憑依した先はCGS一軍の隊員でした。   作:ホアキン

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 今回はトウガの感情ブレまくりになっちゃいました。



地球降下編


 ギャラルホルン、最大最強を誇るアリアンロッド艦隊の戦艦、MSに包囲されたイサリビ。絶体絶命の状況下で、クーデリアの姿が、声が、放送によって世界中に発信されている。

 

『私は自分の産まれ育った火星の人々を救いたいと願い行動してきました。けれどあまりに無知だった。ギャラルホルンの支配に苦しむ人々は宇宙の各地に存在していたのです』

 

 クーデリアは自分がドルト本社前で見た事を語る。ドルト本社で起きた爆発はデモ隊によるものでは無く、しかしそれによってギャラルホルンがデモ隊に攻撃を開始した事を。

 

「ここにドルト本社の方が1人います。この方にも話をお聞きしたいと思います。・・・まずはお名前とご職業からお願いします」

「私は・・・サヴァラン・カヌーレ。ドルト本社勤務の社員・・・です」

 

 え?サヴァラン?何を話すつもりだ?

 

「今起きている事について、御存知の事を、話していただけますか?」

「・・・元々ドルトカンパニーは、本社勤務の社員と各工業コロニーで働く人達の間で、給与その他の待遇に大きな格差があり、コロニーの労働者達には不満を持つ人達が多くいたのです。ですが・・・」

 

 労働者達の不満の声、待遇改善の要求をドルト本社はギャラルホルンの武力を楯に強引に押さえつけていたとサヴァランは語る。

 

「私は労働者と本社側の間で、何とか話し合いの場を設けられないかと交渉していたのですが、状況は進展せず、遂に本社側は労働者達が暴動を起こすように仕向けて見せしめに虐殺するというギャラルホルンからの提案を受けてしまいました。本社前の爆発というのはおそらく本社とギャラルホルンの間で、予め用意されていた物でしょう・・・」

 

「今のお話のように、ドルト本社前で起きた爆発は、ギャラルホルンによって仕組まれた物でした。そしてそれによって始まった戦闘、いえ・・・虐殺は今も続いているのです!」 

 

「くっ・・・ククク・・・フハハ・・・」

『お、おいトウガ?』

「これは予想外だな。けど良いじゃないか」

 

 サヴァランはビスケットの為に自殺させないという、ただそれだけの目的で拘束していたのが、まさかこんな形で役立つとは思わなかった。そりゃあ笑いたくもなる。

 立場上は本社側の人間であるサヴァランが本社とギャラルホルンのでっち上げを証言したんだ、クーデリアの話は真実味を増すだろう。

 

『笑ってられる状況か?来るぞ』

『くっそ、うようよと・・・』

 

 ま、確かにそれは尤もだけど。

 

『今私達の船はギャラルホルンの艦隊に包囲されています。・・・ギャラルホルンに私は問いたい。あなた方は正義を護る組織ではないのですか?これがあなた方の言う正義なのですか?ならば私はそんな正義は認められない。私の発言が間違っていると言うのなら・・・構いません。』

 

 あ・・・嘘?それ、言っちゃうの?

 

『今すぐこの船を撃ち落としなさい!』

『おいおい・・・』

『何言っちゃってんの・・・?』

「まさかここまで腹括ってるとは・・・」

『どっちにしろやるしか・・・』

『動くな三日月!』

 

 ギャラルホルンに対し迎撃に動こうとする三日月をチャドが制止する。

 

『おいおいどうなってんだ?やつら動かねえぞ』

 

 ギャラルホルンの艦隊もMSも動きを止めた。

 

『すごいなあいつ』

『三日月?』

『俺達が必死になって一匹一匹ぷちぷち潰してきた奴等を、声だけで・・・止めた』

「ああ、確かに。僕達には出来ない事だ。これが彼女の力、か」

 

 僕も見誤っていたのかもしれない。フミタンが死んで無いから原作程の覚悟は出来ないと思っていたけど・・・。

 見ているかマクギリス・ファリド。お前の眼に、今の状況はどう見えている?

