やはり俺達のギャルゲー攻略はまちがっている。   作:ジョニー03

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初投稿です。

今の所話は適当にしか決めていないので、皆さんの感想次第でこれからの話が決まるかも……?


プロローグ

「遊戯部が作ったギャルゲーをテストプレイして欲しい?」

「は、はい……」

「どうか奉仕部の皆さんに、お願いできればと……」

 

それは正月も終わり、三学期が始まってすぐの頃。

突然奉仕部に遊戯部が訪ねてきたかと思えば、PC用のゲームディスクを俺達に渡し、先程言ったような依頼をしてきたのだ。

 

なんでも遊戯部の二人は二学期の終わり頃に二人揃ってギャルゲーにハマり、研究していく内に自分達で作ってみたくなり……。という流れでギャルゲーを作成したそうだ。

 

そしてできたは良いものの遊戯部自身でやるだけでは意味がないので、誰かにやって欲しい。

しかし、知り合い達に発表するのは恥ずかしいという事で……。

 

「奉仕部の方々にプレイをして欲しいんです。ただパパッとやって、感想を言って貰えれば……」

 

相模が頭を下げながら俺に向かってお願いをしてくる。

たかが一歳年上なだけの先輩に対して丁寧すぎる態度とも思うが、思えば俺達奉仕部は二人が女で一人が男。

当然女子である雪ノ下や由比ヶ浜にギャルゲーをやってくれなど頼むわけにもいかない。なので、この依頼を受けるか受けないかは実質俺に一任されているのだ。

それを思えば、俺に対する態度もまあ納得できる。

 

「しかし、ギャルゲーか……」

 

勿論俺はギャルゲーくらいならやった事がある。ラブプラスはハマり過ぎて母ちゃんに友達でも来たのかと誤解された程だ。

同人作品であろうとも、偏見なくプレイする気位は持っている。

 

「……しかし、部活として受けるのはなぁ……」

 

当然、奉仕部の活動として受けるのならば、雪ノ下と由比ヶ浜も無関係という訳にはいかないだろう。

何?俺は女子二人に向かってこのギャルゲーは面白いとか駄目とか語らないといけないの?それなんて拷問?

 

……しかし、この必死な様子の遊戯部連中の本気の願いを無下にするのも躊躇われる。

 

悩んだ末、俺の出した決断は……。

 

 

× × ×

 

 

「で、結局そのギャルゲー受け取ったんですかー?」

「ああそうだよ。受け取っちまったんだよ。どうしたもんかなぁ……これ」

 

遊戯部が去ってから数分。

いつものように部室に乗り込んできた一色に事情を話すと、ぷーくすくすと馬鹿にしたような表情で爆笑された。

 

「ていうかー、先輩ってギャルゲーってやったことあるんですかー?あったらマジでキモイんですけどー」

「は、ははははははは!?!?ままままさかギャルゲーなんてそそそそんなもんややややや」

「あーもう良いです大体分かりました」

 

いきなりの質問に動揺してしまったせいか、アッサリと一色に過去を悟られてしまう。

なんだよその蔑んだ目は。悪いか、男がギャルゲーやってて。

 

「……で、二次谷君はまさかそのギャルゲーとやらを部室でやる気ではないでしょうね?インクでできた模様が男に媚びる映像を見せられながら読書をする趣味は私にはないのだけれど」

 

雪ノ下が本を閉じこちらに話しかけてくる。

その顔は呆れかえっているように見えた。こいつもギャルゲー否定派か。ていうかゲームのヒロインをインクの模様とか言うんじゃねえよ。

 

「安心しろ、俺だって他人がいるところでギャルゲーをやる趣味は無い。こいつは一旦家に持ち帰ってやる」

「そ、そうだね!それが良いかも!……あたしもヒッキーがそういうのしてるの、見たくないし……すっごいキモそうだし……」

 

由比ヶ浜がフォローのようでフォローじゃない……いやこれ完全にフォローじゃねえわ。途中からただの悪口だわ。どうやらこの部屋に俺の味方はいないらしい。

って、ぼっちマスターであるこの俺にはどこにいってもいないんでした!テヘッ☆

 

「……いや、小町。小町がいるな。うん、俺には小町という味方がいる。妹さえいれば良い!」

「いきなり何を言いだすのかしらこの生ゴミは……」

 

このギャルゲー妹ヒロインいるのかなぁ。

 

 

× × ×

 

 

