灰と幻想のグリムガル Extra   作:キリュウ

10 / 23
なんとお気に入り数が350を超えたということで、
ホントこんな駄文をありがとうございます!

作者の自己満足で書いているのでところどころ、
はぁ?ってところあるかと思いますが、ご容赦ください!

では本編どうぞ~


第九話 : 最悪の現実

 

 

 

俺はすぐにモグゾーが戦っているホブゴブリンの所に加勢に行った。ホブゴブリンは後ろから来ている俺に気付いていなかったので、ユメの斜め十字を模倣して、斬りかかる。ホブゴブリンは「グアァァ」と叫び俺の方に振りむいた。そこでマナトたちも俺が加勢に来たことは気づいたようで、ハルヒロたちは助かったと言わんばかりに俺の名前を呼ぶ。

 

「それで、これどういう状況だ?なんでホブゴブリンがもう1匹いる?なぜゴブリンが3匹じゃなくて4匹なんだ?」

 

俺は少し早口になってしまっていた。しかし、こんな状況で俺も落ち着いてはいられないのが事実だ。

 

「うん、実はあの時4匹だけが座ってたんだけど、実は近くにもう一つの集団がいたみたいなんだ。今は4匹だけど、もしかしたらまだいるかもしれない。」

 

マナトは俺に説明しながら怪我をしているハルヒロの左肩を治していた。俺も一端、ホブゴブリンをモグゾーに任せて、ランタの所に移動する。マナトが治癒魔法を使いすぎているのはマナトの表情でわかった。俺はランタの額に剣先を向ける。

 

「光よ、ルミアリスの加護の元に---騎士の恩恵(ファーストエイド)

 

剣先の光がランタの頭の方へと流れていき血が止まり、ランタは血が止まるったのを確認するとすぐに立ち上がった。

 

「クッソ!ふざけやがって、ゴブ野郎の分際で!」

 

ランタの顔色は見るからに悪く、やたらと汗もかいてる。俺やマナトの治癒魔法は流した分の血は戻らないので本来は水分を多くとって安静にさせたい所だが、今はそうも言ってられない。ランタは早速板金の鎧を着ているリーダー格のようなゴブリンに攻撃しようと突っ込んだ。だが、ランタのロングソードでの攻撃は鎧に簡単にはじき返されていた。鎧を着ているゴブリンの相手も大変なようだが、それ以上にホブゴブリンを相手しているモグゾーが限界に近かった。

 

「モグゾー変われ、俺がやる!」

 

俺自身も体力が戻ってるわけじゃないが、肩で荒い息をしているモグゾーよりはまだホブゴブリンの相手ができる。といっても今回はホブゴブリンだけが相手じゃなく遠くの方から遠距離武器を使用しているゴブリンがホブゴブリンを援護していて先ほどと同じような戦い方ができない。俺はパーティ全員を見回し、ある決断をしようと決めた。

 

「マナト!引こう!このままじゃ全滅だ!」

 

マナトは俺の言葉にすぐに納得し、号令した。

 

「みんな、逃げろ。逃げるんだ!」

 

マナトの号令を受けて興奮していたランタも、冷静に戻ったのか、やばいと思ったのかすぐに逃げようと走っていた。全員が一斉に逃げようと走りだすとそれを追ってゴブリンたちも追ってくる。

 

(このままじゃ逃げ切るどころか全滅だ。・・・仕方ない)

 

「ノゾム!?どうしたの、早く!」

 

横を走っていたシホルが俺が立ち止まったことに驚いて叫ぶ。それに気づいたマナトたちも「どうしたんだ!?」と慌てた声を出しながら止まっていた。

 

「・・・お前らは先に行け。再集合はダムロー旧市街の入り口付近で落ち合おう。」

「はぁ?お前、何かっこつけてんだよ!早く逃げんぞ!」

「いや、このままじゃ逃げ疲れたところを襲われて全滅だ。だから誰かが敵の注意を引いて一方を逃がすしかない。その役目を俺がやる。現実的に考えて俺が一番生き残る可能性が高いからな。」

「あかんよそんなん!一人なんて危険すぎるやん!」

「だったら私も・・・」

 

ユメとシホルがすぐに反対してきた。

 

「いや、モグゾーはホブゴブリン相手に体力が削られてるし、ランタとハルヒロは怪我をしたからだめだ。マナトも治癒魔法の使いすぎだ。ユメとシホルに関しては二人を守ってやれない可能性がある。」

