輝け!イチ・ニ・サンシャイン‼   作:N応P

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BS 「良い」より「善い」人

 

 

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 あの空はこれまでと変わらない。星が輝く星空。

 

 この街は少し変わった。年を増すごとに姿を変える。

 

 私の心は少しも変わらない。あの頃から歳をとらない。

 

 彼との距離はずっと変わった。これからもこの先も。

 

 変わらない。二人の距離。

 

 

 

「相変わらず人がすごいな」

 人混みを避けて安全地帯である場所を見つけて立ち止まる。

 あちらこちらへと人は行き交う沼津の夏祭り。

 歩行者天国にされた道は波に流され歩くのがやっとだ。

 スマフォに連絡がくる。

『今どこにいるの』

「悪い、人混みに流されて」

『はやく来なさいよ!』

「怒るなよ」

『怒るわよ!なんで私だけこうなるのよ!』

 はあー、俺は絶賛迷子中の幼なじみを捜索していた。

「もう少し待っていろ。俺が見つけるから」

『うん……』

「周りになにが見える?」

『えーと、大きな交差点で大きな時計がある』

「だいたいわかったよ。あと少しの辛抱だ」

『うん。はやく来てね』

 電話を終え、人と人の間をすり抜けていく。

 少しでも早くアイツの場所に行かないと。

 

 

 

「え、善子ちゃんがいない!?」

 千歌が大声を出す。

 周りの人たちが何事かと振り向く。

 今Aqoursの皆は沼津駅南口、電車の車輪が置かれた記念石碑前に集合していた。

 いや、一人を除いて。

「声が大きいよ」

 果南姉に口を押さえられる。

「果南さん、手離してあげてください」

「千歌ちゃんが大変だよ!」

「え……あ、ごめん千歌!」

 千歌を見ると顔が青くなっていた。

 果南姉力強いから、千歌の息止めていたようだ。

「ゼーハーゼーハー」

「大丈夫、千歌ちゃん?」

「う、うん梨子ちゃん。なんとか」

 千歌の力ない返事が帰ってくる。

「どうしますの、手分けして探します?」

「それだと、さらにバラバラにならないかな?」

「うーん、最大級のQuestion」

 3年トリオが考える。

 まぁ、実際に考えてるのは果南姉だけだと思うな。うん。

 

「しかたない。俺が探してくるよ」

 

「え、まー君一人で?」

「まあ、不幸なあいつでも連絡ぐらいはつくだろ」

「けどこの前、起動画面から動かなくなって連絡とれないって泣いていたよ」

「マジですか、梨子さん」

「うん。私が操作したら動くようになったけど」

「ああ……これは」

 

 

「はやく善子さんを探しなさい!」

 

 

「私たち三年生と一年生は迷子センターに!」

 

「それじゃ、千歌たち二年生は駅周辺を!」

 

「俺はとりあえず遠くを探してくる!」

 

「一時間後は花火の席に集合ですわ」

 

「そっか、ダイヤさんのおかげで花火の席が人数分あるんだった」

「ですから、善子さん一人いない席は認められませんわ」

「わかってます。しかっり探してきます」

 

 

 こうして俺たちは不運の堕天使、津島善子探しが始まった。

 

 

 

 

 迷子放送をしてもらってすぐに、まさかの善子から連絡がきたことがよかった。

 善子と連絡後、皆に花火の場所に善子と行くと伝えた。

 

「それで、あいつがいるのは……」

 

 善子がいる場所にたどりついたが、人が多く見当たらない。

 まったくこれでは人がごみのようだ。

 

 

「こっち!」

 

 

 声が聞こえそっちを見ると、手をぶんぶん振る人が。

 見間違えるはずがないお団子頭の少女。善子だ。

 

「待たせたな」

 

「まったく、ヨハネを待たせるなんて」

 

「いいだろ、見つけたんだから」

 

「それでも遅いのよ!」

 

「どうしろと言うんだ」

 

「呪文とか魔方陣などで現れなさいよ!」

 

「無茶言うなよ!」

 

「なによ、リトルデーモンのくせに生意気よ!」

 

