灰と幻想のグリムガル Extra   作:キリュウ

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なんか、その、色々と無茶苦茶です。

つ、冷たい感想だけはやめていただけると幸いです!

泣いちゃいますから!


第十一話 : 守られる者

 

 

 

ハルヒロから昨日何があったのかを聞いた。ランタを追いかけて行ったあとモグゾーと3人で酒場に行き、ランタとひと悶着あったそうだが、そこで最初に俺たちとグリムガルで目覚めた一人、チャラ男のキッカワという男に出会ったらしい。彼はもう戦士クラスでもう義勇兵になっているようだ。ハルヒロたちはキッカワにマナトが死んでしまったこと、それで神官がいなくなってしまい、どうしたらいいのかわからないでいること話したら、メリィのことを教えてもらったらしい。

ハルヒロも達もそれなりに考えて行動はしていたようだが、せめて一言くらいは相談があってもよかったのではないかと思わずにいられない。まぁ過ぎたことをとやかく言っても仕方ないのだが。ちらっと横目で歩いているメリイを見るがすぐに視線をそらされる。

 

(メリイは見てくれが可愛いからな~男そのものを毛嫌いしてるのか?いや、だったらシホルとユメに対して冷たいのがおかしいよな)

 

考えてもメリイが何も話してくれないのでは、どれだけ考えても机上の空論でしかない。ハルヒロから最後にメリイの異名を聞いた。どうやら彼女にはいくつか異名があるらしい。その一つは性悪メリイ、もう一つは恐怖のメリイ。メリィは大抵はフリーで、神官がいないか、神官が足りないパーティに加わって生活しているようなのだが、1つのパーティに長居したことはこれまでないらしい。これが尻の軽い女、つまり性悪メリイと呼ばれる所以(ゆえん)なのだろう。また、メリイは人を人とも思っていないという噂があり、それが恐怖のメリイと言われる所以だそうだ。

 

(お前、よくその話を聞いて誘ってきたな。・・・ルックスか?)

(ち、違うよ!だって俺たちみたいなパーティに来てくれるっていう神官なんてそうそういないだろうし、それに神官がいないとノゾムが怪我したとき誰も治せないじゃないか)

 

まさか俺のことまで考えてのことだったとは思ってなかったので正直そこは驚いた。てっきりメリィの可愛さに負けて声を掛けてきたのかと思っていたのに。

 

「ねぇ、さっきから何話してるの?」

 

俺とハルヒロが小声で話しをしているのが不快だったのか、また凍てつくような視線で俺たちをメリイは睨んでくる。

 

「なに、ハルヒロと今日の戦闘の作戦について考えてただけさ。あ、さっき言い忘れたけど、ハルヒロが俺たちのサブリーダーだから、よろしく。」

「あっそう」

 

それにはまったく興味ないわと誰でもわかるくらいの返事をしてからメリイまた前を向いて歩く。

 

 

 

 

 

ダムローまでの約1時間、私たちは本当に無音だった。後ろのほうでノゾムとハルヒロが何か話してるみたいだったけど、多分メリイさんのこと話してるんだと思った。一緒に横を歩いてるユメも私と同じくらい戸惑ってるのが見て取れる。ううん、もしかしたら怒ってるのかもしれない。マナトが死んですぐに新しい神官を入れるってどうなの?・・みたいなこと?を考えてる顔している...ような気がする。けどそれは私も同じだった。

理由はちょっと違うけど私もメリイさんのことがちょっと好きにはなれない。まずメリイさんはちょっと綺麗すぎる。ユメみたいに細い体をしてるのに、出るところは出る体型をしていて、顔だってとっても小さいのに、目がとても大きくぱっちりしている。たぶんオルタナで沢山の男の人に声をかけられたりして大変なんだろうな~なんて最初見たときは思った。けれど、ノゾムが親切に笑顔で話しかけても冷たい態度とそっけない返事しかしないのが、ちょっと私は嫌だ。

だいたいハルヒロたちも何でこの人を誘ったのか説明を全然してくれないし、ルックスが良いから誘ってきたんじゃないのか、なんて意地悪な考えができてしまう。恐らく、ノゾムがハルヒロに聞いていたことはそのことだろうから、後々教えてくれだろう。けどやっぱり。

