憑依した先はCGS一軍の隊員でした。   作:ホアキン

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 今回は閑話というか、本編の裏の話です。
一応後への伏線張ってますが、読まなくても本編には支障無いかもしれない内容です。
 ほぼ会話オンリーでわかりにくいと思いますがご了承ください。
 


閑話
裏で動く者達、闇に潜む者達


「親父・・・いくら何でも、とっくに成立した契約に横槍を入れるってのは、どうかと思うんですが・・・」

 

 ハンマーヘッドの応接室。名瀬・タービンは通信端末に向かってそう言った。通信の相手はマクマード・パリストン。テイワズ代表であり、名瀬にとっては盃を交わした親分である。

 

「お前が疑問に思うのも解るがな、これは色々考えた上で俺が判断した事だ」

「その考えってやつを、聞かせてはもらえないんですか?」

 

事は鉄華団がブルワーズから接収し後に売却したMSマン・ロディの事である。タービンズがドルトコロニーにあるテイワズの支社に引き渡した10機の内の半数に当たる5機を返品すると連絡が来たのである。

 売却手続きはとうの昔に、何の問題も無く完了している。今更どういう事かと問い合わせた所、これはマクマードからの指示だと言うので、そのマクマードに通信を繋ぎ問い合わせているのである。

 

「鉄華団はテイワズ傘下に入ったばかりでまだ経済的には安定出来てません。当てにしていた収入が減らされちまうのは、今のあいつらには痛い事です」

「今あいつらに本当に必要なのは金よりも戦力なんじゃねえのか?どうせあいつらが買い戻す事になる品だ。だったら今のうちに鉄華団の戦力に入れておいた方が、今回の博打の為には良いだろう」

「今のあいつらの状況、知ってるんですか?」

「例のお嬢さんの交渉相手の蒔苗が失脚中だって事とアーブラウの代表指名選挙が近い事、それと蒔苗の対立候補のアンリ・フリュウの裏にセブンスターズのファリド公が絡んでるって事はな。・・・名瀬、こいつは上手くいけばデカいシノギになる。それに俺の見込みではそう分の悪い賭けでも無さそうだ。だったら少しでも賭け金を上乗せしておきたくなるじゃねえか」

「親父・・・」

「鉄華団の名が上がりゃあ、兄貴分のお前の評価も上がる。悪い話じゃねえだろ。それとな、お前らに絡んでるモンタークとか言う商人も使え。ハーフメタルの利権に加えろって言う奴らに楽させる事はねえ、連中のコネを使って鉄華団の宇宙に残ってる連中を増援としてアーブラウに送らせろ。MSもMWも持たせてな」

「・・・わかりました。オルガには俺から・・・」

「伝えるな。オルガ・イツカには伏せとけ。こういう助けはな、味方にとっても予想外な方が効くんだよ」

「そう、ですかね・・・?」

「ああ、増援なんぞ期待させたら油断の種になりかねんしな。MSはドルトに顔が利くタントテンポに運ばせる。地上用のパーツも一緒にな。受け取りと整備、モンタークへの伝達やらは任せたぞ」

「はい」

「じゃあな名瀬、上手くやれよ」

 

 その言葉を最後に通信は切れた。名瀬はソファの背もたれに体重を預けると深い溜め息を吐いた。

 

「どうもらしくねえ・・・何時もの親父ならここまでのテコ入れはしねえ。失敗した時に巻き添え喰わねえようにある程度距離を置いておくんだが・・・」

「そうだねえ・・・別の誰かがマクマードさんに入れ知恵でもしたかねえ?」

「親父を動かす人間なんざ、それこそ限られてる。・・・ジャスレイはまずねえだろう。逆にこっちの足を引っ張るならまだしも、助け舟なんぞ出す奴じゃねえ」

「そういえば・・・稲葉のじい様がトウガを気に入ったらしいとか、そんな話を聴いたよ」

「あの爺さんか・・・確かにあの人の言う事なら親父も動くか。俺には当たりがキツいんだがな・・・」

「別にアンタが嫌いってわけじゃ無いみたいだけどね」

「そうかい」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これで良かったんですか、先生?」

「おお、すまんな。組織の運営には口出ししない約束だったものを」

「いえいえ、しかし随分と鉄華団に肩入れしますな。そんなに弟子が可愛いですか」

「馬鹿言え。アイツがどんな酒を地球から持ってくるかが楽しみなだけじゃ」

「はっは、そういう事にしておきますか」

「あと・・・奴が一体何人斬り殺して来るか、そしてあの面構えがどう変わって来るか、そこは興味あるのう・・・人のままか、それとも鬼になるか。鬼になったとして悪鬼か否か。もし悪鬼となったならば儂が引導渡すまでだがな・・・」

