黒鉄一輝はゆっくりと息を吐く。彼は学園の近くにある一画で、鍛錬を行っていた。近くにステラの姿はない。今日は彼女の学内戦の日だからだ。故に、ここに居る筈もなく、今頃は対戦相手である桃谷と相対している頃だろう。だから一輝は、久しぶり、いや数日ぶりの一人鍛錬を行っていた。
一輝の試合は明日。必ず勝利して、七星剣舞祭の代表にならなければならない。しかし、焦らない。折角、ここまで来れたのだ。去年の妨害を乗り越えて、やっと卒業の切符を手に入れる所まで。だからこそ、ここで焦ってはいけない。それでは自分の力を出せない。戦闘時は常に心を冷静にする。明日の試合に思いを馳せて、何度も振り下ろす『陰鉄』を止めた。
「…………久しぶりに、アレをやろうかな」
すると彼は、『陰鉄』を消した。別に鍛錬を辞める訳ではない。無手になった一輝は構えた。手を手刀に変え、右足を後ろに引く。息を吸い込んだと同時に、一輝は動いた。掌底を打ち上げ、手刀を振り下ろす。他の者が見れば体術だろうと思うだろう。だが、これは体術ではなく、紛れもない剣術である。そう言えば、誰もが首を傾げてしまう。なにを言ってるんだと。
しかし、一輝が繰り出すその一つ一つを剣の達人が眼にすれば、納得する筈だ。これは剣術だと。何処にも彼は剣を持っていない。だが、彼は剣を持っている。剣士は剣がなければ、剣士たり得ないのか? そんな事はない。そもそも、剣がなければ剣士など弱いと語る者は失笑ものだ。剣士は剣を持つから剣士ではない。その在り方が剣士なのだ。彼等には剣がなくとも、剣術を使う事が出来る。
見立てればいい。己の肉体を剣に見立てれば。簡単な事だ。足は鞘、掌は峰、腕は刃、肘は柄。
(────我が全身、
この肉体を剣に見立てる鍛錬法は、二年前にしなくなったから、実に久しぶりだ。手刀を振るい、掌底を繰り出す。それを繰り返して、数十分後に止まった。
「ふぅ。しっかし、久しぶりに無手でやったが、やっぱ剣を持ってた方がいいな」
別に無手でも、なんら違和感はないのだが、何故か気分的に剣を持っていた方がもっと動ける気がするのだ。錯覚だと思うが。タオルで汗を拭いながら、今の時間を一輝は確かめた。もう夕方を回っており、だから暗かったのかと納得する。そして夕方だという事は、ステラの第一試合の戦いが終わっているという事だ。生徒手帳を手に取り、見てみるとステラからのメールがあった。
なにを送ってきたのかは、容易く予想出来る。受信したステラからのメールを見て、予想が的中したと一輝は笑みを浮かべた。第一試合はステラの勝利という予想が。
「…………次は俺の番だな」
一輝は鍛錬で火照った体を、冷ましながら眼を瞑った。考えるのは、自分の対戦相手である桐原静矢だ。気配を消す能力は凄い。だが、ただそれだけ。弱点が存在する事を、一輝は見抜いている。とはいえ、油断する気はない。自分が弱点に気付いているのだ、本人が気付いていない筈がないのだから。
「さて、と。そろそろ帰るか」
そうして、一輝は帰路に立ったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の日。一輝とステラ達三人は試合が行われる訓練場の前に居た。
「まだイッキの試合まで、時間があるわね。如何する? 他の試合を見にいく?」
「いや、俺は控え室に居る事にするよ」
「分かったわ。あたし達は、観客席で見てるから、皆に度肝を抜いてやりなさい‼︎」
「お兄様。頑張って下さいね」
「必要ないでしょうけど、あたしも応援してるわ」
