捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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四人

 

 

熊のぬいぐるみから出てきた金髪の頭は、こっちをジッと見つめた後、逃げ出した。

 

「⁉︎ 投げたわよ!」

 

「追いましょう!」

 

「熊鍋ですね!」

 

「「いいからあんたは黙ってなさいよ‼︎」」

 

走ろうとするも、木や草が邪魔で進めない五十鈴、叢雲。すると、北本が動いた。ジャンプし、木と木を蹴りながら熊との距離を詰めて行く。

そして、地面を走る熊の背中にライダーキックを放った。

 

「っしゃオラァッ‼︎捕まえたぞボケがぁッ‼︎」

 

「うわあ!はーなーせー!」

 

「よくやったわ克己!」

 

後ろから叢雲や五十鈴、赤城が追いかけてくる。

 

「さて、顔でも拝ませてもらおうかこの野郎」

 

言いながら熊の頭を取ると、中から小学生くらいの女の子が出てきた。

 

「! 皐月⁉︎」

 

「や、やっぱり叢雲と五十鈴さんと赤城さん……」

 

見つかっちゃった、みたいな感じでため息をつく皐月。

 

「何、知り合い?」

 

「知り合いも何も、艦娘よ」

 

「へぇ、こんなちっこいのが……」

 

「叢雲、この人は?」

 

「私達を拾って居候させてくれる人よ」

 

「へ?拾われたってことは……」

 

「ええ、私達も捨てられた身よ」

 

すると、皐月は神を見る目で北本を見た。

 

「いや、待て待て。お前らを拾ってやるとは言ってねーからな。事情を聞いてからだ」

 

「事情って……そこの一航戦(笑)は自業自得じゃない」

 

「そうよ、一航戦(笑)がいいなら誰引き取っても良いじゃない」

 

「二人とも私が嫌いなんですか⁉︎」

 

「わ、わかった!とりあえずみんなを連れてくるよ!」

 

「は?みんな?」

 

「うん。僕以外にもあと三人いるんだ!」

 

「………」

 

少し後悔しつつある北本だった。

 

 

キャンプ場まで戻り、落ち着いて話をすることになった。

 

「球磨だクマ」

 

「皐月だよ、よろしくな!」

 

「文月っていうのー」

 

「羽黒です……」

 

「一気に4人は初めてのパターンだな……」

 

おでこに手を当ててため息をついた。

 

「事情によっては一緒に暮らさせてもらえるクマ?」

 

「あー……赤城。お前やっぱ大学行かねーで来年から働け。いいな?」

 

「ふぁっ⁉︎」

 

「元艦娘ならそこそこの所行けるだろ。決まりな。よし、事情を話せ」

 

事情は前に聞いたような話だった。役に立たないので捨てられた、というものだ。

 

「だけど、世の中は世知辛いクマ。中々バイトも出来なくて、都会では住みにくくて、山の中に逃げてきたクマ。クマはこいつらを守る為に一生懸命、魚を捕ったり、週一で街に降りて図書館で山で暮らす方法を勉強したりしたクマ」

 

「………それでなんで熊の着ぐるみなのかは置いておいてやる。まぁ、そういう事なら構わないんだけど……」

 

北本は財布の中身を見た。

 

「帰りの電車賃足りるかこれ……五十鈴、お前いくらある?」

 

「私もあまりないわ。お金はほとんど生活費に回しちゃってるし」

 

「………だよなぁ。叢雲はまだバイト出来ないし……この辺コンビニあったっけ?」

 

「ち、ちょっと!」

 

口を挟んだのは赤城だ。

 

「なんで私には聞かないんですか⁉︎」

 

「ああ?お前はどーせ五円チョコと間違えて金食ったんだろ?わかってんだよ」

 

「違います‼︎てか、食事のために使ったとも思わないんですか⁉︎」

 

ツッコんでから赤城は財布を出した。意外とそこそこ入っていた。

 

「え、お前これどうしたの?」

 

「いざという時のために貯めておいたのです」

 

「や、そうじゃなくて。生活費の足しにするために給料は一度回収してるよな?」

 

「……………」

 

「よし、赤城と交換だ。お前、山に住め」

 

「待ってください!ごめんなさいヘソクリでした!」

 

と、いうわけで、一気に四人増えた。第一艦隊が組めるようになった。

 

 


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