、何でおチビちゃんのままの状態でのアンタなのよ!」

「変わる必要性がないからだろ。」

 

そう言う彼女を睨み続けるエドナ。

 

「まったく。」

 

そう言うと、レイを風が包む。

そしてその中から、黒いコートのようなワンピースを着た小さな少女が出てくる。

 

「これでいいか、陪神≪ばいしん≫。」

「ふん!で、アンタは全てを知ってて、ああ言ったんでしょ。最初から。」

「エドナ、それって……」

 

スレイがエドナを見て、考える。

ロゼが思い出したように、

 

「そうか、偽エリクシールを飲んだ時……ううん、最初から偽エリクシールの事をすでに知っていた。それに村長に言った言葉……〝せいぜい苦しみ、足掻くことだ″って……。」

「村長の身体についても知ってたってことか……」

 

スレイは俯いた。

小さな少女は歩きながら、

 

「あの人間は、この村の為に生きたいと想っても、いずれ死ぬ。」

「……なんでそんなに平然としていられるんだ。」

「簡単だ。私はお前達とは違う、ただそれだけだ。」

 

そう言って、どんどん進んで行く。

スレイ達はそれぞれ思いながらも進んで行く。

一番奥に行くと、紋章の描かれた扉があった。

 

「ここって……?」

 

ライラはそれを見て、眉を寄せる。

と、村長は扉の前で口を開く。

 

「『導師に四つの秘力あり。すなわち地水火風。其は災禍の顕主に対する剣なり。世界に試しの祠あり。同じく地水火風。其は力と心の試練なり。力は心に発し、心は力を収める。心力合わせば穢れを祓い、心、力に溺るれば己が身を焦がさん。試せや導師、その威を振るいて。応えよ導師、その意を賭して』。」

「秘力の碑文!」

 

スレイは声を上がる。

ミクリオもそれを聞き、

 

「暗記してたのか⁉」

「すごい!全然意味わかんないけど。」

「つまりだね――」

 

スレイがロゼを見て話す前に、ロゼの隣にいたミクリオが、

 

「四つの力を得られる四つの場所がある。そこの試練に合格しろ……ってことだね。」

「……うん。」

 

スレイは若干拗ねながら言う。

ロゼは元気よく、

 

「了解。その場所を探せばいいんだね。」

「いや……ってか、まさかここが!」

 

スレイは扉を見る。

村長は振り返り、

 

「そう。ここが火の試練神殿イグレインです。」

「入ってもいいかな?……って、ここまで勝手に入っちゃったけど。」

「試練の神殿は死の危険を伴う場所とされます。それでも?」

「行くよ。秘密の神殿、見てみたいし!」

「お行きなさい、若き導師よ。ここはあなたのための場所です。」

 

スレイは扉に近付き、

 

「導師の試練、ロゼも受けてくれるのか?」

「あはは、なにを今更!待ってるなんて性分にあわないし。さ!試練の神殿にレッツゴー!」

 

そう言って、彼らは扉の中へと進む。

小さな少女は村長を見上げ、

 

「……未だにしっかり覚えている者がいるとはな。」

「……あの時、貴方から火の試練神殿イグレインの事がでた時……私は悩みました。これは教皇の座に就いた時、先代教皇様より教わった事です。例え、必要とされるかわからぬ事だが、必ず覚え、伝え、繋げて欲しいと。」

「……ならお前は、それを次の者に伝えねばなるまい。己の答えを早く決める事だ。」

 

そう言いて、小さな少女も扉の中へと進んで行く。


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