灰と幻想のグリムガル Extra   作:キリュウ

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書きたくなったから書いた!


後悔はしていない!ww


Level1 : 目覚め、そして動き出す
第一話 : 目覚め、そして彼らは出会う


 

 

 

俺が目を覚ました場所は真っ暗な空間だった。いや、完全に暗闇というわけでもなさそうで、少し離れた所に灯りがあった。

 

(ここは、どこだ?)

 

周りを見渡しても暗いどこかの場所としかわからない。こんなわけもわからない場所で目が覚めたのにもかかわらず、俺の頭は意外と冷静だった。

それはもしかしたら、俺の・・・俺の?

 

(・・ちょっと待て、・・・俺って誰だ?)

 

なぜか思い出せない。

とりあえず確認できる自分の名前を思いだしてみた。

 

(俺、俺の名前は・・・ノゾム、そうノゾムだ!だが他が思い出せない。なぜだ?)

 

なぜかはわからないが、俺は一時的な記憶喪失にあるらしい。正直、なぜこんなにも自分は落ちついているのか自分でも理解できていないが、まぁ変に慌てふためくよりはいいかと結論づけた。

 

(とりあえず、下は石?いや岩だな。周りに人らしき気配も感じるが俺以外にも誰かいるのか?)

 

一端、この記憶の欠如は置いといて現在の状況を確認することを優先することにした。

 

「もしかして、誰かいる?」

 

弱弱しい声が聞こえてきた。聞こえてきた声は男の者だったが、声のトーンから察するにその男も現状が理解できていないのだろう。その声には誰が聞いてもわかるくらい、不安の色が出ていた。とにかく、間違いなく俺以外にも誰かがこの空間にいるようだ。

案の定、その男の声に反応する声がいくつも聞こえてくる。その中には女の声も交じっている。

 

「何人くらいるんだろう?」

「数えてみる?」

「・・ていうか、ここ、どこ?」

「誰かわかるやついねぇの?」

「何だよ、これ」

 

色々な奴らの声が聞こえてくるが、誰もかれもこの現状に混乱しているようだった。

 

(なるほど、とりあえずここにいる奴らも現状は理解できていないということか)

 

ここにいる奴らがざわざわと話をしていると一人の男が立ち上がったらしい。男曰く、壁伝いに歩けば何かあるんじゃないかということだ。

 

(へぇ~こんな状況下で行動しようとできる奴もいるんだな)

 

聞こえてきた声には何人か不安ではなく、冷静な声色も含まれていたがその中の一人なのだろう。見える限りでは銀髪の割と強面の男だった。その男の行動につられるように、皆腰を上げて男について行き始めた。一人の男が反対側も道が続いているようだと言ったが、最初に行動した強面の男について行くほうが、安心できると思ったのだろう。誰も反対の道に行こうとはしなかった。反対側の道に興味がなかったわけではないが、何の知識もなく、明かりもない状態で進むほどのバカではなかった。

 

「きゃ!」

 

俺も皆が歩きだした方へ進んでいこうとしたら、誰かの肩にぶつかってしまった。声からして、おそらく女だろう。暗がりだったのと、ぶつかった少女は割と小柄だったため気づきにくかった。

 

「すまない。大丈夫か?」

 

俺はそこまで強くぶつかったつもりはなかったのだが少女の方はそうでもなかったらしく、尻もちをついていたので、俺はこけてしまった少女に手をさしだした。

 

「あ、あの、ごめんなさい。」

 

外見は暗がりでよくわからないが、雰囲気的におそらく気が弱い少女なのだろうということは察しがついた。

 

「いや、こちらこそ不注意だった。すまない。」

 

差し出した手を、おずおずとしながらも握り返し、俺は少し力を入れて起こしてあげた。

 

「少し暗いから気をつけて歩かないと危ないね。大丈夫?けがはない?」

 

俺が聞くと、少女は小さな声で大丈夫ですと囁き、頭を軽く縦に揺らした。俺たちは割とこの集団の後ろのほうにいるようだった。前の方から出口が見えてきたという声が聞こえてくる。

 

「出口らしい。もう少しだけ頑張ろうか。」

「は、はい。」

 

俺と少女は慎重に前の人についていった。前方では何か鉄格子が開くか開かないかでギャーギャーけたたましく叫ぶ声が聞こえてくるが、俺と少女が近づいたときにはもう鉄格子は開かれており、ついに外に出られた。

 

(あぁなんというか、これは)

 

おそらく外に出て誰しも共通して思ったのだろう。

 

━━━ここはどこだ?