「怖いですなあ・・・」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・こちらA(アルファ)。皆聴こえているな?」

「・・・こちらC(チャーリー)」

「D(デルタ)だ。B(ブラボー)はどうした?」

「こちらA。Bはいない。理由は後で話す。続けてくれ」

「こちらE(エコー)、Cは事情を知ってるようだな・・・」

「話は後だと言ってるだろ。こちらF(フォックストロット)だ。」

「こちらG(ゴルフ)、通信異常無し」

「こちらH(ホテル)です」

「はーい、I(インディア)でーすよー」 

「えっと・・・J(ジュリエット)は永久欠番でしたよね、K(キロ)です・・・」

「あくまでコードに過ぎないとはいえ縁起悪いしな・・・L(リーマ)だ。通信に問題は無い」

「こちらM。時間が惜しいので急いで進めてくれないかなあ?」

「Nはまだ欠員補充出来て無いんだよな?なら俺か。こちらO(オスカー)」

「こちらP(パパ)、QとRは急用があって欠席だ。代表して俺が参加する」

「こちらS(シエラ)よ。今更だけど長くない、この手順?」

「昔程じゃないさ。こちらT(タンゴ)、私が最後だったな」

「こちらA、UからZまでは空席だからな。ではまずBについてだが・・・彼は死んだ」

「なっ・・・!?」

「そんな・・・!」

「確か彼は歳星にいたはずだろう?」

「ああ、JPTを調べていた」

「て事は・・・」

「十中八九あのケツアゴかその取り巻きだろう」

「くっそあの野郎・・・ロクな事しねえな!!」

「やっぱり早いとこ片付けた方が良かったんだ!」

「貴重な同胞がまた1人・・・」

「落ち着いてくれ皆。Bの事は残念だったが、逸ってはいけない。彼を惜しみ悼むなら尚更だ。彼は自分が死んだ時に備え我々につながる情報は抹消して動いていた。覚悟はしていただろう。我々は彼の遺志を継いで計画を進めなければならない。憎きケツアゴの処断は決行時期もふくめて先代B・・・もといブレードにお任せする。仕掛けて仕損じ無し、を地で行くお人だからな」

「Aの言う通りね・・・あのご老人に任せましょう。遅くとも二年以内にやってくれるんでしょう?」

「ああ・・・」

「何時になるかわからないのが不満ではあるけどな・・・」

「ただ始末すれば良いってわけにはいかないしな。忌々しい」

「他、報告のある者はいるか?」

「こちらP、アーブラウの仕込みは順調だ。手駒も数はそれなりに。QとRはアレジ氏の所に情報交換に行っている」

「アレジに・・・よくアポが取れたな」

「マスコミに骨のある協力者を得られたからな。フリュウと腐れショタコンの密会の証拠を入手出来たのは大きかった」

「それ初耳ですねー」

「それも凄い事じゃないか」

「そう言うわけでこっちは順調だ」

「では引き続き頼む。くれぐれも慎重にな。他は?」

「Fだ。ドルトの騒動の時の報道の3人、身柄を確保した。ひとまずHに預けたいのだが」

「こちらH。解りました。客として滞在させましょう」

「よろしく頼む。骨のあるジャーナリストは得難い人材だからな」

「Tだ。アバランチの方はシナリオ通りに一期が終わった。次に大きな動きがあるのは半年後だな」

「まあそっちは動向を静観する方針だったからな」

「だが・・・ジャンマルコの動きが少し妙だ」

「ジャンマルコが?」

「モンターク商会から依頼を受けて動いているようで地球低軌道ステーションの辺りをうろついてる」

「今の時期にモンタークって、鉄華団絡みか?」

「だと思う。詳しくはわかっていないが」

「今は月鋼の空白期だから、何とも言えないわね・・・」

「あー、Cだ。空席になったBの席なんだが・・・補充要員の候補が見つかった。Aには先に相談したが」

「どういう事ですか?」

「私達の同類が新しく見つかったのか?」

「確定じゃない。今はそれっぽい、としか言えないが・・・そいつは鉄華団にいる」

「何いーーっ!?」

「それ超重大案件じゃない!?」

「アンタ今歳星だろ!?なんで判った?」

「あー、それがブレードの爺様からつい最近聴いて・・・ソイツあの爺様に弟子入りしたらしい」

「は?」

「どゆことですか?」

「Cの説明は正確じゃないな。そいつ、仮にX(エックス)と呼称するが、歳星で日本刀を買い求めたらしい。そうしたらブレードに目をつけられて、無理矢理弟子にされた、という」

