12/25
「本当にいいのお姉ちゃん」
いつもは早く寝るはずなのに今夜、小さな体から考えられない声をだす妹のルビィ。
いつもおどおどしているのに今日は違った。わたくしの目を真っ直ぐ見て訴えてくる。
「本当にそれがお姉ちゃんがしたいことなの」
今日の天気は雨だった。
いつもはやな一日の始まりだが今日はあの人と待ち合わせ。
「お待たせしましたわ」
雨が降る道の向こうから走ってくる彼女の姿。
「いえ、大丈夫です。それより走って来ましたが濡れませんでしたか?」
「さすが、ここですかさずハンカチを渡してくるのは」
「えーといりませんでした」
「いいえ、ありがたく使わせてもらいます」
体を拭き終わり、ハンカチを自分のかばんにしまおうとするのを止めた。
「え、だって使って濡れてしまったのでわたくしが洗濯してアイロンにかけないと」
「いやいや、そこまでしなくってもいいですよ」
「そうなのですか?」
「いいですよ、どうせハンカチは濡れる物ですし」
「それでも借りた物はちゃんと返さないと、わたくしの気持ちが治まらないのでわ」
「そんなこと言われても……それじゃ、今からのデートを楽しみましょうよ。それで借りは無しで」
「それでいいのですか?」
「いいんです。さ、雨の日デートですよ」
今日は雨だが隣にダイヤさんがいる。
それだけで俺は幸せだ。雨の日も悪くないと思ってしまう、俺っていがいに単純な人間なのでは?
ダイヤさんの提案で今日は御用邸記念公園にやってきた。
「ここにはよくくるのですか?」
「ええ、一人で悩み事など考えごとがあるときはよく来ます。ここに来る綺麗な景色と大きな海がわたくしのちぽっけな悩みなんてどうにもなるような気がしてすっきりすのですわ」
「そうですね。俺もここに来ては癒されによく来ます」
「そうですの、ですが今はわたくしが隣にいるのですからわたくしに癒されてほしいですわね」
「ダイヤさんは癒しではなく美しいですから」
「な、なにをいっているのですか!」
顔を赤くしてそっぽを向いた。
ダイヤさんのときどきする拗ねるのも可愛いが最も可愛いのは唐突に言われて焦る姿だ。
その姿にいたずら心をくすぐる。まったく可愛いなこの人は。
付き合ってからも1日1回はダイヤさんを弄らなければ気がすまない。
ダイヤさんと付き合うことができるとは思わなかった。
俺とは住む世界が違う、格式が違いすぎる。
そう思っていたからだ。
だが違った。格式など関係なく接して結局は住む世界は同じだと考え直された。
だから果南姉とも鞠莉さんとも仲良くやってこれたのだろう。
なによりもダイヤさん自身が、
「抹茶プリンですって!それも期間限定!」
子どものようにはしゃぎ、興奮する。
これがあの黒澤家長女で浦の星女学院生徒会長の黒澤ダイヤとは驚きである。
「なにをしているのですか!はやく行きましょう!」
「わかったから、ちょっと!」
手を引かれて店内に入っていく。
食べている姿は本当に可愛く、愛らしい。
この二人の時間が永遠に続けばいいのに、俺は願った。
だが、この世に永遠はなく別れはやってくる。
その別れは二週間後唐突にきた。
「い、今なんと……」
「ですから終わらせましょう」
「なぜです、か。そんないきなり」
「わたくしは新しく好きな人ができました」
「え……」
「それに、わたくしにあなたは釣り合わないのですわ」
「……」
「ですので、これ以上のお付き合いは無理ですわ、さようなら」
「……」
目の前が暗くなるとはこの事を言うのだろうか。
俺はダイヤさんが目の前にいなくなってもその場に立ち続けていた。
気がつけば家にいて、朝になっていた。
ソファーに座りながら時計を見る。
「学校に、行かないと」
『わたくしにあなたは釣り合わないのですわ』
「うっ、なんで……」
俺はソファーで丸くなり涙を流した。
それから幾日か過ぎた。
家から出なくなり、学校も休むようになった。心配してか家に来てくれる千歌や恵達とは会わず引きこもるようになった。
もうなにもやる気がでない。住む世界、格式など関係ないと思っていたのに。
結局は釣り合わない存在だったんだ。
俺は、俺は……。
スマホから音楽がなる。
でる気力などなく鳴りやむまだ待った。
しかし、鳴りやむ気配はなく最後には留守電になった。
『ルビィです。誠さんと最近会わないので皆元気がありません。その原因はお姉ちゃんのことと関係あるのではないのでしょうか。お姉ちゃんのことについて話したいことがあるので明日の午後4時に沼津駅に来てください』
ルビィさんからの留守電は終わり、俺はベットに向かった。
次の日俺は沼津駅に来た。別にルビィさんに言われてなのでなく外にでないと行けないと思ったからだと自分に言い聞かせていた。
ルビィさんはすぐに会うことができた。
その後近くの公園に移動した。その間は無言が続いた。
「お姉ちゃんと別れたのですね」
「そうだよ。釣り合わないだって」
「違います。誠さんはそんな存在では」
「でも実際に本人から言われて」
「お姉ちゃん、結婚するんです」
「その事を言うために来たの?さらに俺を追い込むんだ」
「違います。お姉ちゃんは結婚したくありません」
「でも結婚するんだろ」
「はい。そうです」
「ならそれはダイヤさんの意思であってやっぱり」
「今から話すことを静かに聞いてください。その結婚は本当はルビィがするはずでした、しかしルビィよりお姉ちゃんを相手の方が好まれました。そのことにより仕方なくお姉ちゃんは……」
「ダイヤさんが、だから俺と別れたと」
「はい。だからお姉ちゃんはまだ誠さんのことを」
「少し考えさせてくれ。混乱してきた」
「わかりました。これを渡しときます、結婚式の案内ですここに会場も時間も書いてあります」
ルビィさんは手紙を預け帰っていった。
一人星を見て頭を整理していた。
「二人は苦しいときも、辛いときもお互いで助け合うことを誓いますか」
「違います」
「……違います」
「それでは、誓いの口づけ――」
「させるかー!」
扉を開け、会場がざわつく。
神父の話しを打ち切り現れたんだ、当たり前だ。
「誠さん!」「まー君!?」
ルビィさんと千歌が驚く。それはそうたろう立派な服装に包まれ、大切な瞬間を壊す私服姿の男がいるのだから。
「なんだね君は!」
新郎の父親だろうか、物凄く怒っている。
それに対してダイヤさんの家族は来るのが遅いとも言いたそうな顔をしている。
そんなに俺の好感度は黒澤家では高いのですか?
