捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた 作:杉山杉崎杉田
夕方のスーパー。
「わかってんな五十鈴」
「もちろんよ」
二人は姿勢を低くして構えた。北本は自分の腕時計を見た。時計が秒刻みでチッチッチッと音を鳴らしていく。
「3……2……1……ゴーッ!」
その瞬間、五十鈴と北本は半額の野菜目指して突撃した。 ちなみに周りに主婦だのなんだのの陰はない。二人で勝手にバカやってるだけである。
「白菜キタァアアアアアッッ‼︎」
「ちょっと大きな声出さないで恥ずかしいから」
シレッとした口調でも、しっかりとセールの野菜を買い物カゴに詰める五十鈴。
「よしっ、こんなもんだろ」
「ええー。まだ取れるわよ?」
「バカめ、周りのお客さんも野菜を買うんだ。必要な分だけ取るのがマナーだろ」
「人の下着を賭け事にする奴に言われたくないわね」
「いいから、とにかくここまでだ」
「分かったわよ……」
いつも通りの買い物を終えた。
*
帰り道。
「今日はなんにする?」
「うーん……カレー?」
「またカレーかよ。この前食ったばっかやん」
「いいじゃない。作るの簡単だし。それにカレーなら明日か明後日くらいまで保つでしょ?」
「手抜きか」
「違うわよ!」
「はいはい。まぁそういうことならカレーな了解」
「あ、カレーならジャガイモ忘れないでよね」
「分かってるよ。あと玉ねぎだろ」
「うんっ」
(胸についてんじゃん。でっかいのが)
「……何処見てんのよ」
「GNドライヴって前に持ってきたら超巨乳だよな」
「誤魔化せてない上に誤魔化し方が最低よ!」
そんな事を話しながら公園を通る。いつもの近道だ。だが、今日は違った。明らかに頭の悪そうなヤンキー四人の溜まり場になっていた。そいつらは五十鈴と北本に見向きもしなかったものの、通ろうとした瞬間に二人をジロリと睨む。
「五十鈴も今やガンダムバカになったからなぁ」
「あんたがTSUTAYA行く度にガンダム借りてくるからでしょ⁉︎」
「嫌なら見なきゃいいじゃん」
「テレビついてたらなんとなく見ちゃうじゃない!」
「いやそんな動物の習性じゃないんだから……」
なんて話しながら歩いてると、男が二人ほど立ち塞がった。
「おい、カップル」
「ここを通るには通行料がいるんだぜ?」
すると、北本は携帯を取り出した。そして、LINE通話を起動。
「E-エマージェンシーコール!」
「……何言ってんだお前」
すると、シュバッ!と何処から来たのか、和明が現れた。さらに、二人でLINE通話。
「「E-エマージェンシーコール!」」
さらに、正樹が現れた。
「こ、こいつら今空から現れた……?」
「な、なんなんだこいつら……!」
「隼人は?」
「風呂中だって」
「しかも、揃ってねぇのかよ!」
不良からのツッコミ。それに構わず三人は構えた。
「滅びのバーストストリーム!」
「破滅のフォトンストリーム!」
「スターバーストストリーム!」
全員バラバラの上に一人だけ間違えてる奴がいたが、三人は突撃。不良四人組を撃退した。五十鈴は元艦娘なだけあって、顔だけなら知ってる人も少なくない。その為、外で喧嘩騒ぎなど起こった暁には横須賀の鎮守府に知れ渡ってしまうかもしれないので、代わりに北本が喧嘩を引き受けてるわけである。
あっ、ちなみに残りの三人が助けにくるシステムは彼らが小6の時からあった。で、今回も無事に倒した。
「サンキューな」
「あの、有り難うございます」
ぺこりと五十鈴が頭を下げた。
「良いよ別に」
「俺の時も頼むぜ」
「ああ、わかってる」
「じゃあな」
和明と正樹は家に帰った。
「……ごめん、私のために」
「いや、良いよ別に」
「でも、怪我してるじゃない……」
当然、格闘技をやってるわけでもないので、メチャクチャ強いというわけでもない。それでも勝てるのはほとんど気合のおかげである。
「まぁ、このくらいならガキの時からずっとだ」
「でも……」
と、五十鈴が言いかけた時だ。ヤンキーの一人が声を上げた。
「おい!何ボサッとしてやがる!早く助けに来やがれ!」
その言葉のあとに、滑り台の裏から一人の女の子が飛び出してきた。
「えっ」
女の子が北本の腹に拳を叩き込んだ。
「オッフォアッ!」
「っ⁉︎」
だが、お腹の中に五十鈴に内緒で買ったジャンプを隠していたのでダメージはない。
「グオッ……!」
北本はジャンプの安否を確認する。その隙にヤンキー達は逃げ出した。
「おいガキ!後でいつもの場所で落ち合うぞ!」
「わ、わかりました……!」
と、女の子が言う。男達は公園から出て行った。
「っ⁉︎ 叢雲⁉︎」
五十鈴が声を上げた。すると、女の子の動きは止まる。
「………五十鈴?」
「やっぱり叢雲⁉︎どうして……!」
「あんたこそ、どうしてこんな所に……。はぁ、軽巡が相手じゃ私に勝ち目はないわね」
「何、知り合い?」
北本が声を掛けた。
「ええ……とりあえず、詳しいことは家で話しましょう」
五十鈴の提案で三人はマンションに向かった。