輝け!イチ・ニ・サンシャイン‼   作:N応P

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BS 海は地平線まで続いてる

 

 

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 彼と会ったのは本当に小さい頃だった。

 

 突然の出逢いなのに不思議と違和感なく楽しんだ。

 

 彼がいる日常。彼がいなくなった日常

 

 今ある日常。なくなった日常があった。

 

 そしてこれから始まる私たちの日常。

 

 

 

 

 

 

「長旅ご苦労様です。お荷物をお持ちします」

 

 

 俺はでかい荷物をお客様から預かる。

 笑顔で接して、ここで過ごす数日間を満足してもらう。

 

「この旅館の名物は富士山が見える露天風呂なんですよ」

 

 そう言ってお客様を旅館に案内する。

 

 本当に俺がなぜこのようなことをしていると言うとそれは数時間前に戻る。

 

 

 

 

 

「ふぁー、眠いな」

 さすがに少し寝すぎた。寝すぎるとさらに眠くなるのはなぜなんだろう?これって俺だけなんですかね?

 朝の気持ちいい太陽の光は光合成できそうだ。

 ああ、また眠くなってきた。

 ボーとしていると携帯が歌いだした。

「はいはい。誰ですか?」

 液晶画面に映し出される名前。

「……はい?」

 耳から少し放して構える。

『あ、もしもし!』

 耳から放しても響く声。

「どうした、今日は練習休みの日だよな」

 最近はバイトを行いながらも練習には顔を出している。

 その中での唯一の休日。ゆっくりさせてくれよ。明日は騒ぐ日なんだから。

『その、今からって家に来てくれても大丈夫?』

「今からか……」

 今からは少し用事があるからな。

『今日団体さんのお客さんがいっぱいでさらに、今日に限ってお手伝いさんが風邪引いて休んじゃって』

 おお、それは大変だ。

 人がいないのに人が大勢来る。そんな中働くとか大変だな。

『お願い!助けて!』

 

 助けて……。

 

 そっか。何してるんだ俺は。

 アイツが俺を頼ってるだ。だったら答は一つ。

 

「今からそっちに行くから」

 

 俺はそう言って歩きだす。

 電話の向こうで何度も『ありがとう』を繰り返す。

 アイツが困ったら俺は助ける。

 約束は忘れない。

 

 

 

 

「いやー、来てくれて助かったよ」

「本当ねー」

 千歌のお姉さんの美渡姉と志満姉たちから言葉をもらう。

「いえ、暇だったので」

「でも、あの誠君が」

「大きくなったなー」

 いやあの志満姉と美渡姉さんたち、俺の身体をベタベタと触るのやめてくれますか。

 

「あー!お姉ちゃんたちずるい!」

 

 旅館の服装をした娘がこっちやってくる。

 ほらみろ、千歌がカンカンみかんになっちゃた。

 

「千歌もまー君を触りたい!」

 

「お前もかよ!」

 

 なんなの!高海三姉妹は人の体をベタベタ触りたがるの!そのような人種なの!

 

「千歌ちゃんはいつも触ってるわよね」

 

「少しぐらいいいだろ」

 

「ずるいよー!千歌も触りたいー!」

 

 ああ、これが高海三姉妹の姉妹喧嘩か。

 こんな廊下で大声で喧嘩するとはさすがだな。

 お客様に迷惑かけるし、さらに言えばあの人に怒られるぞ。

 

「なにやってるのー!」

 

 

「「「っ!!!」」」

 

 

 あーあ、怒られた。

 こちらの方に歩いてくる千歌に似た小さい人。

 高海三姉妹の母であり高海家のお母さんである。

 

 

「お客様がいるのにあんたたちは、まったくなんで毎回毎回迷惑をかけるの!ほら、さっさと部屋の案内と部屋の掃除に風呂の掃除をしてきなさい!」

 

 

「「「はいっ!!!」」」

 

 

 お母様の一言で素早く動く高海三姉妹。

 お母様すごいです。

 

 

「誠くん」

 

「は、はい!」

 

 

 な、なに!え、怒られるの!俺怒られるの!やだ、怖い!待ってください、今のことは俺悪くないんです!いえ、俺も悪いです。ですから怒るなら優しく怒ってください。優しく怒るってなんだよ!怒ってるだから優しくもなんにもないだろ!

