ダイヤたちが誠を連れ出して数分後。
「相変わらず変わらない風景だね」
こっちに気がついて振り向いた。
屋上に来て頭を冷やすためか、千歌は町並みを見下ろしていた。
「千歌なんで、喧嘩したの?」
「だって……」
唇を尖らせて、そっぽを向く。
「皆が私抜きで楽しそうに遊んでいたから」
あー、なるほど。それで、ずっと機嫌が悪かったのね。
相変わらず世話が焼ける千歌。妹がいたらこういうものなんだろう。ダイヤをのことを思う。
「千歌覚えてる?」
「なにが……」
「千歌が私の家に来ようとして迷子になった時の事」
「うん……覚えてる」
小さく頷いて答える。
「その時、いち早く千歌を見つけたの誰か覚えてる?」
「いち早く……見つけたのは」
「忘れたの?」
「忘れてないよ!まー君だよ!」
少し意地悪しすぎたかな。
大きな声を出してくる。
「まー君はいち早く来てくたよ。誰よりも早く、来てくれた」
その時を思い出しているのか、微笑む千歌。
あの時は誰よりも不安なのは千歌だったのは間違いない。それでもあの時の事を恐怖やトラウマではなく一つの
思いでとして残っている。
「あの時の果南ちゃんの家に向かおうとしたらいつの間にか知らない場所に迷っていてなだよね、ははは。後で知ったけど果南ちゃんの家と真逆に向かっていたんだよね」
真逆に向かっていたのですか。初めて知った事実だよ。
全くいつも心配かけるけど、その笑顔を見るだけで私は安心するだよ。
だから……
「だから……」
「果南ちゃん……?」
「だから、仲直りしよ」
「でも、千歌、酷いことをまー君に」
しょんぼりとする。
全く、いつものような元気はどこに行ったのか。
「はあー」
「え、ため息……」
なんで気づかないかな。
「誠も同じことを思ってるよ」
私も思っている。
「なんで、わかるの?」
なんでって、それは。
「私は二人の、世話が焼ける弟妹のお姉ちゃんだから」
「果南ちゃん……」
「だから、行こう!」
「うん!」
「「千歌ちゃん!!」」
「ルビィちゃん、マルちゃん!」
「大変だったね」
「曜ちゃん。けど、これで」
「さすが、お姉ちゃん」
「え、ちょっと、曜!」
「フフフっ」
もう一人、妹がいた。
「果南ちゃん、曜ちゃん!行くよ!」
「まったく、待ってよ千歌」
千歌も思っているんでしょ。同じことを。
「元気だね、二人とも……」
なぜか、一人残った屋上から呟きが聞こえた。
「どうやら、来たみたいね。果南」
「お待たせ、ダイヤ」
「全く遅いわ」
「ご、ごめんね」
「う、そんなに待ってないわ」
「優しいずら、喜子ちゃん」
「お疲れさま曜ちゃん」
「うんん、そんなにだよ梨子ちゃん。それに頑張ったのは果南ちゃんだから」
「へー、そうなんだ」
「や、やめてよ。ほら千歌」
私は千歌の背中を押す。
「う、うん……」
千歌の目の前には誠の後ろ姿。
後ろを向いているためか、こっちには気が付いていない。
「……まー君」
「あ、千歌……」
千歌に気がつき振り向く。
「「ごめん」ね」
頭を下げる二人。
全く同じこと言う。
この二人は本当に似たもの同士なんだから。
パンパン
手を叩いて、この空気を変える。
「これで仲直りしたね」
「果南姉」「果南ちゃん」
「さあ、今日は満月みたいだよ」
私は二人の手を繋ぐ。
「皆の所に行こう」
三人で鞠莉、ダイヤ、梨子ちゃん、ルビィちゃん、マルちゃん、喜子ちゃんが待ってる赤く染まる海辺へ。
「あ、やっと来た。結構時間かかったね」
「バツとして、今日は夜の海を皆で見ましょう」
「一緒に満月見えるね」
「そうずらね」
「さあ、今宵はリトルデーモンたちで楽しみましょう」
「よっちゃん、私リトルデーモンなの?」
「なに言っても無理だとおもうよ」
「それじゃ、お菓子とか必要だね」
「千歌は仕方ないね。私が買ってくるよ」
「果南姉」
「あれ、誠?」
「一人で行くのはずるいよ」
「ずるい?」
「ありがとう」
「なにいきなり」
「だってこんなこと今じゃなきゃ言えないから……」
「フフフッ、こっちこそありがとう」
その言葉は二人の間に流れる夜の風ように流れて消えた。
それでも、今日のこのことは消えない思い出になった。
なんとか書き上げることができました。今回は果南ちゃんが主役です。
果南ちゃんは皆のお姉さんってより、お母さん?みたいな人だと思います。あの包容力があったら自分は甘えて生きていきそう。ダメ人間になりそうです。
ああ、あんなお姉ちゃんが欲しいと思って今書いています。
なんでか眠いよ。果南姉。
それでは、明日と言いながら今日になってしまいましたが。
おめでとう、曜ちゃん。
そして、遅くなりましたがお気に入りにしてくれた皆さんありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
それではまた、会いましょう。