UAが7000を超えていました。
皆さまありがとうございます。
しかし、実は私、つい最近まで
UAという制度がどういったもの理解しておりませんでした。(笑)
要塞都市オルタナの北西約4キロ。徒歩にして1時間と少々といったところにあるのがダムロー旧市街である。ここ旧市街にある建物は半分以上、いや6、7割は崩壊しており、現在、人は誰も住んでいない。見渡せばいたるところに雑草が生繁、壊れた剣や槍などが地面に刺さったりとしていて、中には骸骨まであったりするしまつだ。こんな廃墟といっていい場所にいるのは、さも当たり前とでも言わんばかりに数多くの鴉がひっきりなしに鳴いている。昔はこのダムローという場所はアラバキア王国第二の都市で、オルタナよりもはるかに巨大な街だったというが、今ではもう見る影もない状態となっており、現在のダムローはゴブリンの根城となっている。しかし、ダムロー南西部に位置するここ旧市街にはそう多くのゴブリンが生息しているわけではないらしい。だからといってまったくいないというわけではなく、
「-----一匹だけ、かな?」
体重をほんの少し掛けたら壊れてしまうんじゃないかと思える堀に隠れて、廃墟の中を伺った。一匹のゴブリンが床に腰を下ろして壁に背をあずけた状態でいた。顔は俯むいていて、目もつぶっている。まだ午前中だというのに転寝でもしているのか。観察を続けると頭が一度かくんと揺れるのが見て取れた。どうやら本当に寝ているらしい。俺は音を立てないように注意しつつ急いで皆が待機してる場所まで戻った。
「ゴブ一匹。寝てるよ。」
「よし、やろう。」
マナトが表情を引き締めて頷いた。それに対して皆も同意するように頷く。けど今朝のことが少々今日の戦闘を不安にさせる。実際、ここに着くまでシホルとユメは終始無言で、あのランタでさえ大人しいという奇跡に近いことが起きていたのだ。ちらっと横目でノゾムを見ると、口に手を当てて何か考えているような仕草だった。何を考えているのか少し気になったけどマナトが作戦を説明し始めたからそっちに意識を向けた。
「まず、モグゾーとノゾムは動くとどうしても音が出ちゃうから、今回は前衛じゃなくて少し後ろで待機しておいて。それで、メインは俺とランタとハルヒロの3人。起きる前に一気に息の根を止めるつもりだけど、もし失敗したらユメは弓で、シホルは魔法で攻撃よろしく。そしてその二人が攻撃してる間にモグゾーとノゾムが俺たちと入れ替わりで前に出て叩く。敵を逃がさないように敵を全員で囲むことを忘れないでね。」
マナトの作戦に皆また頷き返した。早速、マナトを先頭に、俺、ランタが出発し、その後ろにノゾム、モグゾーが続いた。さっきの廃墟はあっという間についた、が、そこからが意外と時間がかかった。この建物のいたるところに瓦礫があるため、音を出さずにゴブリンの寝ている場所までいくのが至難の技だった。これを見越してこの家で寝ているのだとしたらゴブリンって実は頭良いんじゃないのか?などと考えながら俺は一歩一歩慎重にマナトの後ろを着いていく。
そして何とかゴブリンまであと数歩で到達するといった場所まで着いた。後ろを歩いていたノゾムとモグゾーは俺たちより5mほど離れた場所で待機している。マナトが俺とランタの目を順に見た。たぶんマナトは俺がやるから着いてきてくてくれ、と目で伝えたいのだと感じた。けれど後ろにいたランタが自分を指さしてみせる。俺はマナトが一番手のほうがいいと思ったけどマナトが右手を軽く降った。いけ、という合図だ。
ランタはふ~うと息を吐いてからゴブリンに近づき、ロングソードを振りかぶらずに胸のあたりに構えて、そのままゴブリンの胸に突き刺した。
ゴブリンが「っぐ」と呻き声を上げながら目を開く。今、襲われていることを認識したのだろう。わめきながらランタの顔をめがけて手を伸ばしてきた。その手を避けようと逃げ腰になったランタを助けるためにマナトがショートスタッフをゴブリンの頭を殴る、殴る、突く、突く。
「くっそ・・・!」
ランタも負けずとロングソードを強く押し込み、ねじ込む。俺は何もできずにただ2人を見ているしかなかった。今近づいたらかえって二人の邪魔をしそうだ。ゴブリンは依然として身悶え、叫び声をまき散らしていたが、次第にその声は弱まっていった。寝込みを襲うってってこんな簡単なんだ。そしてゴブリンは動かなくなった。
「・・・やったか?」
ランタは肩で息をしながらゴブリンを倒したか顔を近づけて確認する。一瞬、前みたいにまた動き出すんじゃないかと思ったけど、そんなことはなかった。マナトが目をつぶって六芒を示す仕種をしたのを見て、あぁ終わったんだと実感した。
倒し終わるとモグゾーとノゾム、ユメ、シホルが中に入ってきた。今回みたいなノゾムが全く戦闘に参加せず敵を倒せたのはちょっとした自信になる。大抵はノゾムが一人で敵を倒してくれるので俺たちだけで敵を倒すということがほとんどないのだ。恐らくノゾムが俺たちと一緒にいてくれるのはシホルがいるからだろうからシホルには感謝しとかないといけない。もしノゾムがいなかったら毎日の生活費さえ稼げていないだろう。
「爪か何か剥いどかねーとな。
ランタも少し嬉しそうに言いながらゴブリンの爪を剥いでいるが、少し絵面的には良くない。いや、暗黒騎士としてはこれが正常なのだろうか?