三人の応援の言葉を聞き、一輝は頷いた。そして一輝は、ステラ達と別れた。この試合は模擬戦とは違く実戦形式だ。体力だけを削る幻想形態での戦闘ではなく、紛れもなく血を流す戦闘。一歩間違えれば死ぬ可能性がある為に、試合を行う前に選手達は、本当に参加するのかの了承をしなければならない。そして現在、彼は表示されているモニター画面の前に居た。
『選抜戦は実戦形式の為、命の危険を伴います。承知した上で参加する意思があればしょ…………』
最後まで音声の声を聞かずに、一輝は表示されている承認のボタンを
「…………俺になにか用ですか? 寧音さん」
「やっぱり気付いてたんだねぇ、黒坊」
返事が返ってきて彼は後ろに体を向けた。そこに居たのは、着物を着た小柄な女性だ。扇子を持つ彼女は、パチンッと扇子を閉じると視線を投げた。
「最後まで聞かずに、即決するなんてねぇ。ここで戸惑う子は、案外、多いんだけどなぁ」
「一応、聞きますけど。俺が戸惑うと思いますか?」
「だよなぁ〜。黒坊が戸惑う訳ないよなぁ」
「というより、ここに寧音さんが居るって事は、今年から非常勤講師を務めるってのは、本当みたいですね」
「まぁね〜。人手不足みたいらしいから、手伝いに来てるって訳よ」
カラン、カランと下駄の音を鳴らしながら、飄々と彼女は語る。彼女────
「それにしても見たよぉ。あの模擬戦。黒坊は一体、何処まで強くなるつもりなのかなぁ〜?」
離れていた距離を寧音は一瞬で詰めた。早くはない。ただ近付くのを見逃しただけだ。特殊な呼吸法と、歩法で自らの存在を無意識に滑り込ませ、生命の危機が迫る直前まで、自分の事を認識させないようにする技。『抜き足』と呼ばれるソレを、寧音は使用した。しかし、本来なら無意識に滑り込ませて認識させない筈の歩法は、黒鉄一輝という少年には無意味だった。
何故なら、彼はちゃんと
そんな日常生活でも異常性を見せる一輝は、寧音の質問に対して悩んでいた。何処まで強くなるつもりだと言われれば、すぐに脳内に存在する彼等の領域までと即答するだろう。しかし、そう言っても、目の前の女性は分からないだろう。確かにこの世界には、前世にあった本や似たゲームなどがある。もしも正直に答えれば、二次元の存在に追い付きたくなるという事になる。そうすれば、変な眼で見られるかもしれない。
そこまで考えて、彼は答えた。
「何処までも」
「……………ッ」
嘘は言っていない。彼等に追い付くまで、何処までも強くなるつもりなのだから。一方、尋ねていた寧音は眼を見開いていた。今、目の前の少年は彼女の質問に、たった一言を答えた。その少年の揺るぎない瞳を見て、彼女は汗を掻く。はっきりいって異常だ。最初にこの少年と出会った時に、思った言葉である。余りにも、そう余りにも若すぎる。
十六歳が手に入れるような実力ではない。しかも恐ろしい事に、彼女はその少年の一端しか見ていないのだ。まだこの少年の全力を眼にしていない。
それを異常と呼ばず、なんと呼ぶ。一体、この少年は何処に向かおうとしているのか。一体、なにを見据えているのか。西京 寧音はそれが知りたかった。少年の全力は一体、どれ程なのだろう。彼と出会ってから、ずっと思っていた事である。全力が見たいと。
ふと、寧音の脳裏に、とある女性が浮かぶ。もしかしたら、この少年は『彼女』の領域に居るのではないかと。何故か、ふとそう思っていた。
(まぁ、流石にそれはないだろうけどねぇ)
だが、すぐに彼女はその考えを頭から追い出す。異常な程に強いと分かっていても、流石に『彼女』が相手ではと、『彼女』を知ってるが故に否定した。彼の一端しか見ていないからこそ、彼女は気付けない。黒鉄一輝という怪物の力量に。寧音は無意識の内に、一輝の全力を考えていた。恐ろしく強いだろうが『彼女』よりは下だと。それは仕方のない事だ。これは別に寧音の見る眼がないという訳ではない。
