捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた 作:杉山杉崎杉田
熊のぬいぐるみから出てきた金髪の頭は、こっちをジッと見つめた後、逃げ出した。
「⁉︎ 投げたわよ!」
「追いましょう!」
「熊鍋ですね!」
「「いいからあんたは黙ってなさいよ‼︎」」
走ろうとするも、木や草が邪魔で進めない五十鈴、叢雲。すると、北本が動いた。ジャンプし、木と木を蹴りながら熊との距離を詰めて行く。
そして、地面を走る熊の背中にライダーキックを放った。
「っしゃオラァッ‼︎捕まえたぞボケがぁッ‼︎」
「うわあ!はーなーせー!」
「よくやったわ克己!」
後ろから叢雲や五十鈴、赤城が追いかけてくる。
「さて、顔でも拝ませてもらおうかこの野郎」
言いながら熊の頭を取ると、中から小学生くらいの女の子が出てきた。
「! 皐月⁉︎」
「や、やっぱり叢雲と五十鈴さんと赤城さん……」
見つかっちゃった、みたいな感じでため息をつく皐月。
「何、知り合い?」
「知り合いも何も、艦娘よ」
「へぇ、こんなちっこいのが……」
「叢雲、この人は?」
「私達を拾って居候させてくれる人よ」
「へ?拾われたってことは……」
「ええ、私達も捨てられた身よ」
すると、皐月は神を見る目で北本を見た。
「いや、待て待て。お前らを拾ってやるとは言ってねーからな。事情を聞いてからだ」
「事情って……そこの一航戦(笑)は自業自得じゃない」
「そうよ、一航戦(笑)がいいなら誰引き取っても良いじゃない」
「二人とも私が嫌いなんですか⁉︎」
「わ、わかった!とりあえずみんなを連れてくるよ!」
「は?みんな?」
「うん。僕以外にもあと三人いるんだ!」
「………」
少し後悔しつつある北本だった。
*
キャンプ場まで戻り、落ち着いて話をすることになった。
「球磨だクマ」
「皐月だよ、よろしくな!」
「文月っていうのー」
「羽黒です……」
「一気に4人は初めてのパターンだな……」
おでこに手を当ててため息をついた。
「事情によっては一緒に暮らさせてもらえるクマ?」
「あー……赤城。お前やっぱ大学行かねーで来年から働け。いいな?」
「ふぁっ⁉︎」
「元艦娘ならそこそこの所行けるだろ。決まりな。よし、事情を話せ」
事情は前に聞いたような話だった。役に立たないので捨てられた、というものだ。
「だけど、世の中は世知辛いクマ。中々バイトも出来なくて、都会では住みにくくて、山の中に逃げてきたクマ。クマはこいつらを守る為に一生懸命、魚を捕ったり、週一で街に降りて図書館で山で暮らす方法を勉強したりしたクマ」
「………それでなんで熊の着ぐるみなのかは置いておいてやる。まぁ、そういう事なら構わないんだけど……」
北本は財布の中身を見た。
「帰りの電車賃足りるかこれ……五十鈴、お前いくらある?」
「私もあまりないわ。お金はほとんど生活費に回しちゃってるし」
「………だよなぁ。叢雲はまだバイト出来ないし……この辺コンビニあったっけ?」
「ち、ちょっと!」
口を挟んだのは赤城だ。
「なんで私には聞かないんですか⁉︎」
「ああ?お前はどーせ五円チョコと間違えて金食ったんだろ?わかってんだよ」
「違います‼︎てか、食事のために使ったとも思わないんですか⁉︎」
ツッコんでから赤城は財布を出した。意外とそこそこ入っていた。
「え、お前これどうしたの?」
「いざという時のために貯めておいたのです」
「や、そうじゃなくて。生活費の足しにするために給料は一度回収してるよな?」
「……………」
「よし、赤城と交換だ。お前、山に住め」
「待ってください!ごめんなさいヘソクリでした!」
と、いうわけで、一気に四人増えた。第一艦隊が組めるようになった。