マナトは丁寧な手つきでゴブリンが首から下げていた袋を外した。開けて中身を近くにあった壊れかけの机に出し、俺は少し驚いた。
「・・・銀貨だ!」
ゴブリンは人間の硬貨がホントに好きなんだな。初めて倒した泥ゴブリンも首から銀貨を下げてたし、他にもノゾムが一人で倒した泥ゴブリンも銀貨を1、2枚持っていた。けれど、泥ゴブリンとは違って、穴があいてないそのままの銀貨4枚がである。4シルバーだ。それに、硝子?だろうか、透明に透き通った石が一つ入っていた。
「おぉぉ」
ユメは目を丸くしていた。
「すごいなぁ~。最高記録やん。大量やな~」
「・・・4シルバー」
シホルも目をぱちぱちさせながら見ている。
「うん、狩場をこっちに変えたのは正解だったかもな」
ノゾムは相変わらず冷静に判断する。まぁノゾムだったらこれくらい簡単に稼ぎそうだから驚くほどでもないことだろう。
「まだだ」
マナトが空を仰ぎながら呟く。軽く頭を横に振りながら今度はちゃんとはっきりした声で言った。
「これを継続しないと。今回は簡単だったけど毎回こんな風にはいかない。さぁ気を抜かないで次の獲物を探そう。」
「おまえなぁ。」
ランタがマナトの背中を叩く。
「硬いこと言うなよ。せっかく大勝利したんだぜ?オレ様のお陰様で!こういうときくらい歓喜したっていいただろが。」
マナトは一瞬、眉をひそめかけたがすぐに笑顔になった。
「そうだね。確かに喜ぶのは構わないと思うよ。ランタは上手くやってくれたしね」
「だろ?そうだろ?オレってすげぇーだろ?特によ、ゴブに剣ぶっ刺したまま、非常に酷薄な笑みをたたえるオレなんて、そうとう暗黒騎士だったろ?」
俺は「いや」と手を左右に振った。
「普通に必死だっただろランタ。」
ランタは何だと~!と言ってくる。俺たちのやりとりが面白かったのか皆が笑った。今朝の険悪だった雰囲気もこれなら大丈夫かなと思えた。
そして俺たちはこの戦闘を皮切りに夕方までに合計6匹のゴブリンを仕留め5つのゴブリン袋を手に入れた。そのうち2つの袋はノゾムとシホルの二人で仕留め俺たちは何もせず手に入れたものだった。
袋には銀貨を合計10枚、透明な石、黒い石と赤い石、何かの動物の骨と牙をいくつか、あとは鍵のようなものなや、小さな歯車といったものが入っていた。オルタナに戻ってきて買取商でそれらを売り払うと、銀貨以外は合計2シルバーと25カパーになった。これを7人で分けるので一人頭1シルバーと75カパーとなる。宿屋は一日に10カパー(二部屋借りてるので合計は20カパー)かかり、食費なども色々差し引いて、俺の現在の総資産は5シルバー弱となっていた。ホント、ノゾムがいなかったらどうなっていたのか想像したくない。
俺はもう下着が薄くなっていたので古着屋に下着を買いに行った。ホントは新品を買いたかったのだが、新品は1シルバー以上するので諦めた。いや、もしこの5シルバーが俺が稼いで得たものなら買っていたかもしれないけど、ほとんど稼いでくれているのはノゾムで、しかもそれを皆に平等に折半してくれているのだから、俺が無駄遣いするわけにはいかない。はっきり言って一生ノゾムには脚を向けては寝れない。
宿に戻り、今日はみんなで一緒に夕食を取った。ここにきて一番の稼ぎがあったからか今朝の雰囲気も一先ず通常状態までには戻っていた。夕食はモグゾーが作ってくれたんだけどこれが本当に上手い。モグゾーはとても手先が器用で趣味で木を彫って彫刻を作ったりするほどだ。そんなモグゾーが作ってくれた料理を皆で楽しく取るのは戦闘で疲れた体を癒してくれる時間の一つだ。食べ終えた食器を今日は俺とノゾムの二人で片付けた。何か話そうと思うんだけどどうしてもノゾムと一対一だとなぜか言葉が出てこなくなってしまう。
「ハルヒロは何か買ってきてたみたいだけど何を買ってきたんだ?」
そのためノゾムから話しかけてきてくれたのは有り難かった。
「えっと、下着がそろそろ限界っぽくてさ。古着屋で買ってきたんだ。」
「古着屋?新品の買ってきたらよかったじゃないか」
「そうなんだけさどさ、新品って1シルバーするからさ。贅沢はできないかな~って」