 

(可愛いな~私でも思うんだから男の人なら絶対思うよね。・・・はぁ)

 

まぁメリイさんのことについては一旦置いておこうと決めた。それよりノゾムが今日の狩場をダムローにしたこともちょっと驚きだった。マナトが亡くなったばかりなのに、その記憶が新しい場所を選ぶなんてどういうことなんだろうか。

 

「・・・また、やつらに出くわしたら」

 

ハルヒロが呟いた。

 

「そのときは、-----そのときは、やるっきゃねーだろ。あの鎧野郎とホブゴブ野郎の耳切り落としてスカルヘル様の祭壇に捧げねぇと、オレの気がすまねぇ」

 

ランタが暗い声で絞り出すかのように言った。

 

「よ、鎧のゴブリンはノゾムが倒したけどね」

 

私がそう言うと、ランタが「マジで!?」とノゾムの方を見た。ノゾムはただ一言、あぁ、とだけ言うだけで他には何も言わなかった。

 

(そう言えばあの時鎧が持ってたものノゾムが回収してたけど、売ったのかな?)

 

「でも、うちらじゃまた同じ結果になってまうかもしれんやん」

 

ランタはユメの言葉に、へっ、と吐き捨てた。

 

「勝てなかろうがやるんだよ」

「それで死んでしまったら!・・・死んでしまったら、元も子もなくなってしまうやんか」

 

モグゾーが力強く頷く。

 

「死ぬのは、だめだよ。もう、誰も死んでほしくない」

「誰か---」

 

メリイさんが何か言いかけて、唇を噛んだ。

 

「-----行くの?行かないの?どっちでもいいから、さっさとして」

 

ランタがそっぽを向いて小さく舌打ちをした。

 

「さっさとしようぜ、ノゾム」

「あぁそうだな。そうしよう。----けど、安心しろ」

 

ノゾムが私たちのほうを見て笑った。

 

「もう誰も死なせはしない。・・・必ず守る(・・)

 

ただそう言って、ノゾムはマナトが作ってくれていた地図を取り出す。無意識的に言ったのだろうけど、やはりノゾムにとって私たちは助け合う仲間というわけでなく、一方的に守る対象でしかないんだなってそう思った。

 

 

地図を頼りに探索を進めるが暗黙的に敵の数が4匹以上では戦闘はやめておこうというものがあった。ハルヒロが先に探索してきて敵が多いからやめておこうと言ったのがさっきで3回目だった。メリィさんは、敵がいてそれをみすみす逃すことに何か文句でも言ってきたりするのかな?って思ってたけどそんなことはなくだまってついて来てくれていた。そしてようやくゴブリンが3匹の手段を見つけた。

 

「よし、まずはユメとシホルが槍ゴブに先制攻撃。ハルヒロとランタ、ユメ、メリイの4人で斧ゴブの相手をして、俺が槍ゴブを、モグゾーとシホルで短剣ゴブを倒そう。二人できつかったら4人の誰かがヘルプに回ってやってくれ。倒したらすぐにカバーに入ること忘れるなよ?」

 

ノゾムが即座に作戦を考えてくれる。けど、この作戦じゃあノゾムが・・・、

 

「待って」

 

メリィさんの声はいつも切れ味が鋭い。けど、メリイさんも今のノゾムの作戦のおかしさに気づいてくれたんだろうか?。意外にメリイさんもちゃんとパーティにのこと考えてくれてるんだと思うと先ほどまでの考えを少し改めないと

 

「どうして私がゴブリンと戦うことになってるわけ?」

 

━━━前言撤回。全然パーティのことを考えてなかった。無茶苦茶自分のことしか考えてない。

 

「ダメだったかな?一応戦えはするんだよね?」

 

メリイさんはノゾムの言葉に首を横に振った。

 

「わたしは前に出ないから、神官だし、当然でしょ」

「おい・・・」

 

ランタがきれかけだけど、こらえたみたいだ。

 

「・・・おまえ」

 

そのランタの言葉につき殺すような視線をメリィさんがランタに刺した。

 