 

俺たちより先に出口からでた奴らは全員遠くのほうにある建物や町に目を傾けていた。

 

(遠くのほうに見えるのは・・城か?あぁ記憶が思い出せたらここがどこだか見当もつくのか?)

 

結局、あの洞窟とでも呼べばいいのかわからない場所にいたのは俺を含め男子9人、女子4人、合計13人ということがわかった。

 

「あ、あの。・・・ここ、どこなんでしょうか?」

 

さきほど洞窟の中でぶつかってしまい、一緒にを歩いてきた少女が俺に聞いてきた。

 

「どこなんだろうな。一先ず俺の知識にここがどこだか判断できるものがない。すまないが俺もよくわかっていないんだ。」

「そ、そうなんですね。ご、ごめんなさい。」

 

(この子は毎回謝ってしまう癖でもあるのか?それともそういう態度を見せておいて誰かに守ってもらおうという考えなのか?)

 

洞窟から出てきた人たちでここがどこなのだ、どうすればいいのか、などと話をしていたら

 

「ちゃららららら~ん。ちゃららら~んらら~ん~。」

 

どこからかテンションの高い女の声が聞こえてきた。その声は先ほど俺たちが出てきた洞窟の出口の上から聞こえてた。

 

「ど~も~。元気ですか~?ようこそグリムガルへ~。案内人のひよむ~ですよ~。初めまして~。よろしくね?きゃぴ!」

 

何なのだろう、この女のテンションはよくわからないが、今こいつが言った"案内人"という言葉が気になる。案内人ということは誰かが俺たちを招待もしくは拉致してきたということか?銀髪の強面の男は、この女の喋り方が気に入らないらしく、女が何か話すたびにイライラした態度をだしている。ひよむ~と名乗った女は色々とよくわからん喋り方をしていたが、要約したらこういうことらしい。

 

━━━とりあえず、ついてこい。

 

 

なので俺たち13名は謎の?女であるが一応案内人という肩書き?を持ったひよむーについて行った。移動している最中に墓地らしき場所を通ったりもしたが、ひよむー曰く俺たちにはまだ早いものらしい。

 

(俺たちにはまだ早い、か。いつかはここに入ることになってるみたいな言い方だな。)

 

また、中には空を見上げ、月が出てるなどと呑気なことを言っている奴らもいたが。確かに暗闇で見る夜空の月は綺麗な赤色(・・)をしていた。

 

(うん?月が・・赤い?月は赤いものだったか?...いや、赤じゃない。何色だったかと言われたら記憶が曖昧だけど赤色じゃなかったはずだ)

 

俺の近くを歩いていた眠たげな眼をしている少年も月の色が赤色であることに何らかの疑問を抱いていることがわかった。月を見た後から何か考えるそぶりをずっと見せているからだ。

 

(俺以外の人も何らかの記憶の欠如があるってことなのか?とりあえず、どこかで腰を据えて話を聞きたいな)

 

移動中暇なのかチャラそうな男が自己紹介でもしとかないか?ということを近くの奴らで話をしている。俺も情報は知っておきたかったから少しだけ耳を傾けていた。そこからわかったことは先ほどの眠たそうな目をしている少年がハルヒロ、天パの少年がランタ、背の高い男がモグゾー、割と落ち着て見える男がマナト、ちょっとマイペースな変わった少女がユメ、そして洞窟ぶつかってしまった少女がシホルといらしい。

 

「え、えっと、名前教えてもらってもいいですか?」

 

俺にそう聞いてきたのはシホルだった。誰か聞いてくるだろうとは思っていたがシホルだとはちょっと思ってなかった。

 

「あぁ、俺の名前はノゾム。俺も皆と同じで自分の名前以外は思い出せていないよ。」

「そ、そうなんですね。その、ごめんなさい。」

「うん?別に謝られるようなことはしてないよ?」

「あ、はい。ごめんなさい。その・・・癖で。」

 

(癖...ね。)

 

