相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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ハーメルンでは初めての投稿作です。
原作全巻、梵天丸の外伝、茶会の外伝は読みましたが新装版や他の外伝などは読んでいないのでズレがあるかもしれません。
更新は不定期になります。
→今のところ、毎日投稿出来ています。
→少し止まっています。


0 関東の話
第1話 北条家の話


 時は血を血で洗う時代、場所は尾張・清洲城下のある長屋の縁側。畳の匂いが漂い、澄んだ空気を介して日光が燦々と降り注ぐそこに、1人の少年と2人の少女がいた。

 

「邪魔」

 

 長い黒髪を2つに編み、自分の身長ぐらいの槍の切っ先を真っ直ぐ向ける少女。

 

「犬こそ邪魔」

 

 黒髪は頭巾の中に隠し、しかし赤い瞳が特徴的な、本物のクナイを槍の少女に向ける少女。

 

「なんでここでもっ!」

 

 そして、頭を抱えて縁側にうずくまる少年。

 そんな状況になるまで、時は遡らなければならないと、そのサル顔と言われる少年・相良良晴が現在進行中で陥っている危機を理解する事は出来ないだろう。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 尾張から東海道を東に進み、箱根の山を越えた先。

 箱根の足柄峠と浅間山の近くの碓氷峠より東の一帯は坂東と呼ばれていて、そこでは京都より一足早く戦乱の波が訪れた。

 室町幕府初代将軍・足利尊氏の次男が鎌倉公方として坂東の統治を任されるが、中央の幕府が任命権をもつ関東管領と対立して、遂には関東管領を任命する幕府とも対立してしまい、永享の乱が起きる。

 

 鎌倉公方・足利持氏は幕府が差し向けた討伐軍に敗れ、鎌倉で自害する。その遺児である成氏は鎌倉公方になるが、父親を自害させる原因を作った関東管領を殺害。また全面戦争が勃発する。

 享徳の乱と呼ばれる相模の鎌倉から上総の古河に移った公方と管領の戦争は1454年から81年と応仁の乱を丸々包み込む大乱となる。

 途中、管領の家臣の長尾景春が反乱した事から、両者は和平に転じて大乱は終結して、成氏は幕府から許される。

 

 成氏が幕府から許され浮いた立場になったのが成氏に変わる公方として派遣されたけど、伊豆の堀越で足止めをくらった堀越公方だった。

 派遣された足利義知は、享徳の乱の終結後に子供がいない弟・義政に自分の子供を面会させたりして、邪魔な成氏の討伐を画策する。しかし、夢半ばにして義知は病死してしまい、堀越公方は3男・潤童子が継ぐ事になる。

 嫡男・茶々丸は素行が良くなく廃嫡されていたが、この継承を機にして挙兵。自分を虐待していた潤童子の母親と潤童子を殺害して、事実上の公方となった。

 

 だからといって素行が良くなる訳でもなく筆頭家臣をも殺害してしまう。だが、これを見逃さなかったのが、その茶々丸の弟であり、潤童子の兄であり、京都で出家していた事から、織田に滅ぼされる三好に滅ぼされる細川に注目されてクーデターに擁立され、新しい将軍になった足利義澄だった。

 義澄は、祖父・義政の頃から幕府の家臣としていて、今川家の家督継承問題の解決の中心を担った伊勢盛時に茶々丸の殺害を支持。盛時はそれを実行して、茶々丸を殺し、やがて伊豆を平定する。

 

「そして、関東管領を代々継いでいる上杉家の内紛に乗じて盛時様、継いだ先代の氏綱様、そして当代の氏康様と領土を拡大していったっていう訳」

『へー』

 

 武蔵東部の大きな道。そこを整然と進む長い長い列の中に、尾張で2人の少女に挟まれる事になる相良良晴がいた。

 反旗を翻した古河公方・足利晴氏を討伐するために北条軍の一部として出陣していた北条氏康の叔父・北条幻庵の陣中に突如舞い降りてきた良晴は、着ていた学生服はひんむかれて没収され、江戸城の牢獄に入れられかけるが、仕官する事を条件にして少し自由の身になった。

 で、良晴の監視役として付けられた幻庵が統率する北条家の忍・風魔の1人でまだ見習いらしい姫武将・宮ヶ瀬梅千代の講義を受け、感心していた所である。

 

「小娘と侮っておったが、まさかここまで博識だったとはなあ」

 

 感心しているのは、風魔に捕らえられた武蔵の盗賊の頭領である朝霞永盛という男。身長は良晴と同じ180センチ近くもありながら、俊敏に動き、風魔の頭領である小太郎でようやく捕らえられるまで動いていた義賊である。

 野武士をしっかりと統率して、義賊として動き、農民からは恐れられるどころか人気者だったため、北条家も容易に手出しできず、しかし彼の愛妻と愛娘を捕らえている限り永盛も反乱出来ないという事なので、幻庵に任されたという経緯をもつ。

 その永盛から余ってたので貰った甲冑を身にまといながらも、しっかりと長距離の行軍についていけている良晴はもっと質問していき、梅千代にとっても崇敬する北条家の事をたんまりと自慢できるのでそれに答える。

 幻庵を含む前後の北条家の武将にとっても、外様や新参者に北条の威光を知らさせる良い機会だと見逃し、良晴と梅千代を中心とした会話は古河城の近くについて止まるまで続いた。


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