心が壊れた少年と少女   作:Narvi

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 東方の二次創作に手を出しました。

 東方原作紺珠伝までもってます。持ってるだけで下手ですが……。
 本も一部持ってるし、知識はあると思う。過信はしない、慢心ダメ絶対。

 とにかく頑張ってやっていきます。
 この作品は原作キャラとキャッキャウフフするわけでも、異変解決のために原作キャラとバトルするわけでもないのでお気を付けを。

 プロローグです、どぞ!


第一話 妖怪疑惑

 ――夢を見ていた。

 

 記憶に残ってない時点で実際には見ていないのかもしれないけれど、なぜかそんな感覚がしたのだ。

 起き抜けの体はどこかふわっとしてるし、頭も覚醒していないからか少しぼーっとしている。

 

 とにかく僕は何とも言えない不思議な感覚を抱いて目を覚ましたのだ。

 

 あたりは薄暗く、寝起きの目ではよく見えない。でも、耳に届いてくる草木の揺れる音や体に吹き付けてくる風から、外にいるということはわかった。

 

 はて、僕はいつの間に眠ってしまっていたのだろう?

 

 寝る前のことを思い出してみようにも周りの情景がよく見えないため、思い出すきっかけがない。

 この暗さからみて時刻はきっと六時から八時ほどだろう。頭上にぽっかりと浮かぶ月が、唯一の光源として鈍く照らしていた。

 

「ここはどこだろう」

 

 取り敢えず声に出してみた。当然、それに応えるものは誰一人いなかった。

 それもそのはず。この不規則に生える木々や、月に照らされて見えるようになった縄張りを主張するための爪あと。

 それは、ここが森の中だということを強く知らしめていた。

 

 そこで、僕は思う。

 何故僕はこんなところにまで来てしまったのだろう。

 

 元々、人里に住む者は基本その場所から出るような馬鹿な真似はしない。

 そんなことをすれば漏れ無く妖怪の餌である。そうしてしまった妖怪も結局は今代の博霊の巫女によって始末されるのだが、妖怪の撲滅のために人間自ら命を差し出す者はいないだろう。それは本末転倒である。

 

 とにかく、人里の中にさえいれば安全で安定した生活を送られるということは、大きな出来事でもない限り約束されたものである。

 

 だから普段は人里の外になど滅多に出ないのだが。そこまで考えて、ふと思い出した。

 

「そうだ! 狼を埋めようとして……」

 

 たまたま人里の外を見ていると、遠くで灰色の狼が横たわっていたのだ。

 妖怪にでもやられたのか、それとも寿命を迎えたのか。それは定かではないが、そこで放置しておくのは可哀想だと思ったのでせめて埋めてやろうと思い至ったのだった。

 

「だとしても中に入り過ぎだよな……」

 

 確か狼を埋めたのは森の入り口あたりだったはずだ。

 もちろんそんなに奥まで入ったつもりはなく、すぐ思い出せるように少し大きめの木の下に埋めたはずだったのだが。

 

「まあいいか」

 

 しかし考えていても仕方がない。

 奇跡に近いが、眠っていた間妖怪に襲われていたわけでもなくピンピンしている。狼を埋め終わっているのだから、この森には用はない。

 妖怪に見つかっては困る。急いで帰ろうと僕は暗い森のなかを走った。

 

 少し眠っていたからだろうか。元気になった体は、不思議といつもよりも早く走れているような気がした。

 

 

 

 

 走ること数分。森の中に入ってしまっていたものの、別段最奥の方にいたというわけではなかったらしい。

 妖怪と遭遇すること無く森から出ることが出来た僕は、少しの明かりで照らされている人里の方へと歩き始めた。

 

 ここまで来たのならもう一安心だ。人里は目前で、何かあれば妖怪から人里を守っている門番の人が駆けつけてくれるだろう。

 僕は美しく輝いている夜空の星々を眺めながら人里へと向かった。

 

 

 

 ――だがしかし、入ることは叶わなかった。

 

 目の前には人里が広がっている。僕は門番に声をかけた。

 

「あのぅ、すみません」

 

 僕がそう言うと、何故か四人の門番が一斉に刀を抜いた。

 

「……え?」

 

 おかしい。

 何故彼らは刀を抜いたのだろう。後ろを見てみても、そこには妖怪どころか動物一匹いなかった。

 向き直ってみても、門番は変わらず刀を抜いたままである。全く納刀する気配はなく、門番達の間ではピリピリとした雰囲気が漂っているのがわかる。

 

「なんで……」

 

 なんで彼らは全員。

 

 ――僕を見ているのだろうか?

 

「貴様のようなものがここに何のようだッ!!」

 

 その張り上げた声に思わずビクッとしてしまった。

 

「ぼ、ぼくですか……?」

 

「貴様以外に誰がいるというのだ!」

 

 門番は未だ怒気のこもった声でしゃべり続けている。そして、人里を守る門番達はとうとう僕に対して刀を向けた。僕は怖くなってたじろいだ。

 

「えっと……た、ただ人里に、帰ろうとしてただけなんですけど……」

 

 何とか振り絞ってやっと出来た発言だったが、それを聞いた門番は皆が笑っていた。そんな門番に僕はただ唖然とすることしか出来なかった。ひとしきり笑い終えた門番達だったが、今度は衝撃の発言が飛んできた。

 

「ふんっ。貴様が何を言いたいのかは知らないが、貴様のような妖怪を人里に入れるわけがなかろう」

 

「……妖怪?」

 

「当たり前だろう。貴様みたいな白狼天狗に、人里の地を歩かせるわけにはいかない。今なら見逃してやろう。さっさと立ち去れ」

 

 門番の表情は大真面目で、決して嘘を付いているようには見えなかった。しかし、その突拍子のない発言に、僕は思考が追いつかなくなってしまっていた。

 僕を妖怪と間違えるとは、門番はどうかしたのだろうか。

 僕はもちろん妖怪なんかではなく、列記とした人間である。特別な力も、化け物じみた身体能力も持っていない。至って普通の男の子だ。

 

 しかし、彼ら門番の言葉はなぜか真に迫っていて、僕はどうしようもなく怖くなっていた。

 

「僕は楓と言います。何を勘違いしているのかはわかりませんが、人間です!」

 

「貴様……もしや人間に化けて人里を荒らそうとしているのだな……」

 

「い、いや! そんなことありません! 信じてくださいッ!」

 

「最早聞く耳持たぬわ! 人間の里に足を踏み入れようとはいい度胸だ……ここで成敗してくれるッ!」

 

 名乗ってみても意味をなさず、むしろ癇に障ったようで門番は一斉に刀を持って向かってきた。

 急な行動に戸惑ってしまい、逃げるのが遅れてしまった。

 

「ぐぅぅ!」

 

 一人の門番の刀が僕の右肩を斬り裂いた。その燃えるような痛みに僕は悶絶した。自然と目には涙が浮かんでくる。しかしそれを流している暇はなかった。

 

「くそッ! なんでだよッ!」

 

 苛立ちと共に、僕はその場に背を向け走りだした。何が起こっているのか検討もつかないが、今はこうするしかなかった。

 浮かんでいた涙を置き去りにして、ただ闇雲に夜道を走り続けた。




 相変わらずのシリアス展開。いずれシリアスに定評のある作者になれればいいのに。

 主人公は結局なんで疑われているんですかね? 訳がわからないです(すっとぼけ)。


 時間に関しては、きっとこの方がわかりやすくていいと思うのです。一応知識として昔の時刻の言い回しを知ってたりはするんですけど、難しいのはちょっと……()

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