各自の自己紹介で話は持ち、俺たちはひよむーにある建物の中に入るように促された。そこはいわゆる酒場で、奥のほうにある広い部屋に入るように言われた。

 

「んじゃひよむ~はここまでで~す」

 

どうやら本当に案内するだけだったらしく、彼女は俺たち全員が部屋に入るのを確認したら中にいた男?のブリちゃんに後は説明してもらってね~とだけ言って部屋から出ていった。部屋から出ていったひよむ~の代わりに今度はこのブリちゃんなる人物が俺たちに何か情報を与えてくれるのだろう。しかし、ひよむ~もずいぶん変わった人だったが、今度のブリちゃんも中々変わった奴だった。ブリちゃんという名前の男はひとしきり俺たち全員の顔を見た後、一度うなずいた。

 

「いいわ、こちらへいらっしゃい子猫ちゃんたち。あたしはブリトニー。棟オルタナ辺境軍義勇兵団レッドムーン事務所の所長兼ホストよ。所長って呼んでもいけど、ブリちゃんでもオッケー。けど、その場合は、親愛の情をた~っぷりこめて言うのよ?わかった?」

 

あぁ~なんだろうか。一言で言って、わけがわからない。俺の理解力が低いのかと思わなくもないが、いやまず軍ってなんだ?ここはどこかの紛争地域なのか?誰も今のブリちゃんの言葉に反応を詰まらせていたが銀髪の男が一歩前に出て聞いた。

 

「質問に答えろ。ここがオルタナという街ってことは今のでわかった。だが、辺境軍?義勇兵団?何だそれは?」

 

俺と同じことを思っていたらしい。そしてもう一つ、銀髪の男は最も知りたかったことであろうことを付け加えた。

 

「それと、俺がここにいるのはなぜだ?お前は理由を知ってるのか?」

 

銀髪の男の質問に何が面白かったのかブリちゃんはふくみ笑いをしながらながら対応した。

 

「威勢がいいわねぇ。そういうの嫌いじゃないわ。あなた名前は?」

「レンジだ。俺はお前みたいなオカマ野郎は好きじゃないがな」

「そぉ~・・・」

 

そして一瞬の内にブリちゃんはレンジの前に移動し、レンジの首元にナイフの切っ先を突き付けた。

 

(早いな。今の。レンジってやつも反応が遅れてた。だけど、避けれない早さじゃない(・・・・・・・・・・・)。)

 

レンジは突き付けられたナイフを素手でつかみ、殺れるものならやってみろ。と言い返すだけで、二人の険悪なムードはいったん終了した。その後はまぁブリちゃんから色々なことを知った。

まず、ここは義勇兵になることができる場所。義勇兵になれば敵、モンスターと言われるもの退治しなくてはならない。また、以後何をするにしても情報などは自分で集めろ。しかし、どれも本人の選択の余地がある。やるかやらないかは全て己の才覚で判断せよ、ということらしい。

最後にとブリちゃんが言ったことは、まずは見習い義勇兵から始めたら次は一人前の義勇兵を目指すことになるそうだが、その際、どうやって昇格できるのか。答えは簡単、金で買えということらしい。銀貨20枚つまり20シルバーで義勇兵団章を買えたらそこから一人前となるらしい。

 

(なるほど、金が何よりも大事なわけね。)

 

以上で私からの説明は終わりよ、とブリちゃんから言い渡され、早速レンジは見習い章と革袋をつかんだ。その革袋の中には銀貨10枚が入っているらしい。レンジの後には順に丸刈りの男、派手目な女、先ほど名前をしった落ち着きのあるマナト、黒縁眼鏡の男、そしてチャラそうな男が続いて見習い章を取った。今だ取りに行ってないのは俺を含めて7人。

 

(まぁ気持ちはわからんでもない。情報量が少ない中で何かを決断するのは難しいしな。)

 

とりあえず、俺は見習い章と革袋を手に取って先ほどいた場所に戻った。横にいたのはシホルだが、シホルの顔はずっと下を向いたままだった。

 

「怖いか?」

 

俺がそう声をシホルにかけると、シホルは俺の方を一瞬見てまた下を見た。

 

「・・・うん。」

 

