ある日のダンナーベースにて
昼時のダンナーベースの食堂では、職員達が和気藹々と食事を楽しんでいた。各地から派遣されて来たパイロットも同様に各々集まって、食事に会話を楽しんでいた。今日も今日とて、整備班の手伝いに駆り出されていたミストも腹を空かせて食堂にやって来ていた。ミストが来た時間は昼時を少し過ぎていたからか、ピーク時に比べて席が疎らに空いていた。しかし、訓練等で食堂に来た時間が遅かったのか、光司さん等はまだ食事の途中だった。
「そう言えばミストって、此処に来る前はオーブに居たんだったよな?」
「ええ、そうですよ。と言っても、居たのはほんの一ヶ月程ですけどね。」
「あら、意外とオーブに居た期間は少ないのね。」
「はい、オーブについてからは早い段階でオーブ軍にお世話になって、此方への派遣も直ぐに決まったのであまりオーブに居たと言っても少しだけですね。」
ミストがオーブに着いた時、ミスト自身の受け入れは早くに了承された。しかし、ミストが乗ってきたレヴリアスに関しては色々と調査等で時間が掛かった。しかも、ミストを民間人として受け入れた場合のレヴリアスの処遇が議会でも定まらずに宙ぶらりんの状態だった。オーブ軍が所有する案もあったが、アスハ代表が首を振らず決定とはならなかった。協議は続き、セイラン、サハク等の他五大氏族も譲らず議会は平行状態で進まなかった。結局、ミストをオーブ軍に入隊させると言う妥協案が通された。
「へー、オーブではどう過ごしてたんだ?」
「オーブでですか?バルトフェルドさんのご厚意でバルトフェルドさんの家でお世話になってましたね。あとは、大戦の慰霊碑に花を持って行ったり、バイクショップを周ったりしてましたね。」
「へー、俺もオーブに留学してた事があったが、バイク屋には行かなかったな。」
「えっ、甲児って、オーブに留学してたのか!?」
「おう、これでも兜は頭良いからな!」
「いや、何でボスが威張ってるんだよ。」
「へっ、俺様のライバルが頭の出来が悪い奴と思われると俺様までバカだと思われるからな。だから、そう言うのはきちんと言ってやったまでよ。」
「ボス〜、見栄を張るのは辞めましょうよ〜。」
「そうッスよ、ボス〜!」
「お前らはどっちの味方だぁ!?」
「まあまあ、落ち着いて下さいよ。」
「そうだぜボス、ライバルとか勝手に決めるなよ。」
俺の話をする雰囲気はすっかり消え、俺は興奮気味にヌケさんとムチャさんに言い寄るボスさんを抑える側に回るハメになった。
俺がオーブに来てから時間が経ち、此処の生活にも慣れて来た頃の話だ。オーブでの生活は想像していた物よりもずっと快適だった。寝る所に困る事も無く、食べ物にも困らないのはとても運が良かった。俺が初めに漂流したべザートでの生活はとてもじゃないが快適とは無縁だった。宛の無い俺を拾ってくれたシェルディア達には感謝しているし、良くしようと頑張っていたが、彼女達だけでは解決出来ない事がべザートには多過ぎた。この地球での第1発見者がバルトフェルドさんだったのが、俺にとって幸運だった。ただ、食に対する熱意は高かった。キラさん達は慣れているのか微笑むだけだが、独特と呼べる拘りが見て取れた。その拘りにアスハ代表がいらした時は言い合いに発展するのが定石だった。アレックスさんは止めるは止めるが少し遅いので、近所に家が無くて良かったと心から思うのだった。
「…こんな所かな、オーブでの生活と言っても外で何かとかはあまりやらなかったから話す事が無いな」
結局話す事になりかいつまんで説明した。
「なーんだ、つまんねーな。海とかねーのか?」
「ボス〜、時期的に行っても全然ですよ」
「そうですよ〜、今入ったら凍えちまいやすよ」
「ボス、海に行っても水着の女性がいるとは限らないぞ」
「なにぃ!?そ、そうなのか、知らなかったぜ」
「それに家の近くは岩場ですからビーチって感じは無いですよ」
「ションボリ」
ガクッと肩を落とすボスをヌケとムチャが励ましていた。
「Gガンナーとコアガンナーを別ユニットとして改造する?」
「ああ、これからも擬態獣やダリウス軍が攻めて来るのに此処の戦力的に、前衛を務めれる機体は多いが後方からの援護が行える機体はガンナー位しかいない。長期戦が多くなると前衛の補給なんかも必要になる。そこで葵所長とサコン先生とで協議して決まったんだ」
「確かに、ゴーダンナーやマジンガーみたいに前で戦えるのが多いっすね」
「逆に狙撃なんかを行う機体は少ないわね」
「ミストの機体はどうです?」
「彼の機体も出来ない事は無いでしょうけど、彼って前に出やすいのよね。前衛的遊撃手みたいな感じね」
「ま、そういう事だから静流と光司は準備しておけよ」
「了解ッス」