「あ~確かにな。ここって色々新品のものが高いんだよな。」
「だよね。」
洗い物を終えた俺たちは部屋に戻ってから風呂に入りに行った。もうマナトたちは先に風呂に入っていて、俺たちが風呂場に着いたときに3人は風呂から上がった所だった。立ち昇る湯気が空いている窓に向かって上っている。あそこから覗こうとしたんだな~。窓の外に誰もいないか、俺は窓から顔を出した。当たり前だが誰もいるわけもなく、冷たい風が顔冷やす。少しだけそこで顔を冷やしてから、湯船の中に浸かった。
「ノゾムってさ、お金を皆で折半することに文句はなかったの?」
俺は二人きりだから普段皆の前で聞くことができないことを聞いてみた。ノゾムは頭を洗ってる最中だったけど、そのまま答えてくれた。
「う~ん、そうだな~特に何もないかな。多分ハルヒロが言いたいのは俺だけで倒した敵のことを言いたいんだろうけど、俺はパーティの一員なわけだからな。もし俺個人が利益を独占したら俺は強くなるかもしれないけど、パーティが強くならないだろ?」
「ノゾムのそういう風に考えられるところ凄いよね。」
「そうか?ランタが時々言うけど俺って何か冷たそうなイメージでもあるのか?」
「え、いや、そんなことないよ。」
ちょっと何考えてるのかわからなくて怖いイメージはあるけど、という言葉は飲み込んだ。
「ただ、ノゾムがいなかったら正直俺たち大変だったろうなって思ってさ。」
「そんなことないと思うぞ?マナトがしっかりしてるし、モグゾーはいい前衛になるだろうな。ユメも感は悪くないし、ランタも何だかんだやるだろ?シホルはまぁこれからってところもあるけど。」
「う~ん、そう言われるとそうかもしれないけどさ。やっぱノゾムの存在は大きいよ。」
「そうか、けど俺にばっかり頼られても困るぞ?俺の身体一つしかないんだからな。」
「わかってるよ。俺ももっとがんばる。」
「おう、その意気、っぺ!うえ、口に泡入った。」
「ははは」
「笑うなよ。」
その日の風呂で初めてノゾムとの距離が少し縮まった気がした。ノゾムは頭をお湯で流し、風呂に入ってくる。俺は入れ替わりで湯船から出て、体を拭き先に風呂から出た。風呂から出たその足で俺は洗濯場に行った。今日買った下着も持ってきていたのだ。洗っているとよくこの下着を履き続けていたなと自分を褒めてやりたくなるほど擦り切れている。洗い終え洗い場を出ようとしたら出入り口に人がいた。シホルだった。
なんて声かけたらいいのかわからず、「あ、ど、どうぞ。」と言ったら、軽く頭を下げられそそくさと洗い場の所に移動していく。まぁ洗濯物、つまり下着類を見られたくはないのだろう素早い動きで洗っている。俺はそれを見てはいけないと思いつつも、俺がこんなにも下着をくたくたにしてるんだから女子も同じなんじゃないの?つまりシホルも?などと昨日の煩悩が抜けてなかったのか出入り口の付近で体が止まり首が出ては入りを繰り返していた。それを3、4回繰り返して流石にこれ以上ここにいたら不味いと思い、部屋に戻ろうと振り返ったら誰かとぶつかった。そこにいたのは、
(ち、違うんだ。そのこれはそんなんじゃなくて。そう、知的好奇心!探求心なんだ。だから、えっと)
(言いたいことはそれだけか?)
俺は身動きできずその場に立ち尽くして
(いった~~~!!!)
自業自得の為、俺は何も言えず額を抑えたまま部屋に戻ろうとした。ノゾムが後ろにいないなと気づき振り返ると、ノゾムは洗濯場を見ている。
俺は心の中で叫んだ。
『ブルータス!!!』
部屋に戻ってみて、ブルータスって何だ?と頭をひねったのは言うまでもない。
読んでくださりありがとうございます。
皆さんの感想、とても執筆の励みになっております。
誤字報告やこうしたほうがいいよ?などという助言もありがとうございます。
全部が全部対応できるわけではありませんが
なるべく期待に添えるようにしていきたいと思います。
それではまたよろしければ温かい!感想と
もしよろしければ適当にこの作品を評価してやってください!
それでは次話で!