シホルが言った声はとても小さなものだった。このシホルという少女、割と現実的な思考力があると俺は思っていた。ここで取りに行けないのも戦うのが怖いというだけでなく、これ以外の選択肢を知らない中でこれを選択していいのか?という怖さもあるのだろう。だがまぁ生きてる限り、限られた選択肢の中で行きていくしかないのだが。

 

「シホルが決めたらいい。やらないというのもまた一つの選択だ。」

 

俺はできるだけ優しい声でシホルに話しかけた。そして、シホル以外の全員が見習い章と革袋を受け取ったとき

 

「・・・わたし、」

 

シホルが何か言いかけた。けれど俺はその言葉を最後まで聞かなかった。

なぜなら、

 

「大丈夫、俺がついてる。」

 

俺はシホルの言葉を無視してこう言ってしまっていたからだ。

 

「---え?」

 

シホルも驚いた顔で俺の方に視線を移した。

 

「取って来い、あれ。」

「---うん。」

 

シホルはうなずいて、ゆっくりと見習い章と革袋を受け取って俺の横に戻ってきた。そして、全員が受け取り終えるとブリちゃんが言った。

 

「おめでとう。これであんたたちは今から見習い義勇兵よ。しっかりがんばって、さっさと一人前になってちょうだい。」

 

そして言い終えると、ブリちゃんが奥のほうにあった席に移動した。と、そこでレンジと丸刈りの男(ロンというらしい)の二人で喧嘩みたいなことが勃発した。どうやらレンジという男、使える人材がここにいたら連れて行こうという思惑らしい。レンジはロンという男のほかに黒縁眼鏡のアダチ、一番背が小さい少女を選んだ。そして最後に、

 

「おい、お前も来い。」

 

そうレンジが言ったのは他でもない。俺だった。レンジの眼鏡にどう映ったのかはわからないがレンジはどうやら俺も使える人材だと判断したようだ。レンジが俺に声をかけたとき、ほんのわずかだが横にいたシホルが俺の服の裾をつかんだのが俺にはわかった。だから、というわけでもないが俺はきっぱり言った。

 

「すまない、俺は一緒には行けない。」

 

俺がそう言うとシホルが俺の服の裾をつかむ力がまたほんの少し強まった。レンジは断るとは思っていなかったのだろうか?目を細めながら、なぜだ?と聞いてくる。周りの聞いてる奴もなんで断ったんだ?と疑問を浮かべた顔だ。そりゃそうだろう。レンジが選んだメンツはどう考えても腕っぷしは強そうだし、戦闘で困ることはほとんどないのではなかろうか?

だが、まぁ俺はどんな時でも自分を信じる。自分で考え自分で答えを出し行動するのが俺だ。しかしレンジという人間について行けばおそらくレンジの答えが俺の答えに強制的に置き換えられてしまう気がする。俺は何も発言せずただただレンジの目を見つめ返した。そして、レンジもまた何も言わずに俺から視線を外し、声をかけた3人に行くぞと声をかけ出口に移動した。

その際、一瞬だがシホルに視線を向けたのを俺は感じ取っていた。

レンジたちが出ていくときに一人の派手目な女がレンジに声をかけ一緒に行くことになった。そしてレンジたちが部屋から出て行って数分が過ぎた。

 

(そろそろ俺も行動するか。)

 

そう思った俺は先ほどまで俺の服の裾を握っていたシホルに目を向けた。シホルは相も変わらず下を向きっぱなしで俺が顔を向けたいることには気づいていない。

 

「シホル、俺は行くけどどうする?一緒に来ないか?」

 

シホルはすぐに顔を上げて俺の顔を見た。大抵おどおどして目線もあまり合わせないシホルだがこの時は俺の目をしっかりと見ていた。だが、案の定また目をそらしてしまったが、声だけはしっかりと聞こえた。

 

「い、いいの?」

「あぁ、シホルさえいいんだったらな。」

「・・うん。お、お願いします。」

 

シホルの了承を得て俺は、まだ何人か残ってるやつらはいたがシホルと二人でいったん行動することに決めた。そして、一先ずよくわからんこの状況を打破すべく、俺とシホルはまずは適当な人に声をかけ始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださいまして、ありがとうございます。

”新世界より”も同時並行で書いているのですが、

いや~筆のノリはこっちのほうが進む進むww

もしよろしかったら”新世界より”もご購読ください。

優しい!優しい感想お待ちしております!www

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