見ているか、見ていないかの違いだ。寧音は『彼女』の力を、圧迫する程の剣気を目の当たりにした事があるのだ。よって、一輝と比べると優先順位が『彼女』に傾いただけの事。あの剣気を超える程の力量を持つ者は居ないと、寧音の体が覚えてしまったのだ。今でも思い出す。あの剣気を浴びた時、全身が情けなく震えたのを。
「如何したんですか? 寧音さん」
「んやぁ、なんでもないよ黒坊」
昔の事を思い出していると、急に黙った寧音に訝しんだ一輝が聞いた。それに、なんでもないと首を振る彼女だ。そして世間話とかをしていると、黒乃が現れて寧音を連れ去って行った。その光景を見た一輝は、気を取り直して控え室に足を向けた。
「良し、そろそろ試合だし、神経を研ぎ澄ますかな」
まだ誰も、真の意味で一輝の力に気付かない。本当の全力を出させる相手が居ないが故に、勘違いし続ける。最早、彼が人の理解の範疇を超えている事など知らずに。寧音が一瞬でも思ってしまった事が、一番真実に近いという事に。まだ誰も知らない。『彼女』と呼ばれる女性。『比翼』のエーデルワイスをも超えているかも知れない事実を。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
控え室で神経を研ぎ澄ますのに夢中になっていた所為か、もう試合の時間になっていた。アナウンスで一輝の名前が呼ばれている。彼は左腰に空の鞘を差して、控え室から出たのだった。
『ご覧下さい。学園最大規模を誇る、ここ大闘技場が満員の観客で埋まっていますっ。ついに始まる第四試合。実況はわたくし、
『よろしくぅ』
一輝と話していた時と違って、何処かダルそうに言う寧音。しかし、それを気にせずに実況は言葉を紡いだ。
『さて、今回のカードは大注目です。片や昨年、一年生にして七星剣舞祭の出場を果たしたCランク騎士。桐原 静矢選手‼︎』
実況の半月の言葉と共に、静矢が現れる。周りの観客、主に女生徒が黄色い声を上げて応援した。続けて半月は言う。
『対するは、Fランクながら、模擬戦であのヴァーミリオン選手に勝った黒鉄一輝選手‼︎』
半月の叫びと共に、静矢の反対方向から一輝が歩いてきた。その表情は、黄色い声援を受けている静矢に対して「なんで、こんな奴が」という感じだ。二人は数メートルの距離で相対する形で、立ち止まった。すると、静矢が嘲笑を込めた言葉を告げた。
「本当に出て来るとはね。逃げても良かったんだぜ『
「逃げる訳ないだろ。待ちに待った、機会なんだぜ」
静矢の挑発に、彼は鼻で笑って答える。すると、少し気に入らなそうにして
「ふん。狩りの時間だ。『
「…………来い『陰鉄』」
『朧月』を展開した後の笑顔に、イラッとしながら一輝も自分の愛刀を顕現させた。抜き身の刀が、右手に現れる。二人が
一輝は青眼に構えて、鋭い眼光を向ける。それに戯けたように静矢が口を開いた。
「おぉ、怖い眼だ。嘗てのクラスメイトに向けるよ…………」
「御託は良いから、早く展開しろよ。お前の
しかし、言葉を遮り一輝が言い放つ。本来、勝ちたければ、彼の『狩人』と言わしめる
それに、そっちの方が面白いだろう。
「黒鉄君。如何やら、すぐに死にたいようだね」
途中で言葉を遮られた事に、苛立ちながら静矢は告げて、自身の
内心で口笛を吹いて感嘆する一輝だ。確かにこれを凄い、と。しかし、これには弱点が存在する。すると、一輝の背後から矢が襲った。だが、矢は命中する事なく一輝の刀により斬られた。次々に放たれる矢は、しかし、そのどれもが当たる事はなく斬られていく。
