春の暖かい風はいつの間にか夏の暑さと変わっていた。
夏が暑いのは当たり前だが暑すぎるのも困りもんである。学校の制服も春服から夏服に変わり日差しが照り付ける。夕方になると日差しは弱まるが暑さには変わらない、こんな日は家でおとなしく涼しみたいもんだ。
だが、今日は用事があるため学校終わりの放課後は仲見世へと足を向けるのであった。
「あつーいー!」
いつものごとく一緒に来た恵は隣で大声をだし訴える。
俺に訴えてもどうにも出来ないのですよ。
「ねえ、あそこで休もう」
恵が指差したのは沼津駅南口にある緑の屋根のハンバーガー店。
確かにあそかなら涼しいし、美味しい食べ物もある。
「しかし、だめだ」
「えーなんでー」
「まだ本を買っていないからだ!」
「それは後にして涼しもうよー」
「俺はあの本をどれだけ楽しみにしていたか」
「そんなになの?」
「当たり前だろ、ネットで見つけたときの興奮はすごかった」
「そうなんだ、少し興味あるかも」
「だから俺は本を手に入れるために目的地に向かい歩き続ける」
仲見世商店街へと歩く。
「それにそんなに行きたいなら、お前だけ先に行っていればいいだろ」
「う、それだと……」
「とにかく俺は本屋で本を買ってからではないと行けないな」
「えーつまらない」
「買ったらすぐに行くから、俺の席も取って置いてくれ」
「うー、そういうことなら」
「買ったらすぐに行くから」
「約束だからね!本をすぐに買って来てね!」
「はいはい」
恵とは商店街前の横断歩道で別れた。
仲見世商店街は小さい頃はよく映画の後のお昼を食べに来た。
あの時の思い出は懐かしく、ところどころしか覚えてない。これも記憶喪失の影響らしい。
なぜ記憶喪失になったのか、どこまで覚えていてどこまで忘れているのかはわからず今を生きている。
このことを知っているのは曜と聖来姉だけ。いつかは千歌にも果南姉にも、Aqoursの皆にも、もちろん恵にも話さなければならない。
「暗くなってもしかたない」
忘れたなら今を楽しめばいい。曜も言った『楽しい思い出をつくろう』っと。だから俺は今を楽しんで生きている。そして今から買いに行く本も楽しみの一つ。
気が付けばマルサン書店の目の前に来ていた。
扉を開け店内に入る、そこにはたくさんの本があり、読書好きの人にはたまらない世界になっている。
本好きと言ったらマルさんもそうだな。この前も偶然あったときもここにきて目を輝かせていたからね、そのあとのたくさんの買い物には驚いたけど。
まったくこの世界は何度来ても飽きることがない。店員の一押しの本、今月のおすすめなど楽しめる。その中で俺が一番好きな場所は一階の奥にあるミステリーの本が並べれた棚。
あそこで俺は運命の出会いをした。世界で有名な探偵シャーロック・ホームズとの出会いだった。
それからミステリーにはまっていった。
そして今日もミステリーの本を買いにきたのである。
「あった!探したよ」
目的の本を買って早速レジに向かう。
わくわくして会計を済ませる。
歩く足は浮いていた。
そして横断道路で信号待ちであることを思い出す。
「あ、恵」
青信号に変わったが方向を変え地下道に向かう。ここから目的地に向かうには地下道を通ったほうが近い。
恵はちゃんと席取ってくれているかな。この時間は学生の下校時間だから駅前の飲食店は学生のたまり場になっている。
他にも北口のBIVIのゲームセンターもたまり場になっている。そのせいかある学校では教師が見回りに来る学校もあるみたいだ。
地下道であるものを目にとめた。
夏祭りのポスターである。これまで多くの県に夏祭りを見てきたが、そのほとんどを覚えてない。覚えていても人が多かったことだけで夏祭りを楽しんだ記憶がない。
今回は沼津で夏祭りを楽しみたい。
ハンバーガーと飲み物、ポテトを買って二階で恵を探す。
だが、人はほとんどいなく、重たい空気が漂っていた。見てみると一人の女子生徒が複数の男子に絡まれていた。
なるほどだから人が少ないのか。
困った女子を見捨てることは俺は学んでない、つまり助ける。
近づくとその女子は特徴の栗色の髪をしていた。
「恵」
「あ、誠」
振り向いた女子は目に少しの涙を浮かべていた。
「なんだ連れがいたのか」
「それにしてはよわよわしい奴だな」
よわよわしい言うな。結構気にしているんだぞ!
「俺の彼女になにか用でも?」
「彼女って……」
ここは彼女ってことで場を流すしかない。ごめん恵少し我慢をしてくれ。
「チッ行くぞ」
なにもなく団体は帰っていた。
場で安堵のため息が聞こえた。
「悪かったな、遅くなって」
「怖かったけど誠が来てくれるって知っていたから」
「これからはなにかあったら俺に言ってくれ、頼りないとおもうが力になるから」
「うん。ありがとう」
少し恵の気持を落ち着かせることにした。よっぽど怖かったのだろう。次にあったら容赦はしない。
「さあ、食べよう」
冷めたハンバーガーを一口、そこからわかる美味しい味。久々に食べたからかものすごく美味しく感じる。
「そうだ、もうそろそろ夏休みだよね」
「そうだな、夏休みもすぐそこだな」
春の温かさも忘れもうすぐ夏のカーニバル、学生の特権夏休みもすぐそこに迫ってきていた。
夏休みは毎日遅くまで寝ていられるからいいものだ。いや夏休みは毎日千歌に呼ばれて練習に付き合わされるんだろうな。
だんだん暑くなる日差しに練習、体調管理をしっかりしなければ。
「誠は夏休みは用事ある?」
「ないと言いたいが千歌たちの体調管理と練習の手伝いがあると思う」
「そっか……」
「だからそれ以外の日は一緒に遊ぼうぜ」
「うん!」
練習がない日は一緒に遊んで気分を変えたいからな。
それに夏にはビックイベントがあるからな。
「それじゃ今から約束をしたほうがいいね」
「そうだな、先に会える日を決めたら楽かもな」
「それじゃ一日付き合って」
「一日でいいのか」
「うん。海の家の手伝いをお願い」
お待たせしました、今年最後の投稿です。
やっとできました。長い間まったく投稿できずにすみませんでした。評価をつけてくださりありがとうございます。初めての評価で喜びました。
今回の話しは春と夏に変わる狭間での話しです。春はAqoursたちの話しが中心でしたが夏は聖来、恵たちキャラクターの話しが多くなりようです。さらにまだキャラクターが増える予定です。
夏は海、山、祭り、恋とイベントが多いため長く書けそうです。
季節は夏ですが、現実では新し年を迎えます、皆さまはこの一年いろいろあったと思いますが来年は楽しいことがあると思って頑張りましょう。自分も頑張るので。
それでは、今回はこのへんでまた会いましょう、良いお年を。