 さっきから一人でぐるぐるなに言ってるの俺!

 あわあわ、とうとう目の前まで来てしまった。心を決めろ!お前は誠。自分の名前のように自分を信じろ。

 

 

「誠くん。今日はありがとうね」

 

 

「うぅ、え……」

 

 

 ありがとう?俺に言ってる?

 

 

「あの三姉妹があんなに楽しくしてるのは久しぶりだから」

 

 

 え、俺が知る限りあの三姉妹は毎日楽しそうに騒いでますよ。

 

 

「誠くんが戻ってきてくれてから、毎日千歌は楽しそうに誠くんのことを話してるわよ」

 

 

 うわー、恥ずかしい。なに話してるんだよアイツ。

 

 

「今日は急に来てくれてありがとうね。無理しないでね、給料はあるから」

 

 

「え、あ、ありがとうございます!」

 

 

 お手伝い気分で来たのに、まさかのバイトですか。それならおもいっきり頑張りますよ!

 

 

「今からお風呂のほうを掃除してきてくれる?」

 

 

「わかりました!」

 

 

 俺はお風呂があるほうへ向かって歩いた。

 それはうきうき気分で。

 

 

「だけどお客様に迷惑かけるのは感心しないな」

 

「は、はい……」

 

 心を落ち着かせて歩く。これ以上怒られないために。

 

 

 

 

 

 ある英雄は2000の特技を持っている。

 俺の得意なことは20000はある。

 なんてわけはない。

 俺の特技は10あるかないかがやっとだ。

 まあそのひとつが掃除である。

 俺は掃除が好きな男子なのだ。え、気持ち悪いだと。俺から言わせると部屋が汚いほうが気持ち悪い。

 これまで何度も千歌たちの部屋を掃除してきたことか。

 

 

「そう。俺は女子力が高いのである!」

 

 

 モップを片手に高らかに宣言する。

 格好はカッコ悪いが、ヤル気は格好いいぞ。

 まずはシャワーなど石鹸が残ってそうな部分を洗う。

 

「はー、さすがは旅館だ」

 

 広い。お風呂が広い。

 シャワーだけでも10はある。

 そのひとつ一つを綺麗にする。

 座椅子、桶を綺麗に設置する。

 次は風呂を綺麗にする。

 

「湯船は気持ちいいだろうな」

 

 なんてことを思い浮かべながら手を動かす。

 アワアワになったらモップやブラシで綺麗にして、ホースで洗い流す。

 

「外は熱いな」

 

 次は露天風呂を掃除する。

 太陽が照りつける熱さはさすが夏だな。

 

「あれ、まー君?」

 

 どこからか名前を呼ばれた。

 

「こっちだよ!こっち!」

 

 こっちってどっち!

 

「ここだよ!」

 

 ここってなんだよ!怖いよ!

 

「もー!女湯だよ!」

 

「あ痛!」

 

 後頭部に痛みが走る。

 足元に桶が転がってくる。桶を拾い、飛んできたほうを向く。

 

「やっと、気がついた」

 

 塀から半身を見せて手を振る千歌がいた。

 

「痛いだろ千歌!」

 

「ごめん。だって気がつかないんだもん」

 

 気がつかないんだもん。よしだから桶を投げよう。ってなに怖いとこを考えてるの!

 

「まー君もお風呂掃除?」

「そうだよ。千歌もそこにいるってことは千歌もか」

「うん。露天風呂はウチで一番の目玉だからね」

「確かにすごいな、海と富士山が綺麗に見えるな」

「でしょでしょ!」

「広いお風呂に綺麗な景色、一度入ってみたいな」

 

「一度入ったことあるじゃん」

 

「え、ああ。そうだな」

 

 あっぶねー、入ったこと忘れていた。

 忘れたことを忘れていた。

 

 

「掃除早く終わらせてアイス食べたいなー」

「だったら早く手を動かせ」

「もー、真面目すぎるよ」

「俺は真面目っていうよりこれから起きることがわかるんだよ」

「え、どう言うこと?」

 

「千歌ー!掃除早く終わらせなさい!」

 

