捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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三人乗り

 

試験日。

 

「よーう、克己」

 

正樹が北本の席に来た。

 

「勉強したか?」

 

「世界『勉強したか?』って聞かれたくない人類堂々の一位に聞かれたくねぇ」

 

「それ褒めてんのか?」

 

「褒めてるわけねーだろブァカ」

 

「褒めてんじゃん」

 

「お前と話してると頭痛ぇわ」

 

正樹は馬鹿だ。それも超絶ウルトラダイナミックが頭に付くほど。それはいつものメンツに知れ渡っている。

 

「うぃーっす」

「うーっす」

 

遅れて和明と隼人がやって来た。

 

「また馬鹿いじってんのか?」

 

「おい、誰のことだそれ」

 

「いや、むしろ俺が弄られた」

 

「テスト日に?なんて?」

 

「正樹に『勉強して来たか?』って聞かれた」

 

「それは人類史上最大の侮辱だな」

 

「お前らテメェこの野郎‼︎」

 

そのまま乱闘が始まりそうになった時、ゲンコツが4発それぞれの頭に降り注いだ。

 

「うるせぇバカ四天王」

 

担任の中崎に殴られた。

 

 

試験が終わった。次の日曜日はプール、ということなので北本は少し楽しみにしていた。女の子の水着姿を二人まとめてだ。少しというか、かなり楽しみだった。何なら兄貴権限で堂々と盗撮してやろうとか思ってるまである。

 

「たでーまー」

 

気の抜けた声で挨拶すると、中では叢雲が思いっきり着替え中だった。

 

「あっ」

 

「」

 

顔を真っ赤にする叢雲をぼんやりした目で北本は眺める。と、思ったら、なんの躊躇もなく部屋の中に入った。

 

「俺、どっちかっつーと巨乳のが好」

 

「死ねッ‼︎」

 

廻し蹴りが顔面に炸裂し、北本は大きく後ろに吹っ飛んだ。

 

 

「お前さ、一緒に暮らしてるんだからそういうこともあるって言ったよな?」

 

「それはわかってるわよ!あんたのフォローの仕方に腹立ったのよ!」

 

「なんだよ。『だから気にするな』的なフォローだろうが」

 

「女の子にするフォローの仕方じゃないでしょう⁉︎」

 

「いやーでもいいもの見れた。俺の心の中で永久保存した」

 

「んなっ……⁉︎あ、あんた!また蹴られたいの⁉︎」

 

「残念だったな。俺はこう見えて喧嘩強いんだぜ?一度食らった攻撃は二度と」

 

バギャッ!

 

「二度となんだって?」

 

「芸の無い野郎だ」

 

「何にせよダメ出しされるのね!」

 

「それより五十鈴はどうした?」

 

「バイトよ」

 

「ふーん。ね、むーたん」

 

「変な呼び方やめて。何?」

 

「今日は唐揚げが食べたいナ!」

 

「嫌よ。面倒だもん。今日はレンコンのはさみ揚げよ」

 

「あれ、それ大して変わらなくね?」

 

そんな事を話しながら、叢雲は夕飯の準備に掛かり、北本は寝転がった。

 

 

日曜日になりやがった。プールまでは自転車で行くのだが、北本家は自転車を一台しか持っていない。そんなわけで、

 

「俺が漕ぐ。五十鈴は後ろな」

 

「はーい」

 

「私は?」

 

「籠」

 

「冗談でしょ?」

 

「お前が一番小さいんだから仕方ないだろ。……ああいや、そういう意味じゃなくて。あの事はもう忘れるから。拳を収めろよ。籠の中で全員の水着持ってくれ」

 

言うと、北本は叢雲の脇の下に手を当てて持ち上げた。

 

「ちょっ……!何すんのよ!」

 

「自転車のカゴに入れるんだよ。一人じゃ入れないだろ」

 

「せ、セクハラよ!」

 

「ちょっ、ご近所さんに聞こえるからやめて。五十鈴、自転車抑えててくれ」

 

「はいはい」

 

「ちょッ……待って!」

 

「足上げろー」

 

で、スポッと入れられた。お尻がカゴに入り、足と体だけ出ている感じになる。顔を赤くしながらも、自分ではどうすることも出来ない叢雲、それを見て五十鈴は、

 

「ぷふっ」

 

と吹き出した。

 

「ちょっ、何笑ってんのよ!殺すわよ⁉︎」

 

「ぷはははは!だ、ダサっ!」

 

「確かにダセぇ!ケラケラケラ‼︎」

 

「あんたの笑い方腹立つわ!というか笑うな!蹴るわよ!」

 

「やってみろよ。あ、無理矢理壊すとか無しな。そしたら留守番だから」

 

「んなっ……!外道‼︎ヘンタイ‼︎鬼畜‼︎」

 

「そ、そんな格好で強がってんじゃないわよ!」

 

「むしろ可愛いわ!」

 

「かわっ……⁉︎い、いいからさっさと行くわよ‼︎」

 

なんとか笑いを堪えて北本は自転車に跨った。

 

「………ぷふっ」

 

「いつまで笑ってんのよ‼︎」

 

五十鈴が自転車の後ろに回る。

 

(ハッ!これは……後ろからゼロ距離で五十鈴の巨乳ッパイを堪能できるチャンスなのでは⁉︎)

 

もわんもわんと妄想するだけで鼻血が出そうになる。思わずニヤニヤしてると、カゴの中の叢雲からアッパーが飛んで来た。

 

「あごっ⁉︎」

 

「考えてること丸わかりよ。ドスケベ」

 

「ど、ドスケベちゃうわ!」

 

「大丈夫よ叢雲」

 

言うと、五十鈴は後ろ向きに座った。

 

「………まじかよ」

 

「安全運転で頼むわよ」

 

言うと、五十鈴は北本の背中に寄っかかった。華奢な背中が自分の背中に当たり、北本は思わず目を見開いた。

 

(………あっ、これはこれでアリかも……)

 

出発した。

 

 

気持ちよさそうに自転車を走らせ、三人はプールに向かった。夏の暑い気温の中、カゴの中で良い感じに風が直撃している叢雲は、若干心地よさを感じながらも、周りの人の視線に若干照れていた。

で、プール到着。北本は五十鈴を降ろすと駐輪場に向かい、自転車を止めて鍵を閉め、荷物を取ると五十鈴と合流しようとした。

 

「って、待ちなさいよー!おーろーしーてーよー!」

 

「ああ、忘れてた」

 

「忘れるな!」

 

叢雲を降ろして、プールに入った。金を払うと、三人で女子更衣室へ。直後、五十鈴と叢雲の左右のストレートが北本の頬を掠めた。

 

「「死にたいの?」」

 

「すみませんでした」

 

 


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