「君は誰なんだね。この場をなんだとおもっているのかな」
新郎が物凄く正論を言ってくるがどうでもいい。
俺はダイヤさんだけを見る。
白色ウエディングドレスに一瞬言葉を失った。
「ダイヤさん、俺はあなたのことが好きです。それは誰よりも好きです。誰にも負けません、だからと言ってあなたを幸せにすることを誓うことはできません。苦労も、辛い思いもさせるかもしれません、だけど俺はあなたのことが好きだから!」
「なにを言ってる、ダイヤさんが苦労も、辛い思いもさせる男と付き合うわけないだろ。さぁ、この指輪のように綺麗なダイヤさんは僕の花嫁だ」
「バカか、ダイヤさんは綺麗ではないんだよ」
「な、なにを言ってるだね!」
「誠さん!」
まわりから言ってる意味がさっきと違うだろと言われるがそれで言い。
なぜなら、
「ダイヤさんは綺麗ではなく、美しいからだ!」
「……!」
ダイヤさんがこっちを向く。
俺は小さな箱取り出す。
「なんだね、中身は空だぞ」
「この世にダイヤさんに釣り合うダイヤが俺に買えるわけないだろ」
「バカかね、君は」
「この世のどのダイヤよりもダイヤさんは美しい!そんな硬度10の石などダイヤさんの美しいには敵わないんだよ!」
「ええい!さっきから聞いていればあなたは何しにきたのですか!わたくしを辱しめるために来たのですか!」
ダイヤさんがやっと俺と話しをしてくれた。
「そうです!」
「なに元気よく言っているのですか!」
「ダイヤさんが恥ずかしがる姿が好きだから」
「え……」
「抹茶とプリンが好きなとこも好きだから」
「ちょ、ちょっと……」
「自分にも相手にも厳しいがときどきドジする姿も好きだから」
「……」
「俺にだけに見せてくれる可愛い姿も好きだから」
「……」
「人のために自分を犠牲にするところは嫌いだ、一人で背負うのは辛い、だから俺も一緒に背負っていく」
「……」
「俺はもう一度言う、誰よりもあなたを幸せにすることはできないかもしれないが俺はあなたのことが好きだから俺と付き合ってほしい!」
俺は右手を差し出す。
「……まったく、しかたないですわね」
俺の震える右手をそっと包み込んでくれる温かさを感じる。
「そう言うことですので、わたくし黒澤ダイヤはこの結婚を破棄します」
「そんな、ダイヤさん」
「この安いダイヤの指輪お返しします。わたくしはそんな硬度10の石より美しいようですから」
指輪をその場に放り投げる。その姿がとても似合っていた。
会場からの拍手がおこる。
神父をみると笑いながら言葉を続けた。
「二人は、苦しいときも、辛いときもお互いで助け合うことを誓いますか」
「誓います」
「誓いますわ」
「それでは誓いの、口づけを」
「ダイヤさん、綺麗です」
「わたくしは綺麗ではなく美しいですわよ」
その時初めて俺の唇に誰かの唇が重なった。
1/1
その人は誰よもバカな人でした。
後先考えずに行動して周りを驚かせる。
けど、そのバカはわたくしを幸せにしてくれた。
これも雨の日デートで願ったことが叶ったからかもしれませんわ。
これからもわたくしは幸せに暮らしていく。
いつまでもあなたの隣でいる時間が永遠に続くから。
誕生日おめでとうダイヤさん!
そして、明けましておめでとうございます!
今回は月9のようなお話しになりました。自分が覚えてるドラマでこのようなシーンがあり書いてみたいと思い書きました。
平成生まれだけど昭和に詳しい平成っ子、応援Pです。
まったく日常編投稿してませんですみません、書こう書こうとはしてるのですが睡眠をとってしまう悪い癖。
誕生日回だけは欠かさず書き上げようとはして2ヶ月前には書いているのです。
そんな日常編も書けですよね。はい、頑張って書いてます。
アニメも終わってもう半年ですかね。早いですね。
ですが沼津はいまだにサンライバーの皆さんが来てくださり盛り上がっています。クリスマスイブではキャンドルナイトがおこなわれなにやらスペシャルプレゼントがあったようですね。
この小説を書き上げたのも沼津をサンシャインを盛り上げるためでしたがどうやらその必用はないようですかね?
いや、そんなわけありません。まだ沼津には知られてない素敵な場所が多いのです。この小説ではまだまだ沼津の紹介を続けていきます!
話しは変わりますが、サンシャインのファーストライブがもうそろそろ始まりますね!
自分は行けませんが行ける皆さんは存分に楽しんで来てください!
今回はこの辺で、それではまたお会いしましょう。
初日の出を見ながら、ダイ、ヤッほー(^◇^)