第2次国府台合戦を契機に下総から戦乱の火が広がる。
11月22日、里見軍の崩壊という結果に終わった合戦だが、その隙をついて晴氏と
より詳しく言えば
「関宿城と古河御所が敵になり、
「ええ。この3つをこっちにするのが最優先ね」
常陸川と渡良瀬川・旧利根川。その2つの水系が一番近付くのがその3つの城の辺りであり、城下の港の間を陸送するルートが昔からあった。
また下総の北西部にあり、この城達を制する事が出来れば、両毛と常陸への侵出拠点に成り得る。
「古河御所は佐竹のものだからね」
「わかってるわよ。渡良瀬川と常陸川が繋がったら分かりやすいのに」
「あら、未来は繋がるらしいわよ?」
「……相良から?」
「ええ、良晴から」
ただ、その中で北条家と佐竹家を合わした軍勢の数に総勢なら並ぶが、例えば壬生城から小金城まで電車で乗り継いで2時間ぐらいかかるなど散らばっている範囲は広く、決戦だよ! 全員集合! と号令がかかっても、集まろうとしたら途中でやられるのがオチである。
しかし、氏康相手に挙兵した藤氏も馬鹿ではないので、次の将軍のように手紙を書きまくり、それを送りまくっていた。
氏康と義重も、一斉攻撃には数が足りないので、各個撃破を選択して、常陸や下野の味方と連動していき敵の城と城の間の砦などを落としていく事にした。敵もちょっかいを出そうとするが、風魔が大動員されているため中々出来ない。
「お前は玉縄城に古河公方家と避難して休んでおけ」
「御意」
その間に、氏康は今まで葛西城にいた足利晴氏・義氏父子をより小田原に近い城へ移させる。
江戸城の遠山康景から直々に礼を言われた後、良晴も休養のためにそれについていく。今で言うゲリラを警戒して世田谷城、枡形山城、茅ヶ崎城、小机城、青木城、
そして、良晴にとっても足利父子にとっても初めてである相模国内に入って、武相国境の近くに建つ北条綱成が城主をしている玉縄城に入る。
「世話になるぞ」
「この北条上総
「うむ」
玉縄城に入った晴氏は、わざわざ下総から一足先に直線に城に戻ってきた北条綱成から譲られた本丸に入り、ここで過ごすための準備を供に任せ、愛娘の梅千代と世田谷城の時から興奮しっぱなしだった良晴、そして綱成を部屋の1つに招待する。
ちなみに、今では『幻庵に拾われた良晴に拾われた子』として知られている白千代は、同僚と一緒に玉縄城を点検しているのでいない。
「綱成、氏康から鎌倉について言われたか?」
「はい。1週間後には全ての準備が終わります」
晴氏は綱成の答えに微笑むが、愛娘の梅千代は首を
「梅千代。私は、先の古河と今回の敗戦の責任をとり隠居して出家する。なので家督と職を継いでくれ」
「……えっ!?」
いきなりの父親からの家督継承に、梅千代が驚く。
史実では葛西城で元服して公方になっているはずの梅千代は、しきりに頷いている綱成を見て、期待する視線を向けながら笑みを浮かべている良晴を見て、そして再び晴氏を見る。
「言ってくれたじゃないか、秋の雲のように死に急がず、ゆったりと雁のように自分の意志で飛ぼうと。自分が成長する姿を見てほしいと」
足利家と佐竹家。実際は良晴や風魔から聞いた氏康と幻庵も知っているが、その2つの家の間で内容を秘する約束を交わした手紙の一部を言われ、更に顔を赤らめた梅千代は少し経ってから頷いた。
その日の晩餐、足利父子入城の祝賀会の直後にその事が発表されると、城内は沸き上がった。そして、晴氏が考えていた事も発表される。
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