「確かに俺はお前のリトルデーモンかもな」

 

「あら、今回はあっさり認めたのね」

 

「わからないけど、お前がいないって聞いて心配したからな」

 

「そ、そうなの。ありがとう」

 

「さて、皆さんのところに行くのにもまだ時間があるな。どうする?」

 

「どうするとは」

 

「二人で少し屋台を見て回るか」

 

「そ、それって!?」

 

「やだったか」

 

「別に、リトルデーモンの願いを叶えるのもヨハネの使命だもね」

 こうして善子と二人で沼津の夏祭りを見て回ることにした。

 

 

「祭りって言ったらなにを食べる?」

 

「そうね、この輝く禁断の果実かしら」

 

「はいはい、りんご飴と言おうね」

 

「ちょっと!次はあの茶色い麺!」

 

「焼きそば、確かに祭りの焼きそばは一味違うな」

 

「あと空の綿毛と偽りの仮面」

 

「綿飴とお面だろ」

 

「どれもわかるのね」

 

「そっか?簡単にわかったぞ」

 

「そ、そうなの」

 

「ああ、ほら欲しいもの買いに行こうぜ」

 

「それなら。うん」

 

「え……」

 

 差し出される左手。

 これは、どういうことなんでしょうか?

 

 

「このこともわかりなさいよ!」

 

 

 善子は自分の左手を俺の右手に絡めた。

 

 

「これで、私がどっかに行っても大丈夫でしょ」

 

「そ、そうだな」

 

 なんだ、一瞬顔を赤くなった善子にドッキっとなったぞ。

 

 

 

「好き」

 

 

 

「え、えええ!?」

 

 

 なんだって!好きってなんだ!いや、待て。これは好きって言ってもよくあるLOVEではなくLIKEのほうであって、異性としてだはなく、友達として好きってやつであって俺が好きってやつではない。うん。そう。そうだよ。うん間違いない。それなら好きだよ俺も友達として、いや幼馴染として好きだぞ。よって答えは!

 

 

「ああ、好きだぞ」

 

「よかった。はいチョコバナナ」

 

「ちょ、チョコバナナ?」

 

「あれ、もしかしてイチゴのほうがよかった?」

 

 

 

「バナナ……そんな、バアアアナアアアナアアア!」

 

 

 

 そうだよな、なに考えているんだよ。一人いろいろ考えてバナナが好きって。ははは、バカだな俺。

 

 

 

「あなたは何も買わないけどいいの」

 

「そうだな、なら久々にあれ買うか」

 

 そう言い、俺は近くの店であるものを買った。

 

「まだ、売っていたのね」

 

「それよりか味がたくさんあるんだな」

 

「もともとはピンク色のしかなかったのに」

 

「おお、みかん味があるぞ!」

 

 

「み、みかん!」

 

 

「怯えるなよ。いつものピンク色しか買わないから」

 

「はやくここから離れましょう!」

 

「わかったから引っ張るな!まだ品をもらってないから!ああ、お釣り!」

 

 善子に引っ張られながらも品を受け取り離れる。

 俺が買いたかったものは『さくら棒』と呼ばれるピンク色の麩菓子である。静岡県にしかなく他県では見かけたことがない。これがないと祭りに来たとは思えないんだよな。まあ、最近では沼津に東名高速ができたため全国的に少し知れ渡ったようだが。

 

 

「そうだ。今日は浴衣じゃないんだな」

 

「だって浴衣だと、汚してしまうから」

 

「そっか。今ここに浴衣が無料で着れる券があるんだが」

 

「なんでそんなものが……」

 

「バイトで貰った。有効期限が今日までなんだよ」

 

「それなら、もったいないからしかたなく貰ってあげるわ」

 

「そっか。よかった」

 

