いや~どこら辺で
話を区切ればいいかが迷ってしまい
大抵5000~6000文字くらいになってしまいます。
では、どぞ~
北門に移動している間にユメがユメの師匠から教えてもらったことについて話してくれた。なので俺たちはまたみんなで知りえた情報を交換しとくことになった。
まず俺たちが拠点であるここ要塞都市オルタナは、アラバキア王国の辺境にある唯一の防衛拠点らしい。アラバキア王国とは人間族のこれまた唯一の王国だそうだ。かつて、現在、辺境と呼ばれている地に版図を広げて隆盛を極めていたそうだが、諸王連合、不死の帝国に敗退して、天竜山脈の南側に撤退し、そこで勢力を保っているらしい。よって天竜山脈の南を本土と呼び、北側を辺境と人々は呼んでいる。つまり俺たちが今向かって歩いてる所は辺境と呼ばれる場所だ。
また人々はこの世界をグリムガルと呼ぶらしい。ちなみにこれは最初にブリちゃんの所に案内してくれた、ひよむーも言っていた。それがこの大陸なのか島なりの全体なのか、はたまた一部の地域だけなのか、理解している者はいないらしい。とにかく、誰に聞いてもこの世界をさす言葉はグリムガルなのだということだ。
途中で人間以外にも種族ってあんのかよ!?などとランタが叫んでいたが、現在、俺たちが住んでいるオルタナは人間族の拠点。だから他の種族などを見かけはしない。だが実際には、エルフ、ドワーフ、セントール、他にも様々な多くの種族が存在する。そして先ほどの3つの種族と同盟を結ぶことによって要塞都市オルタナは勢力を維持できているらしい。だが他の種族とは敵対関係にあるらしいから気を付けろとのことだった。
「・・って師匠が言ってたんやけど、役にたちそうかな?」
「あぁ情報ってのは持ってるだけで価値があるからね。ありがと。」
「確かにいい情報ではあるが、もう森の中に入ってるんだ、二人とも集中しとけよ」
俺がそう指摘すると、マナトは「そうだね。」とうなずき周りの木々に集中しだした。まぁマナトもユメも言えばわかるからそこまで問題視はしないのだが、問題はこっちだ。
「ってかよ~、さっきから歩いてきたけど、どっこにも、なんっにもいそうにねぇけど?」
先ほどから俺たちのパーティの先頭を歩いているランタが大きな声でしゃべり続けているのだ。
「いや、獲物がいないのってほぼお前のせいだろ」
「黙れ、ハルヒロ!オレのおかげと言え!オレ様のお陰様とな!」
「だから、そんな大声でしゃべってると獲物も寄ってこないだろ」
「オレ様のお陰様でな!」
「はぁ~もうやだこいつ、話聞かなすぎ」
先ほどからランタの後ろを歩いているハルヒロがランタの相手をしているのだが、如何せんハルヒロにランタは制御できず、ランタがずっと一人大きな声で歩いている。流石にこれでは獲物も簡単に俺たちを見つけて逃げていくだろう。
「あの・・・」
と、そこで俺の横を歩いてたシホルが口を開いた。
「あたしたち、その、動物をころ・・・やっつけちゃうのかな?」
このシホルの言葉に先頭を元気よく歩いていたランタでさえも脚を止めた。誰もかれも表情は暗くなった。まぁそりゃそうだ。いきなり生き物を殺せと言われて簡単に殺せる奴は、もともと、生死の感覚が鈍っているやつか、もしくは生きるために必要なことだと割り切れる奴のどちらかだ。おそらく、あいつらのリーダー、レンジは割り切れる方だろう。だが俺たちのメンバーはそう簡単に割り切れる奴ではないだろう。パーティの誰もが口を開けなかったが、最初にシホルの言葉に答えを出そうとしたのは、ユメだった。
「ユメはなぁ・・動物の命をありがたくいただく方法とか、お師匠に教えてもらったんやけどな。でも、ユメ動物好きやし、ほんとは殺したくないねん。」
(だろうな。まぁユメらしい。)
ユメはそもそも、狩人を選んだ理由さえも、狼犬を飼いたいからということなのだ。ここでユメから、生きるためには仕方ない!などと言われたら俺は驚いただろう。案の定このユメの発言にランタが怒ったように反応した。