『なんという事でしょう‼︎ 黒鉄選手、相手の姿が見えているのか‼︎』
『きりやんの『
半月の疑問に解説役の寧音が答えた。彼女の言った通りだ。今でも一輝には、静矢の気配が分からない。しかし、放たれる矢が透明ではない故に、出処を探れば何処に居るかも理解出来た。すると、放たれる矢が止まった。それに訝しめば、消えていた筈の静矢が現れて呆れた顔をしている。
「これは驚いた。まさか、黒鉄君は僕に勝つつもりなのかなぁ」
言外に無理だと発言する静矢である。対して一輝は、視線を向けて告げた。
「勝つ気がなきゃ、ここに居ねぇよ」
「はははは、本当に不愉快だよ。そもそも、君のようなFランク騎士が、七星剣舞祭の代表になれると思っているのかい」
あり得ない、あり得ないと否定の言葉を一輝に浴びせた。だが、彼は全く揺るがずに静矢を見据えている。それが気に入らないのか、静矢はまるで今思い出したように、大声を上げる。
「あぁ、そうか‼︎ 君は理事長に卒業の条件を提示されていたねぇ」
その言葉に会場中がざわついた。観客達が食いついた事に、笑みを浮かべて静矢は言い放った。
「全く理事長先生も酷な事をする。七星剣舞祭で優勝しなければ、卒業出来ないなんてさぁっ‼︎」
その衝撃的な発言に、最初は呆然としていた生徒達だったが、次には嘲笑の声を上げた。耳に聞こえるのは、無理だと、不可能だという完全否定の言葉だ。それを聞いて、一輝は笑みを浮かべた。随分と好き勝手に言ってくれる。
(最初から優勝出来ないと、諦めてる奴等が随分と偉そうだな)
自分に対して嘲笑を見せる彼等に視線を向けた。あの生徒達は、全員が心の中で優勝を諦めた者達だ。その価値観を他人に押し付けている。優勝する者は、才能がある天才だけだ。だから、凡人である自分達では不可能だと。そして同じく
「さぁて、そろそろ再開しようか。見せてあげるよ。僕の力を」
この元凶を作った静矢は、再度姿を消した。それを視界に収めながら、今だに自分に嘲笑を向ける生徒達に胸中で呟いた。
(なら、見せてやるよ。この世界が能力値だけじゃないって事を)
「あぁ、そうだ。次に僕が射る所を教えて上げようか」
すると、消えた静矢がそんな事を言ってきた。まるで余裕な声音で、ハンデだとばかりに静矢は言った。
「最初は右太ももだ」
そして見えないなにかが彼の右太ももに、当たる事はなかった。右足を引く事によって、見えないなにかは、通り過ぎて横にある木に当たった。
「……………は?」
外れた事に驚愕する静矢に、一輝はため息を吐きながら言った。
「お前、なに考えてるんだ? 普通、当てる場所を言ったら簡単に避けられるだろ? それにしても、やっぱり矢も透明に出来たんだな」
至極当然の言葉だった。例え、矢が透明に出来たとしても当てる場所を教えられれば、避ける事など容易い。
「く、くそっ‼︎」
そして静矢は狙う場所を言わずに、何度も矢を射出させた。これならば、直撃だ。静矢が狙ったのは、足、腕、頭の三つ。眼に出来ないこれを避ける事は不可能。静矢は笑みを浮かべた。しかし、放たれた三つの矢は一輝が首を傾げ、刀で打ち落とし、足で踏み潰されて不発に終わる。
「なっ…………!?」
今度こそ絶句する。なにも言わなかった筈だ。なのに、何故、全てを防げたのか。彼の頭に疑問符が浮かんだ。
「確かに、矢も透明化させたら避けるのは難しい。だけど、弱点をつけば、避ける事は簡単だ」
「弱点だとっ!? ふざけるなっ。僕の弱点は、もうない筈だ」
「いや、あるんだよ」
否定する静矢に、一輝はあると断言した。そして彼は答える。その弱点を。
「空気の流れだ」