「何故その、Xは日本刀なんて欲しがったんでしょう?」

「恐らく三日月の強化を目論んだのでは、と考えられる」

「ミカ君のー?・・・あー、グレイズアインの時の・・・」

「だと思う。あれを見越して先に刀の扱いに習熟させようとしたら・・・」

「ミイラ取りがミイラ、じゃないけど自分がしごかれる羽目になったわけね・・・」

「じゃあソイツ、もうシナリオの改変に動いてるって事か?」

「そのようだ。調べた所歳星でのバルバトスの整備と並行してグレイズの改造が行われていた。昭弘の機体とは別のな。青と黄のグレイズ改なんて本来のシナリオに存在しないだろう?」

「おいおい・・・」

「そういえばドルトの騒動の時クーデリアが狙撃されなかったし、フミタンもその場に現れなかった・・・」

「そうだ!その後のクーデリアの演説もサヴァランが出てきたり内容が違ってたぞ!」

「じゃあXが我々の同類だったとして、目的も我々と同じと考えて良いのか?」

「そう思いたいが、まだ判らん、と言うべきだろう。今は様子見が無難だと思う」

「まあ、一期の内は余り派手に動かない方針だしねえ。私達はこの先に備える必要があるし」

「ちょっと悠長に構えすぎじゃないか?イレギュラーが出たなら対応するべきだと思うけどな」

「だがこれがきっかけでブレードが動いてくれた。マクマード氏に働きかけてイサリビ残留組にマン・ロディを送らせたそうだ」

「え?あの人今の同盟の活動には干渉しない筈じゃ?」

「多分同類同士の互助会だった頃の理念に拠り、という事だろうなあ。あの人初代のABCへの忠誠心は揺るぎないし」

「でもマン・ロディだけ送っても陸戦には使えないのでは?」

「マン・ロディの輸送を依頼した相手はタントテンポだ。あそこのラブルスは・・・」

「頭以外ランドマン・ロディと同じ仕様つまり・・・」

「タントテンポに陸戦用パーツを融通して貰うわけか・・・代価はハーフメタル関係の利権か?」

「とにかくアーブラウでの戦闘を鉄華団はより充実した戦力で戦えるわけか」

「朗報、だよなこれ?」

「だがXが要注意人物である事は変わらない。そうだろA?」

「ああ、次に鉄華団が歳星に来たらブレードが腹の内を確かめるそうだ。これもあの人にお任せ、という事だ。この件はここまでとする。他には?」

「いや強引に終わらすな。俺は納得いかないぞ。何でもあの爺さま任せじゃ俺達の存在意義がだなあ・・・」

「Aやブレードには悪いけど、Dの言う事も一理ある。我々でXに接触してみようと思うがどうだ?」

「どうするつもりだP?」

「アンカレジでアレジが蒔苗に会うのに同行する。そのまま鉄華団の乗る列車に乗り込んでXを探して話す」

「無茶を言う」

「付き合いのある医者を捕まえて同行させる。医者の助けは鉄華団も拒否できんだろう」

「確かに。医療面で頼れる人材メリビットしかいないからなー」

「・・・Xもそこは手が回らなかったようだからな。そう言う事ならL、君も行ってくれるか。君の能力が役立つだろう」

「ちょっと待て・・・スケジュール的にギリギリだな、善処する」

「もう良いかなあ?私も忙しいんだよ?」

「そう言えばMが進めてるカスタム機はどうなってる?」

「どうもこうも!精度の低いパーツが回って来たせいで要らん手間がかかっている!質の悪い品を売り付ける業者は死ねば良い!やっと半分という所だ!大体本命の作業も並行しててだなあ・・・とにかく時間が惜しい!」

「あー、済まないがそちらは頑張ってくれ、としか言えないな」

「えっと、御愁傷様・・・?」

「キーーッ!!同情するなら時間をくれ!!あと甘いものを寄越せー!!」

「・・・他に報告等あるか?・・・無いな?ではMのためにもここまでとしよう」

「了解・・・」

「M、差し入れは送ってやる。死ぬなよ・・・」

「では・・・鉄の華に幸福を」

「ケツアゴに断罪を」

「虚飾まみれの驕った笛吹きどもに天誅を」

 

 

 

 

「はあ・・・それにしてもX、か・・・DやPの言う通りイレギュラーには早急に対応するべきだな。今はまだ表に出られない我々が諦めた命を、彼が拾い上げてくれていればありがたいのだが、な・・・」

 

 




 思い付いて二日で書けた・・・やっぱり思い付いたらすぐに書いた方が良いのかも知れません。
 いわゆるテコ入れです。一期までなら無くても何とかなったかもですが、二期について考えるともう・・・こんなんトウガ1人じゃひっくり返せねーーーっ!!という訳で憑依、転生者を複数投入しました。
 もうある意味敗北宣言のようなものです。

 2/3修正しました。

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