「甘ぇこと言ってんじゃね~よ!どうせ生き物はみんなくたばって、スカルヘル様に抱かれることになってんだからよ!」
まぁランタの発言も正しいといえば正しい。モンスター戦闘になったときに殺したくないからなどと甘い態度をしていては、仲間を危険にさらすだけだ。殺る覚悟がない者は足手まといにしかならない。
「そうしたらなぁ」
ユメはランタの言葉を聞いた後、おもむろに弓を構えて矢をつがえ、それをランタに向けた。
「なら、ユメたちが生きるために、ランタが殺されてもええってことやんな?」
ランタの行動はわかりやすく、飛びのいて、すぐさまその場で土下座した。
「おまえ、自分の言葉にプライドとかないのかよ」
「あぁ何だよ!ねぇよ!お前はプライドで飯が食えんのか!あぁ!あぁ~今日もプライドのおかげで飯が上手いわ~とか言うのか!」
「いや、飯関係ないし」
「知ってるわ!ボケ!」
そこで助け船というか、このパーティのまとめ役のマナトが言った。
「獲物のことなんだけど、オルタナの近くにも泥ゴブリンとかグールとか、僕たち見習い義勇兵でも相手にできそうなやつがいるらしいんだ。俺も聞いただけだからよくわかってるわけじゃないんだけど。」
マナトが聞いてきた情報は俺もギルドの先生に聞いたことがあった。
「あぁそれは俺も聞いたよ。最初はその辺からやってみたらどうだって、俺の先生も言ってたな。」
「じゃ、じゃあ、その泥ポプリと、クールっていうのを 基本的には狙うことにしないかな?」
「シホル、一応、泥ゴブリンとグールだ。」
俺がそう指摘すると、シホルは顔を赤くして俯いてしまった。
「まぁいいんじゃね?」
「うん、それでええと思うよ」
「う、うん」
皆が賛成したことで俺たちの最初の狙いが決まった。そして俺たちは、泥ゴブリンは水辺の近くにいるということだったので、水辺を探して歩きまわった。そして歩きまわること約10分。
「水辺とか全然ねぇんだけど!それにさっきから虫しか見てねぇし!」
早速ランタが痺れを切らした。
「きっとランタのせいやろうな~。ランタがうるさいから、生き物みんな逃げてしまってるんやと思うわぁ。」
「オレは静かにしてるだろ!しばらくずっと話てなかったぞ!」
まぁ確かにここまで歩いてくる間、ランタは珍しくずっと黙ったままだった。
「そこにいつだけで、存在がうるさいねんもん。」
「はぁ~んなこと言ったらお前は、いでっ」
いきなりランタが跳びあがった。
「のぁ!?な、何だ!?お、おわぉっ!?」
なぜかランタがダンスでも踊るように脚を上げたり下げたりをその場で繰り返しだした。何かしらから避けているように感じたので、その足元をよく見てみると、大きさは猫くらいで、体が針みたいな毛に覆われた生き物が、ランタの脚にしがみつこうとしたり、ガリっとひっかいたりしている。
「穴鼠や。」
ユメがそう言いながらあたりを見回した。
「師匠が言うてた。穴鼠は群れで獲物を襲うって。だからまだそのへんにいるかも」
ユメの言葉を聞いた俺はランタにも意識を向けたままあたりを見回す。だが周りを意識しすぎたせいか、シホルが俺にぶつかってくるのに俺は気づけなかった。
「ご、ごめんない。」
「いや、気にしなくていい。それより他にもいたか?」
「う、うん。今近くで音が・・」
シホルの言葉を受けて俺はシホルの背中側見るとちょうど一匹の穴鼠がシホルに向かって突進してくるところだった。その穴鼠にシホルは当然気づいていなく、俺がそいつをどうにかしなくてはシホルが何かしらの怪我を負ってしまうかもしれない。だから俺がとった行動はいたって簡単なものだった。俺はぴったりと俺にくっついているシホルを俺の背中側に隠し、腰に携えていた、剣を抜き去り、とびかかってきた穴鼠を
(・・・まぁ予想していたよりは、くるものがあるな。)