 

 イサリビに帰艦すると、報道スタッフにナボナさんを預けて送り出した。ナボナさんもだが、報道の人達には身の回りに注意するようにと、一応忠告はしておいたが・・・ここから先は彼ら次第だ。

 サヴァランに何故クーデリアに加担する証言をしたのか尋ねたら、

 

「自分に出来る事をしようと思った。既に犠牲は出てしまったし、カヌーレの家には顔向け出来ないが・・・」

 

 と肩を落としくたびれた様子で答えた。 

 サヴァランは本社側とカヌーレの家を裏切った状態でもうドルトには帰れないし、まだケジメをつけてないからとりあえずクランクさんと同様に独房に入れている。

 その後ハンマーヘッドと合流、名瀬さんとアミダさんがブリッジに到着した。

 因みにダンテはブリッジにいない。原作同様にやっちゃったか。

 

「悪いな、遅くなっちまって」

「いえ、こっちこそ面倒かけちまってすいませんでした」

「気にすんな。それにしてもやってくれたな、あのお嬢さんは・・・っと」

 

 クーデリアとフミタンがブリッジに入ってきた。

 

「お待たせして申し訳ありません」

「大丈夫かい?カメラの前ではずっと気を張ってただろう?」

「・・・大丈夫です。それで、出発の方はどうなりますか?」

「ああ、それなんだが・・・」

 

 予定では地球軌道上にある2つの共同宇宙港、ユトランド1、2のどちらかで降下船を借りて地球に降りる手筈だったのだが、僕達の動きはギャラルホルンにマークされている為それは不可能と名瀬さんは説明した。

 

「そう、ですか。他に方法は無いのですか?」

「意外と冷静ですね」

「前もって忠告を頂いていましたから、覚悟はしていました。ですがそれでも、私は地球に行かなければならないのです。私を信じてくれる人達の為に、果たさなければならない責任があるのです」

「と、言ってもな・・・」

「んー・・・」

 そろそろ来る頃だけど・・・

 

「エイハブ・ウェーブの反応、船が近付いて来ています」

「ギャラルホルンですか?」

「なら一隻って事は無いだろう」

「接近する船から通信が入っています」

 

 オルガは名瀬さんの方を伺うと、名瀬さんが頷いたのを見てメリビットさんに指示を出す。

 

「正面に出してくれ」

 

正面のモニターに通信相手の姿が映る。

 

「うおっ!?」

 

 モニターに映る相手の顔というか仮面に驚いて声を上げたのはチャドか。僕は予想してたけどそれでも実際にみると、ねえ。

 

「あの男は・・・」

 

 クーデリアとフミタンの顔に警戒の表情が浮かぶ。

 

『突然申し訳ない。モンターク商会と申します。代表者とお話がしたいのですが』

 

 オルガに代わって名瀬さんが応対する。仮面の男は商談があると言って直接の面会を求めてきた為ハンマーヘッドの応接室で話をする事になった。

 

 仮面の男との商談には僕も立ち会いを希望した。

商談自体はこういう話に慣れている名瀬さんが対応する。

 

「改めまして、モンターク商会と申します。またお会いしましたね、クーデリアさん」

「知ってんのか?」

「いえ・・・少し」

「しかしまだ彼女を側に置いているとは、私の忠告は無駄でしたか」

「フミタンの事は私が判断して決める事です」

「成る程・・・これは失礼」

 

クーデリアの言葉に薄く笑みを浮かべる仮面の男。

 

「何の話か知らないが、本題に入ってくれるか?商談ってのは?」

「私どもには降下船を手配する用意があります」

「はあ?」

「貴女の革命をお手伝いさせていただきたいのです。クーデリア・藍那・バーンスタイン」

 

 そして仮面の男はクーデリアの目的達成によってマクマードさんとノブリスが得る火星ハーフメタルの利権に自分達も加わる事を援助の見返りとして要求してきた。

 しかし彼の求める本当の見返りが別にある事を僕は知っている。

 

「返事は何時までに?」

「あまり時間はありません。なるべく早いご決断を」

 

 そして仮面の男は挨拶代わりにと物資の提供を申し出て来た。

 

「マクマードさんとノブリス・ゴルドンが繋がってたなんて」「ドルト2に運んだ荷物の件、マクマードさんは知ってたのかもね」

「え?どうして・・・」

「多分マクマードさんはクーデリアさんと僕達を試すためにノブリスの企みをあえて見逃したんじゃ無いかな?口先だけの小娘とガキの集まりか、それとも本当にデカいヤマを張れる力があるか・・・ってね」