「だ、だけど・・・」

 

シホルはそれでも納得できないと食い下がるが、ここで説得している時間などない。ゴブリンが俺たちに追いつくのは時間の問題だろう。マナトも現実的にそうなる可能性があるのがわかっているからか、ダメだとはっきり言えず、苦い顔をしていた。

 

「はっきり言って今のお前らは足手まといだ。だから行け、俺はそう簡単に死なないからさ。」

 

俺はその言葉を最後に来た方向に戻り、敵のゴブリンに近くにあった石をぶつけ注意を引きつけマナトたちがいる方向とは反対の方向に走り出した。

 

 

俺を追ってきているゴブリンは3匹。ホブゴブリンは動きが遅いこともあって追ってきているゴブリンの中にはいなかった。その代わり鎧を来たゴブリンと遠距離武器を所持したゴブリンが1匹、あとは普通のゴブリンが1匹追ってきていた。鎧ゴブリンはまるで戦闘の訓練を受けてきたかのように、敏捷で、剣さばきも中々のものだった。囮役の俺はできるだけ敵と戦わず逃げきる予定だったが、どうやらそれも簡単にはさせてもらえないようだ。俺が建物の横を曲がろうとしたとき、目の前をボウガンから放たれた矢が壁に突き刺さった。

 

「っつ、鎧よりあの遠距離のやつが邪魔だな。」

 

俺が逃げ切れると思った先に矢を放ち、それで一瞬ひるんだところを鎧と普通のゴブリンが襲ってくる。これだけの連携をされるとは思っていなかった。

 

(別に倒す必要なく逃げ切れたらよかったが、思った以上にあいつら強い。いや、あの鎧が賢いな。)

 

倒さず逃げるというのは一端諦め、どうにかしてあいつらの連携を崩す方法を考えることにした。一先ず俺は物陰に身を潜め、走ってきた息を整える。

 

(どうにもさっきから鎧の奴が俺に攻撃してこないな。何ぜだ?今も俺を探すのをボウガンを持ってるやつと剣をもつ普通のゴブリンにだけさせているし、・・・もしかしてあいつ俺に殺される危険を感じてるのか?)

 

俺は隠れている廃屋から少し顔のぞかせて3匹を確認した。今は鎧が壊れた家の塀の上の所で何か他の2匹に指示していて、指示された2匹は言われた方向を探していた。

 

(あいつずっとあそこで指示を出してるな。それにまだ俺の場所は気づかれていない。・・・いけるか?)

 

俺は色々考えたが結局、あの鎧のゴブリンを倒せればこいつら2匹は先ほどのような連携は取れないと仮定した。もし、鎧のゴブリンがいなくても連携が取れるのだとしても、鎧がいなければ2匹を倒すことはそれほどでも難しいことではない。

考えた作戦を実行するために、まず、俺は移動するときに音がなる鎧を脱いだ。怪我をする可能性が随分あがるが、音がしては今からやる作戦が失敗する可能性が高まるので多少の怪我は諦めた。そして軽装備となり上はローブを羽織るだけとなった俺は剣を持ち、盾はその場に置いておき、今隠れていた場所から移動して3匹が視認できる場所に移動した。外を覗くと、ちょうど鎧の近くに2匹が集まっている。それを確認すると俺はその場に転がっている石を先ほど置いてきた盾にぶつけた。コンッ!と音が聞こえたのはもちろん俺だけではなく俺を探している3匹とも気が付き、鎧のゴブリンは音がした方向を指さし、2匹に確認に行かせる。俺は2匹が建物の中に入っていくのを確認すると、隠れていた場所から飛び出し、鎧のゴブリンに向かって突撃した。予想外の方向から出てきた俺に鎧ゴブリンは反応は遅れていた。

 

(他の2匹が戻ってくるまえに殺す!)