覚悟はしていた。生き物を自分の手で意識的に殺すということがどういうことかもわかっていた。だが実際殺してみると、あらかじめ考えていたことがまだまだ甘いものだったと感じざるをえなかった。だからといって罪の意識にさいなまれるといったようなことになるほどではないが。
「あ、こ、これ・・・」
俺が穴鼠を殺した感覚を噛みしめている間にシホルも俺の足元に転がっている穴鼠の死体に気付いたらしく、穴鼠を見てから俺のほうを一度見て、また視線をそらした。
「すまない。もう少し配慮すべきだったかもしれないが、いかんせん咄嗟だったから」
そう言って、俺は穴鼠をシホルの見えない場所に移動させた。
「う、ううん。大丈夫。それに、その、ありがとうございました。」
「別に構わない。それに、そこは”ありがとう”、でいいさ。」
「うん、ありがとう。」
俺が一匹の穴鼠を倒したからか、ランタとハルヒロとモグゾーで対処していた一匹と、ユメとマナトで対処していたらしい一匹も逃げていったらしい。
「お?おぉ!オレ様の強さに恐れをなして逃げていったぜ!ざまぁみやがれ!」
「いや、お前は何もしてないだろ。」
穴鼠が去っていったことで、一度離れて敵に当たっていた俺たちもランタたちの元に集まった。集まった所ではハルヒロが怪我をしていたのでマナトが神官のスキルで治療していた。
「光よ、ルミナリスの加護のもとに・・
マナトの手のひらから光が発せられるとハルヒロに見受けられた怪我がしだいにふさがっていく。
「すげー」と言いながらハルヒロは傷があったところをさすった。
「あ、ありがとなマナト。だけど、ホントなんであいつら去っていったの?」
「た、たぶん、ノゾムのおかげだと思う。」
「ノゾムが?そうなんだ、ありがとねノゾム。」
マナトがハルヒロの怪我を治し終え、俺の方を向いて言った。
「いや、俺もそんなに大したことはしていない。ただ夢中だったからな。」
「ってそんなことより、オレの怪我も治せよ!痛ぇーよ!」
「ああ、ごめん。今やるよ」
マナトはランタの所に急いで向かった。
「いや、ランタに謝ることはないってマナト」
小さくだがハルヒロが呟いた事はランタ以外には聞こえていた。
「でも、ホント追っ払うのだけで手一杯だったよ俺。」
ハルヒロはため息をつく。
「そうやんな~。うちもマナトに助けてもろてばっかりで何もできてへんかったし~」
「わ、わたしも、何もできなくて、ごめんなさい。」
全員、今の穴鼠に対して何もできなかった事実に意気消沈だ。
「もしかして、森ってまだ俺たちには早いのかな?」
ハルヒロがそう言った直後、ランタの怪我が治ったらしい。
「うしっ!ふっかーつ!・・んじゃお前ら、さっさと行くぞ!おら!」
ランタは怪我が治るとすぐに前進あるのみと言わんばかりに早速森の中をまた進んで行こうとした。
「・・・い、行くってどこに?」
そう反応したのはモグゾーだった。
「はぁ?アホか!泥ゴブリンかグールを探すに決まってんだろ?あんなわけのわかんねぇ生き物か何かに引っ掻き回されてそれで終わりとか冗談じゃねぇ!このまま引き下がるオレじゃねぇんだよ!」
「・・・そうだな。」
マナトはちょっと考えてから、うなずいた。
「俺もランタの言う通りだと思う。リスクあるけど穴鼠って肉食獣なんだろ?」
マナトはユメに目線を向けて、ユメがそれに答えた。
「穴鼠はなぁ~雑食かも。でも、いつもさっきみたいに集団で行動しているから人間も襲われたりすることがあるねんて」
「雑食なんだ。でも、とにかく、ああやって狩りをする生き物がいるってことはこの森には他に獲物がいるってことだと思うだよね。」
「あったりまえじゃねぇーか!今頃気づいたのかよ、マナト。オレはずっと前からそう思ってたんだぜ?ああやって狩りをする生き物がいるってことはこの森には獲物がいるんじゃねーかってな!」
「・・おまえ、マナトが言ったことと何が違うんだよ。」
「うっせーんだよ!眠たそうな目しやがって!このねむねむ小僧が!」
