捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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五千円札

 

 

ある日の休日、中間試験も近いということで、北本は机に向かっていた。その後ろでは、居候艦娘の五十鈴や叢雲がゴロゴロしながら漫画を読んでいた。勉強会をサボる監視も兼ねて。

 

「………なぁ、二人とも」

 

「「んー?」」

 

「ふと思ったんだけど、艦娘の中には外見、俺とそう歳の差とかない子とか寧ろ年下に見える子がいるわけだろ?」

 

「ええ、いるわね」

 

「そんな子達が日本を守るために奮闘してる中、俺はこうしてだらだら勉強してるわけじゃん。いいのかなーこれでと思ったので、」

 

「ちょっ、やめなさいよ。あんたが戦うなんて無理なんだから」

 

「俺なりに艦娘の兵器を考えてみた。読んでくれ」

 

「………あんた何やってんのよ。勉強してたんじゃないの?」

 

半ば呆れながらも叢雲はその紙を手に取った。後ろから五十鈴が紙を眺める。

 

『・ハイメガビーム砲

・28連装ミサイルランチャー

・暗黒魔導砲』

 

「「…………」」

 

「どうだ?」

 

「………あんた戦場ナメてんの?」

 

叢雲が冷たい声で毒をブチまけた。

 

「良くね?カッコよくね?」

 

「や、ビーム兵器とか架空のものだからね」

 

「そもそもこのミサイル、魚雷ならともかく空中は無理よ」

 

「最後のこれ、むしろ必殺技の名前じゃない」

 

「ぬぐぐぅ……袋ダメ出しかよ……」

 

悔しそうに唸る北本。

 

「つーかあんた勉強はいいの?」

 

「なーんかやる気しなくてなー。一言で言えば面倒クセェ」

 

「アホねあんた……。勉強しなさいよ」

 

「そーは言われてもねぇ……。つーかお前らも来年受験だろ。漫画なんて読んでていいのかよ」

 

「なんていうか、私達艦娘なだけあってそこそこの学力は入ってるのよね」

 

「ねー。高校受験くらいならなんというか、余裕?」

 

「ざけんなバーロー。お前らゼッテー国公立行かすかんな」

 

「「あーい」」

 

心の中で呪いながらも北本はお絵描きを再開する。すると、「あっ」と叢雲が声を漏らした。

 

「どーしたー。うんこか?それとも漏らしたのか?」

 

「あんた殺すわよ」

 

「すみませんでした」

 

うむ、よろしいと叢雲は鼻を鳴らして言った。

 

「いや……これ読んでて、ちょっと……」

 

叢雲の読んでいるページにはプールのシーンが書かれていた。

 

「なんだよ。プール行きてーのか?」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!そもそも少し前までは海で戦ってたのよ私!」

 

「あっそー。どーでもいいけど、俺のテストが終わるまでは無理だかんなー」

 

「ち、違うって言ってるでしょ!」

 

ならいーや、と北本は勉強を始める。それを見て、叢雲はため息をついた。その叢雲の脇腹を肘で突く五十鈴。

 

「な、何よ」

 

「あんたねぇ、素直に言わないと、そこのアホは気付かないわよ」

 

「うっ……!」

 

言われて、たらりと冷たい汗を流す。で、顔を赤くしながらもコホンと咳払いをして言った。

 

「あの、克己……」

 

「はい、これで水着買ってこい」

 

北本は5千円札を叢雲に放った。それをされて、尚更叢雲は顔を赤くした。

 

「最後まで言わせなさいよ!」

 

 


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