「空気の流れ…………ッ!? ま、まさかお前ッ」
一輝の告げた言葉に、静矢が叫ぶ。彼も気付いたのだ。自分の弱点に。いや、これは弱点と呼ぶに値しない。
「矢が通る些細な空気の流れを感じ取って、避けたつもりかぁっ!?」
つまりそういう事だ。矢が風を切って出来た、ほんの僅かな空気の流れ。それを彼の五感が逃さずに感じ取り、迫って来た矢を避けて見せた。
「そしてこの空気の流れを読み切れば、桐原お前の居場所が分かる」
「…………ひっ!?」
一輝は五感を研ぎ澄まし、感じ取る。人が少し動いた際に生じる、空気の流れを。そしてそちらに視線を向けた。と、同時に静矢は悲鳴を上げた。眼が合った。一輝は見えていないだろうが、静矢と眼が合ったのだ。蛇に睨まれた蛙の如く、一瞬、静矢が硬直する。しかし、すぐにこちらに視線を向ける一輝に新たな
「く、来るなぁ!? 『
頭上に『朧月』を向けて、大量の矢を撃ち放ち雨の如く降らした。迫り来る矢の嵐。だが、一輝は関係ないとばかりに歩き始めた。百を超える矢が降り注ぐ中、まるで散歩をするかのように、ゆっくりと歩いていく。当たりそうな矢を時には、斬り落とし、いなし、躱す。
『凄い凄い凄いッ!? 黒鉄選手。まるで物ともしないっ』
一輝が行っている行為に、叫ぶ実況。対して静矢にとって、それは恐怖でしかない。
「来るな来るな来るな来るなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
着々と近付いてくる一輝に、続けて矢を放つが無意味と化す。見えない筈なのに、全てが打ち落とされる。彼は悲鳴を上げながら、木々を上手く使い少しでも離れようと距離を稼いだ。それに一輝は立ち止まる。そして周りに生える木々を一瞥してから、呟いた。
「…………この木々、邪魔だな。如何するか………お、そうだ」
呟いてから、なにか良い事を思い付いたのか、ポンッと手を叩く。次の瞬間。一輝は左腰に差す鞘に『陰鉄』を納刀した。突然の納刀。それに観客達が首を傾げる。
「伐採の時間だ」
右手を柄に添えながら、全身を捻る。いっぱいまで捻りあげると、彼は跳躍した。次の瞬間。自身の魔力を『陰鉄』に流して、鯉口を切り抜刀した。捻った体を使い、視認出来ない程の斬撃を体を回転させて放つ。瞬間────辺りにあった全ての木が斬り裂かれた。
────『次元斬・旋』。
空間を、いや文字通り次元を斬る斬撃が一輝の周囲に放たれて、後に残ったのは半ばから斬られた木だけだった。
「これで隠れる場所がなくなったな桐原」
「あ、あ………ぁあ………」
切っ先を向けられ、静矢は全身に恐怖が奔る。自身のフィールドが斬り裂かれた所為か、『
「ひぃっ!? ぼ、僕の負けだぁ!?」
静矢がそう叫んだ瞬間。振り下ろさせた『陰鉄』が、真横を通り過ぎてリングを轟音と共に斬り裂いた。当たってはいないが、余りにも恐ろしかったのか桐原 静矢は気絶する。それを一瞥してから、背中を見せて一輝は己の愛刀を消す。しかし、何秒待っても実況の声が聞こえない事に疑問を覚えた。周りを見てみると、誰もが唖然とした表情を浮かべている。
彼が見せた圧倒的な剣技に、誰もがなんと言ったら良いか分からないのだ。すると、ここで我に戻った半月が大声を上げる。
『────勝者っ。黒鉄一輝』
こうして第四試合は、落第騎士の勝利で終わった。
剣技紹介。
・次元斬
登場作品:DMC
使用人物:バージル
説明:刀身に魔力を込めて、眼にも止まらない速度で抜刀する事により、次元を斬る斬撃を放つ。黒鉄一輝が放った『次元斬・旋』は、体ごと回転させて放つ事によって周囲の次元を斬る事が可能となる。