「そんな・・・」

「仕方ねえ、あの人達は化かし合いの中で商売してる。俺達やクーデリアを試すくらいの事はしてもおかしくねえ」

「もうバルバトスのオーバーホールとか色々便宜を図ってもらってるし、文句は言えないよね」

「あの人達と対等に商売していくなら、今のままじゃ駄目なんだ」

「オルガ・・・」

「えーっと・・・あまり思い詰めない方が良いよ。今は目の前の事を」

「そいつはわかってる。けどな・・・このままじゃ終わらねえ」

 

 やっぱりオルガの上昇思考は簡単には抑えられない、か。

 

「にしても、モンターク商会、か。こっちに選択の余地が無いのを解ってるねえ」

「そうですね。物資の件といい、こっちの足下を見られてるような・・・」

「このままあっちに主導権を握られているのは面白く無いね。ちょっとこっちから仕掛けてみようか」

「こっちから?」

「ちょっとあの男とサシで話させてくれる?取っ掛かりは僕が探るからさ」

 

 

 その後、イサリビの通路にて

 

「ていうか・・・何でチョコの人がいるの?」

「「え?」」

「ふっ・・・双子のお嬢さんは、元気かな?」

「って、あの時のギャラルホルンの!?」

 

 三日月にあっさり正体を見抜かれた仮面の男。いや本当、何でわかったのかなあ?

 

 警戒を露にするオルガ達に仮面の男は自分が腐敗したギャラルホルンを変革したいと考えており、その為に外から働きかける役を鉄華団に求めていると語った。

 

「まあ、良く考えてくれたまえ。ああ、私の事は内密に。もし他言したならば・・・この件は、無かったことにしよう」

「ちょっと待ってもらおうモンターク。それは狡いな。交渉事に一方的な条件追加はアンフェアじゃないか」

「既に対価は払ったと思うが?」

「物資の事を言っているなら、あれは挨拶代わりなんだろう?なら別の話だ。そっちに対する礼も兼ねて一対一で話がしたい。そちらにも損はさせない自信がある」

「ほう・・・面白そうな事を言う。だが鉄華団の代表者は君ではあるまい、良いのかな?」

 

 仮面の男はオルガに話を振る。僕もオルガに顔を向ける。

 

「・・・頼むぞ、上手く話を着けてくれ」

 

 空き部屋の一つに僕は仮面の男・・・モンタークと二人で入ると扉をロックする。

 

「さて、先ずは挨拶代わりの物資に対する返礼からですか。とは言っても金や物では貴方には何の得にもならないでしょう、マクギリス・ファリド」

「・・・君にその名を名乗った覚えは無いのだが」

「勿論、今日が初対面ですよ。でも僕は知っている。貴方が今のギャラルホルンを変革したいという意志が本当だって事も。その為に知っておいて損は無い話がありますので、それをもって返礼とさせてもらいます」

「一体どんな話を聞かせてくれるのかな?」

「この先起こる出来事、その予測を貴方に話しましょう。・・・先ずこの後、貴方からの申し出を受けてからの話です。勿論ギャラルホルンの妨害もありますが、まあそれは切り抜けられるとして。その先、地球に降りてからが問題でしてね」

 

 そして僕は地球に降りたその先に起こる事を、予測と称して語った。クーデリアの交渉相手の蒔苗は現在失脚中で、アーブラウ代表に返り咲く為にエドモントンまでの護衛を要求して来るであろう事、蒔苗の対立候補アンリ・フリュウがマクギリスの養父イズナリオと結託してアーブラウの政権を握ろうとしている事。そして地球外縁軌道統制統合艦隊司令カルタ・イシューが鉄華団を追って来る事。

 

「貴方の目指す変革の為にイズナリオは排除する必要がある、そして、セブンスターズの一席、イシュー家のカルタ・イシューもいなくなった方が貴方には都合が良い。そうでしょう?」

「何故、そう思う?」

「イズナリオが権力欲まみれの腐った奴だから。そしてイズナリオを排除してファリド家を掌握しないと貴方はギャラルホルンの中枢部に食い込めない。カルタもいなくなった方が今の勢力構造が乱れて貴方が付け入る隙が増える。・・・だからカルタを殺し、イズナリオの企みも潰す。貴方が鉄華団に期待するのはそういう役割でしょう?」

 