「……あれ?先輩、何か落としましたよ?」

 

俺がギャルゲーをやる事を理由に早く帰ろうとした時、貰ったゲームの箱から小さな紙が滑り落ちた。

 

どうやらゲームの説明書であるらしい。

 

「一応私達もこういうの読んでおいた方が良いんじゃないですかー?」

「そうかも知れないけど、一色さん。何故あなたが決めるのかしら……」

「ま、まあまあゆきのん……」

 

一色が説明書を広げ、その左右から雪ノ下と由比ヶ浜が覗き込む。

そして一色が最初に書いてあるらしいゲームの設定を読み上げた。

 

「『あなたは学園のなんでも屋《お助け部》の唯一の男子部員!無理矢理部活に入れられたあなただけど、そこにはツンツン美少女部長とほんわかアホの子おっぱいがいた!《お助け部》として様々な依頼を解決していくあなた!その中で部員達と仲良くなったり、学園の生徒会長と仲良くなったり、まさかまさかの顧問とも……!?ヒロインのルートもエンドも多種多様!!君だけの青春を駆け抜けろ!!』……だ、そうです、けど……」

 

……。

 

…………。

 

おい、おいおいなんだこの設定。どっかで聞いた事ありすぎるぞ。ちゃんとわたりんに許可取ったの?

 

「へ、へえ〜……。そうなんだ……。じゃあ、俺は帰るから……」

「待ちなさい」

「ちょっと待ってヒッキー」

「先輩ちょっとストップです」

 

俺が部室から出ようとすると、雪ノ下と由比ヶ浜の鋭い声が聞こえ、一色が素早く俺のブレザーの袖を掴む。

 

「え、なに、俺早く帰って依頼こなさなきゃなんないんだけど……」

「ここでそのゲームをやる事を許すわ」

「え、は?なんで急にそんな事……」

「なんでも良いから!ほら、やるよヒッキー!こっち座って!」

「わ、おい、ひっぱんなって……!」

 

由比ヶ浜と一色に引っ張られるままに椅子に座らされ、いつの間にかディスクを奪っていた雪ノ下がPCへゲームを挿入していく。

 

パソコンの正面に座る俺。

そのすぐ右隣に雪ノ下。近い。

そして左隣には由比ヶ浜が。お前も近い。

そして後ろから覆いかぶさるように一色が……。ってお前が一番近い近い近い!なんか背中に当たってるし!

 

……由比ヶ浜が後ろじゃなくて良かった……。

 

「先輩、今なんか失礼なこと考えませんでしたか?」

「奇遇ね。私も今妙な悪意を感じたわ」

「き、気のせいだろ……」

 

なんだよ、お前ら揃ってエスパーなの?えすのんとえすはすなのん?

やだ、Sのんってなんか卑猥……!まるで雪ノ下がドSみたい……!

って、考えるまでもなく既にドSでしたね。

 

そんな事を考えている内にゲームのダウンロードが終わり、ウィンドウが開く。

 

タイトルは『やはり俺の青春ラブコメはまちがえている』

なんだかどっかで聞いたようなタイトルだなーと思いながらもマウスをクリックし、タイトル画面へと移動する。

 

タイトル画面の背景には、黒髪ロングで貧乳のヒロインと茶髪お団子の巨乳のヒロインが抱き合ってこちらに手を伸ばすような構図でタイトルを挟んでおり、一瞬でこの二人がダブルのメインヒロインである事を察せられる。

 

しかし、こいつらは余りにも……。

 

「こ、これ、あたし達だよね……」

「あの遊戯部とやら、少し話し合いが必要のようね……」

「ていうか、この画面に私いないんですけどー」

 

そうなのだ。このヒロイン達、明らかに雪ノ下と由比ヶ浜に似ている。

そして説明書の名前欄にも、『雪ノ上 雪菜』と『由比ヶ峰 唯』と書いてある。最早明白である。

 

「なあ、これ本当にお前らの前でやんないと駄目か?流石にモデルの前でこのゲームをやるってのは気が引けるんだが……」

「そ、そうね。流石に私もここまでのパクリだとは思わなかったし……私としても目の前でやられるのはちょっと……」

「うん、そうだね。なんか恥ずかしいし……」

 

どうやら二人とも納得してくれたようである。

一色だけうんうんと何かについて悩んでいたが、それを無視して俺はPCを片付けにかかる。この空間にもう一秒でもいたくないのだ。

 