「げ、美波姉!」

 隣の風呂場から騒がしい声が聞こえる。

 だから言ったのに。怒られるのが好きなのか千歌は。

 そして怒るのが好きなのか美渡姉は。

 俺は黙々と掃除をする。

 

 

 

 

 

「ねえ、誠くんは料理できる?」

「はい?」

 夕飯の準備を始めるため千歌母に呼ばれてみたら驚きの一言を言われた。

 確かに俺は一人暮らしで料理をしている。今現在は家族に料理をしているため少しは料理の幅が広がった。

「で、できますが」

「よし。それじゃこっちにきてくれる」

 なんだろう今の発言は失敗してしまった気がする。ギャルゲーなら積んでる。

 千歌母の後について行くと、そこは。

「さてこの魚をさばいてくれる?」

「えーとこれは(あじ)ですか」

「そう鯵。この鯵をさばいて欲しいんだ」

「さばくのですか?」

「できる?」

「ええ、果南姉に教えてもらいましたから」

 まさかアイツのためにした練習がここで役立つとか。

「おお、うまいうまい。できてるよ」

「そ、そうですか」

「さてあと5匹さばいてね」

「え、5匹!あと5匹さばくのですか!」

「それじゃ頑張ってね」

 え、えーー。放置ですか。

 

 

 

 

 

「お疲れまー君」

「お、おお……」

「すごく疲れてるね」

「そうだな今日はものすごい疲れた」

「ごめんね急に頼んじゃって」

「いや、それでも楽しかった。ありがとうな」

「それはよかった。こっちもありがとうね」

「そっか。そうだ今何時だ」

「えーと11時過ぎだよ」

「うわあーバスがない」

「あ、そうだお母さんが『今日は泊まって行け』だって」

「そうか、なら今日は言葉に甘えて」

「それじゃお風呂に入ったら、今ならお客さんいないから」

 

 

 

「ふー、まさか自分で洗った風呂に入るとは」

 今日は本当にいろいろあったな。

「さて明日のイベントどうするか」

 本当は今日明日のイベントの準備をする予定だったのに。

「明日が楽しみだな」

「明日なにがあるの」

「なにって明日はっておい!」

 隣にいつの間にか千歌が。驚いて立ったけど今裸だった。

「気持ちいいねー」

 恥ずかしいー、幼馴染に高校生になって裸見られると思った。

 だけどこっち見てなくってよかったー。

「はあーお前なもう高校生だろ」

 寒くなってきたしまた湯に入る。ばれないようにそっと。

「え、なんで?だってまー君だもん」

「はあー。そうですか」

「だけどこうやって二人きりで星を見ながらお風呂に入るの」

「そうだな、いいなこの時間」

「うん」

 

 二人で夜の露天風呂で見る星はいつもより輝いていた。

 

「また入ろうね……今度は隠してね」

 

「やっぱり見たのか!」

 

「こっちを見ないでよ!」

 

「お前、今さら言うのかよ!」

 

 なんだかんだ言いながら、笑いながらまた二人で風呂に入りたいな。

 

 




カン・カン! ミカン!
カン・カン! ミカン!
カーン・カーン!ミカン!
千歌ちゃん誕生日おめでとう!

今日1日ミカンを食べまくるよ。体が黄色になりそう。
そんなこんなで去年は投稿できなかったが今年はできたよ!お祝いできたよ!おめでとう!

千歌ちゃんの家のお手伝いが今回の話です。なんか夏休みのためお客さんも来て家を手伝ってっとダイヤさん以上にお祝いができなさそうな千歌ちゃんの誕生日。
だから、Aqoursの皆で誕生日会を開きそう。それは大騒ぎして宿の神様に怒られての繰返し。それで来年は梨子ちゃん家でおこなうことになると思う。

今回でAqoursたち皆の誕生日回は終わります。
ですが、『輝け!イチ・ニ・サンシャイン‼』に出てくる人たちは他にもいます。
その人たちの誕生日回気になりませんか?
っと言うわけで楽しみにしていてください。


地味って言われてもあなたの近くにいる千歌って特別でしょ?
あ、今『近く』と『千歌』をかけているんだ(о^∇^о)

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