「おまえ?」

「・・・き、きみ?いや、おかしいだろ、このオレがきみとか・・・メ、メリイ!」

「さん、は?」

「メリイ・・・さん」

 

ランタは青筋を立てながらぷるぷる震えている。

 

「あ、あのな?神官でも持つモンは持ってじゃねぇか?その、何だ?錫杖的な?持ってるよな?ようするにそれって、ぶん殴るための物だろ?それとも、単なる飾りなのかよ?」

「そう」

 

メリイは胸を張ってランタを見下ろした。

 

「これは飾り」

「て、てめぇ・・・」

「てめぇ?」

「メ、メリイ・・・さん、あなたねぇ、そんなねぇ、あれだよあれ、何だよ、わかんねーわもう、いいや、好きにしてくれ」

「言われなくても、好きにするけど?」

 

ランタとメリイさんの相性は最悪だった。まぁ予想はできたことだったけど。

 

「・・・わかった。メリイは後方待機でいい。まぁランタも俺のために許してくれ。俺が怪我したときにメリイが治せないと困るからな」

 

ノゾムがメリイとランタの間に割って入るようにして仲裁した。マナトがいなくなった分のしわ寄せがノゾムに寄ってるのだ。

 

「とりあえずメリイはシホルの近くで待機しておいてくれ。シホルは魔法使いだから、前に出ることはないからな。それでどう?」

 

メリイはノゾムの言葉に頷いた。

 

「妥当なところじゃない?」

「じゃあ、そんなとこ「あ、その・・・」どうしたシホル?」

「あ、えっと、今の作戦で、その・・・」

「何か不味いところあったかな?」

 

ノゾムは本当に何もおかしなところがないと思ってるのだろう。すごく真面目な表情で変なところがあったかと考えている。

 

「・・・ごめん、何でもないの」

 

ここで勇気が出せない私が私は嫌いだ。ノゾムは、そうか?と心配げに私を見るが大丈夫だと判断したのだろうか、それともいい加減考えるのがめんどくさくなったのだろうか、じゃあ二人頼むわと声をかけられ、私とユメは攻撃の準備を始めた。私はエレメンタル文字を書きながら低い声で呪文を唱え、ユメも弓に矢をつがえて弓弦を引き絞っている。そして私の杖の先から影のエレメンタルが放たれた。

 

(当たって!)

 

願ったからか、それは狙い通り当たった。しかし、ユメの弓はあさっての方向に飛んでいってしまい、メリイが「・・・外れすぎ」と小さく呟いた声が後ろの方から聞こえてきて、ユメは弓をぎゅっと握りしめていた。

 

「気にするな!ユメの特技は剣鉈だろ?」

 

先頭を切って走っていくノゾムが隠れていた場所から飛び出す瞬間にユメにそう言った。常に一番前に立ち皆と支えてくれていて、それでいまユメがちょっと傷ついたのにもちゃんとわかってくれる。本当にノゾムという人は凄い。そしてノゾムは槍ゴブ相手に盾をくししてやりあっている。本当は短剣ゴブの相手をしているモグゾーのサポートなのだけれど、どうしてもノゾムの方を心配してちらちら見てしまう。

 

(私が心配する必要なんてないんだろうけど、けど、やっぱり不安だよ。モグゾー頑張って)

 

槍ゴブと短剣ゴブでは槍の方がリーチもあって強いからノゾムは槍ゴブの方を引き受けたのだろう。実際、短剣ゴブとモグゾーではリーチの長さから圧倒的にモグゾーが有利だった。

 

「どうもーっ!」

 

早速、モグゾーのどうも斬が決まった。やった!これで、ノゾムの助けに行ける!そう思ってノゾムの方を見たら、そこには剣についた血を払っているノゾムと動かなくなったゴブリンの屍がいた。

 

「あぁ、モグゾーも倒したか?よし、ハルヒロたちの方に行こう」

 

そして休むことなくノゾムはハルヒロたちの方へ走った。ゴブリン程度ならノゾムにとってはもう赤子の手をひねるようなものなのだろうか?

