日が傾き、空がオレンジ色に染められていく。
PV撮影は無事終わり、皆帰りの支度をしていた。
「そうだ、明日ってどうなるんだ?」
明日は日曜日。今日みたいに練習するなら遅刻しないようにしばければ。
「たぶんないと思うよ。明日は家の手伝いをしないといけないから」
そっか、果南姉は家の手伝いがあるのか。そうすると千歌も家の手伝いがあるな。
「このグループの皆って家族がなんらかの仕事をしているよね」
「そうだね。千歌は宿の経営、果南姉はダイビングショップ、それで曜がフェリーの船長で、花丸さんはお寺だっけ?」
「そうそう。それより、もう他の皆のことを名前で呼んでいるんだね」
「なんかわかないけど、名前で呼んでくれって言うから」
「それで、私だけは『果南姉』のままなんだ」
「え、ダメだった。果南姉」
「いやーほら、小さい頃はいいけど……今は」
「えー、俺にとっては果南姉は果南姉なんだけど」
「うっ……それを言われると」
困った顔をする。
そんなに困っていたとは思わなかった。
「わかったよ、果南」
「え……」
「え、なにその驚きの顔は⁉」
そう驚かれるとこちらも驚いて反応に困るのだが。さすがに呼び捨てがダメだったか。そうだよな、年上だからさん付けで呼ばなければな。うん。
「果南さん。大丈夫ですか?」
「…………」
「果南さん?聞こえますか?果南さん?」
「…………」
ダメだ。うつむいて、返事がない。
果南さんは返事がない。どうやら屍のようだ。
って、テロップが出てきそうだぞ。
でも、本当に大丈夫か?なんか、顔赤いぞ?もしかして練習のやりすぎで熱でもだしたか?
「少し失礼しますよ」
果南さんの前髪を上げ、自分の顔を近づける。
「………っ!」
おでこに触れる。
「なな、なにしてるのー!?」
慌てて突き飛ばされた。
「なにって、顔が赤いから熱があるのかと思って」
「へ、そそっか……。ありがとう」
「どういたしまして。そのようすだと大丈夫そうだな。そんなに元気があれば」
「うん。熱はないから心配してくれてありがとう」
「いいよ、果南さん」
「それで、さ。やっぱり……」
「やっぱり?」
「名前、果南姉でいいや」
「けっきょく、そうなるのか」
まあ、そっちのほうが俺としては気が休まると言うのか安心するから、正直にうれしい。
「なーに、二人で楽しそうにしてるの?」
「あ、小原さん。お疲れ様」
「ノーノー、マリーね、マリー」
「マリーさん……」
「ついでに、皆みたいに『さん』付けなしで」
「え、ま、マリー」
「うん。グッドできるじゃない」
「……遊んでるなマリーは、ってなんで誠顔が赤いわけ!」
「いや、だって……」
「フフッ、照れてる姿も可愛い!」
「だから!そうやってからかうから嫌なんだよ!」
「へー、そうなんだ」
なんだろう、マリーの目が新しいオモチャを見つけた
「……あーあ、あれは楽しむ目だ」
なんだろう、後ろから果南姉の恐ろしい一言が聞こえた。
「なにしてるのかしら、あなたたち」
また、声が。
「ダイヤさん……助けて……」
「な、なにしたのあなたたち」
怖い、この人怖いよ。金髪ハーフ怖いよ。
「また、二人は変なことを」
「やだなー、マリーは可愛い子を愛でただけだよ」
「マリーは一緒にしないで今は私は--」
なぜか説明で途中でまた顔を赤くする。
「ごめんなさい。小原さんは別として、今回はあなたが悪いみたいね」
ダイヤさんは俺を睨む。
「えー、俺が悪いの!」
「全くあなたが来てから……」
「そ、そうですよね。男の俺が女子高にいるのが間違ってますよね……」
ははっ、そうだよな。前々から思っていたさ。男が女子高に出入りしてるなんて。回りからも怪しい目を向けられているのを知っていたさ。ああ、いくら千歌に頼まれたからって、考えなしに行動したな。たった数日だけだったけどいろいろと楽しかった。こんな運命は数年前は考えてなかったな。
「すみませんでした。数日でしたが楽しかったです……」
「え、ちょ……」
「果南姉、久々に会えて嬉しかったよ……」
「誠……」
「マリーもその笑顔を皆に届けて……」
「うん……」
「皆さんがナンバーワンアイドルになるのを願ってます」
頭をさげ、その場から去ろう。
今日は家に帰って早く寝よう。
明日は家から出ない。引きこもる。
「待ちなさい」
腕を捕まれる。
「なんですか……」
「あなたは、狂わせるのよ」
まっすぐ目を見て。
「私を皆に溶け込ませるのよ……」
握る手が強くなる。
「それにまだ、手伝ってもらってないわよ。生徒会」
「はい……!」
久しぶりの投稿です。
今回は前書き無しで投稿してみました。
三年生の三人組ではダイヤさんはツッコミ役なんでしょうか?
そうすると、μ’sの絵里と同じで大変なんだろうな。
μ’sと言えばもう1つの投稿もよろしくお願いいたします。
それでは、また会いましょう