捨てられた艦娘拾ってたら鎮守府並みになってた 作:杉山杉崎杉田
神奈川県、小田原市。早川の辺り。そこで北本克己という少年は一人暮らししていた。過去形だ。今は、二人暮らしだ。
「ただいまー」
丁度学校が終わり、帰宅した。割と広いマンションで、明らかに1LDKの広さではない。その廊下を進みながらリビングに入った。
「あ、おかえりー」
中にいたのは、元軽巡洋艦五十鈴だ。
「……お前今日バイトじゃないの?」
「明日に変更になったって言わなかった?」
「…………」
「……あんた、またゲーム買ったんでしょ」
「………買ってないよ」
「鞄の中見せなさい」
「ッ」
「あ、コラ待ちなさい!」
五十鈴の制止を無視して北本は自分の部屋に逃げ込んだ。が、元とはいえ艦娘の力に勝てるはずもなかった。無理矢理ドアを開けられ、鞄の中を物色される。
そして、中から出てきたのはモンハンXだった。
「………何よこれ」
「や、それはー……その……友達から借りて……」
「ご丁寧にレシートも一緒にあるんだけど?」
「……友達がやってるの羨ましくてつい買ってしまいました……」
「あんたねぇ!ただでさえ二人でバイトしてギリギリの生活してるってのにどういうつもりなの⁉︎」
「スミマセンスミマセンスミマセンスミマセン……」
いつもの日常。なぜ、高校生と五十鈴が一緒に暮らしてるかというと、一ヶ月前の時だ。五十鈴の電探狙いで改造され、捨てられた五十鈴が、北本の財布を盗んだ事が出会いだった。それからなんやかんやあって、一緒に暮らすことになった。
ただし、ちゃんとルールはある。
1、妹を名乗ること
2、必ずバイトすること
3、入学シーズンになったら入学すること
この3つだ。北本の家は金持ちだし、親に五十鈴の事は話してあるから、入学に関するお金は問題ない。ただし、家の方針で、一人暮らしする間の生活費は自分で稼げと言われている。その為、金持ちなのに貧乏暮らしとなっているのだが、北本は食費を切り詰めてゲームとか漫画を買っている。
「ったく……あんたは……ホンットに油断も隙もないんだから」
五十鈴は腰に手を当てて北本を見下ろす。
「とにかく、次ゲーム買ったらブチのめすから」
「いいわね?」
「そう、いいわね?……って、なんであなたが先に言うのよ!」
ポカッ!と頭を叩かれた。
「この野郎……家の主である俺に手を上げるとは……」
「家賃を自分で払えるようになってから言いなさいよ」
はぁ……と、北本はため息をつく。
「とにかく、ご飯にするわよ。あんたは机を拭いて。私が作るから」
「うーい……」
いつもの日常だ。