捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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1日目

 

 

電車の中、流石に旅行費は親に出してもらえたので、早速北本達はキャンプに出かけた。

 

「おー!山、山よ!見なさいよ五十鈴!」

 

「そうね!熊とかいるのかしら!楽しみだわ!」

 

「おい、何を楽しみにしてんだバカ巨乳。お願いだから物騒なこと言わないで」

 

「熊って美味しいんですかね?」

 

「レッドキャッスル、血で本当に真っ赤にしてやろうか」

 

山は初めての経験なのか、メチャクチャはしゃいでる3人を横目で見ながら、北本はため息をついた。

 

「…………はぁ、眠い」

 

「何言ってんの?克己」

 

ダルそうにしてる北本に叢雲が言った。

 

「旅行はこれからなのよ?寝てる暇なんてないわよ!」

 

「わーってるよチビ無乳若白髪」

 

「殺すわよ」

 

「ごめんなさい。でも、楽しむために今のうちに寝とくのは間違ってないだろ?」

 

「むっ……そういうものなのかしら?」

 

「おう、そうだ。修学旅行の行きの新幹線で寝るのと同じだ」

 

「シュウガクリョコウ?」

 

「何でもない」

 

そう短く返すと、再び窓の外を見る北本。

五十鈴が鞄からトランプを取り出した。

 

「それよりトランプやらない?」

 

「あ、いいですね」

 

「何やる?」

 

「何でもいいよ俺は。……いや、ダウト以外で。あれやると終わらない」

 

「せっかくなら何か賭けない?」

 

「お、いいわね!じゃあ私200円かけるわ!」

 

「アホかお前。金は賭けるな。よし、各々自分のパンツを賭けろ」

 

「「蹴るわよ?」」

 

「すいませんした」

 

「そもそも、私は褌ですし」

 

「えっ、なにそれ見たい」

 

バギッ×2

 

「いや殴るなよお前ら……」

 

台詞と効果音だけで何が起こったのか大体わかってしまうことを話しながら、とりあえずババ抜きをした。手抜きじゃないよ。

だが、まぁご察しの通り、叢雲がすごく顔に出やすく、3人に飲み物を奢るはめになった。

で、キャンプ場に到着。

 

「「「おおおーーー!」」」

 

元艦娘の3人が感嘆の声を漏らした。3人とも、海ばかりで山に来たことはなかったので、感動が大きかったのだ。

 

「木が!木がいっぱいあるわ!」

 

「近くに川も流れてるみたいよ!」

 

「美味しそうですね!」

 

「や、何が?」

 

「いいからお前ら、先にテント張るぞ。

 

北本が言うと、3人は教わりながらテントを設営。北本と赤城、叢雲、五十鈴に別れるため、女子組のテントの方が大きい。

30分ほど掛けてテントを張り終えると、いよいよ遊びに行くことになった。

 

「今日はどうする?川かそれとも山の中探索するか、いっそもう飯にするか。……ああ、赤城の意見は聞かないから。どうせ飯だし」

 

「ち、ちょっと!いくらなんでも酷いですよ!私だって食べてばかりじゃありません!」

 

「うんありがとー。さて、五十鈴と叢雲。好きなの選べ」

 

「ひ、ひどい……流された……」

 

涙目になる赤城を放置して、叢雲と五十鈴の二人に質問する北本。

答えたのは五十鈴だった。

 

「うーん……どうせ明後日までいるなら、今日は山の中歩かない?少し見てみたいし」

 

「オーケー。叢雲もそれでいいか?」

 

「いいわよ」

 

「っし、じゃあ、山の中歩くなら絶対にこれだけは守れってのを今から伝えるから。絶対守れよ」

 

北本が真面目な顔でそう言うと、3人とも唾を飲み込む。

 

「まず一つ、絶対に逸れるな。山の中は携帯圏外だ。逸れたら二度と会えない」

 

「………なるほど」

 

「分かったわ」

 

「二つ目、摘み食いはするな」

 

「ち、ちょっと!いくら私でも拾い食いは……!」

 

「や、そういうんじゃなくて。『あ、これきのこだー。食えるんじゃねー?』って軽いノリで死神に魂食われるかもしれねぇんだ。他にもヘビイチゴとか食えそうで食えないものが沢山ある。絶対に手は出すなよ」

 

3人とも頷いた。

 

「三つ目。これを各自持て」

 

北本から渡されたのは鈴だった。

 

「これは……?」

 

「食べられないぞ赤城」

 

「さっきから私の食べ物いじり酷くないですか⁉︎」

 

「これは熊防止の為のものだ。鳴らしながら歩くように。で、次がラストだ」

 

一層、真面目な顔になる北本。それを悟ってか、残りの四人の顔も真面目な顔になった。

 

「………オシッコしたくなったら、まず俺に言え。逸れないように俺の眼の前で……」

 

正拳突きが三つ、直撃した。

 

 

山の中を歩き始めて数十分が経過、キチンと北本の言いつけを守ったからか、今の所誰も欠けていない。

 

「あ、見て!あれ動物じゃない?」

 

「たぬき?」

 

叢雲の指差す先にはタヌキがいた。警戒してるような顔でこっちをジッと見ている。

 

「写真!写真撮りたい!」

 

「おう。はい、カメラ。壊すなよ」

 

「壊さないわよー」

 

叢雲が上機嫌にカメラを受け取り、タヌキに向けた。

 

「よーっし……動かないでねぇ……」

 

そんなことを呟きながら、シャッターを押そうとした時、たぬきが両手を頭に乗せた。そして、グイーッと頭を引っ張り始めた。

スポンッと間抜けな音と共に頭が外れ、金髪の女の子の頭が出て来た。

 

「「「「……………えっ?」」」」

 

四人ともたらーっと頬に汗を流した。

 

 


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