捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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二人目

 

北本家。

 

「で、どういうわけよ?」

 

五十鈴が叢雲に聞いた。

 

「それが……ちょっと色々あってね……。気が付いたら……」

 

「あ、お茶」

 

「あ、ども。海岸に打ち上げられてて……あいつらに艦娘だって言ったら……」

 

「これ、晩飯のカレー」

 

「あ、すいません。『金あげるから俺らの喧嘩引き受けろ』って言われたのよ。……あんまり、そういうのは」

 

「五十鈴ー。これお前の分」

 

「サンキュー」

 

「嫌だったけど、生きるためにお金必要なのは仕方ないから……」

 

「じゃ、いただきまーす」

 

「「あんた少しは落ち着いてなさいよ!」」

 

五十鈴と叢雲に怒られた。

 

「ふーん、そゆこと。てか気が付いたら海岸って、艦娘ってワカメかなんかなの?」

 

「ドロップ艦娘って奴よ」

 

五十鈴が言った。

 

「艦娘の顔で作った飴?お前ら商品化されてたの?」

 

「違うわよ。海の上でたまーに艦娘を拾ったりするの。そういう事があるのよ」

 

「……どんなシステムだよ」

 

「その叢雲が海岸にいたってわけ」

 

「へー。じゃあ、鎮守府に届けりゃ解決じゃん」

 

「それがそうも行かないのよ。私のいた横須賀鎮守府はすでに叢雲はいたし、連れて行っても無駄よ」

 

「他の鎮守府は……遠過ぎて無理か」

 

北本はカレーを食べながら言った。

 

「む、叢雲咳だっけか?食わないの?カレー美味いよ」

 

「咳は余計よ……」

 

で、叢雲はあむっと食べた。その瞬間、顔をパアッと明るくする。

 

「美味いべ?」

 

「う、うるさいわね!」

 

「ま、そゆことならうちにいれば良いんじゃねーの?」

 

んーっと伸びをしながら北本は言った。

 

「はぁ?」

 

「そこの五十鈴も俺が拾ったんだ。一人増えるも二人増えるも変わらん(……バイトする奴が増えるなら1ヶ月の生活費も増えるし)」

 

本音は上手く隠した。

 

「ま、うちで暮らすならちゃんとバイトしろよー。あと来年には学校に入学しろ。それだけだ」

 

「な、なんで私があんたなんかの家で暮らさないといけないのよ!」

 

「じゃあこの後どうすんの?さっき絡んできた奴と暮らすかー?」

 

「そ、それは……!」

 

「あんな傭兵みたいなことして暮らすのか?」

 

「……」

 

「ま、お前の好きにしろー。それよりカレー冷めるから早く食え。あと洗い物まとめてやっちゃいたいから、食い終わったら言ってくれ」

 

北本はそう言うと、欠伸をしながらソファーの上で寝転がった。その背中を怪しげな目で叢雲が見ていたら、五十鈴が言った。

 

「甘えても良いと思うわよ。あいつ、ああ見えて良い奴だし」

 

五十鈴に言われて、叢雲は俯いた後、頷いた。そんなわけで、一人増えた。

 


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