 ガエリオの死もマクギリスの望みに多分含まれるけど、それは自分でやってくれ。カルタはまだしも三日月と戦って互角に近いような厄介な相手の事は確約出来ないし。

 

「ふっ・・・フフフ・・・何故そうも確信したように未来の予測を口に出来るのか、何故私の思惑をそうも見透かすのか・・・」

「気を悪くしたなら謝罪します。けど、僕は貴方に敵対するつもりはありません。むしろ利害が一致する限りは出来る範囲で貴方に協力したいと思っているんですよ。それが鉄華団の為になるのなら尚更、ね」

「・・・いや、なかなか面白いな。君の予測が正しければ、の話だが。それで?」

「さっきも言いましたが今の話は物資の返礼です。今後の参考にでもなれば、と。貴方の正体に関する口止めの件ですが・・・」

 

 そしてこちらからの要求を述べる。

 

「なかなか面倒な注文だな」

「でも無理では無いし、割りに合わない事も無いでしょう?」

「・・・良いだろう。手配しよう。だがそれも商談が成立すればの話だ」

「その辺は心配して無いんでしょう?」

 

 こっちに選択の余地なんか無いんだから。

 

 モンタークが去った後、改めてハンマーヘッドの応接室に名瀬さんとアミダさん、オルガとビスケットに集まってもらった。

 

「でお前、何だそれは?」

 

 名瀬さんからの問い掛けの声。その顔は僕には見えない。今僕は正座から床に手をつき額を擦り付ける格好、つまり土下座しているからだ。

 

「今からお願いする事は筋の通らない、僕の我が儘ですから。それでも、どうか聞いてください」

 

「顔を上げろよ。中身が何であれ、顔の見えねえ相手の頼みは聞けねえ」

「・・・それでは失礼して。実は・・・」

 

 僕は顔を上げると、今回のドルトの一件でノブリスの企んでいた事、そしてフミタンがノブリスの命令を受けたクーデリアの監視役だった事を名瀬さんやオルガ達に話した。自分が前からフミタンを怪しいと思いながら確証が無い為オルガ達に話さずにいたとも。

 

「まさかアドモスさんもノブリスと繋がってたなんて」

「まさか依頼主の傍にスパイがいたとはな・・・」

「・・・で、お前の頼みってのはそれに関わる事なんだな?」

「はい。フミタンを・・・今まで通りクーデリアの傍にいさせてあげて欲しいんです」

「え?それって・・・」

「つまり今までノブリスに情報を流していたのを、水に流せってのか?」

 

 オルガの声色が剣呑になる。

 

「フミタンはもうノブリスを裏切ってクーデリアの為に行動しました。彼女は変わったんです。クーデリアにも支える人間が必要です」

「だからって・・・!」

「ちょっと待てオルガ」

「兄貴?」

「なあ、一つ訊かせろ。何でお前がそこまでする?」

「え・・・?」

「そういう事は、本当ならあのお嬢さんが話しに来る事じゃないのか?何でお前が家族でもねえ女の為に土下座までする?」

「あ・・・それは・・・その、約束しちゃったんです。フミタンも護るって。鉄華団としてじゃ無く、僕個人で、ですけど」

「だから何でそんな約束したんだよ?お前には他に護るって決めた家族がいるだろ」

「う・・・それは、そうですけど、あの時フミタンはクーデリアを危険に晒さない為一人で何処かに行こうとしてて、そのまま行かせたら、僕の手の届かない所でいずれノブリスに始末される。それは嫌だって、それで・・・」

「ははあ・・・そういう事か」

「どういう事ですか兄貴?俺にはどうもトウガの考えがわからねえ」

「ま、そりゃあ仕方ねえ事だろう」

「トウガは惚れちまったんだよ、フミタンに。そうだろう?」

「ええっ!?」

「なっ!?何をっ、惚れ・・・いやっ・・・それは・・・!」

 

 アミダさんの言葉にビスケットが悲鳴のような声を上げる。僕も言われた事に戸惑ってまともな言葉が出て来ない。

 

