擬態獣掃討作戦が終了しダンナーベースの補助員として生活しているがあれから一度も擬態獣が現れる事は無く整備などの手伝いをしていた。作戦終了後一週間位は忙しかったが擬態獣も出ないので段々空いた時間が出来てきていた。なのでから所長から交代制で1日休暇を貰った。各々ショッピングなどをして過ごしたらしい、猿渡さんは何かの打ち合わせだとか甲児君はさやかさんとデートらしくボスさんが悔しそうにしていた。鉄也さんは甲児君に便乗して静流さんを誘ったが断られたそうだ。俺はトレーニングしたり買い出ししたりしていた。たまに遊ぼうぜと甲児君が言い出し、鉄也さん、ボスさん、ムチャさん、ヌケさんが賛同し一緒に街に行ったりしていた。そんなこんなで時は進み擬態獣掃討作戦から1ヶ月が経とうとしていた。
「ミストいるか?至急、私の部屋に来い」
機体の整備をしていると葵所長に放送で呼ばれた。おやっさん達は何かやらかしたのかと言ってくるがそんな覚えもないし何だろうと思いつつ部屋に向かった。
「失礼します!」
「入れ」
部屋には葵所長独りしかおらずますますなぜ呼ばれたのかが解らなくなった。
「ミスト、お前教会の場所を知っているか?」
「教会…ですか?」
「ああ、教会だ」
この街の教会はここからそれほど離れておらず後ろが海なため風は強いがとても綺麗なのが特徴何だと鉄也さんが言っていた。
「えー、はい、知っています」
「そうか、ならお前にお使いを頼みたい。良いか?」
「お使い…ですか………はい、大丈夫です」
「なら、この場所に行ってきてくれ」
「……?ここって、宝石店?」
この住所の宝石店は甲児君がさやかさんとデートで行ったと言っていた所だった。
「そうだ、そこで頼んでいた物を受け取って来るんだ。店の者にダンナーベースの葵と言えばわかってくれるはずだ。受け取ったら海沿いの教会来い、そこで待ち合わせだ」
「えっと、わかりました」
「ちなみに、他の奴らにばれないように来ることだ」
「えっ」
「当たり前だ、ばれてもいいならお前に頼まん」
「えーと、ダンナーベースの人達に知られたくない事何ですか?」
「そう、受け取って貰って構わん」
「えー、では行ってきます」
宝石店に何の要が有るのかわからなかったがひとまず行くことにした。
「あれ?ミスト君どうしたの?」
部屋を出て宝石店に向かおうとしたときさやかさんに話しかけられた。
「えーと、ちょっとしたお使いです。さやかさんこそどうしたんですか?」
「ミスト君、今日静流さん見てないかしら?」
「静流さんですか………見てませんね、どうかしたんですか?」
「買い物に誘おうと思っていたんだけど、見当たらなくて探してたの」
「そういえば、猿渡さんも居ませんね」
「あら、そうなの?」
「はい、甲児君が見当たらないって話してました」
「ふーん、…あ、ミスト君お使いは?」
「あ、そうでした、すみません行ってきます」
「ごめんなさいね、行ってらっしゃい」
ダンナーベースの職員専用駐車場に行き、止めてあるバイクに乗りグリップを回し、ブレーキを緩めつつ走り出した。
「アトリームと運転の仕方が一緒で良かったよな本当に。特別とはいえ2週間で取れるとは思わなかったな」
海岸沿いを走りながらしみじみと思った。
街に着き、宝石店に向かった。
「えーと、ここを右で、ここを左……おっ、ここだ!」
そこには宝石店《luck & Fortitude》と書かれた看板があった。
「いつ見ても変わった店名だよなここ」
甲児君達に聞いた所ここで宝石を買うと何か良いことが起こるらしい、本当かはわからないけど名前的に何か有りそうな予感がする。
「えっと、店にこの封筒を出せば良いんだっけ、良し、入ろう」
扉を開けるとそこには独りの男性がいた。
「いらっしゃいませ、ようこそ《luck & Fortitude》へ」
「あの、えーと、ダンナーベースの葵所長からこれを持って行くように言われたんですけど……」