2人で1匹を相手にしていた私たちより、1人で1匹を相手にしてた、しかも私たちより強いのに私たちと同じかそれより少し早く倒してしまうなんて。ハルヒロたちの所へ走っていったノゾムを見たとき、私にはもっともっと遠くのほうへノゾムが走っていってしまっているように見えた。

 

 

 

私とモグゾーがハルヒロたちの所に移動したとき、斧ゴブと戦っていたのはノゾムだった。ランタは左腿をやられたようで出血していた。どうしてメリイさんは治してあげないんだろう?と疑問に思うよりも、どうしてノゾムが戦ってるんだろうというほうが先に感じた。ユメは尻餅をついてしまっていてハルヒロも斧の攻撃に恐れて腰が引けてしまっていた。ノゾムは斧ゴブが振り回す斧を的確に避けている。時々その振り回してる斧を盾で受け止めてから押し返して剣で斬る懲罰の一撃(パニッシュメント)が決まってそれをランタがとどめをさした。

その戦闘を見ていたメリイさんは「ぐだぐだじゃない」と呟やく。

貴方がもっと戦闘に参加してたらノゾムが戦う必要もなかったんじゃないのという思いが少しできてしまったが、ノゾムがそんな空気を払拭するように「さて、何が入ってるかな?」とゴブリン袋の中身を確認しだした。

 

 

 

オルタナに戻る帰り道、メリイさんが独り言のように呟いてたことを私は宿に戻って考えていた。

 

「━━━━彼、・・・危ないかもね」

 

それがどういった意味での危ないのかわからいけれど、少なくとも良くないことは確かなのだ。ノゾムに負担を掛けているということは百も承知だけどどうすれないいかわからない。いっそのこと皆に相談して考えるべきだろうか?

それが良い方法なような気もする。けれど私たちがノゾムに守ってもらうしかない存在であることがまず問題なのだ。これをどうにかしないとノゾムはこれからも私たちのために無理をし続けるだろう。

 

「やっぱり私も攻撃的な魔法覚えた方がいいかな」

「シホル違う魔法覚えるん?」

 

ベットで横になっていたユメが寝がえりをうってこっちを向いてきた。

 

「え、いや、まだ決めたわけじゃないんだけどね?私も戦闘にもっと参加できたほうがいいかなって思って」

「シホルは偉いな~ちゃんと考えてて。」

「え、そ、そうかな?」

 

ユメは寝転がっていた体勢を起こし、ベットのふちに脚を出して座った。

 

「うん、うちなんてまだマナトのこと頭にちらついて何も考えられへんもん」

「そ、それは私も・・・」

 

そうだとは言えなかった。マナトが亡くなって悲しかった。それは嘘じゃない。けれど、明日を生きていくことが辛くなるほど心に衝撃は受けなかったのも事実だった。

 

「・・・ユメはさ、今日のノゾムどう思った?」

「ノゾム?う~ん、メリイちゃんの相手大変そうやな~って思ったぐらいかな~?」

「う、うん。それは私も思った。」

 

明日からもメリイさんと顔を合わせないといけないと思うとちょっとだけ怖いものがある。しかしユメは相談相手としては少々良くはなかったので気分転換することにした。

 

「私ちょっと外出てくるね」

 

私は部屋を出て外のベンチのある場所に移動した。ベンチに腰掛けて夜空を見上げる。これが意外と心を落ち着かせてくれるものだと感じて時々こうして見上げることがある。また私はノゾムのことについて考えだす。

一先ず、私たちがノゾムを助けることができるくらい簡単に強くなる方法なんてない。

ならば、私にできることって何だろう?と考えてみる。強い魔法を覚えて私も一人で戦えるくらい強くなる?・・・いやだめだ。魔法を覚えるにはギルドで7日かけて覚えなくてはいけないし、その魔法を練習する時間も必要だ。他に私ができること?例えば料理とか?・・・ううん、これもだめ。そこそこ家庭的な料理はできると思ってるけどモグゾーに負けちゃう。男の人なのにモグゾーの料理の腕前は私よりもはるかに上手だし、それに今思えばノゾムも料理できるんだった。中々、思うようにノゾムのためにできることが思いつかない。

 

(でも、このままだとノゾムがマナトみたいに死んじゃうかも。それだけは絶対だめ!)