 

鎧を身にまとっているので剣で斬りつけても弾かれるのはわかっていたので俺はまず剣を持っていた右手を切断した。それによってゴブリンは剣を落とし武器が無くなった。大抵のゴブリンならこの時点で狼狽えだすのだが、このゴブリンはやはり戦闘なれしているようで、右手が無くなってもまだ思考力が残っているようだ。俺とすぐに距離を開けようとするのではなく、冷静に俺の目を見て睨んでくる。鎧を着ているので心臓に剣を刺すのは難しいので、必然的に狙いは頭になるのだが、このゴブリンは兜をかぶっていて頭を守っている。もう一撃でとどめを刺すには首を切断するしかない。俺はゴブリンの首をめがけて剣を振りぬくが、そう簡単にゴブリンもやられるわけなく、紙一重ではあるが、俺の剣を避ける。

 

(そろそろ他の2匹が戻ってくるか?・・・あれをやるしかないか)

 

俺はなるべくゴブリンに俺の武器がもう剣だけしかないと意識づけるまでゴブリンの前で剣を振り回した。そしてゴブリンとの距離が近づいたときに俺はわざと剣をゴブリンの前に落とした(・・・・)。それによって、ゴブリンはその落ちた剣を拾おうとする。俺はその剣を拾おうとするゴブリンのこめかみを蹴り飛ばす。頭を蹴り飛ばされ、一時的な脳震盪状態のゴブリンは頭をふらふらさせながら尻もちをついた。もう後は簡単だった。倒れたゴブリンの首を無常に斬った。

 

「っつ、・・・はぁ~」

 

何度やっても慣れない殺すという感覚を感じながら俺は息を整えた。

 

(ふぅ~一か八かだったが上手くいったな)

 

もし、俺が落とした剣をゴブリンが拾おうとしなければ、肉弾戦になっており、戦闘がもっと長引いてしまっていただろう。2匹が戻ってくるまでに倒さなければならなかったので決死の覚悟だったが、上手くいって何よりだった。しかし、俺はこの時一瞬安堵してしまっていた。これで逃げるのがずっと楽になると、そう安堵してしまったのだ。そのせいで俺は俺に向かってくる矢に気付くのが遅れてしまった。

 

(っしまっ・・・!?)

 

しかし、そ遠距離型のゴブリンが放ってきた矢は俺に当たることはなかった。なぜなら、その矢は俺ではない()に当たったのだから。

 

「な、なんでここにいるんだシホル(・・・)!?」

 

俺の代わりに矢があった人物はシホルだった。シホルは俺に倒れこんでくる。抱きかかえたシホルの右肩肩甲骨あたりには矢が刺さっていた。

 

「よ、よかった。ノゾムに、ッつ!・・当たらなくて。」

「・・・ちょっと待ってろ。」

「うん、ごめんね・・・」

 

俺は自身の内の中に沸き起こっている怒りの感情を押し殺して2匹のゴブリンの元に走った。2匹のゴブリンは俺が鎧を倒したのは気づいていたようで、怒るように「ギャアァァ!」と叫んでいたが、俺の耳には入っていなかった。俺の頭の中には一秒でも早くこいつら2匹を始末することだけだった。遠距離型のゴブリンは俺が走ってきたので慌ててボウガンに矢を用意しようとする。そこで俺は剣をボウガンを持ったゴブリンめがけて投げつけた。そして刺さった剣を近づいたときに引っこ抜き、そのまま体を横に一回転させゴブリンの首を落とす。そばにいたゴブリンが俺の方に剣を振り下ろしてきたが、俺はそばにあった盾でそれを受け止め、そのまま盾でゴブリンの身体を押し返しのけぞったところを心臓めがけて剣を突き刺した。俺は2匹のゴブリンが持っていたであろう金目の物には目もくれずシホルの所に急いで戻った。

 

「矢を抜く。少し痛いだろうけど我慢しろよ。」

 

だいぶ痛いのだろう、シホルは声を出さず小さく頷くことしかできていない。俺は少しづつ抜いては痛みが余計かかるだとうと思い、割と強めの力で抜きとった。シホルの瞼には涙が少しあふれていた。

 

「よく頑張ったな。今治す。---光よ、ルミアリスの加護の元に---騎士の恩恵(ファーストエイド)

 

俺の治癒魔法によってシホルの傷跡も綺麗に消え去った。

 

「あ、ありがと。そ、その、・・」

「何で来たのかとか色々聞きたいことがあるけど、とりあえず、ありがとう。あの時俺は完全に油断していた。」

「え!?あ、う、うん。役にたてたならよかった。」

「けど、無理するなよ。確かに助かったのは事実だけど、シホルは女の子なんだから自分から矢に飛び込んでいったりしたら消えない傷跡とかできちゃうかもしれないだろ?」

「うん、けど私はノゾムに治してもらえるけど、ノゾムが怪我したら私は治せないから、その、咄嗟に」

「そうか、そんなこと考えてくれてたのか。」

 