まぁ色々俺も思うことがあったが今はだまっておくことにした。
「じゃあ、反対意見がないのならもうちょっとこの森で頑張ってみよう。」
そうして俺たちはマナトの意見に従って森の探索を続けた。しかし、結局この後は特に獲物らしい獲物を見つけることはできず、結局、暗くなるまで森の中を歩いただけだった。
「・・・どーするよ、マジで」とランタがどんよりした声で言った。
「まぁ今日はオルタナに戻るのが最善だろ。夜は俺たちには危険すぎるからな。」
「そうだね、ここはノゾムの意見に従ったほうがいいと思う。まだ僕たちは森のことも詳しくないしこれ以上は危険だよ。」
俺とマナトの意見にだれも反対する者はいなく、俺たちは森を出てオルタナに引き返すこととなった。その際、俺はパーティの一番後ろを歩いていた。
帰り道、シホルが俺の横によってきて小さな声で俺に話しかけてきた。
「そ、そういえばね。ノゾムがやっつけたあの穴鼠って、その、何か持ってたりしたの?」
「うん?あぁ、あの時はシホル慌ててたもんな?まぁ持ってはいなかったよ。ただそのかわり・・」
俺はそう言って俺の腰のポーチに入れていたものを取り出してみせた。
「これ・・・爪?」
「あぁ、一応獣の爪ってお金にはなるみたいだからな。これでいくらになるかはわからないがまぁないよりはましだろう。」
シホルは目をぱちぱちさせながら俺の方を見て言う。
「す、凄いねノゾムは。私なんかと違っていつも落ち着いて行動できるし。・・・あのね、一つ変なこと聞いていいかな?」
「構わないけど。何?」
「あ、あのね。どうして、最初のあの酒場であの男の人に着いて行かなかったの?」
「うん?確かに急にどうしたって質問だな。」
「うん、だってノゾム意外、私たちのパーティは誰も穴鼠に対処できなかったし。私たちと違って、たぶん、あの男の人に着いていったほうがよかったんじゃないかって思ってるんじゃないかと思って。」
「う~ん、まぁあまりそういったことは考えてないな。まぁ確かにレインのほうは今日みたいなことはないだろうけどね。」
「うん、たぶんそうだよね。」
「けどまぁ?あの時誰かさんに服をつかまれたりしていたしな~。」
「っ!あ、あれは!」
シホルはらしくない大きな声で俺に言ったので前を歩いていたハルヒロたちも何事?と後ろを振り返った。ごめんごめん、ちょっと俺がシホルを驚かせてしまったと伝え、ユメがあんましシホルいじめたあかんで~といつも通りのテンションで俺に返事を返し、
また先ほどと同じように前を向いて歩きだした。
「ご、ごめんなさい。」
シホルは俯きながら最初よりも小さな声で発した。
「別に構わないよ。まぁホントは俺がシホルに義勇兵になるようにたきつけたってのもあったからな。シホル置いてレンジたちについていこうとは思わなかったんだよ。」
「・・私がノゾムの足かせになっちゃってるんだよね。」
そう言ったシホルの声はとても元気がない。俺は何となく俯いてるシホルの頭に軽く手を乗せた。頭に手を乗せられたシホルは一瞬びくっ!となったが、俺の手を払いのけることはせず少しずつ顔をあげて俺のほうを見てくる。
「まぁ今はそんな深く考えなくていい。俺はこのパーティを抜けたいとは思っていない。シホルのこともお荷物なんて思っていないさ。それにシホルの存在は今の俺にとってとても大切なんだ。」
シホルはなんで?と不思議そうな顔をして聞いてきた。
「決まってるだろ?俺は聖騎士なんだ。つまり守るべき人がいてこそ強くなれる。だから、今は俺にとって守られていてくれよ?怖がりな魔法使いさん?」
俺の言葉にシホルは少し顔を赤らめて小さく、うん、とだけ答えた。そして俺たちは探索していた森を抜けだし、要塞都市オルタナの北門に戻ってきたのだった。
では、いつも通り。
読んでください、ありがとうございました!
暖かい感想、お待ちしております!w
そろそろ人物紹介みたいなのも入れたいと考えてます。
ではでは~