 

私ができるノゾムの疲れを癒す方法何か、何か、・・・その時私が思いだしたのはランタの言葉だった。

 

 

 

「ち、違うぞ!オレじゃないからな!ノゾム!ノゾムだから!ノゾムがシホル見たいって言ったから!オレは何も見てねぇし、聞いてもねぇからな!」

 

 

 

 

...え?。

....いやいや。

........でも。

..........ッつ!

 

 

 

 

私はいつもノゾムが風呂から帰ってくるのを待ち構えていた。沐浴場から帰ってくるには必ずこの道を通る必要があるからそこで待ってれば必ず出くわせる。案の定、ノゾムが角を曲がってでてきた。行け!

わかってるんだけど足が動いてくれない。恥ずかしさからか身体が言うことを聞いてくれなかった。私はどうにか声だけでもと思い口を動かした。

 

「ノ、ノゾム!」

 

ノゾムはすぐに気づいてくれて立ち止まってくれた。

 

「こんな時間にどうたんだ?身体冷やすぞ?」

「あ、う、うん。そうだね。」

「うん?何か話でもあるのか?」

「え?・・・うん。」

 

もうこの時点で私の顔は真っ赤になっているだろう。

 

「じゃあ俺も湯冷めしてもいけないし、ちょっとだけな?あっちで話そうか」

 

ノゾムについて行って先ほど座っていた場所に戻ってきた。ノゾムは私が何か話があるものだと思って、私のほうを見て私が何か言うのを待ってくれている。今から言うことでノゾムとの関係が破綻してしまうんじゃないか?もしかしたら嫌われてしまうかもしれない。色々なことが試行錯誤してもう正常な思考はできず、もう女は度胸!とどこで聞いたかもわからない言葉を信じて覚悟を決めた。

 

「あ、あのね。前にランタが覗きしてきたことあったでしょ?」

「あぁあったな。それについてはホントに悪かった。どこかでちゃんと謝るつもりだったんだけど、シホルには避けられてるようだったからな。ホントにすまなかった。」

 

ノゾムは深々と頭を下げてくれた。.....じゃなくて。

 

「あ、うん、それはもう、そのいいの、ちゃんとあの時も謝ってくれたし。」

「そうか?でも嫌な思いをさせてしまったようだっしな。何かまたしてほしいことがあったら言ってくれ。何かしらの罪滅ぼしくらいするからさ」

 

ノゾムが笑って言う。

 

「・・・ノゾムは本当に優しいね。」

「そうか?そんなこともないんだが」

「ううん、優しいよ。いつも誰よりもパーティの雰囲気に気を使ってくれてるし、いつも率先して敵と戦って倒してくれる。そんなノゾムに私たちは甘えてばかりだよ。」

「そんな直接言われると少し照れるな。」

 

ノゾムは頬を指でかきながら私と合っていた視線をそらした。

 

「だからね、私考えたんだ、私がどうやったらノゾムの役に立てるかなって。どうやったら負担を減らせるかなって。でも私ができることなんて限られてるからあんまり何もできそうになくて。・・・でね・・・その・・・」

 

私の言葉の歯切れが悪くなったためにそっぽ向いていた視線をまた私に合わせる。けれど今度は私がノゾムから視線をそらして俯いてしまった。ノゾムは何も言わず私が話すのを待ってくれているようだった。

 

「それで、・・・ラ、ランタが、前に、・・その、ノ、ノゾムが私のそのは、裸を見たがってるって」

「っつ!いやそれはだな。何て言うか。いやすまん。覗こうとしたことには変わりないしな。ごめん。」

「ち、違うの!・・・ふぅ~」

 

私は呼吸を落ち付かせた。

 

「だから、もしノゾムがね?その本気なんだったら・・・見せても」

「・・・っは?」

 

ノゾムのどこか気の抜けた声が聞こえたがも私にはこの時聞こえていなかった。

 

「ううん、ノゾムがしたいんだったら・・・」

 

私はそこで顔を上げてノゾムを見て言いきった

 

「・・・・・いいよ?」

 

この瞬間、私は、あぁこれでもう死ぬまで羞恥心に悶えることはないだろうな~と現実逃避しながら、目の前で空いた口がふさがらない状態のノゾムを見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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