「違うのか?」

「えっ・・・その、違うとも言い切れ無いです。けど、元々怪しいと思って気にしていたんで、それがそういう感情になるなんて、僕は・・・」

「男と女は理屈じゃ無いからね。そういうのも別におかしい事じゃ無いさ」

「ああ、だからその感情は何も恥じる事はねえ。けどなトウガ。護りたいものが増えるって事は、背負うもんが増えるって事だ。それはわかるな?」

「・・・はい」

「だったら俺には言う事はねえ。お前はどうだ兄弟?」

「・・・正直俺には納得出来ねえ。けど今この事で騒ぎ立てるのは上手くねえし、クーデリアも望まねえだろうとは考えられる。だから、今回限りは目え瞑る事にします」

「名瀬さん、オルガ、いや団長、恩に着ます・・・!!」

「そんな物着なくて良い。だいたい肝心のお嬢さんがいねえんだ。俺達でどうこう言っても仕方ないだろう」

 

そう名瀬さんが言った直後、ドアが開きクーデリアが入って来た。

 

「あ、あの、すみません。入ろうと思ったら、どうも立て込んでいたようなので・・・」

「え?」

 

 ちょっと待って。それってつまり・・・

 

「・・・聴いてました?」

「その、ごめんなさい。立ち聞きする積もりはなかったのですが・・・」

「・・・えーと・・・」

「私からフミタンには、何も言いませんから安心してください」

「あ、はい」

「で、フミタンの事はこれまで通りって事で良いのか?」

「はい、本来なら私からお願いするべき事でしたが、皆さんが許してくださるのなら」

「ああ、こっちの考えはそれでまとまってる」

「その、アドモスさんはどうなるんです?その、ノブリスの方は・・・」

「ノブリスには私から話を着けました。皆さんにご迷惑おかけしました事、私からフミタンに代わってお詫びします」

「いや・・・実害がどれだけあったのかわからないですし、正直助かった事の方が多いですよ。ね、オルガ」

「ああ、もうその話は良い」

「それよりも問題は・・・」

「モンターク商会を名乗るあの男、ですね」

「ああ、取れるだけ裏を取ってみるから、結論を出すのはもう少し待ってくれ」

「わかりました」

 

 フミタンについてはこの場にいる面々の胸にしまっておく事になり、そしてこの場は解散となった。

 

 

「そうか、アインはお前達を追ってここまで・・・」

 

 独房でクランクさんにアインと交戦した事を伝える。

 

「殺さずに拘束しようとしたんですが失敗しました。ですが次は何とか・・・」

「無理をするな」

「いえ無理なんてしてませんよ」

「俺に気を遣ってアインに手心を加えるような真似はしなくて良い。そもそも俺は気遣いをされるような立場じゃあないだろう」

「でも、クランクさんにとっては可愛い部下でしょう」

「それはお前が気にする事じゃない。お前には他に優先すべき人間がたくさんいるだろう」

「それは、でも」

「良いか、お前は戦士だろう。戦場では敵と味方の線引きははっきりさせろ。さもないとお前の仲間が殺される。そういう道をお前達は進んでいるんだろう。違うか?」

「!・・・そうです。けど」

「お前達鉄華団は家族なんだろう?なら家族の事を第一に考えろ」

「クランクさん・・・」

「俺の事を思ってくれるなら、アインに子供殺しなどさせないでくれ。それ以上は望まん」

 

 クランクさんのその言葉はつまり仲間を死なせるなと言う事なんだろう。僕の方がクランクさんに気遣われている。

 

「すいませんクランクさん」

 

 クランクさんに頭を下げる。恥ずかしい。何時の間にこんな傲った事を考えるようになっていたのだろう。原作知識を持っているからって何でも思い通りに出来るとでも思っていたのか。そんな事は無いと判っていた筈なのに、クランクさんをアインと再会させてやろうなんて考えていた。思い上がりもいいとこだ。

 

「謝る事は無い。お前は俺とアインの事は気にせず自分の家族の為に戦え」

「はい・・・!」

 

 自分の愚かさを改めて思い知った。原作知識に思い上がって一番大切な事を見失いかけていた。自分が只の1人の人間でしかない事を、第一に考えるべき事は何かを、クランクさんが思い出させてくれた。

 

 その後、名瀬さん、オルガ、クーデリアの3人を交えた話し合いで、モンターク商会の話を受ける事が決まった。

 後はモンタークが僕の注文通りに動いてくれるか。そしてアインがまた現れた時に僕が躊躇せずに戦えるか。

 

 

 

 

 




 トウガとフミタンの関係はとりあえずトウガとしては保留、となります。まだフミタンへの気持ちを整理出来て無いので。

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