捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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時給一〇八〇円

(……あいつの言う話だと、バイトしなくちゃいけないんだっけ……)

 

叢雲はコンビニから取ったタウンワークを、リビングで眺めている。

 

(つっても……バイトなんて何すりゃいいか分かんないわよ。履歴書にも何書けば……そもそもなんて名前書けば良いか分かんないし……)

 

バイト誌をパラパラと捲って眺めてると、ピタッと動きが止まった。

 

(……無難にコンビニかしら。確か、五十鈴もコンビニだったわよね)

 

ファミリーマートが目に入った。

 

(……時給ってどれくらいが高いのかしら。基準が分からないわね。でも、バイトなんてどーせ大したことやらないんでしょう?……あっ、ヤキンって方のが高いわね)

 

考え込むこと数分、

 

(ヤキンで電話してみましょう。……で、ヤキンって何?)

 

 

夕方。

 

「おーっす、ただいまー」

 

北本が帰って来た。呑気に歩いてリビングに向かう。

 

「叢雲ー。元気にしてたかー?」

 

「子供じゃないんだから、別に普通よ」

 

「バイト決めたん?」

 

「え、ええ。まぁね」

 

「お、何にしたんだよ」

 

「この、ファミリーマートのヤキンっていうの」

 

「アホかッ⁉︎」

 

「な、何でよ!」

 

「お前の外見の年齢じゃ夜勤なんて出来るわけねぇだろ!」

 

「そもそも夜勤って何よ?」

 

「意味もわからず決めたのかよ!辞書とかあるんだから…いやこの前チリ紙交換に出してトイレットペーパーになったからないわ」

 

「辞書は大切にしなさいよ!」

 

「うるせぇ!とにかく夜勤はダメだ。……と、いうかさ」

 

叢雲をジロジロ見ながら北本は呟いた。

 

「な、何よ」

 

「……お前、とても16歳以上には見えないよなぁ」

 

「は、はぁ⁉︎どういう意味よ!」

 

「や、そのまんま。いいとこ中学生だろ。……と、なるとバイトは無理そうだな」

 

「ば、バカにしないで!私だってバイトくらい出来るわよ!」

 

「や、できるできないの問題じゃないから。……んー、どうなんだろ。ちょっとそのまま動かないで」

 

言うと、北本は携帯を出して、写真を撮った。

 

「何を撮ってんのよあんたァッ!」

 

「べ、別に不意打ちしたわけじゃないだろ!」

 

掴み掛かって来る叢雲を、なんとか抑えると、LINEを起動した。

 

「……いや、あいつらは無理か」

 

普段絡んでる三人に送ろうと思ったけど、妹(仮)の年齢知らないってどうなの?ってことになりそうになったので断念。

 

「あ、妹といえばお前、名前どうすんの?」

 

「あーえーっと……北本……何がいいかしら?」

 

「叢雲か……むらくも……咳は?」

 

「前から思ってたけど、なんなよそいつ」

 

「それ」

 

スマホを見せた。

 

「男じゃない!オッサンだし!」

 

「馬鹿野郎!こいつ超強ぇんだぞ!」

 

「知らねーわよ!真面目に考えなさい!」

 

「じゃあ……叢子」

 

「テキトーでしょ」

 

「雲子」

 

「同じよ!」

 

「モナコ」

 

「国の名前になってんじゃない!」

 

「モナカ」

 

「ふざけないでよ!良い加減怒るわよ!」

 

「……いや、中々良くない?モナカ」

 

「良くないわよ!はっ倒すわよ⁉︎割と本気で!」

 

「モナカ……漢字は、最中……いや萌那珂か……」

 

「やめて!どっかの誰かを思い出すからやめて!」

 

「とにかく、モナカなモナカ。……まぁ、どーせ外か友達来た時しか使わないからあんま決めても意味ないんだけどね」

 

「ただいまー!」

 

五十鈴が帰ってきた。今日はバイト昼からだったそうだ。

 

「あ、帰って来た。おーい、五十鈴ー」

 

「何やってんのよあんた!」

 

「はぁ?むしろ何もしてませんけど?」

 

「違う!スーパーの特売!急ぎなさい!」

 

「うおっ!忘れてた!叢雲手伝え!」

 

「ええっ⁉︎し、仕方ないわねぇ!」

 

三人は慌てて家を飛び出した。

 

 


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