捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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一航戦

 

 

プールに入り、叢雲と五十鈴は着替え終わり、更衣室前で待っていた。

 

「遅い!何やってんのよあいつは!」

 

「そうね……こういう時、男の方が待ってるのが普通よね」

 

叢雲、五十鈴とそう呟いた。未だに北本は来ない。と、思ったらタッタッタッと足音が聞こえた。

 

「ごめーん、待ったぁ〜?」

 

女性用のスク水を着た北本が走ってきた。直後、二人は今度は外さずに綺麗に息のあった左右のストレートを両頬に叩き込んだ。

 

「「……着替えてこい」」

 

「はい」

 

2秒でボツ食らった。

 

 

着替えて来て、早速プールの中へ。

 

「どっからいくよ。……って、聞いてもそんな広いわけじゃないんだけどなここ」

 

あるのは精々、流れるプールとウォータースライダーと子供用プールくらいだ。

 

「ま、自由行動かな。俺は流れるプールで揺られてるから」

 

言いながら北本はぺしゃんこの浮き輪を膨らませる。

 

「待ちなさい」

 

その北本に五十鈴が声を掛ける。

 

「あんた、その浮き輪どうしたの」

 

「え?買った……あっ」

 

「お金なくてプールに来るだけでも大出費だってのに何を買ってるのよ!」

 

「ままま、落ち着けよ。買っちまったもんは仕方ないだろ」

 

「落ち着かせる気ある台詞を吐いたつもりかしら?」

 

「とにかく、せっかく来たんだ。叢雲と楽しんで来い」

 

「あんたはどうすんのよ」

 

「試験の疲れを取るために浮いてる」

 

言うだけ言うと、北本はプールに浮き輪を浮かせて、その輪の中に尻を突っ込み、他の部位だけ外に出すという典型的な流れ方をしていた。

すうぃ〜っと流されているのを見ながら、叢雲と五十鈴はニヤリと口を歪ませた。背後からこっそりと忍び寄ると、

 

「「それ!」」

 

「うおわっ⁉︎」

 

浮き輪をひっくり返した。ブクブクと沈んだものの、すぐに顔を出して抗議した。

 

「てめっ、何すんだよ!」

 

「せっかく来といて一人だけボーッとしてるなんて許さないわよ!」

 

「とりあえず、浮き輪は没収だから!」

 

「こ、このクソガキども……!」

 

唸ってる間にも、叢雲と五十鈴は浮き輪を奪って流れるプールの流れに沿って移動した。

 

「おもしれぇ……プールの帝王と(バカ四天王の中で)恐れられる俺を怒らすとは……!後悔させてやんよ!」

 

言うと、北本は後ろから二人を追いかける。

 

「おっ、来たわね!」

 

「逃げるわよ!」

 

と、半強制的に鬼ごっこが開始。タッチするフリをして水着を解こうとする北本を二人して一発お見舞いしながらも、遊び回った。

で、数時間後、

 

「そろそろ飯にしない?」

 

「ウォータースライダーあるわよ!」

 

「いいわね!行きましょう?」

 

「おーい、話聞いてる?」

 

「結構な高さがあるのね」

 

「その方が面白そうじゃない」

 

「あ、わかった。お前らダイエットしてんのか。そういや心なしかふっくらと……」

 

メキャッ

 

「さ、行きましょう」

 

「そうね」

 

「………お前らさ、連れて来てやった恩義とかないの?」

 

 

ウォータースライダーの上まで登った。まぁそこそこの高さではあるが、「うっほおおおお!高ええええ!これ死ぬってえええええ!」とオーバーリアクションするほどではない。

五十鈴が上から到着地点のプールを見て呟いた。

 

「結構な高さじゃない」

 

「そーだな。誰から行く?」

 

「ジャンケンで負けた奴にしましょう」

 

とのことで、三人で拳を引いた。

 

「「「せーの!じゃんっけんっウェアッ‼︎」」」

 

謎の台詞と共に三人から出されたのは、

北本→パー

叢雲→チョキ

五十鈴→チョキ

だった。

 

「んだよ、俺からかよ」

 

「ふん、ザマァないわね」

 

「いや別に大して怖かないからいいんだけどさ」

 

言いながら、北本は滑り台に座った。

 

「じゃ、アムロ、行きまーす!」

 

ザシャアァアアアッと音を立てて滑り台の中に吸い込まれていく北本の背中。

 

「むしゃむしゃ……ごくっ、次の方は準備して下さいね」

 

「あ、はーい」

 

係員に声を掛けられて、五十鈴と叢雲はお互いに向き合った。

 

「「じゃん、けん、トライ!」」

 

さっきと違うじゃねぇか。結果、叢雲が行くことになった。滑り台の上に座る叢雲の耳元で五十鈴が言った。

 

「ねぇ、なんか係の人食べてない?」

 

「私も思った。まったくバイトの分際で何やってんだか……」

 

愚痴りながら二人で係員の方を見上げると、どっかで見たことある顔があった。

 

「ゴクン……ふぅ、ファミマの新作おにぎりも中々……あっ、次の方どーぞ」

 

「「………一航戦の誇りがない方」」

 

「えっ?」

 

言われて、ギクッと声を漏らす係員。よく見れば、赤城だった。

 

「……あっ、叢雲ちゃんに五十鈴さん⁉︎……はっ!」

 

慌てておにぎりのゴミを自分の後ろに隠す赤城。だが、二人はジトーっと赤城を睨み付けた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「後でお話ししましょう」

 

「そ、そうですね……」

 

とりあえず滑った。

 


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