 俺は無料券を持って商店街の中にある着物専門店に。ここには子供の頃からお世話になっている。

 そのためか、

「あら、誠くん」

「あ、お久しぶりです」

「この前おばあちゃんが来たわよ」

「そうなんですか」

「ああ、そうそう。今いい浴衣が届いてね」

「ああ、あのすみません。それはまたお願いします。今日はこの券があったので」

「あら、それじゃ隣の彼女に浴衣を?」

「はい。お願いします」

 善子が心配した顔で俺を見るが俺は笑顔で送り出す。

 心配するな。おしゃべりだけど怖い人ではないから。

 

 

 

 善子が奥に連れてかれ、数分後。

 外では人がさらに騒がしくなってきた。もうそろそろ花火の時間か。

「誠くん、待たせたわね」

 店主の後ろから現れた善子。

 俺は言葉が出なかった。

 

 

 

「どう……」

 

 

 

「ああ、いい……」

 

 

 白の浴衣に淡い青い花が描かれていた。

 

 髪のお団子は横ではなく頭の後ろに束ねられていた。

 

 最初は善子とわからなかった。いつもの雰囲気がなかった。

 

 

「……」

「……」

 

 

 二人店を出たあとも無言が続いていた。

 なにを話せと。いつもの善子ではなく、知らない女性と歩いているとしか思えない。

 

「今って何時」

 

「まてよ、えーと7時だな」

 

「そう」

 

「うん」

 

 うん。7時。うんんんんん!?

 

 

「「7時!!」」

 

 

 二人そろって液晶に映し出された時間を見る。

 そこには花火の席に集合する時間。今から向かうか?いや、ここからだと少し遠い。

 

「これは……」

 

「とりあえず」

 

 俺は電話を。

 

「あ、ダイヤさん。すみません、時間が過ぎてしまいました。はいはい。大丈夫です、隣にいます。それで今からそちらに向かうのはどうやら無理そうなので、皆で楽しんでください。はいこっちは心配しないでください。はい、それでは」

 

 

「大丈夫なの」

 

「ああ、今からあそこに向かうぞ」

 

 俺は沼津駅の隣に立つショッピングセンターとマンションが一つになった建物を指を指す。

 

「あそこに、今から?」

 

「心配するな。さあ」

 

 善子の左手を引き、向かう。

 

 

 3、4,5階は立体駐車場となっていて、人がいない。

 その駐車場の4階に来た。外をみると祭りの光りが照らされていた。

 

「こんなところに連れてきてどうするの」

 

「まあまあ、もうそろそろだから」

 

 

 キューン

 

 バーン

 

 大きな音と共に暗い空に鮮やかな大きな花が咲いた。

 

「きれい」

 

「だろ」

 

 空に広がる花は現れては消え、現れては消えるを繰り返した。

 

「まるで、あなたね」

 

「俺が花火か?やけどするぜ」

 

「バカなの」

 

「うわー、冷たい視線」

 

「現れたらいつの間にか消えた」

 

「でも、また現れただろ」

 

「でもまた消えそう」

 

「心配するな。俺は消えない」

 

「本当……」

 

「ああ。今度はずっと隣にいるから」

 

 

「私ずっと――

 

 

 バーン

 

 

 ――だったの」

 

 

「なんだって?」

 

 

 

「ううん。今日はありがとうって」

 

 

 善子の笑顔は花火のようにきれいだった。

 

 

 




善子誕生日おめでとうー!


善子の誕生日と沼津の夏祭りが同じ月でしたので今回は夏祭りのお話しです。
夏祭りで誠が買った『さくら棒』。あれはどうやら静岡県にしかないようですね。調べてびっくりポンでした。本当に桜のようにピンクで表面に砂糖がついていて美味しいですよ。よかったら沼津の夏祭りに来て食べてみませんか?
今回は7月30日と31日で行うようです。うん?31日ってAqoursが沼津に来る日ではないですか!?
これはどちらも楽しんで、善子の誕生日をお祝いしなければ!

7月はアニメも放送されましたね。
待ちに待ったアニメ化。そしてスクフェスの大型アップデート。こう考えると7月はまたサンシャイン祭り。沼津の夏祭りより熱いですね。
皆様もこれからも熱い日が続きますが、お体に気をつけてお過ごしください。


あなたもリトルデーモンにしてあげる( v^-゜)♪

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