「ダンナーベースの方ですか?」
「はい」
「かしこまりました。では、封筒を頂戴します」
「はい、これです」
「確かに、いただきました。…では、こちらへ」
男性はそう言い奥に向かった。ついて行くとそこには沢山の宝石やアクセサリーが置いてあった。
「綺麗なの沢山あるな」
「お気に召しましましたか?」
「えっと、良いもの沢山ですね」
「フフッ、ありがとうございます。当店の自慢の品々ですから」
宝石なんてほとんど見たことなかったからなんて言ったら良いかわからなかった。
「では、お待たせいたしました。こちらがご注文の品です。…ご確認を」
「えっ、あ、はい………確認しました」
「では、またの機会をお待ちしております」
「ありがとうございました」
礼をし店を出た。思っていたより長居をしたのか太陽が高い位置にあった。
「物は受け取ったし急ごうか」
所長に連絡をしバイクを走らせ教会に向かった。
教会にはすぐに着いたのだが所長の姿が無く途方にくれたような気持ちでいた。
「…所長どこだ?教会近くだろ?うーん‥‥。」
バイクを置いて近くを歩いて所長を探した。
「居ないなぁ…」
特別時間が決まってる訳でも無いがどこだろう?こんなことなら番号を教えてもらえば良かったな。
「…どこだろう?」
時間が早かったかな?控え室の場所聞いときゃ良かったな‥。
「ん?そんな所で何してるミスト。」
後ろから所長の声が聞こえた。
「あ、所長、居なくて心配しました。」
「すまなかったな、少し用事があった。それにしても早かったなもう少しかかると思っていたが。」
「頼まれてそのまま行ったので早かったのだとおもいます。」
「そうか、じゃあこっちに来てくれ。」
「はい?あっ、ちょっと、所長!」
届けたらそれで終わりだと思っていたので驚いたが所長が教会内に入ってしまったため慌てて追いかけた。
所長に付いて行くと奥まった所の部屋で所長は立ち止まった。
「コンコン、ゴオ準備出来てるか?」
「所長か、ああ出来ている。」
「なら、入るぞ。」
中には猿渡さんがいるようだ。所長が中に入ってしまったが自分はどうすれば良いのだろうか?考えていると所長に中に入るよう言われた。
「失礼します。」
「ん?ミストがなんでいるんだ?」
中に入るとタキシード姿の猿渡さんが椅子に座っていた。
「私がミストにお使いを頼んだからだ。」
「じゃあ、所長これです。」
所長は猿渡さんに俺の事を話していなかったようだ。ベースの人に秘密の事を猿渡さんにまで秘密にする必要あったのだろうか?ここにいるってことは関係者のはずだろうに。
「ん、ご苦労。ゴオ、もう少しで始まるぞ。」
「はい。」
「何が始まるんですか?」
「ん?聞いてないのか?」
「はい。」
「ああ、言ってなかったな。これからゴオと杏奈の結婚式さ。」
結婚式・・・・?・・・・・・・・結婚式・・・・ああ、だから教会か。・・・・・・・・言って欲しかった、な。あんまりな事で呆けていると所長と猿渡さんは準備を整えていた。
「ミスト、付いて来い。式場にいくぞ。」
「えっ、はっはい。でも、服が・・」
「大丈夫だ来い。」
部屋に猿渡さんを残して式場に向かった。向かっている途中に猿渡さんの弟さんの忍君と合流して向かった。
「そういえば、杏奈さんってどういう人何ですか?」
「ん?ああ、そういえば言ってなかったな。私の娘だ。」
「僕と同い年です。」
「・・・・娘?・・・・・・・・ええぇぇぇ!」
「何だ?何を驚いている?」
「うん、わかるような気がする。」
「ーー生命ある限り、あなただけを愛すると誓いますか?」
猿渡さんの結婚式が始まっていた。新郎の猿渡さんと新婦の杏奈さん、体格差はあれどとてもお似合いに感じた。会場は新郎の猿渡さんの誓いを待っていた。しかし、猿渡さんが口を開けようとしたとき、大きな揺れとサイレンが静黙な教会を襲った。
そして、つかの間の休息は終わりを告げ、始まりの時を告げた。。