俺はシホルがどうやってここに来たのかの経緯を聞いたら、俺が飛び出した後、どうしても不安になって追いかけてきてくれたらしい。俺の逃げてる方角がわからなかっただろうと聞いたら、それは感でおいかけて来たらしい。無鉄砲にもほどがある。そして先ほど俺が鎧ゴブリンと戦っているところを発見したのだが、遠くからボウガンで狙われていたので咄嗟に飛び出して俺を守ってくれたということらしい。

 

「あ~帰ったらシホルちょっとお話な?」

「え?あ、う、はい。」

 

ここでずっとシホルと話していては別の敵に襲われる可能性もあるので、俺の体力が回復したところで集合場所であったダムロー旧市街の出入り口に移動した。

 

 

しかし、出入り口に移動してもマナトたちはいなかった。俺たちのほうが先に来たということか?とシホルに聞くと流石にそれは無いだろうと言うことだ。シホルがマナトたちと別れた時点で出入り口まであと少しというところまでは来ていたそうだ。まぁ確かにどう考えてもあれだけ逃げ回っていたのに、俺たちのほうが先に来ているということはないだろう。

 

「ってことはあいつは俺たちを置いて先に帰ったってことか?そんなことをあいつ等がするとは思えないしな。」

「うん、マナトくんなら待ってるって言うだろうし。」

 

(俺たちを置いてでも早く帰らないといけない用事ができた?それとも新たな敵に出くわしたか?)

 

「情報が少なすぎる。敵に襲われてまた別の所に隠れたとも考えれるし、何かヤバイことが起きてオルタナに帰還したとも考えれられる。」

「ど、どうする?探す?それともオルタナに戻る?」

「一先ずもう少しだけここで待ってみよう。15分ほどしても現れなければオルタナに帰還しよう。このままここにいても夜になるしな。マナトたちも夜が近づけばオルタナに戻るだろう。」

 

そうして俺とシホルは15分間待ったが結局ハルヒロたちは現れなかった。俺とシホルは腰を上げ、オルタナに向かった。一先ず宿屋に戻ってあいつらの確認をしようと話ながら帰っていたのだが、宿屋につくまでに彼女に出会った。オルタナの入り口にユメが一人立っていたのだ。

 

「お~いユメ、お前たち戻ってきていたのか!全員無事か?」

「・・・ノゾム?」

 

ユメは俺たちに気が付いたらしく、下を向いていた顔を上げた。しかし、その彼女の顔は何かがあったと言わんばかりの顔をしていた。

 

「ど、どうしたのユメ?何があったの?」

 

シホルが心配そうに声をかける。ユメは泣いてはいなかったが、とてもつらそうな表情をしていた。

 

「ノゾム、・・・シホル、・・・」

 

俺たちの名前を呼んでから、ユメはシホルに抱きついた。シホルは咄嗟にユメを受け止めるが何があったのかわからないので、とりあえずユメの背中をさすっていた。ユメを一先ず落ち着かせて何があったのか聞くと、とりあえずついて来てと言うのでついて行った。連れていかれた場所はルミアリス神殿で、そこにハルヒロたちがいた。

ランタは壁にもたれて力なく座っていて、モグゾーは茫然と立ち尽くしていて、そしてマナトが祭壇の上で横になっている。もうその光景を見て俺には最悪の結論しか導き出せず、シホルも「う、うそ・・」と小さい声で呟いた。

 

「なぁ、ハルヒロ。・・・マナト、・・・何で寝てるんだ?」

 

俺は知りたくない、けど知らねばならい事実をハルヒロに尋ねた。ハルヒロは一瞬下を向いてから、顔を上げて答えた。

 

「ノゾム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マナトさ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死んだんだって(・・・・・・・)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、何が起きたんだ?

 

 

 

 

 

どうしてこんなことが起きたんだ?

 

 

 

 

 

聞きたいことは色々あったが声には出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからそこで俺が言えた言葉は

 

「・・・・・そう・・か。」

 

たったこれだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

わかっていても受け止めたくない事実が俺の心にのしかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、俺たちがグリムガルに来て初めての死者が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 













えぇ~いつもながら読んでいただきありがとうございました~

今回で、アニメの4話の所まで来ました~
いや~マナト君を救えなくてごめんなさい!

え~誤字報告を丁寧にしてくださる人もおられて本当にありがとうございます!
もしミスに気が付かれたかたがいましたらご報告いただければ直しますので!

それでは最後に、
皆様からの温かい感想いつもお待ちしております!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。