そしてゲームディスクもしまい、さあ帰ろうとした所で、ずっと押し黙っていた一色が口を開いた。

 

「……先輩ってそのゲーム家でやるんですよね?」

「お、おう。そうだが?」

 

一色の口がニヤァと割けるように広がる。その笑顔にはなんだか不吉な予感を受け取らずにはいられなかった。

 

そして一色がすうっと息を吸うと、一気に言い切るように鋭く『その言葉』を言った。

 

「じゃあ先輩は誰から攻略するか決めてるんですかぁ?」

 

と。

 

「!?」

「「!?!?」」

 

「な、お前、何をいきなり……!」

「えー、だってー。感想を言うには当然いろんなヒロインを攻略しなきゃじゃないですかー。……で、聞いたことがあるんですけどぉ、男の子って最初に攻略する子が一番気に入った子らしいんですよねー?だったらぁ、このゲームのヒロイン中で、誰から攻略するつもりなのか聞かせて貰えればなー、と☆」

 

一色が指を頬に当てながら話してくる。

その小さな口から漏れる言葉は俺の寿命を削り取る呪詛の様にも聞こえた。

ていうか今現実的に俺の寿命を削っていた。

 

「い、いや、そんなまだそういうの決めてないし……」

「えー?でもでも、パッと見でこの子良いなーとか思うじゃないですかー。このパッケージとかに写ってる子の中だと、先輩は誰が気に入ったんですかー?」

 

一色が指差したパッケージの裏側には、メインヒロインやサブヒロインの軽い顔やある程度のCGのサンプルが貼り付けてある。

 

その中には雪ノ下っぽい奴も、由比ヶ浜っぽい奴も、何故だか一色っぽい奴や平塚先生っぽい奴までまさによりどりみどり。

 

「……ね、ねえヒッキー。ヒッキーは……どの子が良いと思うの?この、雪ノ上っていう黒髪の子?そ、それとも……この茶髪のお団子の子?」

 

由比ヶ浜がモジモジと手を組みながら俺に質問してくる。その顔は耳まで真っ赤になっていた。

 

「いや、それは……」

 

答えに窮しどもっていると、雪ノ下も追撃を加えてくる。

 

「わ、私としてもまあ、参考程度に聞いておこうかしら。でも、勘違いしないでほしいわ。私はあくまで部長として部員のゲームのプレイ方法を聞いているだけなのだから。もしかしたら、攻略するヒロインの順番でシナリオの受け取り方がまるで違うゲームかも知れないし。そういう点で気になったら聞いているだけよ。……どの子が、好みなの?」

「え、えぇ……?」

 

なんだこの状態は。どうしてこうなった。

 

ええいこんな面倒臭い部屋にいつまでもいてたまるか!俺は家に帰られせてもらう!!

 

「では諸君!サラダバー!!」

「させないわ!」

「ちょっと待って!」

「止まってください!」

 

俺が部室から素早く脱出し廊下を走り抜けようとすると、いつの間にやら雪ノ下達が回り込んで横に並んで道を塞いできた。

畜生、なんで今日に限ってお前らこんな一致団結してんだ。

 

そのまま雪ノ下達は俺にズリズリと少しずつ距離を詰めていく。

後ずさるように追い詰められた俺は、結局また部室のPCの前に座らされていた。どうしてこうなるのん?

 

またしても右に雪ノ下、左に由比ヶ浜、後ろに一色のフォーメーションが組まれる。最早どこにも逃げられない。

 

絶望する俺の事も御構い無しに、ゲームが起動した。

 

物語が始まり、プロローグが語られていく。

 

強制的にお助け部に入らされた主人公。

そこにいた美少女部長と悪口を言い合いながらも少しずつ絆を深め、新たに加わったアホの子巨乳も混ざってお助け部の活動は進んでいく。

 

そして一通りキャラ紹介も終わった頃だろうか。このゲーム最初の選択肢が表示される。

 

『八幡!今日の放課後は暇?僕、八幡とテニスしたいんだ!』

 

1、今日は雪ノ上と用事がある

2、由比ヶ峰に勉強を見てくれと言われている

3、家に用事がある

4、生徒会に呼ばれている

5、わかった。やろう!

 

 

「……さあ、比企谷君……」

「ヒッキー……」

「先輩……」

 

「「「どれを選ぶの(んですか)!?」」」

 

 

……ああ、やはり俺達のギャルゲー攻略は、前途多難である。

 


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