捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた   作:杉山杉崎杉田

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四人会議

 

 

そんなこんなで、夏休みになりやがった。期末試験も終わり、本格的に夏の日差しが濃くなる中、北本家では『全国サウナ我慢選手権(参加者四人)』が開催されていた。

 

「……おい、クーラーつけようぜ」

 

「バカ言わないで……先月の電気代オーバーヒートしてたのよ」

 

「このままじゃ俺たちがオーバーヒートするっつの……」

 

「そうね……確かに克己の言う通りね……。このままじゃ溶けそうよ……」

 

「モナカだもんなお前」

 

「あんたが勝手に付けた名前でしょうが……。そういえば一航戦の誇り(笑)さんはなんて名前にしたのよ」

 

「ちょっと、(笑)付けるのやめてくれませんか」

 

「いや、(笑)だろ。勝手に資材食い荒らして追い出されりゃ一航戦どころか人としての尊厳もないよね」

 

「人の下着をゲームのチップにしてた人が何言ってんのよ」

 

「それはいいんだよ。人の尊厳はなくても男としての尊厳はあるからな」

 

「それが男ならこの世から男なんていなくなればいいのに……」

 

そんな会話をしてても、蒸し暑さは消えない。四人揃って大型船建造で資材全部すっ飛ばした提督よりも多い汗をかいていると、北本がガバッと起き上がった。

 

「もう我慢ならん。行くぞお前ら」

 

「「「何処に?」」」

 

「決まってんだろ。涼める場所だ」

 

 

で、隼人の家。

 

「で、なんでお前ら俺の家に来てんだよ!」

 

「やーだってな?」

 

「うちは暑いし……」

 

「隼人さん家ならクーラーついてるだろうし……」

 

「お腹空きましたし……」

 

「おいそこの!お前誰だこの野郎!」

 

「いいだろ、この前梅雨の時家に上がらせてやったんだし……お、ブラッククローバー買ってんだ。読ませてくれ」

 

「ちょっ、それまだ俺読んでな」

 

「ベッド借りるわよ〜……って、なによこれ。布団の中に卑猥な本が……」

 

「ベッドの下にもあるわよ。エロ本」

 

「ちょっ、やめっ」

 

「冷蔵庫の中何もないですね〜。あっ、プリンあった」

 

「おい!お前ら自由か‼︎いい加減にしろ‼︎」

 

 

キレられて数分後、ようやく落ち着いた。隼人が入れてきたお茶が5人分、丸い卓袱台の上に置かれ、中央には真ん中から裂かれたポテチやらかっぱえびせんやらのおやつが広げられていた。

 

「と、いうわけで北本家旅行行き先会議を始める」

 

「家でやれ」

 

「「「おー!」」」

 

隼人の台詞を無視して四人は話し合いを始めた。

 

「というか、お金はどうするんですか?」

 

「ヒッチハイク。車止めて占拠する」

 

「それはカージャックって言うんだよー」

 

「とにかく、俺たちが今、決めるべきことは行き先だ。行きたいところを言え」

 

「はい!」

 

最初に手を挙げたのは叢雲だ。直後、全員意外なものを見る目をした。

 

「……何よ」

 

「いや、もなかの割には素直に元気よく真っ先に手を挙げたなと思って」

 

「そんなに楽しみだったの?」

 

「う、うるさいわね!いいでしょ!」

 

顔を赤くしてぷいっと顔を逸らしてから、自分の行きたいところを言った。

 

「海!」

 

「すぐそこにあんだろ」

 

で、一蹴された。今度は五十鈴が「はいっ」と手を挙げた。

 

「沖縄!」

 

「なお暑くね?」

 

「はい!」

 

今度は赤城さんだ。

 

「松坂牛!」

 

「牛になっちゃったよ。てか一航戦の誇り(笑)がそんな贅沢出来ると思うなよ」

 

「淡路島!」

 

と、叢雲。

 

「ヒッチハイクだっつってんだろ。現代科学に海上自動車とかあるとでも思ってんの?」

 

「モグモグモグ!」

 

と、五十鈴。

 

「食い終わってから話せ」

 

「モグモグモグ!」

 

と、一航戦(笑)。

 

「お前の場合は食い終わっても話すな」

 

「動物園!」

 

と、叢雲。

 

「意外と可愛い趣味だな。悪くないけど旅行というよりお出掛けだな」

 

「博物館!」

 

と、五十鈴。

 

「思い付きだろそれ」

 

「水族館!」

 

と、レッドキャッスル。

 

「あそこの魚食う気?全力で止めるよ?息の根もろとも。って、そろそろいい加減にしとけよ」

 

静かにキレる北本の台詞でようやく大喜利大会は終わった。

 

「じゃああんたはどこ行きたいのよ」

 

「あ?あーそうだな……。山とかは?」

 

「山?なんでまた……」

 

「山の中なら割と涼しいんじゃないかと思ってさ。キャンプにすればホテルよりは金かからんし。てか親に頼めば車くらい出してくれるだろうしな」

 

言うと、三人は顔を見合わせたあと、まぁいいかみたいな感じになった。

 

「うしっ、決まり。細かいことは俺が調べとくわ。帰ろうぜ」

 

「はーい」

 

「キャンプの準備とか買わなきゃわね」

 

「お邪魔しました〜」

 

一人残された隼人は呟いた。

 

「……なんてこった。まさか、本当に会議場代わりにされて帰られるとは……もう絶対あいつら家に上げねぇ」

 

 


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